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2018年1月21日(日)更新

プロセス評価

業務遂行度や目標達成度などの結果だけでなく、目標達成までの過程を評価する「プロセス評価」。行き過ぎた成果主義の流れを是正することができ、人材育成にも有効であることから重要視されている評価制度です。今回はそんなプロセス評価を成功させるための、導入のコツや事例をご紹介します。

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プロセス評価とは?

「プロセス評価」とは、結果だけではなくそこに至る過程(プロセス)を評価する人事考課手法のひとつです。短期的には結果が出ていなくても、結果にたどり着くまでの行動や活動が、成果に繋がる適切なものであるかを評価します。また、職種や職位ごとに期待する行動や知識、経営理念などを指標として評価基準に加えることで、共通認識を深めることができます。

広義的な解釈では、仕事に対する姿勢を評価する「情意評価」、業務を行う上での知識や技術を評価する「能力評価」、業務を遂行する上での行動を評価する「行動評価(コンピテンシー評価)」もプロセス評価に含まれます。

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成果主義の弊害

バブルの崩壊により年功序列制度から成果主義に変わり、それに伴い結果のみで評価する「業績評価」が徐々に導入されていきました。しかし、成果主義では長期的な視野での利益を追及することよりも、月ごとや半年ごとの短いスパンで結果を追い求めがちになり、ついつい目の前の数字を追いかける状況に陥ります。

例えば、顧客サービスに対する地道なアフターサービスよりも、クーポンやキャンペーンで一時的な売上げを大量にあげるため、充分な説明をせず強引に行う販売などが代表例です。こうした手法は、一時的なとはなるものの、企業の成長につながっていかず、下手をすればリピート客を減らす結果となります。

これは、成果主義に問題があるのではなく、企業のビジョン実現への取り組みや、プロジェクトの途中段階でその進捗状況などをチェックする仕組みがなかったためで、こうした弊害をなくすため、長期案件の過程を可視化して評価する方法として「プロセス評価」が広がっていきました。

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プロセス評価の現状

産労総合研究所が行った調査では、一般職員の事後評価の項目として「目標の達成度」(結果)が91.8%である一方、「行動・取組姿勢・意欲」(過程)は94.1%と、近年では過程(プロセス)を重視する傾向が顕著になっています。(図表1)

図表1 評価制度の有無と事後評価の評価項目

【出典】産労総合研究所:2016年 評価制度の運用に関する調査

業務遂行過程の行動特性(コンピテンシー)

このように、近年重要視されているプロセス評価ですが、その具体的評価基準として最も注目されているのが行動特性(コンピテンシー)です。

コンピテンシーは安定して優秀な業績を達成できる人材に共通して見られる思考・行動・判断・選択・態度の傾向や特性のことです。性格や資質といったことではなく、日常の様子や会話から確認できる能力です。1970年代に米国務省から依頼を受け、ハーバード大学(アメリカ)の心理学者マクレランド教授を中心に行われた「学歴や知能レベルが同等の外交官に業績の差が出るのはなぜか」という調査研究に由来します。

日本では「行動特性=コンピテンシー」と認識され、企業にとって業務遂行過程のコンピテンシーは直接業績につながることから、コンピテンシーを基準としたコンピテンシー評価が広がっていきました。

コンピテンシーは統一化されていない概念のため、国や企業により言葉の内容が異なる場合があります。

コンピテンシー評価導入には、高い業績をあげる社員(ハイパフォーマー)の行動分析や行動モデルの構築など、評価基準の設定にかなりの労力が必要となり、人事業務の負荷が高く導入への関心はあっても現在の導入率は決して多くありません。(図表2)

図表2 人事考課諸政策の実施状況

【出典】総務省:民間企業における人事評価の取組について
※一般財団法人労務行政研究所が数年おきに実施している人事考課制度に関する実態調査結果「労政時報 第3797号(2011.5.13)」を基に総務省が作成した資料

