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2018年10月20日(土)更新

ポータブルスキル

ポータブルスキルは、性格や人柄など、資格や経験だけでは図り切れない能力を評価するための基準です。まずはポータブルスキルの定義や分類ごとの内容、採用活動や人事考課などで活用する際のメリットについて説明をしていきます。また、ポータブルスキルを高めるための研修の内容や、実際に研修システムを設定している企業の情報も提供します。

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ポータブルスキルとは?

ポータブルスキルとは、特定の業種・職種・時代背景にとらわれない能力のことです。たとえば、真面目さや積極性、几帳面さなど、その人のことを表す性格や人柄などの評価をいいます。資格などのように、明確な基準がないことが特徴です。

なお、人物を評価する際に基準となるスキルには、前述のポータブルスキルの他、スタンス・テクニカルスキルが挙げられます。このポータブルスキル、スタンス、テクニカルを下図のようにピラミッド状で表すと、一番底辺の部分がスタンス、真ん中の部分がポータブルスキル、頂点となる部分がテクニカルスキルとなります。

スタンスとは

スタンスとは、その人が物事に対峙する際に取る立場や姿勢などのことです。ビジネススキルにおけるスタンスには、「自身がキャリアを築く際に抱く感覚や意識」という意味合いが含まれています。

なお、仕事に対する基礎的な能力を図る基準となる「ビジネスポテンシャル」や、仕事のやる気を起こさせる原動力となる力である「モチベーション」を指す場合もあります。

テクニカルスキルとは

テクニカルスキルとは、特定の業界や職種で必要とされる能力のことです。

専門性が高い仕事を進めるにあたり、必要となる又は求められる知識や資格のことで、テクニカルスキルを有する者は現場の最前線で活躍をすることができます。また、能力の詳細を履歴書に記載することで、就職や転職の際に自身の強みとしてアピールをすることが可能となります。

ポータブルスキルをとりまく背景

入社から定年まで一つの会社で勤め上げる、つまり終身雇用が当たり前とされていたこれまでの日本では、社員が入社後に会社の業種に即した内容で経験を積み、地位や給料を上げていきました。

しかし、時代が進むにつれて転職が珍しいものではなくなり、雇用の流動はいまだ進行し続けています。また、IT化の浸透にあわせてグローバル化が加速し、国内外の企業との競争に勝ち抜かなければならず、特定の能力だけでは対応し切れない状況も増加しました。

なぜ必要とされるのか

このような傾向が強まるにつれ、各企業では特定の業種にこだわらず幅広く活躍できる人材を求めることとなり、ポータブルスキルを重要視した採用活動や人事考課を取り入れるケースが増加しました。

決断力や判断力、場に沿った行動が取れる社員ならば、技術的なスキルは経験を積むにつれ身につけることができます。また、ポータブルスキルを持つ社員の場合、能力を発揮できる仕事に制限がなく、どのような分野でも活躍ができる可能性が高いため、会社の状況に合わせて雇用をすることが可能になるというメリットがあります。

ポータブルスキルの能力別分類とは

ポータブルスキルがどのような能力を指すかということについて、簡潔に言い現わすことはできません。能力の種類に応じて、「対人力」、「対課題力」、「対自分力」の3つに分類されます。

対人力

対人力とは、その名の通り相手とコミュニケーションを取る際に求められる能力のことです。この能力を把握することで、その社員が組織の中でどのような立ち位置を取りながら職務を遂行していくかが分かります。

なお、対人力を細分化すると、「主張力」「否定力」「説得力」「統率力」「傾聴力」「受容力」「支援力」「協調力」の8種類に分けることができます。

これらをグループ別に分類すると、「主張力」「否定力」「説得力」「統率力」が強い《主張や説得で推し進める》グループ、「傾聴力」「受容力」「支援力」「協調力」が強い《相手の意見に合わせる》グループの2種類に分類されます。前者・後者のグループは正反対の意味合いを持ち、双方をあわせもつ人はほぼ見られないという特徴があります。

