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ストーリーテリング

2020年2月19日(水)更新

近年ビジネスシーンでの活用が注目されている「ストーリーテリング」。事実をただ提示するのではなく、「物語」として伝えることで、相手により強い印象を与えることができる手法です。特にプレゼンテーションなどの場面において効果を発揮します。今回は、その本来の意味から、得られる効果、ストーリーテリングが有効な場面、タイプ別のプレゼンテーションでの使い方、具体例まで、確認していきましょう。

ストーリーテリングの意味とは

ストーリーテリングとは、本来文字通り「物語を語る」ことを意味する言葉で、「昔話」や「童話」などがそれに当たります。具体的なキャラクターたちが、仲間とともに経験する出来事を紡いだ物語は、時代を超えて受け継がれています。

そして近年、ビジネスシーンにおいてもストーリーテリングの重要性が注目されています。

ビジネスにおけるストーリーテリング

ビジネスにおけるストーリーテリングとは、事実をただ提示するのではなく、「物語」として語ることで、相手により強い印象を与えることができる手法を指します。

事実をストーリーとして共有することで、メッセージの共感度が高まると考えられています。

例えばプレゼンテーションの場面で、単なるデータと事実の積み重ねから主張を述べていくだけでなく、具体的なエピソードなどを盛り込み、ストーリー性をもたせて発表することが「ストーリーテリング」の手法です。

また近年では、Webサイトの構成や、企業の販売戦略、採用戦略といったマーケティングの文脈でもストーリーテリングが注目されています。

企業ビジョンやミッションを語る上でも、ストーリーテリングは非常に重要な役割を持ちます。

リーダーシップを発揮するためにも、身につけておきたいスキルのひとつです。

【関連】リーダーシップとは?意味や定義、種類、必要なスキルなど徹底解説/BizHint

スティーブ・ジョブズのストーリーテリング型スピーチ

力のあるストーリーテリング型のスピーチは、直接その企業に属さない人々を含め、世界中に広がっていくこともあります。

アップル社の共同設立者のひとり、iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズ氏のスピーチは、発表から10年以上たった今でも、人々に影響を与え続けています。

【参考】「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳 米スタンフォード大卒業式(2005年6月)にて/日本経済新聞電子版

ストーリーテリングの効果

ストーリーテリングには、具体的にどのような効果があるのでしょうか。

イメージの伝達がしやすくなる

第1に、具体的な出来事やエピソードはイメージを喚起しやすいことが挙げられます。ビジネスシーンでは、数字とファクトが最重視されることが多くありますが、それだけで充分なメッセージを伝えることは難しいと言えるでしょう。

そのプレゼンテーションに関して、今後どんなことが起きると考えられるのかをストーリーとして提示することで、実際のビジネスシーンでの価値をイメージしやすくなります。

共感度が高まる

第2に、共感度が増します。具体例を挙げることで、聴いている側は無意識にその情報を「自分ごと」として捉えます。つまりそれだけ、身近な話題として、話し手の情報を受け取ることになるのです。

記憶に残りやすい

第3に、前述のような効果を受け聴き手の記憶に残りやすくなります。人間が数字を覚えられる期間と比べ、物語はずっと長く覚えられると言われています。

物語は、聞き手が物語のどこにフォーカスしたかにより、解釈が異なってしまうこともありえますが、その分、自分なりの解釈であっても印象が強く残ることになります。つまり、数字と異なり、多少あいまいであってもそのメッセージは記憶され続けるのです。

ストーリーテリングが有効な場面

とは言え、ストーリーテリングは万能の武器とまでは言えません。どんなツールであっても、使う場面を選ぶことが重要です。

ストーリーテリングという手法が、特に有効な場面について確認していきましょう。

数値を印象づけたい場面

例えば、新卒採用の企業説明会の場で、「自社の離職率が前年の20%から2%まで低下」したという事実をアピールしたとします。素晴らしい成果ですが、この数字だけでは就職活動中の学生にとって響かないでしょう。

当事者である企業側は、単なる数字上の変化だけではなく、必ずその変化を起こしたストーリーを持っているはずです。

このストーリーを語る場合、まず前提知識を共有するために、平均的な業界の離職率を押さえておく必要があります。それと比べて自社の離職率が高いという問題意識を持ったきっかけや、その時に多かった退職理由を踏まえ、対策を取るに至る経緯を丁寧に話すことで、学生たちは、「この後何が起こるのか」というドラマを期待することになります。

もちろん、結果がハッピーエンドであれば、学生は「この企業は従業員満足度を高める努力をしている」というメッセージを受け取るはずです。

なお、このケースについては、記事の末尾で「具体例」として詳しくご紹介します。

モチベーションを挙げたい場面

従業員のモチベーションを挙げるために、企業は様々な努力をします。例えば、インセンティブや、成果の上がらない従業員を降格するケースもあるでしょう。しかしながら、それらの効果は短期間で薄れていき、やがて無くなってしまうこともよく知られていることです。

