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2017年10月6日(金)更新

行動科学マネジメント

行動科学マネジメントとは、欧米のマネジメント手法をもとに、日本企業向けに応用された人材マネジメントのことを指し、行動を科学的に分析し、行動のみに焦点をあて社員のやる気をアップさせる技術です。 今回はこの「行動科学マネジメント」について意味や詳細、具体的な方法についてご紹介します。

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行動科学マネジメントとは?

行動科学マネジメントとは、アメリカで採用されていたマネジメント技術をもとに、日本企業のビジネス手法や日本人の価値観に合わせて応用された人材マネジメントです。

人間の行動を科学的に分析し、数値化可能な実績から導き出された理論によって生み出されました。

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行動科学マネジメントの成り立ち

行動科学マネジメントの源はアメリカにあり、もともとは「行動分析学」という学問をもとにした人材マネジメントです。「行動分析学」は人間の行動を科学的に分析する学問で、抽象的な概念や数値化できない要素を排除し、行動のみに焦点を当てます。

行動科学マネジメントも、「感情」という曖昧なものに頼らず、人が行動するためのポイントを科学的に分析し、社員のやる気やモチベーションの底上げにつなげるのです。

その効果は業種や規模に関わらず発揮され、ビジネスの場だけでなく、教育現場やセルフマネジメントにおいても実証されています。

一般的なマネジメント手法との違い

一般的なマネジメント手法において、重視されるのは結果です。一方、行動科学マネジメントにおいての結果は、「行動の積み重ね」と考えられています。

結果を変えるためには、そのプロセスである行動を変える必要があると考えるのです。

その行動を具体的に分析することで、無理なく目標を達成させるこの手法は、人間の行動原理に基づいた効率的なやり方と言えるでしょう。

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行動科学マネジメントの特徴

行動科学マネジメントのポイントはその再現性にあります。科学をもとにした行動科学マネジメントは、能力や意志によることなく、誰が行っても同じ結果を得られるのです。ここでは、その特徴について詳しくご紹介します。

実践的な方法

行動科学マネジメントは日本の企業現場に合わせて応用された実践的な技術です。

個々の性格や精神力、能力、時間に影響されることなく、誰もが同じ効果を得ることができます。

心身ともに負担がかかることなく、金銭的にも少ない負荷で結果を手に入れることができるのです。「科学」という言葉が示す通り、明確な基準を持つ方法をもとに客観的な効果が得られる信頼性の高い方法です。

短期的に効果が生まれる

行動科学マネジメントでは、問題解決のための具体的なステップが明らかにされています。

その効果も誰から見ても客観的に測定することができ、成果をすぐに得ることができます。

特別な勉強が不要

科学的に行動に焦点を当てるため、精神的な努力や、特別な勉強は必要ありません。

誰もがシンプルに取り組むことができるのです。

パフォーマンスの最大化に寄与する

規模や人数に関わらず効果を得ることができます。

仕事の結果ではなく、そのプロセスである「行動」に注目することで、一部の「できる社員」だけではなく、大部分の「普通の社員」のパフォーマンスを上げ、組織の総力を高めることが可能です。

業務へのロイヤリティが向上する

努力や上司からの強制を必要とせず、それぞれの自発的な行動を促すため、仕事自体を楽しめるようになります。

苦痛や負担を感じさせることなく、持続的な業績アップにつながるのです。

行動の3要素(ABCモデル)と人材育成への応用

人が行動する要素は、3つに分けることができます。

例えば、部屋が暗いと感じた時、電気をつけると明るくなります。この時の「部屋が暗い」という状況をもとに人は行動を起こし、その行動の結果を得るのです。

行動科学マネジメントでは、この3要素を「ABCモデル」と呼びます。

A=Antecedent(先行条件)

B=Behavior(行動)

C=Consequence(結果)

先行条件とは、行動を起こすきっかけとなる環境や原因のことを指し、その条件があるからこそ人は行動を起こし、その行動により結果が引き起こされます。

一般的なマネジメント手法においては、このA(先行条件)が注目され、動機づけや目標設定が重要視されますが、行動科学マネジメントにおいてはC(結果)が重要と考えられ、人材育成へ応用されているのです。

行動科学マネジメントにおける2本柱

行動科学マネジメントには基本となる、2つの柱があります。

1.結果に直結する「望ましい行動」を見つけ出す

柱の1つ目は結果に直結する「望ましい行動」を見つけ出すことです。

会社という組織の中では、全ての人間がA(先行条件)によって、B(行動)をしています。あらゆるC(結果)は行動から生み出されます。そして、この一人ひとりの積み重ねる結果が、会社の活動に繋がるのです。つまり、個人個人が会社の目的に適った「望ましい行動」をとり続ければ、企業としても良い結果が生まれるということになります。