《主張や説得で推し進める》

自分の見解をためらわずに伝えることができ、それを納得させるだけの行動力を持つタイプです。

自身の思考を外部に発信できる「主張力」、相手の意見に指摘をする「否定力」、相手を説得し、納得をさせることができる「説得力」、リーダーシップを発揮し的確な指示ができる「統率力」を持つ人が当てはまります。このようなタイプの人は相手の考えに対する意見や批判をはっきりと伝えることが可能で、組織をまとめていく傾向があります。

《相手の意見に合わせる》

相手の意見や希望をじっくりと聞き、受け入れることができるタイプです。

相手の話に耳を傾けることができる「傾聴力」、相手の意見を受け入れる「受容力」、相手に対して配慮ができる「支援力」、集団での行動を取ることができる「協調力」を持つ人が当てはまります。場の空気を読むことに長けており、手助けやサポートが進んでできる傾向があります。

対課題力

対課題力とは、その名の通り課題解決力のことです。仕事をするにあたって生じるさまざまな問題を解決するための対応能力であり、問題を解決するまでの時間や仕上がった仕事の出来栄えが異なることに特徴があります。

なお、対課題力を細分化すると、「試行力」「変革力」「機動力」「発想力」「計画力」「推進力」「確動力」「分析力」の8種類に分けることができます。

これらをグループ別に分類すると、主に「試行力」「変革力」「機動力」「発想力」が強い《クリエイティブ思考タイプ》グループ、「計画力」「推進力」「確動力」「分析力」が強い《論理的な思考タイプ》グループの2種類に分類されます。こちらも対人力の場合と同じく、前者・後者のグループは正反対の意味合いを持つという特徴があります。

《クリエイティブ思考タイプ》

いわゆる、右脳の働きが強いとされているタイプです。自身で課題を見つけ、解決までの道のりを進んでいくことが可能で、臨機応変な対応を得意とします。また、新しい考え方や物事に敏感で、取り入れることができるという長所を持ち合わせています。

こちらには前述の、少ない材料の中で判断することができる「試行力」、これまでの常識にとらわれない考えを持つ「変革力」、状況に沿って迅速に動ける「機動力」、新規のアイデアを企画できる「発想力」を持つ人が当てはまります。

《論理的な思考タイプ》

いわゆる、左脳の働きが強いとされているタイプです。一つの物事を深く掘り下げ、じっくりと推考する傾向があります。点在した情報をまとめ、手順を踏みながら作業を進めることが可能で、一つひとつを確実に実行する能力に長けています。

こちらは、的確に順序立てた計画を立てる「計画力」、目的に向けて邁進することができる「推進力」、正確性の高い作業ができる「確動力」、物事に対して深く掘り下げた思考をすることができる「分析力」を持つ人が当てはまります。

対自分力

対自分力とは、その社員自身が取る行動や抱く考え方などをコントロールする際に発揮する傾向のことです。この傾向を把握することで、社員の性質を見抜くことができ、長所を生かす職務に就かせる方法や、弱点の克服を目的とした人材配置に役立てることが可能となります。

なお、対自分力を細分化すると、「決断力」「曖昧力」「瞬発力」「冒険力」「忍耐力」「規律力」「持続力」「慎重力」の8種類に分けることができます。

これらをグループ別に分類すると、主に「決断力」「曖昧力」「瞬発力」「冒険力」が強い《即決派》グループ、「忍耐力」「規律力」「持続力」「慎重力」が強い《慎重派》グループの2種類に分類されます。こちらも対人力、対課題力の場合と同じく、前者・後者のグループは正反対の意味合いを持ちます。

《即決派》

自分の意見を発信することが得意で、判断までの時間が短いタイプです。一度決めたことを曲げないという意志の強さを持ち、リスクを恐れず進んでいくことができます。また、不安要素も把握した上で、集中して職務を遂行する能力も持ち合わせています。

こちらには、優れた洞察力を持ち迅速な決定ができる「決断力」、不明瞭な状況を受け入れる「曖昧力」、短い期間で集中できる「瞬発力」、リスクの高い物事にチャレンジする「冒険力」を持つ人が当てはまります。