ストーリーテリングを用いた施策としては、いわゆるロールモデルとなる社員を社内で紹介するような企画が挙げられます。人事制度や昇格の仕組みの説明も重要ですが、その仕組みの中で、実在する社員がどのようなやりがいを感じ、どのような自己実現を図っているのか、具体的な体験談を伝えることはさらに重要です。

同じ組織に属する仲間が、実際に活躍しているエピソードは、その他の社員のモチベーションを格段に上げるはずです。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介/BizHint

情報量が多く複雑な場面

例えば企業の業績説明の場面においては、資料として実際の数年の売上高や、純利益などは必須です。しかし、その数字を評価するための指標として、競合の業績や、業界を取り巻くさまざまな要因分析も必要となります。それらの要因は、お互いに複雑な関係性のもとに存在しているので、一度聞いて理解することは難しいでしょう。この複雑な内容を分かりやすく解説する場合にも、ストーリーテリングが有効です。

例えば、「数年前は競合に劣ることの多かった業績が、徐々に安定的になった」というような内容の場合。全体の流れをつかんでもらうには、日本人なら誰もが知っている、「ウサギとカメの競争」の話になぞらえるような手法は有効ではないでしょうか。聴き手にとっては、様々な数字の情報から分析するよりも、その会社の業績の経緯をイメージしやすくなるはずです。

ストーリーテリングを用いたプレゼンの作り方

実際のプレゼンテーションの場で、ストーリーテリングはどのように活かされるのか、プレゼンのタイプ別に確認してみましょう。

プレゼンテーションにおける 2つのタイプ

本記事では、以下の2つにプレゼンのタイプをわけて解説します。

  • 説得型
  • 情報提供型

この2つのタイプ分けは、時には1回のプレゼンテーションの中で混在することもありうるでしょう。伝えたい内容により、それぞれのポイントを押さえて活用するのがおすすめです。

2つのタイプに共通するポイント

それぞれの特徴と作成ポイントを確認する前に、ストーリーテリングを用いたプレゼンに共通する注意事項について触れておきます。

  1. ストーリー内にギャップを作り、印象づける。結末の成功や達成を際立たせるために、途中段階での失敗や挫折を織り込む。
  2. リアリティのあるストーリーにする。当事者が語ることが望ましい。
  3. 聴き手のレベルや、立場などを考慮して、プレゼンのタイプを選び、内容にも変化をつける。
  4. アピールすることにこだわりすぎないようにする。肝心の伝えたい内容に齟齬が出ないよう注意する。

では、それぞれのタイプごとの特徴と作成ポイントを確認していきます。

ストーリーテリングを用いたプレゼン【説得型】

まずは、説得型のプレゼンの場合を考えてみましょう。

説得型プレゼンの特徴

説得型プレゼンは、企業が自社商品や企画を売り込もうとする場面などに多く用いられます。人事の領域で考えた場合、面接やディスカッションはまさにそのような機会ですし、企業説明であっても、もちろん他社と比べて自社を選ばせるためには必要な要素であることは言うまでもありません。

作成ポイント

説得型プレゼンの作成ポイントを挙げておきます。

アピールしたいポイントを絞る

自社のアピールポイントはできるだけ多く伝えたいところですが、人間が覚えられる情報量には限りがあります。結果、最も伝えたい事がぼやけてしまうことにもなりかねません。他社と比べて、どこを訴求していくのか、しっかりとポイントを絞る必要があります。

パワーワードを入れる

ストーリーを伝えるだけではなく、印象的なキャッチフレーズを使うことは、プレゼンの効果を高めます。これは15秒間で伝えるテレビのコマーシャルを見れば明らかですが、短時間での印象では、数字やファクトよりも、印象的なストーリーやキャッチフレーズのほうが強く残ります

聴き手が共感しやすいストーリーを設定する

「説得型」のプレゼンの場合、どうしても「アピールしたい」という情熱が先走りがちです。結果として、会社側の都合で押しつけがましいメッセージを送ってしまうことになり、逆効果にもなりかねません。

ストーリーは、誰にでも「自分ごと」として感じられるような設定が必要です。特に、社会人経験のない学生に向けてアピールするなどの場合には、よく考慮しておく必要があるでしょう。

