ハイパフォーマー
ハイパフォーマーとは、「仕事に必要なスキルに長けていて、高い成果を出すことができる優れたパフォーマンスを持っている人材」のことです。高い成果が求められるビジネスシーンでは、ハイパフォーマーの存在は、企業の業績や周囲の人材育成など、さまざまな影響を与えます。また、ハイパフォーマーの特徴や思考、行動を分析し、データ化することで人材採用に活用することも期待できます。そこで、ハイパフォーマーの特徴の具体例と、採用に活用する方法について見ていきます。
企業におけるハイパフォーマーの重要性
ハイパフォーマーは、企業に次のようなメリットをもたらします。
業績向上につながる
「2:8の法則」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは、「会社の業績の8割は、2割のハイパフォーマーによってもたらされる」という、ビジネスシーンにおける経験則です。ハイパフォーマーは、仕事に必要なスキルに長けていて、行動力があり、困難を乗り越える力があります。ハイパフォーマーが会社にいると業績向上が期待できます。
チームを底上げできる
「2:8の法則」は組織論としても使われます。「会社の中のハイパフォーマーは2割程度」で、もともと、ハイパフォーマーはそれほど多いわけではありません。しかし、ハイパフォーマーの意識や行動がルールや仕組みとして再現できれば、チームの底上げが期待できます。また、ハイパフォーマーの仕事ぶりは、他の社員の意識や行動習慣にも影響を与えるでしょう。
ハイパフォーマーの特徴
ハイパフォーマーの行動には、次のような特徴があります。
相手の立場に立って仕事を行う
ハイパフォーマーは「利益は、商品やサービスではなく、顧客によってもたらされる」ことを理解しています。そのため、顧客の困りごとや抱えている問題は何かを考え、顧客の立場に立って仕事を行います。その結果、顧客に最適な解決策を提示することができるため、顧客からの評価や利益へとつながり、業績が向上します。
成果を重視する
ハイパフォーマーは成果を重視します。「何を実現するか」という明確なゴールイメージと、成果に対するコミットメントによって、仕事の成果へとつなげることができます。だからといって、「何がなんでも」という力ずくの姿勢ではありません。現状とゴールのギャップから、「何をすべきか」を考え、必要なプロセスを洗い出し、優先順位をつけて行動します。
行動する
ハイパフォーマーは、行動こそが成果につながることを知っています。もちろん、仕事には課題も多く、失敗することも多々ありますが、行動の歩みは止めません。常に動き続けることで行動の「量」を増やします。失敗には肯定的な意味づけをし、次の成長に生かします。その結果、行動の「量」が「質」へと変化し、成果へとつなげることができます。
【関連】日経Bizアカデミー:第4回 彼らは、とにかく小さな行動を続ける
謙虚である
ビジネスで成果を出すためには、一人の力では成しえませんし、上から目線のコミュニケーションでは人を動かすことはできません。ハイパフォーマーは、プロジェクトメンバーやビジネスパートナーとの信頼関係が仕事の成果につながることを知っています。そのため、相手に対する思いやりがあり謙虚です。
【参考】売れる営業の3つのタイプ
周りの人を支援する
ハイパフォーマーは身近な人を大切にします。後輩には知識や能力を積極的に教え、失敗のフォローも欠かしません。また、自分の知識やスキルを分かりやすく教えたり、失敗をリカバリーしたりすることで、自分の成長にもつなげています。周りの人を支援すると人間関係がよくなり、信頼関係も生まれます。その結果、社内外の人脈が広がり、益々仕事がやりやすくなるのです。
【関連】日経Bizアカデミー:第5回 彼らは身近な人を支援し、成功を助ける
自分の意見をしっかり伝えられる
ビジネスシーンでは、プロジェクトのメンバーやビジネスパートナーなど、周囲の人々と意見が対立することが少なくありません。そのような状況で、自分の意見をしっかり伝えることができなければ、成果を達成することができません。 だからといって、敵対関係を作るわけではありません。多様な意見があることを肯定しつつ、意見が対立しそうなときには、「なぜ、それをするのか」「そもそも、何のためにそれをするのか」など目的を明確にしたり、自分の熱い思いを伝えたりしながら、問題解決に向けたコミュニケーションを図ることができます。
困難を乗り越える力がある
仕事では、困難に直面したり、理不尽な状況に置かれたりすることもあるものです。しかし、そこから逃げると成果につながらず、成長も期待できません。ハイパフォーマーには、さまざまな困難に直面しても、いつか解決できる可能性を信じ、今、できることを一生懸命取り組みます。
ストレス耐性を強化するために、今、この瞬間に体験している自身に意識を向けて集中し、心の状態を整える「マインドフルネス」のような瞑想法を取り入れている人も少なくありません。
社会に対する問題認識や貢献意欲がある
高度成長期のハイパフォーマーは「成功」や「お金」など、自己実現や目標達成に意欲を燃やしました。一方、近年のハイパフォーマーは、社会に対する問題意識を抱いており、社会の課題をビジネスの力で解決しようとする貢献意欲が高くなっています。CAMPFIREやReadyforなど、クラウドファンディングで賛同者から資金を募り、社会の課題を解決する人が増えているのも、その一例と言えるでしょう。
【参考】リクルートマネジメントソリューションズ:スマートパフォーマーの時代 ~「できる社員」の変化~
【関連】矢野経済研究所:国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2016年)
楽しく働く