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プロセス評価の目的

プロセス評価の導入にはいくつかの効果が期待でき、多くの企業がその効果を求めています。

公正な評価

プロセス評価は、長期プロジェクトなどの途中段階であっても成果に向けた行動や、縁の下の力持ちとして会社に貢献している社員に対しても評価することができるため、公正な評価が可能です。

評価の透明性

数値化した評価基準による定量的な評価によって、誰にでもわかる評価内容となり、客観的で透明性の高い評価が実現できます。

社員の行動変革

プロセス評価としてコンピテンシー評価を取り入れた場合、日常の中でどのような行動を評価するのか、あるいはどのような行動が望ましくないのか示すことで企業と社員との間で情報共有され、社員の行動変革を促します。

経営理念に即した行動

コンピテンシー評価の中に、経営理念に関する具体的な行動内容を含むことで、社員は企業理念に即した行動をとるようになります。また、行動を通して経営理念への理解が深まります。

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社員のモチベーションの向上

公平な評価が実現することで、社員は人事考課に対する不平不満が少なくなり、モチベーションが向上します。

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社員の人材育成

評価基準が明確になるため、業務に必要な資格の取得や、成果があがる行動を促すことができます。また、本人が自分の強み弱みを把握しやすくなるため「自己啓発」につながるなど、プロセス評価によって人材育成も可能となります。

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企業の業績向上

多くの社員に対し「人材育成」「行動変革」「モチベーションの向上」などの効果があがることで、会社の業績向上が期待できます。

プロセス評価が適切に機能するためのコツ

プロセス評価が適切に機能するためには、主に2つのコツがあります。

プロセス評価と業績評価の関係

プロセス評価は、成果主義の補完ツールです。決して成果を無視しているのではなく、成果を出していくことを前提にその過程を評価します。そのため、プロセス評価のみで人事考課を行うのではなく、業績評価と合わせて行うべきものです。

また、プロセス評価といっても一つの方法ではなく、プロセス評価に該当する評価方法はいくつもあるため、どの評価方法をどの程度取り入れるのか、自社にとって最適なバランスで評価制度を構築していくことが求められます。

誰もがわかる評価の定量化

結果までの過程を評価しようとした場合、今まではあいまいな基準しかなく、定性的な評価が行われていました。そのため、上司によって評価が違うということもありました。

そのようなことを防ぐため、プロセス評価では明確な評価基準を設け、定量的な評価を行うことが必要です。曖昧さを排除し、誰が見てもわかるような評価基準を作ることで、人によって評価が変わることがない公正で安定した評価が可能になります。

プロセス評価導入のためのポイント

プロセス評価を導入するには、評価基準をどう設定するのかが重要です。評価基準構築のポイントをご紹介します。

適切な目標を設定する

職務の目標設定は多くの企業で実施していることでしょう。但し、その成果目標は適切なものでなければなりません。目標設定には主に以下の4つがあります。

ポイント1

目標管理制度」を基にして部下と上司で話し合う場を設け、部下の決めた目標を上司が軌道修正しながら個人の目標を立てます。

【関連】目標管理制度の目的とは?問題点を克服し失敗しない制度導入に必要なこと / BizHint HR

ポイント2

どのような目標がどの程度達成できたかわかるよう、達成度を判定可能な数値目標にすることが望ましいです。

ポイント3

社員個々の役職、役割、能力、意欲などによって目標の難易度が変えていきます。

手が届かないような高すぎる目標では、実現が難しいため社員のモチベーションが低下します。逆に目標が低すぎても簡単にクリアできるためモチベーションがあがりません。どちらにしても、実力からかけ離れた目標では社員の士気が下がります。個人の成績はもちろん、ひいては会社の業績に悪影響が出る可能性があるため、上司と相談しながら設定することが大切です。

ポイント4

目標の設定をした後、社員が悩んだり、つまずいたりすることが多々あります。目標が達成できるようPDCAを回していけるようなサポート体制も必要です。

プロセスを標準化する

業務のプロセスを評価するには、プロセスを標準化し、誰にでもわかるようにすることが重要です。プロセスの標準化は新たな方法を作り出すのではなく、今までの業務遂行の中からベストプラクティスを見つけ標準化します。

