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2018年10月5日(金)更新

専門職制度

企業におけるキャリア開発の選択肢となる専門職制度。人事政策のひとつとして導入する会社も少なくありません。複線型昇進制度とも呼ばれるこの手法は、どのようなものなのでしょうか。また、そこにあるメリットやデメリットや、導入の事例をご紹介します。

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専門職制度とは?

専門職制度とは、企業における人事制度のひとつで、特定の分野における専門的な知識や能力を評価して、管理職や役員と同じように厚遇するものです。職人のように技術力を持った従業員や、特定の資格を有する人材が対象として想定されます。

業務の内容は企業によって異なりますが、基本的には得意分野において貢献することが求められます。通常であれば管理職に与えられるような権限を付与され、自分以外のスタッフを率いるような場面も想定されます。管理職はジェネラリストとしての素養が求められるのに対して、専門職に求められるのはあくまでもスペシャリストとして企業に貢献することです。そのため、等級の設定があったとしても、それは社内のヒエラルキー的な階層ではなく、専門分野にいかに精通しているかということが主軸となります。

専門職制度の歴史

日本における専門職制度は意外と古くから導入されており、既存制度の穴を埋めるものとして1960年代頃から登場してきました。既存制度とは部長や課長、あるいは平社員といった階層によって処遇を決めるものであり、例えばエンジニアとして高い技術を有していても賃金に反映されにくくなっています。

階層評価の欠点を補うために職能給制度というものもありました。これは、一定以上の能力を認めることができればポストに就いていなくて昇給させるものです。処遇の公平性という面ではこれによって解決できることも多くあるのですが、一方で、「課長級」や「部長級」といった仮想的であいまいな階層を生み出し、人事管理の混乱につながったという側面もあります。

これら既存の制度の欠点を補い、人材の育成と活用を促す目的で導入されるようになったのが専門職制度です。得意とする分野での能力を純粋に評価してもらえるので、役職に就いていない社員にとっては、働く意欲や自己を向上させるモチベーションにもなります。個人の能力が成長して、それを組織内の役割分担として高レベルで発揮してくれれば企業にとっての利益になります。こうして、この制度を取り入れる企業がしだいに増えていきました。

専門職制度導入のメリット

ここで、専門職制度を導入するメリットについて見てみましょう。これこそが導入の目的となるものですから、いちばん最初にしっかりと考えておくことが必要です。

人事処遇の公平化

役職やポストに就かなくとも、専門的な知識や能力を持っていれば高く処遇されるのがこの制度です。例えば、社内の役割として部下をまとめるような仕事ができなくても、管理職と同等かそれ以上の給料を受け取ることも可能です。管理職を目指す以外にもキャリアステップの設定ができるようになり、多様な社会における公平性の確保につながる制度だといえます。

専門性の高い人材を活かす

研究開発を行う現場では高度な専門知識や技術が必要です。専門職制度は、その知識や技術を持った社員の働く意欲を高めるものとして期待できます。現時点で認められるまでに至らない従業員にとっては、ひとつの目標として機能するでしょう。制度の導入によって社内に事例ができ、一人ひとりのモチベーションアップになれば、それは業績の向上にもつながります。

専門的技術の向上

専門職制度を適用する従業員は、その分野のプロフェッショナルとして一定の権限や裁量が認められます。管理職でなくても自由度の高い業務遂行が可能となるので、マネジメント層が判断できないような技術力の向上もあり得ます。本来、組織運営の能力と技術開発の能力は別物ですから、エンジニアなどの専門家に得意分野を任せるのは、理にかなった経営手法だといえるでしょう。

専門性の高い人材の獲得

特定の分野で資格を保有していたり、高い知識と技術を持っていたりする人は、もちろんその自覚があります。そしてそれを発揮する場所を求めるのは当然です。専門職制度の導入はこういった人材を呼ぶ魅力となって、人事部が行う採用活動にも寄与するでしょう。

また、人材育成の面でも有効な制度であり、自分をより高めようとする社員のモチベーションにもつながります。採用と育成の両面で活用していけば、高い専門性を持った人材を社内に確保していけます。

専門職制度の問題点

専門職制度にはもちろん問題点や懸念点もあります。ただ、あらかじめ想定されることを検討して対策を講じれば、メリット最大限に活かすことにつながります。問題が起きる前にその芽を摘めるように、どのような問題点が考えられるのか見てみましょう。

管理職ではないというイメージ

専門職としての手当をもらったり、専門職の社員として認定されることは、社内の階層とは別に行われます。それでも処遇としては部長や課長と同等であったりしますから、社内でのポジションはそれなりに高いといってもいいでしょう。