《慎重派》

じっくりと検討をし、時間をかけて判断を行うタイプです。秩序を重んじる傾向があり、確実性の高い方法で仕事を行います。また、辛い状況に陥っても耐えうる能力があり、継続して物事を進めることを可能としています。

こちらには、辛い状況に耐えうる「忍耐力」、ルールに沿った行動ができる「規律力」、長時間集中し続けることができる「持続力」、落ち着いて的確な行動が取れる「慎重力」を持つ人が当てはまります。

ポータブルスキル活用によるメリットとは

ポータブルスキルは、資格など目に見えない人の長所を見出すための基準であるため、これを磨くことで社員自身がレベルアップを図ることができます。その一方で、ポータブルスキルを適切に活用することで、企業にとってもさまざまなメリットが生まれます。ここからは、ポータブルスキルを活用することでより良い効果が生じる2つの企業活動について見ていきましょう。

採用活動での活用メリット

まず挙げられるのが、将来の会社を支える人材を確保する場である採用活動です。会社の将来を支える優秀な人財を確保するにおいて、ポータブルスキルは非常に有効なツールとなります。

通常の採用活動の場合

ここで、まずは通常行われることの多い採用活動の流れについて見ておきましょう。

初めに、選考者となる企業側は応募する求職者の履歴書の内容から書類選考を行い、選考をクリアした者に対して面接や選考試験を行う方法をとります。書類選考の際には、履歴書に記載された職歴や経験の内容、資格を確認することで、自社にマッチした人材かどうかを検討することになります。ここでいう職歴や経験、資格は、前述の「テクニカルスキル」に相当する内容です。つまり、通常の採用活動では、テクニカルスキルを基準とした選考が行われている、といえるでしょう。

経験豊富なら必ず活躍できるのか

前述のように、企業が掲げた求人募集に対して応募してきた者の選考にあたって重視する点の一つに、テクニカルスキル、「経験の豊富さ」が挙げられます。これは、これまでに同業他社で仕事をしていた者ならば、入社後に会社の仕事に慣れるまでの期間が短くなり、即戦力につながると考えられるためです。また、営業職や事務職などを採用する場合、以前に営業や事務の仕事を経験した応募者を優先的に選考対象とする方法も決して間違いではありません。

では、同業種や同職種での経験があれば、必ず転職先で活躍できるのでしょうか。

ポータブルスキルの重要性

ここで重要となるのが、ポータブルスキルの内容です。経験や資格がなくても、会社のビジョンに沿った考えを持ち、職務遂行能力が高い社員であれば、成長の度合いも早く、戦力となる可能性が高いはずです。一方、多くの経験を積んでいたとしても、決断力や判断力に欠ける社員の場合、成長に時間がかかるケースがみられます。

つまり、ポータブルスキルを基準とした採用活動を行うことで、経験値や資格の有無を基準とした場合と比べ、より効果のある選考をすることができる可能性があるといえるでしょう。

選考時に評価するべきこと

経験や資格は、応募者の能力を判断するために有効な基準です。この基準にポータブルスキルを加えた場合、性格や人柄、仕事の進め方、仲間との関わり方など、特定の業種・職種・時代背景にとらわれない能力も選考の基準に含むことになります。

したがって、あらかじめ採用活動を行う前に理想とする経験値や資格に加え、理想とする人物像をシミュレーションしておくことで、会社の求める人材を獲得することが可能となり、採用のミスマッチを防ぐことができるのです。

人事考課での活用メリット

人事考課は、半年から一年のスパンであらかじめ定めた基準をもとに社員を査定することです。ここで割り出された結果を昇給や昇進度合いに反映させ、または人材配置の際に活用させることで、社員にやる気を出させ、企業活動をスムーズに進める効果があります。

この人事考課の査定基準にポータブルスキルを加えることで、実績や経験の内容だけでは把握することのできない人柄や能力を見極めることが可能となり、適材適所の人材配置へとつながるというメリットがあります。