これにより、どの社員でも同じ方法で成果を得ることができ、また、同じプロセスであれば、異なる社員に対しても共通の評価内容を用いることが可能です。

プロセスの重要度を決定する

プロセスによっては重要度が異なります。どのプロセスを優先することが会社から評価されるのか、会社と社員の共通認識として、プロセスの優先順位を明確にします。評価項目間の重要度は重み付けして求めるなど、あくまでも評価が定量化できるよう数値化します。

役割分担を明確にする

同じプロセスでも役割がそれぞれあります。誰がどこまで役割を担うのか、共通認識として役割分担を明確にします。その際、役割分担のレベルや比率をなるべくわかりやすく数値化します。

プロセス評価導入事例

プロセス評価の導入の仕方は企業により様々です。実際に導入した企業の事例をご紹介します。

日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業の支店(営業部署)では、プロセス評価により業務改善にも効果を得ています。(評価比率:成果評価50%、プロセス評価50%)

上司が社員に今後の人事考課をプロセスも評価してほしいのか、業績のみの評価でいいのか尋ねたところ、短期的に業績評価が出やすい営業部署にもかかわらず部署内の社員全員がプロセスも評価する方を望みました。また、プロセス評価の方法についても、営業所長や営業員たちが日々の業務からどのような評価方法がいいのか徹底的に話し合い、社員が実践すべき「基本行動」をまとめました。

基本行動がまとまったことで、それに従って社員それぞれが自律的に動くことができるなど、業務改善につながっています。

【参考】in the looop編集部:対談シリーズ[浅井浩一 ✕ 斉藤徹]〜悩めるミドルマネージャーたちへ〜成果かプロセスか、評価方法は部下自身から引き出す

トヨタ東京カローラ株式会社

トヨタ東京カローラでは、曖昧さがなく評価しやすい方法でプロセス評価を実現しました。(評価比率: 業績評価50%、プロセス評価20%、チーム評価30%)

2002年にそれまでの職能的人事制度から業績評価を中心とし、プロセス評価とチーム評価を含めて総合的な判断をするように変更しました。評価内容は職種ごとに違い、例えば営業であれば、「営業活動の流れ」「取り組み姿勢」の二つに分類し、さらに詳細な評価項目をトータルで20項目設定。プロセス評価は「〇×」で評価し、「〇」ひとつを1ポイントとし、MAX20ポイントとして数値化し、難しくなりがちなプロセス評価をわかりやすく評価しやすいよう評価方法を構築しています。(図表3)

図表3 営業スタッフ プロセス評価

【出典・参考】総務省:【地方公共団体等における人事評価システムの取組事例】

地方公共団体(静岡県・東京都)

静岡県と東京都は、プロセス評価として行動を指標化し、職員の行動変革を実現しました。

静岡県では、2009年に開始した管理者を対象とした人事評価(課長級以上)において、コンピテンシー評価を導入しています。その内容は、行動を8つに分類し、さらにそれぞれ10の具体的行動を例文として示し、日々の行動を評価しています。(図表4)

東京都は一般職員に対し、プロセス評価として「求められる行動」「望ましくない行動」を示しています。東京都・静岡県共にプロセス評価によって職員の行動変革を促しています。

図表4 静岡県

【出典・参考】総務省:【地方公共団体等における人事評価システムの取組事例】

まとめ

  • 「プロセス評価」とは結果だけではなくそこに至る過程(プロセス)を評価する人事考課手法の一つ
  • プロセスを評価するだけでなく、人材育成や業務改善も期待できる
  • プロセス評価の導入には誰もがわかりやすく定量的な評価ができるようにすることが重要なため、評価基準を標準化・見える化することが大切
  • プロセス評価導入のポイントは「適切な目標設定」「プロセスの標準化」「プロセスの重要度の決定」「役割分担の明確化」である
  • プロセス評価は企業ごとにあった導入比率や内容を構築することで機能していく

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