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2018年4月22日(日)更新

社内FA制度

人事異動制度のひとつである社内FA(フリーエージェント)制度。社内公募制度と合わせて、導入されることも多く、その導入率も増えています。今回は社内FA制度の内容や導入に至った背景、既に実施されている社内公募制度・自己申告制度との違い、そのメリット・デメリット、さらには導入事例についてもご紹介いたします。

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社内FA制度とは?

社内FA制度とは、社員が自分の経歴や能力・実績を希望部署に自ら売り込み、異動や転籍を可能とする人事異動制度のひとつです。

プロ野球界で野球選手がFA権(FA資格)を取得したというニュースを耳にしますが、仕組みや内容はほとんど同じです。社員のキャリアパスの実現、社内人材の流動化などに効果があります。社内FA制度の応募者は勤続年数や保有資格などの厳しい条件をクリアする必要があります。

しかし、成果主義や年俸制の浸透により、年功序列が強く反映した年齢や性別、勤続年数にこだわらないケースも登場しています。 社内公募制度自己申告制度と一緒に実施されることが多く、主に社員の自発的なキャリア開発を目的に導入されます。

2010年1月、【財団法人 日本生産性本部】が発表した「日本的雇用・人事の変容に関する調査」よると、社内FA制度の導入率は2001年が3%と低水準だったが、2009年には12.5%まで高まっており、今後も拡大していくという見解を述べています。

【参考】財団法人日本生産性本部 日本的雇用・人事の変容に関する調査 10P

社内FA制度が導入される理由

既に導入されていた社内公募制度や自己申告制度と比べて、導入率が低かった社内FA制度ですが、近年では増加傾向にあります。その理由として、以下が挙げられます。

成果主義と年俸制の浸透

1990年代初頭にバブル景気が終焉したことで、日本独自の年功序列終身雇用を前提とした雇用制度が崩壊しつつあり、成果主義や年俸制(従業員の業績や成果に応じて、賃金額を決定しようとする賃金制度)の導入が本格化しました。そのため、社員は主体性を持って、自らのキャリア開発に臨んでほしいとの企業のニーズが生まれてきました。

社内FA制度は社員が自分の業務実績・能力を自ら売り込む求職制を採用しているので、社員のモチベーションの向上、さらには企業の競争力を高める効果が期待できます。

長期的な人材育成の浸透

先にご紹介したとおり、日本企業が成果主義や年俸制を導入し始めたことで、会社は社員に対して、短期的な成果や実績を求める傾向が強くなりました。その結果、現場では長期的な人材育成が軽視され、社員のモチベーションも低下する事態が発生しました。

社内FA制度は自らの能力や実績をアピールし、数年後~10年後までのキャリア形成を踏まえた上で異動希望申告を行なうので、長期的な人材育成を実施することができます。

社内公募制度・自己申告制度との違い

社内FA制度とよく似た人事異動制度で社内公募制度自己申告制度があります。しかし、これらの制度とは目的や内容に明確な違いがあります。

社内公募制度とは

社内公募制度とは、経営層や人事部からの辞令ではなく、会社が必要とする職種や役職を社員に公開し、希望者を募る公募制を採用しています。主に新規プロジェクトの発足や増員が必要な部署で実施されることが多く、所属している直属上司の承認なしに、人事部門に申請することができます。社内FA制度においては、人事部はサポート役としての位置付けになっており、人事部の介入が不可欠な社内公募制度は人事業務の一つとして位置付けられます。

自己申告制度とは

自己申告制度とは、社員が自らの業績や職務進捗に対して、自己評価を行い、希望部署や部門に異動・転籍願いを提出する制度です。主に人事異動制度の一環として採用されていますが、主体となる他の制度を計画・実施する際の情報収集ツールとしての役割も担います。従業員の主観的・客観的情報を収集できるとあって、人事管理(人材管理)の手法としても活用されます。

