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2018年1月21日(日)更新

システム思考

企業や組織は大きくなるにつれて、さまざまな問題が生じます。強力なリーダーや優れたマネジメントができる人材は必要ですが、それだけでは自ら機能する組織を作り上げることはできません。今回は組織マネジメントにおいて、必要不可欠であるシステム思考の意味や手法、事例、参考図書ともにご紹介いたします。

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システム思考とは?

システム思考とは、解決すべき対象や問題を「システム」として捉え、多面的な見方で原因を探り、問題解決を目指す方法論です。外資系企業の多くが取り入れているマネジメント手法の一つでもあり、安易な解決方法で問題の解決を目指すのではなく、根本的な解決技法として注目されています。

現在、私達の周りにはさまざまな要素が複雑に絡み合い、存在しています。会社や組織においては、考え方や性格が異なる多種多様な人材が共に働いています。さらに経済がグローバル化するにあたり、価値観や文化が異なる人材とも一緒に働く機会も増えています。その結果、組織がどんどん複雑化していき、さまざまな問題が生じることになります。良くも悪くも相互に作用し合い、潜在的な原因が多いため、システム思考による解決方法がより重要性を増してきます。

システム思考のアプローチとして有名なのが「氷山モデル」です。「出来事」→「パターン」→「構造」→「メンタルモデル」という形で根本的な原因を探るやり方が一般的です。

その他にも「ループ図」、「システム原型」、「ストック&フロー図」、「XY関係図」、「システムダイナミクスモデル」、「レバレッジポイント」、「ステークホルダー分析」、「シナリオ分析」といった手法があり、自社にあったアプローチを選択できることもメリットとされています。

システム思考と氷山モデル

システム思考を使った問題解決でよく使われるモデルが「氷山モデル」です。この「氷山モデル」のアプローチは「出来事」、「パターン」、「構造」、「メンタルモデル」の4つに分けて、考えます。

出来事

海上から見える氷山は小さくちっぽけな存在ですが、海中でははるかに大きな氷山が隠れています。映画化された豪華客船タイタニック号の悲劇も、海中に隠れた巨大な氷山との衝突が原因といわれています。

システム思考のアプローチとして、目に見える形が現れるのが「出来事」です。しかし、それはほんの一部にしか過ぎず、目に見える氷山の一角(問題の一部分)を削ったところで、海中に隠れた大きな氷山(問題)の解決には至りません。目に見える問題の背後にどんな根本的な原因が隠れているかを探る上で、「出来事」は大切な始まりの部分でもあります。

パターン

「出来事」を確認できたら、その「出来事」にどのようなパターンが見られるかを確認します。このパターンは、行動や変化を指します。目に見える形で起きた「出来事」はどのような行動に基づいたものか、時間的にどんな変化を伴うか、どんな傾向なものかを探ります。

例えば、遅刻・欠席など勤怠が悪い部署があるとします。この「遅刻・欠席など勤怠が悪い」が「出来事」にあたります。なぜ「遅刻・欠席など勤怠が悪い」かを考えると、その部署は他の部署に比べて残業時間が多い月に勤怠が悪くなる傾向があります。この「残業時間が多い月」がパターンにあたります。しかし人事部として、「残業時間を少なくしなさい」と指示を出すことが最適な解決方法ではありません。今度はこの「パターン」を引き起こす「構造」を突き止める必要があります。

構造

問題となっている「出来事」が確認でき、その「パターン」を把握できたら、「パターン」を引き起こす構造を探ります。先ほどの例で、勤怠が悪い部署では残業時間が多い月に勤怠が悪いというパターンがわかっています。

では残業時間が多くなってしまう構造は何かを探っていくと、普段からコミュニケーションを活発に行なっている部署は残業が少なく、勤怠も良好だという構造がわかってきました。逆に勤怠の悪い部署ではミーティングだけでなく、社員同士の普段の会話も少ない傾向にありました。

このように、「業務量が多い」、「優秀な人材が少ない」など短絡的な原因が遅刻や欠席の原因ではなく、「コミュニケーション不足」→「生産性の低下」→「残業時間が多くなる」→「長時間労働による体調不良」→「勤怠の悪化」という構造がわかってきます。

メンタルモデル

最後に、「構造」を創り出す関係者を特定する必要があります。この「構造」を創り出す関係者を「メンタルモデル」といいます。

先の例で、「コミュニケーション不足」から始まる「構造」に勤怠悪化の原因がありました。では、なぜ組織がコミュニケーション不足に陥ったかを探っていくと、部署を監督する部長が原因であるとわかりました。

この部長は元々優秀な営業職であり、常にトップクラスの営業成績を出していた優秀なプレイヤーでした。しかし、必ずしも優秀なプレイヤーが優秀な管理職になるとは限りません。案の定、部長は自分自身の営業を優先しており、部下のマネジメントが疎かになっていました。そのため、十分なコミュニケーションが取れておらず、業務に無駄が発生し、悪循環が発生しています。

また、部長本人は自分にも他人にも厳しい人だったため、部署全体が円滑なコミュニケーションができるムードでもなく、緩衝材となる課長職やムードメーカーなどが育っていないということもわかりました。このように「構造」を創り出している関係者を洗い出すことで問題の根本的な原因を探ることができます。

システム思考では、このように「出来事」→「パターン」→「構造」というアプローチ(3回のなぜ)を繰り返すことで、問題の根本的な原因を探ることができます。システム思考の基本的な方法でもあるので、ぜひ参考にしてみてください。

