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2018年7月20日(金)更新

フィッシュ哲学

フィッシュ哲学とは、アメリカの魚市場発祥の組織活性化・人材マネジメント手法です。飲食、接客、販売業など、サービス業を営む企業のみならず、教育や医療・看護現場なども含め、広く導入されています。シンプルな行動原理から構成され、明快さとスタートしやすさが好まれる一方、導入には注意が必要です。この記事では、フィッシュ哲学の概要や実践事例、導入に関する注意点について解説します。

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フィッシュ哲学とは

フィッシュ哲学とは、アメリカの魚市場発祥の組織活性化・人材マネジメント手法です。仕事へ取り組む態度を自分で選択し、前向きに楽しみながら目の前の顧客に向き合うことを理念としています。

シンプルな行動原理から構成され、サービス業を営む企業のみならず、教育や医療・看護現場なども含め広く導入されています。特に日本では医療・看護現場での導入が盛んで、看護師と患者間のコミュニケーション改善や、看護部門の組織活性化を目的としたマネジメント手法として利用されています。

アメリカ・シアトルのパイクプレイス魚市場が発祥

フィッシュ哲学の発祥の地は、アメリカ・シアトルのパイクプレイス魚市場です。魚をキャッチボールのように放り投げるパフォーマンスで有名な、地域を代表する観光スポットでもあります。

今では観光客も多く活気に溢れた姿が見えますが、かつてはさびれた魚市場で、離職率が高く職場としての雰囲気も悪かったと言われています。その魚市場が「世界的に有名になる」ことを目指し議論と改革を重ねた結果、組織活性化に成功し、世界で最も有名な魚市場となりました。

その様子を見た経営コンサルタントのスティーブン・ランデン氏、ジョン・クリステンセン氏が感銘を受け、映像を撮り理論化しました。その理論が「フィッシュ哲学」です。

【参考】株式会社日本看護協会出版会: 看護 2008年5月臨時増刊号

フィッシュ哲学導入の目的・効果

企業や組織にフィッシュ哲学を導入する目的・効果について解説します。

組織活性化

フィッシュ哲学の導入目的や効果としては、まず「組織活性化」が挙げられます。

フィッシュ哲学をうまく導入し、効果が発揮できれば、活気に溢れ、従業員が楽しみながら働ける職場をつくることができます。組織活性化により、新人定着率の向上、離職率の改善、従業員満足度の向上といった様々な効果が期待できます。

【関連】BizHint HR:組織活性化とは?取り組みの方法・手法・施策および事例をご紹介

顧客満足度の向上

フィッシュ哲学を上手に活用できれば、顧客満足度の向上にもつながります。

フィッシュ哲学は従業員満足度の向上に寄与しますが、従業員満足度が向上すると、従業員の仕事へのモチベーションやサービス精神なども併せて向上し、顧客満足度の向上につながると考えられています。

また、次の項で解説しますが、フィッシュ哲学の行動原理は、顧客や相手に意識を向け、喜ばせる事にもフォーカスしています。フィッシュ哲学は、直接的に顧客満足度の向上も目指しているのです。

フィッシュ哲学の「四つの行動原理」

フィッシュ哲学は、複雑な理論ではありません。ここで解説するシンプルな「四つの行動原理」により構成されます。「四つの行動原理」について解説します。

仕事を楽しむ (Play)

まずは、自分自身が仕事を楽しむことが行動原理として挙げられます。

フィッシュ哲学において「仕事を楽しむ」という言葉には、ユーモアやいたずら心といった「遊び心を取り入れる」というニュアンスがあります。勿論「悪ふざけをする」という意味ではありません。

現場での仕事はともすればマニュアル的で、時間に追われ、ギスギスしたものになりがちです。そうではなく、肩肘をはらずに余裕を持って、遊び心を持って楽しみながら仕事をすることの大切さを語っています。