しかしその厚遇も、職人的な「ウデ」を見込まれてのものであり、管理職である人たちとは違ったイメージで見られます。日本ではどうしてもポストに就いている人を「エラい」と考える人が多いので、会社からの評価に比べて周囲が持つイメージは低くなってしまうことも否定できません。組織風土にもよるのですが、同等の評価を得ている人同士であっても、管理職より専門職を低く見る人がいるのも事実です。

キャリアプランの不明確さ

複線型昇進制度とも呼ばれるのが専門職制度です。つまり、もともとの制度として考えられる管理職としてのポストでステップアップしていくキャリアと、それとは別の選択肢として用意されるキャリアプランであるということです。ただ、係長、課長、部長、といった明確に段階が分かるものと比べると、どのようにキャリア開発をしていけばいいのかが不明確にならざるを得ません。この不明確さを解消していくことが、人事政策として導入する場合のひとつの鍵になりそうです。

専門職人員の肥大化

階層的な社内ポストに対して手当や昇給を設定する場合、組織の大きさや事業内容によってある程度はその形が決まります。そして、その結果として、各階層の結節点となる管理職の数も、ある程度の段階で抑制されるのが自然でしょう。これに対して専門職として評価される人材の数は、一般論としては社員数そのものが上限です。したがって、認定される人員数が肥大化することが懸念されます。これは賃金が経営を圧迫する可能性につながるので、一定のルールを設けてなんらかの対策を考えておく必要があるでしょう。

専門職制度の導入事例

専門職制度の導入を考えている人に参考にしていただくために、すでにこの制度を導入して成功している企業をご紹介します。あなたの会社の社員を育成することや、人事戦略の全般におけるヒントになるのではないでしょうか。

オムロン株式会社

健康器具などの電子機器メーカーとして知られるオムロンは、エンジニアが技術力をもって事業に貢献するようにと2005年から専門職制度を設けています。認定されれば自分が専門とする分野で大きな裁量が与えられという、中長期的な視点で研究開発に邁進できる制度です。専門職になるためには、その分野での知識や技術の他に、これまでの実績や事業貢献への期待度などが認められなくてはいけません。国内のグループ企業で約10,000人いる従業員のうち、2012年3月現在で専門職として活躍しているのは約60人となっています。

技術畑の社員であっても実績を評価されて出世すると現場から離れることが多くなります。一方で、専門分野を持つエンジニアは昇給を受けつつも実は現場で働きたいと考えているものです。オムロンの専門職制度では、ある程度広汎な責任と裁量を持ちながら、現場に近いところで仕事を続けることが可能となっています。また、他部署とはもちろん、場合によっては他社とも連携しながら新しい技術の開発を行えるというのも魅力のひとつといえるかもしれません。

日本の企業では一般的に技術分野での専門職認定が多く、オムロンも同様です。ただし、生産管理や営業、税務や法務といった管理部門に属する分野にもその領域を広げており、今後も追加が検討されています。

【参考】【オムロン】専門職制度について
【参考】【オムロン】キャリアビジョン・専門職制度・人財公募制度
【参考】【オムロン】専門職の声

大日本印刷株式会社

大日本印刷では、2001年から「エキスパート」という呼称を導入して、専門分野を持った職人といえる人たちの厚遇を開始しています。しかし、市場環境の変化の中で、専門の知識や技術を持った人材をさらに多く育成する必要が生まれてきたことから、2004年に新しい専門職制度を設けることとなりました。

それまでの専門職に設定されていた等級を変更した他には、以前の制度では認定を受けることができなかった管理職の社員にも、その間口を広げています。これによって、個々人が自立したプロでありながらも連携して新しい技術を生み出していくという、企業理念や指針にそった行動を誘発していくのが狙いです。

また大日本印刷では、この専門職制度のほかにも、社内での公募制度やFA制度、ベンチャー制度などを導入しています。社内留学や資格奨励の制度もあります。それぞれの政策によって有能な人材がさらに育成され、社内が活性化していくための総合的な人事政策の実践として注目されるところではないでしょうか。

【参考】【大日本印刷】高度な専門性を処遇
【参考】【大日本印刷】人材開発・育成の制度

まとめ

  • 意外と古くからある専門職制度ですが、時代や環境の変化にあわせて変えていくべき点はあるようです。一方で、その本質となる「専門知識や専門技術の評価」は、あるいていど普遍的な価値として残していくべきものなのかもしれません。
  • 特に技術開発の分野ではこの制度が功を奏している企業もありますから、そういった会社をお手本にしつつ、自社の状況に合った制度設計をしていくのが良いでしょう。

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