ストーリーテリングを用いたプレゼン【情報提供型】

次に「情報提供型」のプレゼンについて確認しておきます。

情報提供型プレゼンの特徴

情報提供型の目的は、直接的な利害関係のない聴き手に対し、客観的な情報を提示することです。

セミナーや研修などがいい例でしょう。例えば、人事に関する局面では、まだ採用活動に入る前の企業説明会や、社内向けの人事制度についての説明会などが該当します。

作成ポイント

このタイプでは、以下の点を意識しましょう。

具体的なアクションを例示する

情報提供型プレゼンにおいては、何よりも事項の説明が重視されますが、結果として聴き手が「何をすればいいのか」が解らずに終わっては意味がありません

例えば企業説明会において自社についての情報を提供する場合、その企業で働いたことで「どんな社会人生活が送れるか」を例示すべきです。また、既存社員に会社の制度などについて説明する場合には、具体的にどんな行動が人事制度上評価されるのかを提示するなどが挙げられます。

ストーリーの根拠となる情報・データは過不足なく提示する

根拠が乏しいデータに基づいたストーリーは、いくら上手く作ってもほころびが見えてしまいます。情報提供よりもストーリーを重視しすぎないようにすべきです。ストーリーの根拠となる数字や客観的情報については、多すぎても少なすぎても、そのストーリーの信ぴょう性を落としてしまいます。適度に正しい情報を盛り込むようにしましょう。

プレゼンでのストーリーテリングの具体例

これまで確認してきたポイントに沿って、ストーリーテリングを用いたプレゼンテーションをする場合、どのような構成になるのでしょうか。

具体例として、「新卒採用の企業説明会の場で、自社の離職率が低下したことをアピール」するプレゼンテーションを構成してみます。

当事者として語る

まず、プレゼンター自身がどのような立場にいるのかを説明する必要があります。本例ではその企業の人事担当者であることと、社員の定着率を向上させるプロジェクトやワークグループの主担当であるなど、テーマに直接関わる立場であることに触れておきます。

情報・データの提示と、共感の醸成

続いて、前年の離職率を数値で示しておきます。しかし、就職活動中の大学生にはピンと来ないかもしれません。そこで、同業他社の離職率などを比較対象として挙げます。そうすることで、「一般より高い問題のある数字」という意味が与えられます。

これにより「人事担当者として、その数字に強い危機感を抱いた」、という物語の始まりとなります。

失敗から始まるストーリー(ギャップの設定)

課題に対して試行錯誤する物語が始まります。例えば、こんなストーリーです。

離職率を下げるために、退職面談の記録からその理由をデータとしてまとめ分析を試みましたが、理由の偏りや傾向は見受けられませんでした。退職者の多い部門からは、「忙しい・人が足りない」との声もあったので、増員するなどの対応を取ったものの、3か月後の離職率は変化が見られず。

そこで、全社員を対象に労働環境についてのアンケートを実施。結果から見えてきたのは、「職場内のコミュニケーション不足」でした。単に忙しいことが原因ではなく、忙しいがために職場内で周囲との一体感を持てず、精神的に追い詰められているのではないかと考えた担当者は、コミュニケーションの改善施策を経営層に提案しました、という流れです。

パワーワード

幸い、経営層からは理解と支持を得られたため、さっそく3つの施策を展開しました。

部門長と社員の1対1の面談を定期的に実施する「1on1」、通常の会議室ではなく、社員食堂を使って軽食を取りながらの「オフサイトミーティング」、毎日の始業時と終業時に、チーム内でその日の目標設定と振り返り、翌日の計画を短時間で確認する「毎日PDCA」です。

人事部の施策範疇を超える部分もあり、管理職層からは反発もありましたが、管理職一人ひとりに丁寧に目的を説明し、最終的に理解を得ることができました。

成功で終わるストーリー(ギャップ)

施策開始後3か月、数字上の離職率が半減したことに加え、各部門の管理職層からは、部内の雰囲気が良くなっているとの声が挙がるようになると、むしろ現場サイドがこの施策を楽しんで進めてくれるようになりました。結果、1年で離職率は当初の20%から2%へ、驚異的な低下を遂げました。

ここで、ストーリーは終わりです。

ポイントを絞る

もちろん、離職率が高い理由は他にもあり、総合的な取り組みが功を奏した結果でしょうが、要因全てを紹介すると、一番伝えたいメッセージ「従業員を大切にしている企業だ」という部分がぼやけるため、あえて3つの施策だけにフォーカスすることで、ストーリーが見えやすくなるのです。

まとめ

  • ストーリーテリングは、数値や事実だけを伝えるよりも、メッセージを記憶に残すことができ、ビジネスや、採用活動など幅広い場で有効。
  • 目的や聴き手、伝えたい内容により構成やパターンは異なってくるため、よく検討しベストな選択をする必要がある。
  • 採用活動においては、広く企業イメージをアピールする場面から、職場の雰囲気や就業後のイメージを伝えていく場面まで、幅広い使い方ができる。

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