社内公募制度・自己申告制度との違い

社内FA制度は、社内公募制度自己申告制度とそれぞれ比較すると明確な違いがあります。

社内公募制度は企業が新規プロジェクトや増員を検討している部署に必要な能力や実績を提示した上で全社員に公募する、いわば求人型人事異動制度です。しかし、社内FA制度は会社や部署・部門が人材補強を前提にしたものではなく、あくまで社員が自らの実績や能力を示し、異動を希望する求職型人事異動制度です。どちらも自主的な応募には変わりませんが、社内公募制度は「部門・部署→社員」という企業主導によるものであり、「社員→部門・部署」という社員主導となります。

自己申告制度は、自らの実績を自己評価することで、自身が関わる職務の適正を判断し、人事部に異動希望を届けるものです。一見、社内FA制度と主導権も内容も似ていますが、自己申告制度は社員の職務状況や適正、問題点などを洗い出す、いわば情報収集の性質が強く、人事管理(人材管理)の手法のひとつといえます。そのため、自己申告制度は人事異動を判断する評価データの収集が主な目的であり、主導権は人事部にあります。自らの実績や能力・保有資格を売り込み、人事異動を勝ち取る社員主導の社内FA制度とは性質が異なるといえます。

社内FA制度を導入するメリット

社内FA制度が導入された背景には、成果主義・年俸制の浸透や長期的な人材育成のニーズが挙げられます。そのため、社内FA制度はいくつかのメリットをもたらします。

社員の自由度を尊重し、モチベーション向上につながる

社内公募制度自己申告制度は、企業・部署または人事部が主導して行なう人事異動制度です。しかし、社内FA制度は社員が自らの実績や能力を示し、希望する部署や部門に応募する社員主導の人事異動制度です。そのため、企業側の都合や一方的なキャリア開発の異動ではなく、社員の自由度を尊重することができます。また、自らのキャリアを真剣に考えるきっかけにもなり、社員のモチベーション向上も期待できます。これにより費用対効果の高い内発的動機を基にした人事が可能となります。

優秀な人材の確保

社内FA制度の応募条件は、社内公募制度と比べても厳しい傾向にあります。最低5年の勤続年数や保有資格の有無、突出する実績などをクリアした社員が異動希望を出せるため、受け入れ側の部署や部門は優秀な社内人材を確保することができます。

年功序列が色濃く残る日本企業では、来たる労働人口減少社会に備え、若手社員の即戦力化が急務となっています。勤続年数という一定の縛りはあるものの、実力主義での起用を前提としているため、若手社員の起用にもつながります。そのため、弊害が多いとされる日本の三大雇用慣行(終身雇用年功序列型賃金、企業別労働組合)を打破できる取り組みとしても注目されています。

人事部や上長を通さずに異動を希望できる

社内FA制度は社員主導の人事異動制度のため、人事部や上司を通さずに異動を希望できるメリットがあります。優秀な人材ほど上司から慰留を受けることも多く、さまざまな力学が働き、長期的な人材育成に支障をきたしてしまいます。

社内FA制度は企業や人事部主導の社内公募制度自己申告制度と比べて、社員の自主性を重んじるため、社員の自発的なキャリア開発や成長にもつながります。

異動後のミスマッチを防ぐ

メンバーシップ型雇用(総合職)を採用している日本企業では、さまざまな職能を習得させるためにジョブローテーション(定期人事)を行ないます。しかし、異動先の業務が未経験であることも多く、受け入れ先の部署・部門とのミスマッチが発生するリスクがあります。社内FA制度を利用した社員は、受け入れ部署との親和性を見極めやすく、異動後のミスマッチが発生しにくいメリットがあります。

社内FA制度を導入するデメリット

社内FA制度は社員の主体性や自由度を尊重する代わりに、少なからずデメリットも存在します。

FA権(異動権)獲得に厳しい条件が課せられる

社員の主体性を重視する社内FA制度は、社員のモチベーションや上昇志向を刺激し、公平・公正な競争により社員が希望する異動を勝ち取ることができます。しかし、FA権の獲得には厳しい条件が課せられるため、本当に優秀な人材のみしか採用されません。その結果、希望を叶えられない社員の不満を高める要因にもなりえます。

