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2018年6月19日(火)更新

コンピテンシーモデル

コンピテンシーの概念は1990年に日本に導入され、多くの企業が人事評価や研修で取り入れ一般的になりつつあります。さらに、社員の成長や成功につなげるため、コンピテンシーをモデル化する「コンピテンシーモデル」を作成する業界や組織が世界的に増えています。今回は、コンピテンシーモデルの作り方のポイントや注意点・活用法をご紹介します。

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「コンピテンシー」の意味と日本での歴史

コンピテンシーとは、学術的には「特定の職務遂行場面や課題状況において、ある基準に照らして、効果的な成果もしくは優れた成果の原因となるような、個人の潜在的特性」と定義されます。

もともとは、ハーバード大学の心理学者であるD.Cマクレランド教授とアメリカ国務省らのグループが行った調査が始まりです。「ハイパフォーマーと呼ばれる実際に高い業績を残す人材には、学歴や知能とは関係なく、いくつかの共通した行動の特性がある」という結果からコンピテンシーが注目されるようになりました。

1990年代から日本でも様々な企業で取り入れられ、人事評価等に利用されています。最近では教育現場で「見えない力を評価する」方法としてコンピテンシーが取り入れられ、介護業界などでもこれまでの一律的な介護方法ではない手法を構築するために、独自のコンピテンシーモデル作成が進められています。

【関連】コンピテンシーの意味、ご存知ですか?組織を劇的に変える考え方/ BizHint HR

日本企業での「コンピテンシー」のとらえ方

コンピテンシーという概念を生み出したアメリカでも、研究者によってその捉え方は様々です。しかし、日本ではコンピテンシーに対する考え方が混乱しているといっても言い過ぎではないほどに、多様な解釈がされています。その原因の一つが、コンピテンシーが注目された時期にあります。

日本では1990年代のバブル崩壊後、それまで一般的であった経験を重視した職能資格制度、年功序列に偏向した人事評価の見直しを模索していました。そこで注目をされたのがコンピテンシーです。しかし当時は、同時に注目を浴びた能力主義と合わせてとらえられるようになりました。本来コンピテンシーは「氷山の水面下の部分」にたとえられるように潜在的な能力も含めるはずですが、日本では直接業績に結び付く行動特性の評価に偏っているとの指摘もあります。

【関連】行動特性とは?意味と活用方法、優秀な若手社員に見られる特性とは/ BizHint HR

日本企業のコンピテンシー導入事例

先ほども説明した通り、日本では企業により、コンピテンシーの捉え方は違いますが、様々な企業が対象者や導入方法に工夫をしながら取り入れています。

【出典】日本におけるコンピテンシー ―モデリングと運用― 著者:井村直恵

1990年代から、コンピテンシーを導入した企業があり、主に人事評価を目的に導入されていることがわかります。

また、近年では介護業界でもコンピテンシーを取り入れモデル化しようとしていますが、そのとりかかりとして「WHOグローバル・コンピテンシー・モデル」を翻訳したものを転用されました。WHOと介護が必要とするコンピテンシーに重なる部分が多くあるためですが、すべてがマッチするわけではないので、現在では独自のモデル化に取り組んでいます。

コンピテンシーモデルとは?

それでは具体的にコンピテンシーの「モデル化」についてもう少し説明していきます。

コンピテンシーモデルとは、実務で使用するためにモデル化されたものです。業績を上げるプロセスに注目して作成されるため、業種・職種によってどのような行動が業績につながるかは当然違ってきます。つまり、導入する目的や分野に応じて、細かく作って行かなければなりませんし、一つの職場の中ででも、目的とレベルに応じて細かく分けられモデル化されなければうまく機能しないのです。

参考例―WHOグローバル・コンピテンシー・モデル―

一つの例として、「WHOグローバル・コンピテンシー・モデル」が挙げられます。WHOでは、まずコア・コンピテンシー、マネジメント・コンピテンシー、リーダーシップ・コンピテンシーと3つのカテゴリーに分類した後、13項目を設定しています。

コア・コンピテンシーでは所属するすべての人材に必要なコンピテンシーを指し、マネジメント・コンピテンシーでは人事管理をする立場の、リーダーシップ・コンピテンシーは組織のトップが必要とする項目を上げています。

