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2018年4月30日(月)更新

学習性無力感

学習性無力感とは、失敗や嫌な経験をしたことが原因で何をしてもうまくいかないとあきらめてしまい、仕事や勉強に対してやる気がおきない無気力状態に陥る状態を指す心理学用語です。今回は学習性無力感の原因や学習性無力感に陥った人の具体例、対処法を解説いたします。

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学習性無力感とは?

学習性無力感は、アメリカの心理学者セリグマンとマイヤー達が犬を使った実験により、1967年に提唱した心理学の理論です。スチューデントアパシーや燃え尽き症候群とも呼ばれています。

人間は生活をしているとうれしいこと、楽しいこと、悲しいこと、苦しいことさまざまな経験をします。さまざまな経験をする中で自己否定をされたり、大きなストレスや苦痛を感じたことが原因で意欲が低下していきます。そうなると、「自分にはできない」「何をしても無駄」だというあきらめの意識が芽生えて、仕事や勉強に取り組むことができない学習性無力感に陥ります。

周囲からは「だらだらしている」「さぼっている」などと思われていますが、本人はなんとかやる気を出そうと葛藤しています。そのため、周囲に理解されにくくますます無力感が強くなるといわれています。

セリグマンの理論

セリグマンとマイヤー達が行った実験では、まず犬を2つの部屋に入れました。

  • 電気が流れているが、ボタンを押すと電気ショックを回避できる部屋
  • 電気が流れており、何をしても電気ショックを回避できない部屋

前者の部屋に入った犬はボタンを押すと電気が止められることを学習して、電気が流れるとすぐにボタンを押す行動を起こすようになりましたが、後者の部屋に入った犬は何をしても電気を止めることができないことを学ぶと何も行動を起こさなくなりました。その後に、両方の犬をボタンを押すと電気ショックを回避できる部屋に移したところ、前者の犬が回避行動をとりましたが、後者の犬は何も行動を起こしませんでした。

セリグマンはこの実験結果を人間の行動に当てはめ、人は心身に嫌悪刺激を受けると学習性無力感状態を引き起こす理論を導き出しました。現在では、このセリグマンの理論を元に、学習性無力感と抑うつの関係やパーソナリティ、ひきこもり、ニートとの関連性について研究が行われています。

学習性無力感の原因

学習性無力感は現在も研究段階であるため、さまざまな原因が指摘されています。ここでは、主な原因をタイプ別に4つご紹介します。

完璧主義タイプ

完璧主義の人は何事にも100%で取り組むためエネルギー切れしやすく、ケアレスミスでさえ気にする傾向が高いため、下記のようなループにはまりやすく、学習性無力感になると考えられます。

高い目標設定→100%で取り組む→ミスをした→落ち込む(挫折する)→理想と現実のギャップでもがく→高い目標設定・・・学習性無力感になる

生活のリズムが乱れているタイプ

睡眠時間が不規則だと、脳内物質の分泌が不足するため無気力状態になりやすくなります。やる気に関係する脳内物質のセロトニン・ドーパミン・アドレナリンは睡眠中に分泌されます。そのため、睡眠時間が少なくなったり眠りが浅いと脳内物質の分泌が十分ではなく、ささいなきっかけで学習性無力感に陥ります。

幼少期から「いい子」だったタイプ

近年増えているタイプです。幼い頃から両親や先生の言うことをきき、自分で意思決定をせずに大人になった人は心理学的に「アイデンティティが確立されていない状態」といいます。幼い頃から親や周囲の期待に応えることだけを目標としてきた人が、大人になった途端に自分自身と向き合うことを促されてもうまくいかず、学習性無力感に陥りやすくなります。

このアイデンティティの未確立は人生の節目(就職・結婚・子育てなど)ごとに影響するため、人生の節目ごとにつまずく人がでます。人生の節目では主観的だけでなく客観的にも自分自身と向き合うことが求められるため、アイデンティティの未確立は40歳頃まで影響が及ぶといわれています。