ハイパフォーマーは「楽しく仕事をしよう」とします。どんなことでも楽しんでやるほうがいい循環を生むことをよく分かっているからです。例えば、しかめっ面で仕事をするよりも、楽しくやったほうが、頭が柔らかくなって新しいアイデアも出るようになるし、自然とやる気も出てきます。周囲の人にも好印象を与えるでしょう。
もちろん、常に楽しいことがあるわけではないし、好きな仕事ができるわけではありません。けれども、「楽しく仕事をしようとする心」が、仕事を楽しくしていくのです。
ハイパフォーマーの思考
ハイパフォーマーの思考には、次のような特徴があります。
ネガティブ思考を生かす
ビジネスシーンでは、さまざまな失敗がつきものです。これまでの成功法則は、「ピンチはチャンスだ」のようなポジティブ思考をすることで失敗を乗り切る方法でした。けれども、思考だけをポジティブに切り替えても成功するとは限りません。逆に、無理なポジティブ思考は、自身を精神的に追い込んでしまう危険があります。また、失敗の原因に目を向けようとしないことで、失敗を繰り返してしまう恐れもあります。
ハイパフォーマーは、失敗を失敗として受け入れたうえで、「この失敗をどのように生かすか」「生かせるシーンはあるか」を考えます。失敗は成功の種であり、成長の機会だと捉えています。
目的思考
ハイパフォーマーは、仕事や労働に対し「何のためにそれをするのか」という目的を重要視しています。目的思考は、「この目的を実現するための手段はたくさんある」という意識を育みます。そのため、ある方法が上手くいかなくても、別の方法を考える柔軟さが生まれます。
また、ビジネスシーンでは、仕事がうまくいかず、時には挫折しそうになることもあるものです。そのようなときに、「そもそも、何のためにこれをしているのか」と目的に立ち返ることで、自分が担っている役割や使命に気が付き、困難を乗り越える力になることもあります。
さらに、ビジネスシーンでは常に選択を迫られています。判断に迷ったとき、「何のためにこれをしているのか」のように、仕事の目的を改めて考えることで「今、やるべきこと」が明確になり、適切な判断をすることができます。
シンプル思考
仕事が思うように進まず、停滞してしまうようなシーンでは、「あれもすべき」「これもすべき」と気持ちが焦り、物事を複雑に考えてしまいがちです。複雑に考えてしまうときに役立つのがシンプル思考です。「楽しいか/楽しくないか」「面白いか/面白くないか」「顧客の役に立つか/立たないか」など、あえてシンプルに考えることで大切なことが見えてきて、「今、やるべきなのはこれだな」のように、頭の中を整理することができます。
ハイパフォーマー分析
ハイパフォーマーは優れたスキルを持ち、行動力にも長けています。思考や行動パターンを分析・蓄積した人事データを活用し、人材開発に生かすことによって、効果的な人材育成の手法が精査でき、職場内にハイパフォーマーを増やすことが期待できます。
また、ハイパフォーマーのこれまでの経験や入社経路を、採用管理システムを使って管理すれば、採用活動が効果的になると共に、人材流出のリスク防止にも役立てることができます。
人事データの活用
人事データを活用するまでの情報について見ていきましょう。このような情報を収集し、データベース化しておくとよいでしょう。
思想や価値観
ハイパフォーマーは、「何のためにそれをするのか」のような、仕事に対する明確な目的意識を持っています。目的意識は、「自分にとって大切なのは○○だ」「会社にとって重要なのは○○だ」「顧客が望んでいるのは○○だ」のような思想や価値観、信念、アイデンティティに基づいています。
思想や価値観は、彼らが何かしらの行動を起こしたり、判断したりする際の価値基準にもなっています。ハイパフォーマーの思想や価値観を収集・分析することで、彼らが大切にしている価値観が分かるでしょう。それらを他の社員と共有したり、企業の価値観とを一致させたりすることで、人材育成や組織力を高めるうえで役立ちます。
また、ハイパフォーマーが持つ思想や価値観を採用活動にも効果的に生かすことができます。
発揮している知識、スキル
ハイパフォーマーの行動は、それを可能にする知識やスキルに基づいています。彼らが持つ知識やスキルをデータ化することで、他の社員の人材育成に生かすことができます。例えば、ハイパフォーマーが持っている資格や経験、業務経験を調べるのは、それほど難しくありません。新たな人材を採用する際にも、選考基準にすることができるでしょう。
行動特性
知識やスキルは把握することが容易なため、人事データとして把握している企業も多いでしょう。一方、「なぜ、彼らはそのような行動をとるのか」「どのようにして、その行動がとれるようになったのか」「ある状況で、彼らはどのような行動をとるのか」などの行動特性は。数値化、見える化することが難しく、人事データとして把握している企業は少ないのではないでしょうか。
例えば、ハイパフォーマーの多くは自発性に優れています。そのため、社員に「もっと自発的になってほしい」と考える企業は少なくありません。しかし、「自発的」だけでは、どのような行動をとればいいのか明確ではありません。
そこで、「自発的」の行動特性を具体的にしてみます。「指示されなくても自分で考え行動する」「どんな仕事でも前向きに取り組む」など、具体的にするのがポイントです。行動レベルに落とし込むことで、比較や、日々の実践に落とし込むことができ、人事データとして生かしやすくなります。
【参考】株式会社電通国際情報サービスPOSITIVE:人材育成テーマの変遷、人材の見える化の指針:第2回
まとめ
- 業績向上やチームがレベルアップする上で、ハイパフォーマーの存在は重要である
- ハイパフォーマーは行動や思考に特徴がある
- 彼らの思想や価値観、知識やスキル、行動特性を分析し、採用管理システムとして構築できれば、今後の人材育成や人材採用の際の人事データとして生かすことができる
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