このように、大分化されたカテゴリーでは職務レベルにあわせて、またそれぞれの項目ではクリアするべき具体的なコンピテンシーを挙げることにより、個人の能力向上、組織全体の業績アップが期待できます。

【参考】コンピテンシーモデル - 一般社団法人 日本国際保健医療学会/国際保健用語集

コンピテンシーモデル作成の手順

コンピテンシーモデルの作成は煩雑で難しく、人事系のコンサルタントへ依頼する場合が多いのですが、ここでは一通りの手順の説明をいたします。

必要な要素の洗い出し

コンピテンシーモデルを作成しようとするときは、まず責任者やモデルを作ろうとする業務で高い業績を残している「ハイパフォーマー」でチームを作ります。そこで何についてのモデルを作成するのかを明確にした後、「コンピテンシー・ディクショナリー」から必要な要素を選び出します。

「コンピテンシー・ディクショナリー」とは、「必要なコンピテンシーをすべて洗い出し、体系的に整理したもの」と定義されます。最初にコンピテンシー・ディクショナリーを作り出したのが、ライル・M. スペンサー と、シグネ・M. スペンサー であったため、スペンサー&スペンサーのコンピテンシーモデルとも呼ばれます。以下のように、6 領域・21 項目に分類しモデル化したものを1990年代に発表しました。

【出典】日本におけるコンピテンシー ―モデリングと運用― 著者:井村直恵

現在では、コンサルタント会社などが独自に10~100程度の項目を上げています。しかし、コンピテンシー・ディクショナリーではコンピテンシーを包括的に示して、どのような業種や職務にも転用できるように作成されているため、実際に導入する際には項目の選択を慎重に行わなければいけません。

ハイパフォーマーへのインタビュー

目的に沿って項目を選び出したら、ハイパフォーマーへの聞き取り調査に移ります。その人物が普段どのようなことをしているのかという行動モデル、何を重視して取り組んでいるのかという達成動機などを、先ほど選び出した項目に沿ってインタビューを行います。インタビューの結果から、ハイパフォーマーと一般の社員(標準者)の違いを検証します。どの部分が違うのか、なぜそれが業績につながるのかに照準を合わせモデル化します。

この時に注意するのが、それぞれの項目に対して必要最低限のレベルと、高いパフォーマンスを出すための卓越したレベルに分け、尺度を設けることです。

【関連】ハイパフォーマーの特徴とは?具体例と採用に活用する方法 / BizHint HR

組織の将来ビジョンとのすり合わせ

コンピテンシーモデルで選んだ項目と、ビジョンと経営者のビジョンが必ずしも一致しないことがときどきあります。これは、経営者の考え方にもよるのですが、短期的な業績アップにとらわれてしまうことが大きな原因の一つです。

何のためにコンピテンシーモデルを作成するのか?いつまでに達成するのか?組織の将来ビジョンに一致するのか?など、コンピテンシーモデルと経営ビジョンにかい離がないかチェックします。

社員の行動規範として落とし込む

コンピテンシーモデルがひと通り完成したら、全社員に周知、共有します。コア・コンピテンシーのように全従業員が対象になるようなコンピテンシーモデルでは、従業員が取るべき行動の指針となります。また、リーダーシップ・コンピテンシーなども周知することによって、株主や顧客にとってその企業が目指している姿を知る指針にもなりえます。

コンピテンシーモデルの活用例

コンピテンシーは人事マネジメント、人材育成、採用など様々な場面で活用できます。ここでは、企業と業界に分けてコンピテンシーの活用事例をご紹介します。

企業での活用事例

企業では主に人事評価や採用などの評価制度として取り入れられる事例が多くあります。企業では、社内のハイパフォーマーや目指すべき人材の具体的なコンピテンシーを選び出してモデル化しています。

■コンピテンシー面接での事例

採用方法の一つとして「コンピテンシー面接」を取り入れている企業が増えてきました。従来の面接との違いは、一般的な面接では面接官の印象や主観が入りやすく評価基準があいまいであるのに対し、通常のコンピテンシー面接では、応募者がこれまで実際に行ってきたこととハイパフォーマーの行動様式とが同様であるかどうかを、5段階程度で評価します。このため評価基準が客観的かつ明確で、評価者、応募者両方にメリットが得られます。