上司としての役割は、部下にこの「望ましい行動」をとってもらうことです。とはいえ、この「望ましい行動」とは全ての人に共通するものではなく、業種や役職、職種によって異なります。そのため、上司はまず、部下にとっての「望ましい行動」を見つけ出す必要があります。

2.「望ましい行動」を取ってくれるように促す

2つ目の柱は、見つけ出した「望ましい行動」を、部下が取ってくれるように促すことです。

これは「望ましい行動」を取るように指示することとはちがいます。相手が自発的に行動をとるような仕組みをつくることが大切です。

具体例

ある企業の営業部では、課ごとに月次の目標が定められています。

A課長は毎日、「とにかく売上を上げろ」と部下に指示をし、成績の伸びない部下を急かしては「なぜ売上が伸びないんだ」と詰め寄ります。部下たちはいつも憂鬱な気持ちで営業に出かけますが、毎月、思ったような成果を上げることができません。

一方B課長は、部下が成果を上げなかった時には特に責めることはせず、反対に成功した時には大げさなくらいにほめています。「おめでとう」と声をかけ、「どんなお客様だったの?話の内容は?」などと売上の内容について、詳しく話を聞いています。こうすることで部下とのコミュニケーションが深まり、課長がほめて認めてくれるため、部下たちのモチベーションはどんどんとアップします。

積極的に営業をかけ、商品の勉強をするなど、日々の業務に工夫を重ねた結果、B課の毎月の成績はうなぎ上りです。

解説

この例を行動科学マネジメントの「ABCモデル」で説明します。

A課長は「先行条件」によってマネジメントを行おうとし、B課長は「結果」によるマネジメントを行っていると言えます。先行条件とは、行動の理由となるきっかけのことを指します。ここではA課長の「売上を上げろ」という言葉のことです。A課長の部下の行動は、この「売上を上げろ」という言葉のために営業を行っています。そしてその結果、売上が伸びたとしてもほめられることも認められることもありません。

一方、B課長が重視したのは行動の後の結果です。B課長が成果をほめるという結果を作り出したため、部下たちは「行動したらいいことがある」と考え、繰り返し「望ましい行動」を行ったのです。

このように、行動科学マネジメントでは相手が「望ましい行動」を自発的にとるよう、結果を重視したマネジメントを行うことがポイントになります。

望む行動を取ってくれない場合の要因

部下が望む行動をとってくれない要因は2つです。

仕事のやり方がわからない

1つ目は仕事のやり方自体がわかっていない場合です。仕事のやり方を正しく教え、理解してもらう必要があります。

やり方はわかっているが継続の方法がわからない

2つ目はやり方はわかっていても継続の仕方を理解していない場合です。正しい行動を、正しく習慣化してもらわなければいけません。

にいらっしゃいませと声をかける」「商品の陳列を正す」など誰もが行っている行動の他に、「お客様におすすめの商品を提案する」など、売上のよい従業員にだけ見られる行動がピンポイント行動です。

こうした行動は特に重要な行動として、特に慎重にチェックをしていき、達成できた場合にはきちんと評価しましょう。

継続の仕方がわからないケースへの対応

次に、仕事のやり方はわかっているのに、継続の仕方がわからないケースへの対応を説明します。

行動自体にメリットを与えリインフォース(強化)をはかる

「望ましい行動」や仕事のやり方はわかっているのに、その継続ができない場合には、行動自体にメリットを与え、その行動の強化をはかります。

この強化は行動科学マネジメントでは「リインフォース」と呼び、結果にではなく行動自体に焦点を当てることが大切です。

もちろん結果についても評価は行いますが、それ以前に、「行動したかどうか」で判断するのです。

こうすることで、結果を残した人だけでなく、成果を出せないでいる社員にもリインフォースすることができます。

相手のニーズに即したメリットを提供

行動に提供するメリットは相手のニーズに即したものでなければなりません。

そこで今重要視されているのは、非金銭的な報酬です。「報酬」と言うと、まず金銭的なものが思い浮かびますが、それだけではなく、金銭では得られない「報われた」という思いを報酬として与えるという考え方です。

