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2018年4月11日(水)更新

グループシンク

社会心理学者・ジャニスによって提唱された「グループシンク(groupthink)」という概念をご存知でしょうか。この罠に陥ってしまうと、企業にとっては大きなダメージになりかねず、ビジネスに失敗する原因となることも。そういった事態防止のため、グループシンクを引き起こす原因と対策方法、然るべき思考力を身に付けるための基本的な思考法について知っておきましょう。

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グループシンクとは

「三人寄れば文殊の知恵」は、“一人で考えるよりも、複数人で話し合った方が良いアイデアや結論が出る”という意味のことわざですが、この命題を“偽なり”とするのがグループシンクの考え方です。

グループシンクとは、日本語で“集団思考”または“集団浅慮(しゅうだんせんりょ)”と呼ばれています。集団的意思決定の研究で著名なアメリカの社会心理学者、Irving Janis(アーヴィング・ジャニス)により、1972年に提唱された概念です。

組織・集団の意思決定において、早急に合意形成を図ろうとするあまり、その結論が正しいかどうかを適切に判断・評価する能力が著しく欠如するといった現象が起こります。その結果、より危険性が高い事項を決定してしまうといった“リスキーシフト”が生じるのです。“リスキーシフト”とは集団極性化(しゅうだんきょくせいか)の1つで、個人よりも集団の方が高リスクを選択しやすくなる現象のことです。

こういった傾向に陥ることをグループシンクと言います。冒頭のことわざとはまったく逆で、自分一人で考えれば正誤の判断がつくことが、グループ・集団で議論することで、かえって判断能力が欠如してしまい、過ちにつながるという考え方です。

“グループシンク”という音の響きは、どことなくスマートな感じがします。しかし、実際にはネガティブな意味合いを持ちますので、誤って使用しないように注意しましょう。

日本的集団浅慮

2011年に起きた東日本大震災に伴う福島原発事故はまだ記憶に新しいところですが、事後に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(別名:国会事故調)で、“場の空気”に支配される、独特の日本的集団浅慮が浮き彫りになりました。

誰もが原発事故など起きるはずがないと信じ、万が一事故が起きた場合の対策や危機管理を十分に行ってこなかったため、事故の惨事は人為的ミスに起因するものであるという見方もあります。事故が起きる前に疑問を抱えていた東京電力の社員もいたに違いありませんが、異議を唱えることも許されない“空気”があったことは言うまでもないでしょう。

グループシンクに陥りやすい状況とは

グループシンクの罠に陥る可能性が高いのは、以下のような状況にある集団であるとジャニスは指摘しています。

強力なリーダーシップ持つ支配的なリーダーが存在する

例えば、企業の経営会議において、先に経営陣の方から意見が出たとしましょう。会議の参加者の中で、その意見に疑問をぶつけたり、反対意見を言ったりする者は出てくるでしょうか。企業経営に責任があり、経営戦略に強い意思決定権を持つリーダーに対し、異論を唱えるというのは、なかなかできるものではありません。

集団凝集性が高い・閉鎖的な環境である

“集団凝集性(しゅうだんぎょうしゅうせい)”とは、組織やグループなどの集団に属する個人を、その集団に留まらせておこうとする力、すなわち“まとまり”のことを示します。これが高まると、メンバー同士で協力し合い、結束力も強くなる傾向にあります。メンバーたちが一致団結するので、企業においては、ビジネス目標を達成しやすくなるというプラス面があるのも事実です。

しかし、外部集団とのかかわりがなく、常に同じチーム、同じ人間で組織されるような閉鎖的な環境も加わると、自分たちのやり方を適切に評価できなくなるばかりか、批判的思考を持つことすら許されない“場の空気”が形成されてしまうのです。

グループシンクの兆候 

集団に以下のような兆候が見られる時、グループシンクの状態に陥っているかもしれません。

グループシンク8つの症状

ジャニスは、グループシンクを引き起こす8つの症状があるとしています。

  • 自分たちは無敵で、怖いものは何もないと楽観主義に陥る
  • 集団の決定に強い信念を持ち、自分たちは道徳的であると信じ込む
  • 集団の決定は正しいと思い込み、外部からのアドバイスは疎か道徳や倫理まで無視する
  • 外部集団や競争相手の能力を、たいしたことはないと軽視する
  • 集団の決定に異議を唱えることのないようメンバーに圧力がかかる
  • 集団の決定に疑問さえ持たないように自分を抑制する
  • メンバー全員の意見が一致していると思い込んでいる
  • 集団の決定に都合の悪い情報から目をそらす

過大評価する

“自分たちは絶対に大丈夫”“自分たちはすごい、失敗したり、間違えたりするはずがない“などと、集団の能力を過大評価してしまうということがあります。

外部の意見や異論を認めない

“正しいのは自分たちである”自分たちを過大評価しているため、外部集団からの意見やアドバイスに耳を傾けることなく、異論などはまったく受け付けないどころか、部外者を軽視してしまう傾向があります。社会道徳や倫理までも無視することがあります。

集団から圧力がかかる

“反対意見を言ったら、逆に非難される”集団の決定や合意に異議を唱えることが許されなくなる、またはそのような空気が形成されます。そうしているうちに、個人が“おかしい”と疑問に思うことさえしなくなります。

意見が一致している

“みんな同じ意見である”結束力が強いため、全員の意見が一致している、一致していなければならないという思い込みが生じます。意見や考え方のバラつきを嫌い、少数派や下位集団の意見を排除したり、集団の決定に都合の悪い情報は遠ざけたりするようになります。

グループシンクを防ぐためには

それでは、企業にとって大きなマイナスとなるグループシンクを防ぐためには、どうしたらよいでしょうか。ジャニスは、以下のような対策方法を提言しています。

異なった意見を受け入れる体制作り

集団に属する各メンバーが独自の意見を持つことを許容し、お互いに尊重し合いましょう。集団の話し合いを結論づけるため、A or Bといったように、得てしてどちらか一方に決定しようとしてしまいしがちですが、A・B両方の長所を生かし、新たな“C”というアイデアを採用することも考えられるのです。これは“AND思考”にもとづく考え方ですが、組織の意思決定プロセスにおいて、有効な思考法であると言えます。

批判的な意見を言う役割を作る

まずは、メンバーひとり一人が批判的な視点を持つことが大切です。その上で、話し合いの際に最低でも必ず一人は反対意見を言う立場になり、建設的な発言をしましょう。組織や集団にとって有益になる正当な批判であれば、しっかりと述べることが大切です。

外部の意見も積極的に取り入れる

外部の専門家を加え、第三者の立場からの客観的な意見やアドバイスに耳を傾けましょう。また、その内容について検討し、対応策を考える時間をとりましょう。集団の決定や立案を評価するグループを別に設けてもよいでしょう。

リーダーは裏方にまわる

話し合いの際、集団のリーダー的な立場の人間が先に意見を言ってしまうと、ほかの参加者が異議を唱えにくい雰囲気になることも。最初のうち、リーダーは自分の嗜好や意見を言うのは控えしましょう。話し合いの最中は中立の立場をとり、多くの意見やアイデアが出るよう、メンバーに働きかけをしましょう。

まとめ

  • グループシンク(集団浅慮)とは、集団で議論することで、かえって判断能力が欠如してしまい、過ちにつながるという考え方
  • グループシンクは、企業にとって大きなマイナス、ビジネス失敗の原因となる
  • 日本社会においては、“場の空気”が支配する独特のグループシンクが存在
  • グループシンクを引き起こす8つの症状がある
  • グループシンクを防ぐためには、批判や外部の意見も受け入れる体制作りが最も重要

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