仕事に遊び心を発揮することは、「自分を出しても良い」という安心感や、信頼関係に基づく行為でもあります。仕事を楽しんでいる様子を出し合うことで、自然とスタッフ間にお互い信頼しあえる関係も育まれます。

相手を喜ばせる (Make Their Day)

お客様に対し、楽しい雰囲気で接し、コミュニケーションやパフォーマンスを通じて喜ばせ、お客様の一日を彩るようなサービスを目指すことを、フィッシュ哲学では行動原理としています。

「Make Their Day」という英語の言葉をそのまま日本語に訳すと、「彼らを幸せな気分にさせる」となります。この言い回しは、特に幸せな気分が一日中続くような場合に使われます。そして、ここで言う「彼ら」とは、相手、お客様のことです。つまり、お客様が一日中幸せになれるような、もしくは一日を振り返ったときに思い出してもらえるような、そのようなコミュニケーションをとることを意味しています。

アメリカ・シアトルのパイクプレイス魚市場では魚を投げるパフォーマンスが有名です。しかし、この「相手を喜ばせる」という行動原理は、そのようなエンターテイメントやパフォーマンスを行うことだけを意味しているわけではありません。フィッシュ哲学では、「笑顔一つだけでも人を幸せにすることができる」「人を幸せにしたい、という気持ちこそが大切である」という考えをとります。

意識を向ける (Be There)

「Be There」をそのまま日本語に訳すと、「そこにいて下さい」となります。店舗などに来てくれたお客様をよく気配りし、放置することなく、自ら声をかけにいく姿勢を意味します。レジで待っているのではなく、人の動きやお客様の状況などに絶えず注意をし、積極的に声をかけて商品を提案するなど、進んで人に関わろうとする姿勢を大切にしています。

また、目の前にいる相手に意識を向け集中し、真剣に傾聴する姿勢も、フィッシュ哲学において重要視されています。

【関連】BizHint HR:「傾聴」の意味とは?傾聴力が必要な理由や基本スキル&技法を解説

態度を選ぶ (Choose Your Attitude)

「態度を選ぶ」とは、仕事に取り組む態度や姿勢を、自分自身で選択することを意味しています。

フィッシュ哲学の生まれた魚市場や魚屋は、朝早くから仕事をしなければならなかったり、冷たい氷や魚に触れる必要があったりと、一般的にハードな職場であると言えます。そのため、従業員の仕事のモチベーションが下がり、職場の雰囲気自体が悪くなってしまっていました。

そんな中、「仕事の内容自体は変えづらいが、仕事に取り組む態度は誰にでも選べ、すぐに変えられる。同じ仕事でも、不機嫌で憂鬱に過ごすこともできるが、明るくポジティブな態度で楽しく仕事をすることもできる」という発想が生まれました。

パイクプレイス魚市場では、従業員が自分自身の態度をポジティブな方向に選び続けた結果、楽しく働ける職場作りに寄与し、職場活性化につながったとされています。

ですが、この「態度を選ぶ」という行動原理は、フィッシュ哲学の行動原理の中でも特に賛否が分かれ、批判にあいがちでもあります。その理由や詳細は後述の「フィッシュ哲学への批判と導入の注意点」の項で解説します。

フィッシュ哲学の導入・実践事例

フィッシュ哲学は、実際にどのように活用されているのでしょうか。導入・実践事例を紹介します。

企業における導入・実践事例

フィッシュ哲学は企業の組織活性化を目的とし、幅広く導入されています。アメリカを中心に広まり、魚市場の様子を撮影した映像コンテンツは、マクドナルド、BMW、ノキア、ナビスコから米国陸軍など、世界中で約4,000社に研修教材として採用されたそうです。

日本における具体的な導入事例としては、飲食チェーン店における例が挙げられます。ここでは、来店客数や売上の増加、お客様満足度の向上を目指し、フィッシュ哲学の導入・実践が行われました。