「この会社で働いてよかった」「この人と仕事をしてきてよかった」と社員が心から思えるような組織をつくっていけるかどうかが重要になってきます。

こうした非金銭的な報酬を、相手にとって本当にメリットになるかたちで提供していくことが、リーダーの役割と言えるでしょう。

提供するリインフォースが豪華なものでなくても、本人にとってそれが本当にメリットになるのであれば、人はその行動をとり続けるのです。

望ましい行動を取った瞬間に行う

「リインフォース」にはタイミングも重要です。望ましい行動をとった時に、すぐに行うことがポイントです。

多くの職場で、年度単位や月単位で「〇〇賞」といった表彰を行っていますが、こうした「後で評価する」ことは、行動を強化するにはあまり効果がないと考えられています。

時間をおかず、行動が発生してすぐにメリットを与えることで、人はその行動を繰り返すようになるのです。

間違った行動に対しての「ペナルティ」は却って逆効果

望ましい行動を強化する一方、間違った行動を減らすため、つい「罰」や「ペナルティ」を考えてしまいがちですが、これは逆効果。

短期間では確かに効果は生まれますが、このようなマネジメントは相手の精神的負担が大きくなり、組織や上司への反発や拒絶の感情を強めてしまうことになります。

行動マネジメントを行う際のポイント

行動マネジメントを行う際の技術をご紹介します。人や場面に応じて取り入れてみてください。

計測を持続的に行う

行動科学マネジメントでは、客観的な基準として計測を重視します。

望ましい行動の回数を計測し続けることで、自分たちの行動が会社の売上に直結していることを、部下たちに客観的に把握させることができます。

また、計測を持続的に行うことで、リーダーもそれぞれの部下の小さな行動の価値を再確認することができるのです。

グラフでほめる

計測した行動の回数を、グラフに示すのもよい方法です。

行動が蓄積されることで右肩上がりになるようなグラフを作成することで、本人に自信を与え、この行動を継続していこうという気持ちに導きます。

数字だけを並べるよりも、グラフにして視覚的に明確に表現することで、本人のモチベーションをアップさせることができるのです。

メールで報告させる

部下の行動を評価する際には、「すぐに」ということが非常に大切です。

しかし、部下との時間がなかなかとれない時には、なかなか難しい場合もあります。

そうした時にはメールで業務報告をさせ、その際に短くてもかまわないのでポジティブなコメントを返しましょう。

上司への信頼感は、こうした小さな評価の積み重ねで培われるのです。

第3者を通じてほめる

上司が直接部下をほめることが大前提ですが、第3者を通じてほめることも時には有効です。

たとえば、他の部署の部長から仕事ぶりをほめられたりすると、「この調子でがんばろう!」と、行動の継続への強い動機づけになります。

場を設けてほめる

ほめることが職場に浸透し、部下たちの行動も定着してくると、次第にその「ほめる」ことが定型化してしまい効果が薄れてしまうことがあります。

そんな時にはいつもとちがう場を設けてみるのも効果的です。朝礼で取り上げてみたり、ほめるためのミーティングを設定してみてもいいでしょう。

ここでも、結果や失敗には触れず、行動に対する評価だけを行うことが大切です。

カードを活用する

行動科学マネジメントには「ポイントカードを活用するやり方もあります。

買い物をするたびにポイントがもらえるように、「望ましい行動」をとるとポイントがもらえるというカードを活用するのです。

子どもだましのように思えるかもしれませんが、実際に行ってみると効果は高く、社員にも高評価。

そして、こうしたツールを取り入れることで、ほめることが苦手な上司でも、タイミングや言葉が見つかりやすく、次第にほめ上手になっていくのです。

4対1の法則で叱る

場合によっては、相手をどうしても叱らなければいけないケースもあります。

行動科学マネジメントでは「4対1の法則」というものがあり、これに則って𠮟ることがポイントになります。「4対1の法則」とは4つほめてから1つ叱るというものです。

どんな些細なことでもかまわないので、ほめる、認める、言葉をかけるといったことを4つ行ってから、叱るということを意識してください。

オープンにし、自分もほめられる

気をつけなければいけないのが、行動をとった人全員をオープンにほめることです。

誰も見ていない場所でほめたり、カードを渡したりするのではなく、みんなが見ている場所で行うことで、見ていた他の人も同じように行動をとりほめられるというサイクルを生み出せます。

同時に、上司がほめられる場を見せることもポイントです。

部下が後に続きたくなるようなリーダー像を作り出しましょう。

参考書籍

最期に、行動科学マネジメントを学ぶ上での参考書籍をご紹介します。

短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント

著者は行動科学マネジメントの第一人者である石田淳氏。

結果ではなく行動に対してポジティブな評価を与えることで、「普通の人」や「できない人」が、「できる人」の行動を継続し、「できる人」に変わるという行動科学マネジメントの理論と実践を学ぶことができます。

【参考】短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント

まとめ

  • 行動科学マネジメントは「行動分析学」をもとに、日本企業向けにアレンジされたマネジメント手法。
  • 一般的なマネジメント手法と異なり、「結果」ではなく「行動」に焦点をあて、そこにポジティブな評価を行うことでその「行動」の継続を促す。
  • 評価は金銭的なものだけではなく、非金銭的にも提供することが大切。「ここで働いていてよかった」という気持ちを与えられることとは何かを上司は考える必要がある。

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