ポータブルスキルを磨く研修とは

経験や資格のようなテクニカルスキルのように、ポータブルスキルは磨くことで「人間力」つまり社員自身の成長へつながり、ひいては会社の生産性アップを導く効果があります。ポータブルスキルを高める方法には、キャリアコンサルタントやキャリアアドバイザーなどの人材に関する専門家の力を借りる方法や、国や一般企業が行う研修を受ける方法などが挙げられます。

上記の方法の中の一つである「研修」の内容について、これから紹介をしていきましょう。

厚生労働省による研修システム

厚生労働省では、専門知識や経験以外の、業種や職種にこだわらないスキルをアップさせるための研修として、平成26年に「“ポータブルスキル”活用研修」を実施しました。この研修では、仕事における問題提起や計画・実行の方法や社内外における的確なコミュニケーション術、部下を指導するためのノウハウなどを伝授しています。

もともとは、ある程度の社会人経験を積んだ40~50代の転職希望者を対象とした研修ですが、世代を問わずすべての社員のスキルアップにつながるよう、厚生労働省では参加者向け・講義を行う者向けのテキストをホームページで公開しています。同じホームページ内に、テキストとあわせて活用することができるスライドや参考資料、参考動画が掲載されているので、社員のポータブルスキルを高めることを検討する会社には有効な活用ツールになるはずです。

【参考】厚生労働省ホームページ:ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法 社内研修等で活用したい方へ(“ポータブルスキル”活用研修 講義者用テキスト)

他社の事例

ポータブルスキルにまつわる研修を実施しているのは、国だけではありません。一般企業でも会社の実態に沿った内容で研修の実施サービスを提供しているケースがあります。

■一般社団法人 人材サービス産業協議会

人材サービス産業協議会は、企業の採用や人材育成に特化した団体で、ポータブルスキルの重要性を提言しています。そのため、厚生労働省からの委託により、前述の「“ポータブルスキル”活用研修」の実施に携わりました。

公式ホームページではポータブルスキルのセルフチェックシステムを公開しており、チェック結果に沿った職業を紹介するサービスを行っています。ポータブルスキルについての詳細も記載されているため、参考にする方法も有効です。

【参考】一般社団法人 人材サービス産業協議会ホームページ:ポータブルスキル セルフチェック

■株式会社インソース

講師派遣型研修事業などに携わる株式会社インソースでは、社員のスキルアップを図る研修における教育カリキュラム内で、ポータブルスキルの重要性を訴えています。

会社で働く社員向けの研修から、指導者やリーダークラスを対象とした研修、コーチングを実施する者向けの研修など、さまざまな対象に向けた研修サービスを実施しています。必要に応じて活用することで、社員のポータブルスキル向上につなげることができるでしょう。

【参考】株式会社インソースホームページ:階層別研修一覧

■株式会社リクルートマネジメントソリューソンズ

人材開発や組織開発事業などに携わる株式会社リクルートマネジメントソリューソンズでは、新卒社員や経験の浅い若手社員を優秀な戦力とするためのキーワードとして、ポータブルスキルの向上を挙げています。

複数の研修コースを設定しており、それぞれ新入社員から部長や管理職などの経営者など、幅広い世代向けにコースが組まれていることに特徴があります。自社が伸ばしていきたい部分で研修を取り入れ、ポータブルスキルを高める方法も効果的となります。

【参考】株式会社リクルートマネジメントソリューソンズホームページ:入社後すぐに役立つスキルの習得

まとめ

  • ポータブルスキルとは、特定の業種・職種・時代背景にとらわれない性格や人柄などから行われる人物評価基準の一つで、他の基準にはスタンス、テクニカルスキルがある。
  • ポータブルスキルは、人と接する際に求められる対人力、問題解決の対応時に求められる対課題力、思考のコントロール能力である対自分力の3種類に分類される。
  • ポータブルスキルは、企業の採用活動や人事考課を実施する際に活用することで、より有効な結果が生まれる。また、ポータブルスキルを磨くための研修も注目されている。

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