大きなストレスや自己否定をされた経験があるタイプ

心のよりどころだった人を亡くしたり、信頼していた人に裏切られた等の大きなストレスを経験したタイプや、幼児期に虐待や過酷なイジメにあった、恋人や配偶者からDVを受けたなど自己否定をされ続けたことがあるタイプです。これらの人たちは潜在意識で「何をしても無意味」「自分が認められることはない」などと考えているために学習性無力感に陥ります。

大きなストレスや自己否定をされた経験がある人たちに共通することは、真面目な性格で他人に相談するのが苦手、あるいは相談相手がいないことです。他人に相談すれば解決する方法があるのに1人で抱え込んでしまうために解決策が見つからず、どんどんやる気が失せて最後には生きる気力さえなくしてしまうこともあります。

学習性無力感の具体例

学習性無力感が実際にどんなものなのか、職場での具体例を2つ上げてご説明します。

学習性無力感の具体例1

入社または異動直後は元気に挨拶をし、ミーティングでも積極的に発言や提案をしていたが、ミーティングでの発言や提案がなかなか採用されないことが続いた。最近では挨拶もしなくなり、ミーティングで発言や提案もせず、だらだらと通常業務を行うために周囲に迷惑をかけている。

学習性無力感の具体例2

元々能動的に仕事に取り組んでいた社員が、プロジェクトチームに選抜されて張り切っていたが、社運のかかっているプロジェクトのため上司がピリピリしており、小さなミスで怒鳴られたり「もっとできる人だと思ってたのに」と自己否定をされるような言動を受けていた。次第に「仕事を進んでやっても怒られるだけだ」と周囲にもらすようになり、指示をされたことしかやらず、指示がなければ何もしないため「サボっている」と周囲から指摘されるようになっている。

学習性無力感の社員への対処法

人事が直接該当社員と接する機会はないかも知れませんが、上司がどう接して良いのかわからずに悩んでいたら、これから紹介する内容を参考にアドバイスしてみましょう。

また、学習性無力感を予防するための対処法もご紹介しますので、こちらも参考にしてください。

ポジティブになれる方法を考えてもらう

学習性無力感に陥る人の傾向としてネガティブ思考があります。ネガティブ思考の反対語はポジティブ思考です。

誰にでも「コレをすれば元気になれる」というものがあると思います。自分の気持ちをあげるためにお気に入りの音楽を聴く、お気に入りのカフェでコーヒーを飲むでも良いです。コレといって思いつかない人はポジティブ思考になれる自己啓発本を参考にするように勧めてみましょう。

成功体験を積み重ねる

小さな目標を持たせ、本人が躊躇しても背中を押して実行させてください。本人に「できることがある」ということを認識させることで、自己肯定感を強めます。これを繰り返していくことで自己肯定感を持たせ、自信を取り戻してもらうことで学習性無力感を改善することができます。

激励や否定するような言動をしない

学習性無力感の人は自己肯定感を喪失している状態のため、「こんなこともできないのか」といった言動は控えましょう。また、周囲にサボっているように見えていても本人は一生懸命闘っているので「がんばれ」は激励にはなりません。本人の状況が理解できないのであれば、むやみやたらと声をかけず温かく見守りましょう。

環境が違うことを認識させる

できなかった時と状況や相手、自分自身の環境が違うことを認識させて「失敗した時と今は違うから失敗はしない」という感覚を持たせます。

たとえば、該当社員が学習性無力感になった原因が大きなプレゼンで失敗をした経験であれば、「人事部の会議でプレゼンをする」ことを目標にして人事部の会議でプレゼンをしてもらいます。環境の違いと「プレゼンを成功させる」ことが目標ではなく「プレゼンをする」ことが目標であると認識すれば、社員も気持ちが楽になって実行に移せるかも知れません。プレゼンができたら参加者全員で褒めてあげてください。

