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2018年4月24日(火)更新

学習する組織

「学習する組織」とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の経営学者、ピーター・センゲが1990年に出版した「The Fifth Discipline」で提唱した考え方です。詳細については本記事にて解説いたします。

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学習する組織とは

戦後からバブル崩壊まで世界経済を支え続けた日本経済。新興国の台頭やIT・インターネット技術の進歩により、従来の縦割り、トップダウン形式の経営システムでは太刀打ちができなくなってきました。そのような組織プロセスが見直される時代に注目を集めているのが、「学習する組織」です。

過去40年以上にわたり、行われてきたさまざまな組織開発の中でも効果的と評価されています。

ピーター・センゲが提唱する「学習する組織」とは

「学習する組織」とは、マサチューセッツ工科大学の上級講師であるピーター・センゲが提唱した組織アプローチの一つです。当時の最先端企業、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学の三者協力の元、調査研究・事例及び企業内での実践がなされてきた組織開発の手法です。

ピーター・センゲの著書『The Fifth Discipline』はアメリカの経営思想に最も影響を与えた本(『ハーバード=ビジネス=レビュー』誌1997年創刊75周年記念特別号で発表)としても評価されています。この「学習する組織」は3つの目的を掲げ、その目的を達成するための5つの規律で構成された経営手法です。現在でも組織開発の有力なアプローチとして、さまざまな企業が実践しています。

学習する組織の3つの目的

「学習する組織」は組織内外の環境の変化に対応策として考えられており、以下の3つを目的としています。

・組織メンバーの創造性とコミットメント(責任感のある事業への介入)の向上 ・組織やチームの一員として、個人の力を終結できる技術 ・組織内外に複雑な作用を起こす諸要素を把握する力の向上

上記の目的を向上させることにより、想定外の問題や課題にも、その場しのぎでの対応ではなく、本質を捉えた柔軟な対応が可能です。

学習する組織が提唱された背景

ピーター・センゲが提唱する「学習する組織」が必要となった背景には、世界経済の急速な変化とグローバリゼーションによる社会環境の変化が指摘されています。

世界経済の急激な変化

アメリカやEUヨーロッパ連合、日本をはじめとした先進国の政治情勢や経済指数によって、世界経済の風向きは一気に変わります。

また、紛争やテロの脅威などの地域情勢によっても急激な変化をもたらします。

ビジネスサイクルの急速な短縮化

ビジネスサイクルの急速な短縮は企業やそこで働く人々に大きな影響をもたらしたと考えられます。

次々と画期的な技術やサービスが登場する中で、流行り廃れも速いため、企業の迅速な商品・サービス開発が求められます。

知識・技術の更新速度の高まり

ビジネスサイクルの急速な短縮化により、知識・技術の更新速度も高まりました。80年代には上司から部下へ知識の伝達に限界が訪れ、既に90年代にはマニュアルによる知識や技術の伝達が難しい状況に陥っています。

また、2000年代以降に、急速に普及したインターネットや高機能デバイス(パソコンやモバイル機器)により、従来の伝承よりもいち早く情報を取得できる環境が実現され、知識や技術の更新・取得スピードに拍車がかかることとなります。

グローバリゼーションによる環境の変化

経済や地域情勢が国境を越えて、あらゆる影響を及ぼすようになってきました。そのため、ビジネスに不可欠な資源であったモノやカネから、「知識」や「ノウハウ」が重視の時代へと移行しています。

この「知識経済」が主流となる中で、最新の環境に身を置いているかどうかが、ビジネスの成果が大きく左右することになります。

これらの世界経済の急激な変化(ビジネスサイクルの短縮化と知識・技術の更新スピードの高まり)とグローバリゼーションによる環境の変化により、経営者や創設者を頂点とした従来の経営システムでは企業運営が難しくなりました。

これらの複雑化した情勢の中で、迅速かつ柔軟な経済活動を行うためには、現場で働く人たちが自ら情報や状況を把握・学習し、変化に対応していく組織作りが重要となります。

学習する組織が注目される理由

ハード面からソフト面へ、組織プロセスの変更

経営者や経営陣は、企業が売上・利益を上げるためにはどのように戦略が必要かを考え、そして戦略に適した組織の在り方や制度、業務構造を模索する傾向があります。

これらのハードの側面は企業経営では必要不可欠なものですが、実際には企業で働く人材や職場での人間関係、組織風土、またはそれらの相互作用で機能する組織プロセスが企業の高いパフォーマンスに直結します。