職場の人間関係に影響がある

社内FA制度は社内公募制度と同じように、上長を介さずに異動を希望できます。そのため、ジョブローテーションなど上司が納得のいく人事異動ではないため、人間関係に影響が出る可能性があります。しかし、社内FA制度を利用する際は上司への報告を義務付け、人間関係悪化の防止やキャリアプランを上司と相談する機会に活用している事例も存在します。

中堅社員の昇進・昇格条件になり得る

社内FA制度は「若手の起用」の側面が強いイメージがありますが、30代以上の中堅社員の管理職・ポスト登用に活用する動きもあります。同期との実力差や出世競争の結果が表れる世代にとって、社内FA制度は厳しい制度になってしまいます。年功序列終身雇用などに身を委ね、長期的なキャリア開発の欠如、またその実現に動いてこなかった社員にとっては昇進や昇給に影響が出る可能性があります。

中小企業では導入しにくい

社内FA制度は大企業が落ち入りやすい人事に関するデメリットを克服できる有効な制度でもあります。規模の大きい企業にとっては、優秀な人材を選出する手段として費用対効果が高く、企業内の競争力も高めることができます。

しかし、事業規模が小さい中小企業にとっては社内公募制度自己申告制度でも社員のモチベーションや自発性を保ちつつ、優秀な人材の確保が可能です。そのため、社内FA制度を導入したとしても費用対効果が良くない可能性があります。

社内FA制度導入企業の事例

2000年以降、社内FA制度の導入率は高くなっており、企業もさまざまな工夫をして、自社に相応しい社内FA制度を導入しています。

ソニー株式会社

エレクトロニクス分野に留まらず、映画・音楽・ゲーム分野でも世界を牽引するソニーでは、毎月、人材の募集を更新し、応募条件を満たした社員が新たな仕事にチャレンジできる社内募集制度を実施しています。現在では「グローバル・ジョブ・ポスティング」という形で、全世界で働くソニー社員全員が利用できるようになっています。

【参考】ソニー株式会社

帝人株式会社 TEIJIN

繊維・材料・化成品・ヘルスケアなど幅広い事業を展開しているグローバル企業 帝人では、 社内公募制度である「ジョブチャレンジ制度」と合わせて、「キャリアチャレンジ制度」という社内FA制度を導入しています。これにより、社員自らがスキルと経験を伸ばすことで、世界に通用するグローバル人材を生み出そうとしています。

【参考】帝人株式会社 TEIJIN

オリンパス株式会社

光学機器・電子機器メーカーのオリンパスでは、1993年より成果主義を前提にした評価制度の改定を進めています。職能資格制度を活かした社内FA制度である「求職型社内公募制度」は、上司への報告・キャリアプラン面談を行なった上で、社内ネットワークに登録できます。部下が自ら自分のキャリアを考え、上司がそれをサポートする仕組みになっており、異動決定まで秘匿が前提である社内FA制度のデメリットをうまく克服した良い事例といえます。

【参考】オリンパス株式会社

パナソニック株式会社

エレクトロニクス分野をはじめ、住宅・航空電子機器を手掛けるパナソニックでは、社員の主体的なキャリア開発と意欲を向上させるために、「スキルe-チャレンジ」、「スキルe-アピールチャレンジ」、「スキルチャレンジ大学」の3つのサポート制度を実施しています。社内FA制度にあたる「スキルe-アピールチャレンジ」では、社員が自らのスキルを武器にキャリアを形成できる環境を提供しています。

【参考】パナソニック株式会社

まとめ

  • 社員が主体的に自分のキャリアを構築できる社内FA制度は、社員のモチベーションや企業内競争力を高める効果があります。
  • 従来の社内公募制度自己申告制度のデメリットをうまくカバーした社内FA制度も登場しており、今後も導入する企業が増えていくと思われます。
  • 経済がグローバル化する中で、主体性を持ち自ら成長する社員は必要不可欠な存在といえます。人材育成においても重要な仕組みになるので、導入の検討をしてみてはいかがでしょうか。

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