このようなことを繰り返し行い自信を持たせることで、学習性無力感の改善をはかりましょう。

完璧主義には、ほどほどを覚えてもらう

完璧主義タイプはすべてのことに対して100%を求めます。考え方として0か100の選択肢しかないため、70%できれば良いという発想を持たせましょう。目標設定を「100%達成が合格」と本人が主張をしても「70%達成できれば合格」と上司や人事が誘導することで、「ほどほどの感覚」を学んでもらいます。

また、自分が設定している合格ラインが高すぎることを気づかせるように話を運ぶことも大切です。日々「70%の力でいいんだよ」と働きかけることで、日常的に「ほどほどの感覚」を身につけてもらえます。

アイデンティティ未確立はキャリアカウンセリングを受けさせる

アイデンティティはいろいろな人との出会いや経験をすることで悩んだり葛藤することで、構築されるものです。そのためアイデンティティが確立されるまで時間がかかります。幼少期からいい子で自分自身と向き合ったことがない人は、キャリアカウンセラーの力を借りると良いでしょう。

アイデンティティ未確立の人は「何がしたいのかわからない」という悩みを持っている人も多く、今後のキャリアプランを考えることが苦手です。今後のキャリアプランもなく仕事に向き合っていればいつか行き詰まります。目標を持って高いモチベーションで仕事に向き合ってもらうために、キャリアプランを構築してもらいましょう。

生活のリズムが乱れている人には日光浴と睡眠時間の確保させる

やる気を出すには脳内物質のドーパミン・アドレナリン・セロトニンは睡眠中に分泌されます。まずは、睡眠時間を確保する努力をさせましょう。

また、日常生活で下記の2点に注意して生活をするようにアドバイスしてみてください。

  • 午前中の日光を浴びることを心がける
  • 起きる時間を休日も含めて毎日同じ時間にする

この2つを意識するだけでも生活のリズムを整えることができます。

生活のリズムが乱れやすい勤務体制を見直す

業界や職種によっては見直すことが難しいかも知れませんが、夜遅くまでの残業が多い企業は、朝残業への切り替えをおすすめします。

伊藤忠商事では朝5時から8時の時間帯に勤務する場合は深夜と同じ額の割増賃金と朝食を支給し、20時以降の残業は事前申請制、22時以降の深夜残業を禁止しました。早朝勤務は社内外からの電話が鳴らないため、生産性が上がったうえ夜の接待が減りました。

また、大和証券グループ本社では19時前退社を導入しています。顧客対応が多い職種であるため社員1人1人が待機時間を減らすといった効率よく仕事をする工夫を考え、17時10分を過ぎると次々と社員が帰宅しています。

このように勤務体制を変えることは、学習性無力感だけでなく社員の健康を守ることにもつながります。

【参考】DIAMOND online/伊藤忠が不夜城から「朝型勤務」に変わった理由
【参考】President online/仕事に活気、生活に味わい「19時前退社の掟」-大和証券グループ

社員の意見を聞く体制を構築する

企業側に社員の意見を聞く体制がないと、社員は徐々にやる気を失っていきます。このような企業に成長はありません。膨大な費用がかかるような提案でなければ、採用していく職場へ変えていきましょう。

1人の意見が採用されれば「自分の意見が採用されるかも」という意識へと変化していきます。このループが繰り返されることで職場が活性化され企業の成長だけでなく、学習性無力感の予防にもつながります。

まとめ

  • 学習性無力感の原因は完璧主義、生活の乱れ、アイデンティティ未確立、過去のつらい経験の4タイプがあります。また、学習性無力感になると意欲が低下して挨拶や発言をしなくなり、周囲からだらだらしていてサボっているように見えます。
  • 学習性無力感の社員がいる時は、激励や否定するような言動をせず。成功体験を積み重ねるように支援しましょう。また、つまずいた原因がおきた時と違う環境であることを認識させたり、完璧主義の人には「ほどほど」感を覚えてもらえるように働きかけます。
  • 学習性無力感を予防するには勤務体制の見直しや社員の意見を取り入れる職場環境を作りましょう。

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