導入の際の工夫として、ライバル意識を持たせるため複数店舗において同時に導入し、店長や社員に加え、パートやアルバイトにも参加の研修参加の機会を提供しました。結果として、雇用形態や経験などが異なるメンバー間においても、目標達成に向けて、お互いに相手を尊重し合い、励まし合う職場づくりにつながったそうです。

また、IT関連の法人サービスを提供している会社では、営業職と技術職間のセクショナリズムを打破するための施策として、フィッシュ哲学を導入しました。

職場全員参加で相互理解を目的としたワークショップを開催し、その後実践期間を経て、振り返りを再度全員参加で実施する、という流れで、フィッシュ哲学の導入・実践が行われました。結果として、職場を横断した一体感が生まれ、仕事が円滑に遂行できるようになったそうです。

【参考】株式会社日本看護協会出版会: 看護 2008年5月臨時増刊号
【参考】“フィッシュ!哲学”  学習から実践まで:フィッシュ!哲学の導入事例

フィッシュ哲学の教育プログラム

フィッシュ哲学に関する教育プログラムは、映像コンテンツに加え、集合研修や講演会、テキストでも提供されています。

教育・研修や組織コンサルティングサービスを提供する株式会社ビジネスコンサルタントでは、フィッシュ哲学に関する講師派遣型の集合研修を実施しています・

職場メンバーから全社員までを対象とした研修「FISH!プログラム」の開催や、職場変革推進者向けの職場活性化支援ツール「FISH!カルチャー」の提供、社内トレーナーや職場長を対象にした職場活性化プログラム「FISH!カルチャー活用講座」の実施などを行っています。

また、株式会社アイエヌエー インターナショナルは、日本における販売代理店として、フィッシュ哲学をはじめとする研修用映像素材を提供しています。販売している映像コンテンツでは、パイクプレイス魚市場の実際の映像を元に、フィッシュ哲学が解説されるようです。

【参考】株式会社ビジネスコンサルタント:FISH!プログラム
【参考】株式会社アイエヌエー・インターナショナル:商品のご案内 『フィッシュ!』

介護や看護、医療現場における導入・実践事例

日本では介護や看護、医療現場での導入が活発です。

医療現場においては、2004年に東京慈恵会医科大学附属病院が看護教育として初めて導入し、普及が進みました。良好な導入に成功した看護部においては、職務満足度や看護師のモチベーション向上、患者満足度にも好影響を与えることが分かっています。

【参考】一般社団法人日本看護管理学会『フィッシュ!哲学』導入における看護師の職場活性化 -職務満足度とモチベーションの分析から-

それでは、実際の導入事例を紹介します。

東京慈恵会医科大学附属病院

東京慈恵会医科大学附属病院は、前述の通り、日本で初めてフィッシュ哲学を看護部門に導入した先駆者です。

「私たちがイキイキと輝くことで、患者さんによりよい看護が提供できる」という理念の元、有志によるコンサートの開催や、「態度を選ぼう」と書いた張り紙の掲示、七夕やハロウィン、クリスマスといった遊び心溢れる季節折々の飾り付けなど、様々な取り組みを行っています。

【参考】東京慈恵会医科大学 看護師募集:FISH!哲学

社会医療法人 青洲会グループ

社会医療法人 青洲会グループでは、「職員の顔に笑顔が見られない」「挨拶がきちんとできない」「看護師を中心に離職者が多い」といった医療現場全般に関わる問題への対策として、フィッシュ哲学を導入しています。

具体的な取り組みとしては、スタッフが白衣以外のふさわしい服装を、自由に選べるようにしたことが挙げられます。医療現場において「お客様」である患者の方からも、「威圧感がなくて話がしやすい」と好評で、声をかけてもらう回数も増えたそうです。その結果は事務職にも伝播し、ノーネクタイのスタッフや、色とりどりのポロシャツを着用する人も現れるようになりました。

また、福岡青洲会病院では忙しい職場であったため、スタッフ間で「ありがとう」の一言もかけられない状況であったそうです。これを改善するため、病棟内にメッセージボードを導入し、スタッフ間で感謝の気持ちを伝えられるようにしました。その結果、「自分あてのメッセージがあれば嬉しいし、相手を認めよう、褒めようという思いが意欲へとつながる」と、スタッフのモチベーション向上にもつながっているそうです。

