2018年11月15日(木)更新
ピア・ボーナス
ピア・ボーナスは、従業員同士が互いの良い仕事に対してインセンティブを送り合う仕組みのことです。2017年にFringe81株式会社がピア・ボーナスをSaas化したUniposの提供をきっかけに認知度が高まっています。こうした導入ツールの誕生と普及により、従業員エンゲージメントを高めて組織活性化の有効な施策のひとつとして、導入する企業も増えています。
目次[表示]
ピア・ボーナスとは
Googleが社員の評価指標として導入していることでも知られている「ピア・ボーナス」とは、どのようなものなのでしょうか?
ピア・ボーナスの意味
ピア・ボーナスは、英語のPeer(仲間、同僚)とBonusが1つになった言葉です。
ピア・ボーナスとは、日ごろ表面化しにくい仕事による成果や貢献などに対して、従業員同士が互いに成果給(ボーナス)を送り合える仕組みのことを表します。
ピア・ボーナスはインセンティブ(成果給)のひとつ
インセンティブは、仕事の成果に応じて金銭的報酬が与えられる場合と、表彰により優れた成果を評価して賞賛あるいは承認する場合があります。ピア・ボーナスは、成果や貢献に対して少額の報酬が支払われるため、インセンティブ制度のひとつとして捉えることができます。
従来のインセンティブ制度と異なる点としては、現行の評価制度では評価しにくい仕事の成果や貢献に対して評価できることです。また、評価のフィードバックを半期あるいは1年に一度ではなく、期間をあけずに伝えられるため、社員のエンゲージメント向上なども期待できます。
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ピア・ボーナスが注目される背景
AIやIoT技術の発展、ビッグデータの活用などの技術を支えるテクノロジーの進化によって、労働者の職場環境は変化し続けています。また、労働力不足による雇用形態の多様化やダイバシティー推進によって様々な価値観をもつ労働者も増えています。
企業はこうした状況の変化に対応できる組織へと体質を強化し、成長し続けられる企業文化を醸成することが不可欠となっています。平行して従業員の離職を防ぎ、人材の可能性やパフォーマンスを引き出すだめの施策も必要となっています。
こうしたなか、ピア・ボーナスの導入ツールを提供するサービスが出始めました。中小企業を中心に導入が進んだことで認知度が上がり、組織改革や人材の定着化に効果的な施策として注目されるようになっています。
ピア・ボーナス導入のメリット
ここでは、ピア・ボーナスを導入することによる主な3つのメリットについて、ご紹介します。
レコグニションによるモチベーション向上
ピア・ボーナスでは、成果給という金銭的な報酬と、賞賛や承認という非金銭的な報酬を与えることができます。金銭による報酬という外発的動機付けは即効性がありますが、金額が増えなければモチベーションは維持されず、一時的な効果に留まります。一方内発的動機付けは、職場の仲間からレコグニションを与えられることで得られる満足感や達成感によって、更なるやる気が引き出されます。
モチベーションの向上は生産性向上に繋がるだけでなく、仕事に対して自発的にその意味や価値を見出す意欲を高めるため、能力開発も期待できます。外発的動機付けと内発的動機付けが同時に実現されることで相乗効果が生まれ、持続的なモチベーション向上に対して効果的と言えるでしょう。
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従業員エンゲージメントの向上
ピア・ボーナスは、経営目標の実現と経営課題解決を同時に実現することが可能です。評価する権限の一部を従業員に与えることで、経営層に対する信頼や仕事への意欲が高まります。また、職場の仲間から評価されることで仕事に対する自信が生まれ、互いの仕事ぶりに関心が高まることでコミュニケーションの機会が増えて組織活性化に役立ちます。
このようにピア・ボーナスは、従業員エンゲージメントを高めるメリットがあります。
導入にあたっては、企業理念や経営者の描くビジョンを反映した行動や成果を評価対象とすることが重要です。これは従業員側から見た場合には行動指針が明確化されることに繋がり、目標などのミッションに対して安心して仕事に集中して取り組むことができるようになります。
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定性的な成果を評価できる
従来の評価制度では、実際の成果や目にした仕事ぶりといった上司が認める範囲のみで評価されることが多く、目立たない業務による成果や貢献は評価対象にならない場合が少なくありません。そのため、評価者と社員本人の評価に食い違いが生まれ、社員は評価に納得できずに満足度が下がるリスクがあります。
ピア・ボーナスは、組織として仕事を円滑に進めるための業務や顧客満足度を高める貢献といった、日ごろ表面化しにくい定性的な仕事の成果が評価されます。そのため、仕事による様々な形の成果を見落とすことなく拾い上げ、評価することで社員の納得感も十分に得られるでしょう。それによりモチベーション向上や企業貢献に対する意欲を引き出すことができるだけでなく、人材の確保にも繋がります。
ピア・ボーナスを組織活性化に活用する方法
企業の成長に欠かせない組織活性化や組織力強化へ繋げるためには、ピア・ボーナスをどのように活用することが効果的なのでしょうか?