そのため、現場と経営陣との仲介の役割を持つ人事は重要なポジションともいえます。

組織開発へのアプローチの重要性

ソフト面の強化や投資は周知の事実と考える経営陣も多いですが、次世代のリーダー・マネージャーの育成やOJTによる研修は必ずしも結果に表れているとは限りません。

優秀な人材や潜在能力を持つ社員が活躍できていない場合、先にご紹介した人間関係や組織風土などの環境の質が低下していると考えられます。

ピーター・センゲが提唱する「学習する組織」では、システム論や組織論、さらには心理学やリーダーシップ論といった科学的知見を基にしたアクション・ラーニング(チーム学習)を採用しているため、個人と組織の両方の学習能力を向上させることができます。

生命システム論への移行の必要性

組織の構成員は人材であるため、組織を単なる枠組みではなく、生命システムとして捉える必要があります。

組織内で見られる反発や抵抗は組織を生命システムとしてではなく、機械システムとして扱っているために生じます。

そのため、経営陣や人事が組織に介入する際は「学習する組織」が提唱する組織の生命システム論に則り、今までの結果を生まない思考や行動を見つめ直し、効果的な手法を共に模索しようとする意識付けや姿勢が必要です。

学習組織の構成要素

学習する組織に必要な5つの規律

『The Fifth Discipline』の著者ピーター・センゲ氏は、「学習する組織」は個人、組織、そして思考に関する5つの規律で構成されると提言しています。

また、それらはどれか一つでも欠けてはいけない要素でもあり、生涯に渡って、向上させていく規律とも言っています。

その5つの規律が自立マスタリー、メンタルモデル、共有ビジョン、チーム学習、システム思考です。

志や内省・探求に関わる規律

自己マスタリー

「自己マスタリー」とは個人が自ら実現したいと思う結果の個人ビジョンと、現実の自分自身への評価もしくは現状を受け止めるという2点で構成されます。

自ら描くビジョンと現実とのギャップを正しく認識し、ビジョンに近づけようとする能力を指します。

この2点を忠実に履行することで個人が望む結果を生み出しやすくしてくれます。

メンタルモデル

「学習する組織」を構築する上では、自らを省みて、積極的にコミュニケーションを取り、再考することが重要です。

この思考こそが、個人の責任感が伴った意思決定や行動につながると考えられているからです。この「メンタルモデル」は組織内で起こりやすい先入観や思い込み、決めつけといった非生産的な思考からの脱却を目指すのに有効とされています。

集団で取り組むべき規律

共有ビジョン

先にご紹介した個人ビジョンと現実を把握する規律「自己マスタリー」とは別に、組織やチームで「共有ビジョン」を持つことも大切です。

この「共有ビジョン」こそ、組織やチームが一丸となって、コミットメントする感覚を育み、目標に到達するための行動指針及び原則を生み出すことができます。

チーム学習

「自己マスタリー」、「メンタルモデル」ともに備えた個人が組織との「共有ビジョン」を持った上で、組織・チーム内での対話や討論を通すことで、思考の変革が可能となります。

これを「チーム学習」といいます。この「チーム学習」により、集結した個人の能力の総和以上の相互作用を生み出すことができます。

考え方における規律

システム思考

相互の関係性と変化の力学を意識する「システム思考」は、結果を左右するさまざまな力に対して、向き合う力を育成できます。

シミュレーション、学習ラボなどを通して、効果的なシステムを模索し、変化し続ける外部環境や経済において、調和・行動する助けとなる規律です。

学習する組織の作り方

現場の視察と対話

「学習する組織」を構築する上で、最初のステップが「現場の視察と対話」です。柔軟でスピード感のある経済活動を行う主役は現場で働く人たちです。

そのため、重職に就くマネジメント層は多様な視点を持つためにも現場の視察と丁寧な対話が必要となります。

ここでマネジメント層に求められることは、自分の主観や思い込みに捉われずに、ありのまま耳を傾けることです。

共感や違和感を含めた多様性を認め、認識することで、マネジメント層と現場が共に深い学習を行うことができます。

理想の「学習する組織」は自分以外のメンバーが自分の鏡となり、自らの気づきや学びに繋がる組織といえます。

これには経営陣、現場の人間ともに求められる内容でもあります。

トップの役割の変更

今までのトップダウンによる組織の統一化、秩序化では経営が難しくなったため、トップの役割も変わる必要があります。

日本の大企業において、創設者や経営者が今までの過去の成功体験に囚われ、自らの内省を怠ることはよく見られます。

今までの実績や評価により、昇進・昇格したこともあり、トップの判断には大きな権が伴いますが、その判断が常に正しいとは限りません。そのため、今のトップには組織が適切に機能するような組織(システム)の設計者という役割が求められます。