こうした良い職場づくりを目指した取り組みにより、サービスの向上やスタッフの離職率の改善など、効果も出ているようです。

【参考】福岡青洲会病院:私たちの想い

教育の現場でも

フィッシュ哲学は、教育現場でも活用されています。

米国チャートハウスラーニング社は、フィッシュ哲学を学校教育の現場に導入することで、以下のような効果が期待できると説明しています。

  • 先生同士のチームワークの向上:様々なプレッシャーを受けがちな先生同士が、お互い支え合い助け合う文化をつくる
  • 生徒の学習意欲やチャレンジ精神の向上…生徒が安心してチャレンジできる環境をつくる
  • 生徒のポジティブな態度を選択する能力の向上…他者に気を配り、ポジティブな態度を選ぶ力を育む
  • 居心地の良い職場づくり…先生や生徒、スタッフや来訪者にとって、暖かく歓迎されているような職場づくりができる
  • リーダーシップ力の向上…スタッフや学校全体に影響するリーダーシップ力を培う

【参考】Creators Of FISH! Philosophy Training:Schools

フィッシュ哲学への批判と導入の注意点

フィッシュ哲学は、その行動原理から批判にあうこともしばしばあります。フィッシュ哲学を導入する際に把握しておくべき注意点について解説します。

労働搾取にならないよう注意

フィッシュ哲学は、「仕事の内容や待遇などは変わりづらいもの」という考えを前提としています。経営者や管理側が努力すべき、処遇や待遇改善については、ここでは語られません。結果として、待遇は改善されないまま労働が増え、愛想も良くしなければならない、いわゆる「ブラック企業の労働搾取」モデルにもつながりがちと言えます。これが、フィッシュ哲学が批判される理由です。

導入の際には、「労働搾取とならないように注意すること」、及び「搾取をするつもりはないこと」を、従業員にもしっかり伝え、理解してもらうことが肝心です。理想としては、フィッシュ哲学による職場活性化と待遇の改善、両輪での取り組みを推進することです。サービス向上による顧客満足度及び業績向上を目指し、業績向上による利益を処遇改善にも使うなど、従業員にとっても実利があるような仕組みを構築できると良いでしょう。

また、経営者や人事担当者など、管理側からの提案は、従業員側からの不信感を募らせ、反発にあってしまう可能性があります。従業員満足度調査と絡めニーズに応える形をとったり、従業員側から提案してもらったりと、角の立たない導入ができるよう工夫すると良いでしょう。

【関連】BizHint HR:従業員満足度調査とは?目的や質問項目、結果分析のポイントについて解説

まずはスタッフが楽しめるカルチャーを

フィッシュ哲学の導入に関しては、前述の通り、特に現場スタッフには「待遇が改善されないまま元気に振る舞わなければならず、お客様の為にやるべき仕事量も増やされてしまう」と解釈されがちです。そのような理解が広まると、フィッシュ哲学の導入は失敗に終わることでしょう。

企業研修を担当する人事やマネジメント層など、導入側としては、早く顧客満足度や業績の向上につなげたい気持ちはあると思います。ですが、まずはスタッフが楽しく仕事できるカルチャーをつくることに集中した方が良いかもしれません。

まとめ

  • フィッシュ哲学は、4つの行動原理「仕事を楽しむ (Play)」「相手を喜ばせる (Make Their Day)」「意識を向ける (Be There)」「態度を選ぶ (Choose Your Attitude)」からなる組織活性化の手法。
  • 日本では企業のみならず、医療・看護現場での職場活性化によく活用される
  • シンプルで明快な行動原理であるが、導入には注意が必要。労働搾取にならないよう、処遇改善と両輪で取り組んだり、従業員満足度向上にまずはフォーカスしたりできると良い

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