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人事評価制度の改善
人事評価制度は社員満足度や企業貢献意欲に直結する重要な要素です。そのため、時代や組織の変化に合わせた人事評価制度の見直しと、公正な評価による成果や貢献に応じた処遇や評価フィードバックによる従業員の理解を得ることが大切なポイントです。
ピア・ボーナスは従業員同士で成果給を送り合うので、評価者である上司の負担を増やすことなく部下の良い仕事や行動が可視化されるため、人事評価の参考にすることができます。また、賞賛または承認された内容をオープンにすることで、現行の評価制度の問題点を把握するきっかけになります。このように、人事評価制度の改善に役立てることができれば各社員のミッションが明確になるなど、多くの企業の経営課題である組織の活性化に繋げることができます。
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タレントマネジメントへの活用
ピア・ボーナスでは部下の仕事や行動に着目しますが、そこから従業員一人ひとり能力やスキルが可視化されることにもなるでしょう。各人材の強みを企業価値として活かすタレントマネジメントに活用することで適材適所が実現すれば、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮することで組織力強化に繋がります。
経営環境の変化が多い昨今では、企業力強化に欠かせない人材育成の手段を従来の研修制度だけでは対応しきれないケースも増えています。労働力不足に悩む多くの企業にとって、タレントマネジメントは人材の能力を最大限に活かす効果的な人事戦略になります。また、タレントを把握してそれに合わせたキャリアデザインの設計と実行により、適切な人材育成を行うことができます。
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時代に即した企業文化の醸成
日本の人口構造は変化し、2015年には団塊の世代が65歳以上の後期高齢者となりました。それにより、企業で中心となって働く世代はミレニアル世代へと移行しつつあります。この世代の仕事に対する動機付けや価値観は団塊世代とは異なるだけでなく、多様化しています。こうした変化に対応できる組織へと強化するためには、企業文化を醸成しながら現場まで浸透させていくことが大切です。
企業と従業員が共に成長するためにピア・ボーナスを活用して、雇用形態や部署を超えて横断的に評価し合うことが企業文化の醸成に役立ちます。
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ピア・ボーナスの導入ツールとして注目されているサービス
ピア・ボーナスはこれまでにない新しい形のインセンティブ制度のため、制度の設計や運用の工夫など企業にとって導入のハードルが高くなりがちです。ピア・ボーナス導入と運用のしやすさだけでなく、手軽に実現できるサービスとして注目されている「Unipos」についてご紹介します。
Unipos(ユニポス)
Fringe81株式会社が提供する「Unipos」は、ピア・ボーナスをSaaS化したサービスです。社内表彰制度を4年間にわたり改善するなかでシステム化したため、様々な工夫が施されています。
2017年6月のサービス開始以降、メルカリやLOB、チェンジなどのベンチャーや中小企業を中心に導入が進んでいます。さらに、大手企業に対するサービスの強化や海外企業向けにグローバル版にも着手するなどニーズも高まっています。
特徴
Uniposの主な特徴としては、以下が挙げられます。
- 連携しているチャットアプリ(Slack,ChatWork,Workplace)を使って、スマホやPCからピア・ボーナスとコメントがセットで送れる
- 投稿されたピア・ボーナスとコメントはタイムラインでリアルタイムに共有される
- ハッシュタグ機能で企業のバリューを形にするための行動指針と紐づけができるため、企業文化の醸成や体質強化といった活用もできる
- 拍手機能で素晴らしい賞賛のコメントに賛同することで、投稿した人と投稿された人に1ポイントずつピア・ボーナスが送られる
Uniposは、週の初めに従業員一人ひとりに400ポイントが支給され、賞賛したい内容に応じて各自で決めたポイントであるピア・ボーナスと共にコメントを投稿できる仕組みになっています。また、使い切らないポイントは週の終わりにリセットされ、翌週新たに400ポイントが支給されます。
感謝や賞賛したいことをピア・ボーナスとしてすぐに投稿できるため、良い行動を強化しやすく、モチベーション向上に繋がります。また、自分から送るだけでなく、ピア・ボーナスを送られたり、投稿に拍手したり、されたりするなかで、Uniposを通して従業員同士が自由に繋がることができます。それにより、組織全体としてコミュニケーションが活性化され、組織活性化に役立つでしょう。
【参考】Unipos/共に働く仲間と送り合う新しい成果給「Unipos」
Uniposを導入した株式会社メルカリの「メルチップ」について
ここではUniposの導入事例として、株式会社メルカリをご紹介します。
同社は組織の急成長に伴い、人事制度構築の必要性と共にエンゲージメントの向上施策として2017年9月にUniposを導入しました。
Uniposのことを独自に「メルチップ」と名付けるだけでなく、活用例を提示するなどの工夫を行い、社内にピア・ボーナス制度の浸透を図りました。更なる促進活動として、メルチップを一番多く送った人と一番多く送られた人を表彰する制度を新たに設けています。
こうした定着に向けた推進活動によって、メルチップを通して賞賛し合う文化やコミュニケーションの活性化、バリューに沿った行動が可視化されたことで人事評価への活用など社員同士の理解にも役立っています。
【参考】mercan(メルカン)/贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。
【参考】|SELECK/同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側
まとめ
- ピア・ボーナスは、従業員同士の良い仕事や貢献に対して少額の報酬を送り合う仕組みのことです。
- ピア・ボーナス導入によるメリットは、従業員エンゲージメントやモチベーション向上だけでなく、企業成長に欠かせない組織活性化にも効果があります。
- ピア・ボーナスの導入には、自社独自の仕組みを構築する足掛かりとして導入ツールを利用するのもひとつの有効な手段です。
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