【関連】コンピテンシー面接とは?企業で導入する際のマニュアルや質問例まで / BizHint HR

■コンピテンシーを利用した人事評価

コンピテンシーによる人事評価も注目されています。評価項目とコンピテンシーモデルの項目は重なるところがありますので、モデル化の前にコンピテンシー評価を導入してもいいかもしれません。コンピテンシー面接と同様、評価診断が客観的にできるという利点があります。また、自己評価も含まれるので、360度評価にもつながります。

【関連】コンピテンシー評価とは?成果につながる行動特性に注目した制度 / BizHint HR
【関連】360度評価とは?メリット・デメリットから実施の流れまで / BizHint HR

業界での活用事例

業界全体でコンピテンシーを導入する場合、まずコア・コンピテンシーのように必要最低限の項目を携わるメンバーで共有します。さらに、リーダーや管理者にはメンバーをまとめるリーダーシップなど、別の項目が設定され、全体の人材育成に役立てられます。

■IT業界でのコンピテンシー

IT業界など技術分野は、客観的な評価が比較的容易ですが、業界で統一したコンピテンシー・ディクショナリーが作成されました。これは、国際的に競争が激化し、環境が変化する中でより有能な人材育成の必要性に迫られ2014年7月には試用版が、そのご実証を行い2015年6月に正式版が公開されています。

IT業界で取り入れられるコンピテンシー・ディクショナリーの特徴は、タスクディクショナリとスキルディクショナリに分け、それぞれ紐づけしています。導入企業はこのディクショナリから業務に応じて必要な項目を選択することで、容易にコンピテンシーモデルを作成できます。

【参考】情報処理推進機構「i コンピテンシ ディクショナリ概要」

■看護の場面でのコンピテンシー

病院での看護や介護の場面では「見えない力」、まさにコンピテンシーの概念が生かされる業界です。そのため最近になりコンピテンシーモデルの活用が急速に取り入れられています。ここでは、看護師長などの看護管理者のコンピテンシーと看護師としての一般的なコンピテンシーなどレベルに合わせて、人材育成に活用されています。

コンピテンシーモデル運用の注意点

コンピテンシーモデルの考え方では、ハイパフォーマーの行動特性をほかのメンバーが共有することで「見えない能力」を引き出すことができるとされています。

また、コンピテンシーモデルの作成は非常に煩雑です。そのため、作成したモデルが本当に業績アップや目指す経営理念への架け橋になっているのかについては、導入段階から検証や注意が必要です。

適切な構成要素の選定

導入時には目標を明確にし、項目を具体的に絞り込むことが重要です。例えば「収益のアップ」を目指したいときに新規の顧客を増やすのか?売上金額を上げていくのか?では求めるパフォーマンスが違ってきます。

このように漠然と「収益アップ」と広範にすると、コンピテンシーの項目ばかりが増えてしまい、目標達成が難しくなります。また、項目決定はチームで客観的に行います。経営者が自分だけの経験や、好みの人材像を念頭に項目をアップすれば機能不全に陥ります。

レベルを求めすぎない

コンピテンシーの構成要件にはそれぞれのレベルがあります。すべてにハイレベルを求めても意味がありません。

WHOグローバル・コンピテンシー・モデルでコア・コンピテンシー、マネジメント・コンピテンシー、リーダーシップ・コンピテンシーと分類されているように、それぞれのレベルに合わせて導入することが重要です。

また、最低要件とハイパフォーマーのコンピテンシーに分けるなど、評価も段階的に行います。どのように導入するかにもよりますが、コンピテンシーモデルを組織全体の要件で導入するときには、特に細分化、適切な項目の選択に注意が必要です。

定期的な見直し

コンピテンシーモデルは、数年おきに見直しが必要です。これは取り巻くビジネス環境が変わるためです。すべての項目で見直しが必要なわけではありませんが、ビジネスモデルとコンピテンシーのマッチングができているかは常に注意を払います。

まとめ

  • コンピテンシーは1990年代に導入されたが、日本では企業や研究者によりその概念のとらえ方が違う。
  • コンピテンシーは面接や人事評価など様々な場面で活用できる。
  • コンピテンシーモデル作成は手順が煩雑だが、コンピテンシー・ディクショナリーから項目を選択していくと比較的容易にできる。
  • コンピテンシーモデルには経営者の好みに偏らない、定期的な見直しをするなど運用に注意が必要。

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