2018年11月9日(金)更新
マネジリアル・グリッド理論
マネジリアル・グリッド理論とは、ブレイクとムートンによって提唱されたリーダーシップ行動論です。リーダーシップの行動スタイルを「人への関心」と「業績への関心」という2軸で捉えます。企業の人材育成の分野において、目指すべきリーダー像を視覚化し、近づくためにはどうしたら良いか考え、実践につなげるための理論として活用されています。この記事では、マネジリアル・グリッド理論の概要についてご紹介します。
目次[表示]
1. マネジリアル・グリッド理論とは
まずは、マネジリアル・グリッド理論がどのような行動理論なのかご説明します。
リーダーシップ行動論の一つである
リーダーシップには多数の研究が存在しますが、マネジリアル・グリッド理論は、PM理論やSL理論と類似したリーダーシップ行動論の1つです。
PM理論は、リーダーシップのスタイルを「職務遂行機能(Performance)」と「集団維持機能(Maintenance)」の2軸で4類型に分類し、「職務遂行機能」と「集団維持機能」がいずれも高いPM型がリーダーシップの理想像とされます。一方で、SL理論は、リーダーシップのスタイルを「仕事志向」と「人間志向」の2軸で4類型に分類し、部下の成熟度に合わせて4類型を使い分けていくことが必要としています。
PM理論やSL理論と同様に、マネジリアル・グリッドもリーダーシップのスタイルを2軸で捉え、リーダーシップ類型に分類する行動論です。マネジリアル・グリッド理論の場合は、「人への関心」と「業績への関心」の2軸を採用し、5類型に分類します。「人への関心」と「業績への関心」がいずれも高い理想型(9.9型)を目指すべきリーダーシップの理想像としています。
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2. マネジリアル・グリッド理論の具体的内容
マネジリアル・グリッド理論は、先述したように「人への関心」と「業績への関心」を軸に、リーダーシップのスタイルを分類していきます。「人への関心」は人間指向性、「業績への関心」は業績指向性と呼ばれることもあります。縦軸に「人への関心」、横軸に「業績への関心」を設定し、それぞれ9段階に分け、マネジメントグリッドと呼ばれる81のグリッド(格子)を作ります。
【出典】INVENIO LEADERSHIP INSIGHT マネジリアル・グリッド論
「人への関心」と「業績への関心」の高低について、9段階でどの程度か確認し、交わるグリッドの位置がその人のリーダーシップのスタイルとなります。81のグリッドは大きく5類型に分類され、その人のリーダーシップのスタイルの位置と照らし合わせることで、その人がどの類型に近いか確認することができます。どのようなリーダーシップの特徴を持っているか、そして理想型のリーダーシップのスタイルに近づくためには、どのように行動していけば良いかを視覚的に把握することが可能となります。
3. マネジリアル・グリッド理論に基づくリーダー型
マネジリアル・グリッド理論の5類型の詳細は、以下の通りです。それぞれの類型において、リーダー行動のパターンが考えられています。マネジリアル・グリッド理論に基づくリーダーシップのスタイルを確認する際には、まず現在の自分のリーダーシップのスタイルがどの類型に近いか確認し、その後自分の強みと弱みを考慮しながら、理想型に近づけていく方法を検討することが有効です。
人間中心型(1・9型)
人間中心型(1・9型)は、業績よりも人を重要視する人情型リーダーです。組織は和気藹々とし、仕事の足並みは揃いますが、人間関係を良好に保つことを最優先し、業績を犠牲にする可能性があります。部下に満足して働いてもらえるよう配慮しますが、仕事の計画や進捗には、積極的に関わりません。
消極型(1・1型)
消極型(1・1型)は、人と業績どちらにもほとんど関心を持たない放任型リーダーです。リーダーとしての責任を回避する可能性があります。部下に対しては、人間関係と仕事どちらにおいても必要最低限の影響しか与えません。仕事は最小の努力で済ませ、退職まで穏便に過ごしたいと考えがちです。
仕事中心型(9・1型)
仕事中心型(9・1型)は、人よりも業績を重要視する権力型リーダーです。リーダーとして能率的に仕事ができますが、職場の人間関係がぎくしゃくする可能性があります。人に関わる要素はほとんど考えず、仕事が滞ることがないよう業務効率を中心に考え、作業環境や条件を整えます。
理想型(9・9型)
理想型(9・9型)は、人と業績どちらにも最大限の関心を持つ理想型リーダーです。部下との間には尊敬と信頼の関係が生まれ、業績を上げるために高い目標を掲げて仕事に取り組むことができます。部下の意見を聞くことで自主性を尊重し、職場の人間関係を良好に維持しながら、仕事の計画や進捗管理にも積極的に関わっていきます。
中庸型(5・5型)
中庸型(5・5型)は、人と業績に対してほどほどのバランスで関心を持つ妥協型リーダーです。組織が必要十分に機能するよう、職場の人間関係と仕事に対して無難に対処していきますが、最大限に有効な対処ではない可能性があります。リーダーとして積極的に関わることはせず、現状維持を好みがちです。
4. 理想のリーダーを育成するために
マネジリアル・グリッド理論では、基本として「人への関心」と「業績への関心」を統合して高め、理想型(9.9型)を目指すべきであるとしていますが、組織によっては必ずしも理想型が目指すべきスタイルであるとは限りません。組織の状況や属するメンバーのタイプによっては、人間中心型(1・9型)や仕事中心型(9・1型)に寄ったリーダーシップが求められる場合があります。マネジリアル・グリッドを用いて、管理職がリーダーシップを開発する際には、組織においてどのようなリーダーシップが必要か事前に確認しておくことが大切です。
また、全社の管理職研修などでマネジリアル・グリッド理論を活用する際には、企業全体で理想的なリーダーがどのようなスタイルか共通の考え方の枠組みを設定しておくことが有効です。理想的なリーダーシップのスタイルがどの類型に近いか認識を合わせておくことで、企業全体で一貫した基準を持つことができます。
基準があれば、管理職のリーダーシップのスタイルに対して自己評価や他者評価を行なったときに、適しているのか否かを判断しやすくなります。評価を的確に下すことができれば、適切な行動変容へとつなげることができます。企業ごとに理想のリーダーを明確化し、リーダーシップ行動論を賢く活用することで、生産性の高い組織作りが可能となります。
5. まとめ
- マネジリアル・グリッド理論とは、ブレイクとムートンによって提唱されたリーダーシップ行動理論である。PL理論やSL理論のように、2軸を用いてリーダーシップのスタイルを分類し視覚化する。
- マネジリアル・グリッドは、縦軸に「人への関心」、横軸に「業績への関心」を設定し、それぞれの高低を9段階に評価した上で、大きく5つの類型に分類する。「人への関心」と「業績への関心」がどちらも高い9.9型が理想型とされる。
- マネジリアル・グリッド理論を企業において活用する際には、まず組織においてどのようなリーダーシップのスタイルが理想か明確化しておくことが大切である。その後管理者が自分の現在のリーダーシップのスタイルを把握し、理想に近づくためにはどうしたら良いか考え、実践していくことが求められる。
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