優れた組織(システム)が構築されていれば、現場で問題が起こったとしても現場の人間が問題解決に必要な情報や解決策をいち早く収集し、自らの判断で解決を導くことができます。

これにより、経験が浅い人材でも自ら考え、行動を起こせるため、属人的な組織にならず、さらには人材のやりがいにもつなげることができます。

3つのリーダーの育成

「学習する組織」において、強いリーダーシップを取る人材が必要です。また、そのリーダー像にも3つの異なるリーダーが必要と考えられます。

現場のリーダー

「学習する組織」の主役は現場の最前線にいる人たちです。その現場を取り仕切るリーダーは必要不可欠です。

この現場のリーダーには職位の高い人に限らず、問題意識のヒトであれば、中堅及び若手でも担うこともできます。

役員のスポンサーリーダー

問題意識の高い人を現場のリーダーに据えただけでは「学習する組織」は作り出せません。

これら現場のリーダーが得られた知識や視点を踏まえた新たな挑戦に、寛容的な役員以上のスポンサーリーダーが必要です。

経営陣からの後押しがあってこそ、現場が臆せず、課題や実験に取り組むことができます。

人事が担うネットワークリーダー

部署やチーム間で、同じような問題意識の高い人をつなげる役割を担うのがネットワークリーダーです。

現場の人たちが自ずと繋がりを求める運動を組織全体に浸透させることを得意とするのが人事です。

常に現場との対話を心がけ、組織作りの風土を形成する必要があります。

ギャップと向き合う社内風土

会社や組織が掲げるビジョンと現実には、ギャップがあって当然です。

これは組織と個人が抱えるビジョンを自分事として認識できるかどうかが鍵となります。

自分たちが思い描く未来のイメージ(ビジョン)と自分たちの立ち位置とのギャップを恐れず、向き合える社風が必要です。

この社内風土こそが自ら学び、成長する「学習する組織」の大切な要素といえます。

学習する組織を作るために伸ばすべき力

学習する組織を育成する3つの柱

「学習する組織」を育成する上で、3つの力をバランスよく伸ばす必要があります。

これら3つの力は「組織」という大きな存在を支える三脚となり、組織を継続的に成長させることができます。

自発的に自らを動かす力

個人やチーム、組織に関わらず、必要とされる「自らを動かす力」。

これは自らが思い描く目標に到達するため、自らが進んで変わっていく力を指します。

先にご紹介した「自己マスタリー(内省・探求する規律)」と組織・個人が持つ「共有ビジョン」を実践することで、自ら思考し、行動する個人の集団を形成することができます。

複雑性を把握・理解する力

「システム思考」で規定されている相互理解を基に、複雑性を持つシステムやその相互作用を把握・理解する力を指します。

これにより、物事やシステムの本質及び全体像を捉え、柔軟でスピーディな対応が可能となります。

創造性に富んだ対話力

この創造性に富んだ対話とは先入観や思い込みではなく、対話や討論を通して、生産性を高める「メンタルモデル」を意識する必要があります。

当たり前、常識、慣習といった無意識の内に良いとされてきたことに異論を唱え、「チーム学習」によって、自らを成長させる原動力として位置づけられます。

まとめ

「学習する組織」の育成は、企業が激変する世界情勢で生き残るための重要な経営課題といえます。

この組織開発は現場や経営陣だけではギャップや認識の齟齬も生みやすく、莫大な費用や時間が必要になることがあります。

先にご紹介したように「学習する組織」においては問題意識の高い現場のリーダー、経営陣が担うスポンサーリーダー、そして企業内に「学習する組織」を育成するための運動や風土を浸透させるネットワークリーダーが重要な枠割を果たします。

「学習する組織」に必要な社内風土をどれだけ浸透させられるか、人事の力量が試される難しいアプローチでもあります。

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