システム思考の手法例

システム思考の一般的なアプローチとして、「氷山モデル」をご紹介しましたが、システム思考には他にも多くの手法が存在します。

ループ図

「氷山モデル」の「構造」を可視化する手法として、「ルーブ図」があります。このルーブ図は、構造の流れをサークルにし、構造を把握します。「出来事」を起こしている複数の要素の因果関係を説明するのにも役に立ちます。

システム原型

システム原型とは、異なる分野において共通して見られる問題構造の型を示すことができます。一見異なるループ図でも、構造を読み解いていくと大きなループ図の中に含むことができる型として可視化できます。

ストック&フロー図

システムの中ではさまざまな要素が含まれており、相互に作用し、影響しあっています。その要素がどのようなフローで流れ込んでおり、蓄積されているかを把握することで、組織内の出来事やパターン、構造が理解しやすくなります。システム思考の中でも高度な手法の一つでもあり、より複雑な要素が絡み合っている組織や問題を分析する上で最適な手法とされています。

システムダイナミクスモデル

システムダイナミクスモデルとは、1970年代にマサチューセッツ工科大学の研究グループによって考案された、シミュレーションの一つです。

システム思考よりもさらに高度化されたアプローチでもあり、より複雑な要素を分解し、構造を理解するためにコンピューター・モデリングを用います。高度な専門知識や情報が必要となるため、経営コンサルティングなど外部の専門会社に委託することが望ましいです。

レバレッジポイント

レバレッジポイントとは、てこの原理が働く作用点を指します。最小限のコストで最大限の効果を発揮するためにもビジネスでもしばしば議論の対象となります。

しかし、数多くの要素が絡みあり、複雑化したシステムの中でレバレッジポイントを見つけることは容易ではありません。ビジネススキームや戦略の構造を正確に把握するためにも、関係者同士の密接な連携や現場視察など試行錯誤を繰り返すことでレバレッジポイントを見出すことができます。

ステークホルダー分析

ステークホルダーとは、一般的に「利害関係者」を指します。しかし組織内では「権限を持つ関係者」を指すことが多いです。

例えば、組織が大きくなるにつれて、より迅速な経済活動を行なうためにも、権限委譲は組織にとって重要な転換点でもあります。しかし、権限を持つ役職に就いている関係者の中には権限委譲の方針に対して、さまざまな考えを持っています。ひとりでも消極的な関係者がいれば、権限委譲は迅速に行なわれず、組織の硬直化を招いてしまいます。

そこで、権限委譲を行なう上でステークホルダーを洗い出し分析することで、ステークホルダーが抱える問題や考えを把握することができます。新規事業の立ち上げや構造改革などにも欠かせない分析手法とされています。

シナリオ分析

シナリオプランニングとも呼ばれるシナリオ分析とは、内戦後の再興を目指す国や事業環境の変化が激しい経済界において、しばしば用いられる戦略の一つです。

共有のビジョンや長期戦略の策定において使用されます。ビジネス界においては自社が提供できる商品やサービスの需要が高い時期を予想し、想定されるシナリオを作成することで最大限の売上や利益を上げる目的で活用できます。

GEにみるシステム思考の成功事例

システム思考により、企業を成功へと導いた事例としてゼネラル・エレクトリック(以下、GE)が挙げられます。

強力なリーダーが不在でも機能する組織

GEの元CEOであるジャック・ウェルチは社員一人ひとりに自ら考え、行動する思考を育て、組織を活性化させた人物として有名です。カリスマ性を持った強力なリーダーは組織を活性化させる上で高い効果を発揮できますが、リーダーが不在になったとき、組織として機能しなくなることが多々あります。

しかし、GEはシステム思考や自ら考える文化を根付かせたことにより、ジャック・ウェルチという強力なリーダーがいなくなっても機能する組織に成長することができました。

実直な行動が組織にシステムが浸透する

システム思考を企業や組織に浸透させるためには、実直な行動が欠かせません。GEの元CEOジャック・ウェルチは多忙な日々の中でも、GE流の経営を社員との綿密なコミュニケーションにおいて浸透させていきました。このように、システムを浸透させるには並大抵でない労力と時間がかかります。システム思考を持った組織を作り上げるには、実直な行動が欠かせないということを肝に銘じておきましょう。

物事を俯瞰的に見る能力が大切

既にご紹介しているように、システム思考の基本は物事を多面的に捉える力です。人間は過去の経験や成功体験によって、物事を判断しがちです。そのため、物事を俯瞰してみることができなくなります。組織内で起こっている出来事のパターンや構造、因果関係を正確に把握するためには、一度立ち止まり、全体を俯瞰的に見る力が必要となります。

【参考】なぜGEは“システム思考”を全社に浸透できたのか? (1/3)

参考書籍

最後に、システム思考を学ぶ上で参考になる書籍を紹介いたします。

入門!システム思考

著者である枝廣淳子氏は、環境ジャーナリストでもあり、システム思考を広める識者でもあります。システム思考の基本であるループ図や「構造」を中心にシステム思考を解説しており、これからシステム思考を学ぶ人向けの入門書として、相応しい著書といえます。

【参考】amazon 入門! システム思考 (講談社現代新書)

学習する組織――システム思考で未来を創造する

参考事例も多く、本質的な問題にアプローチしていることからも評価が高い著書です。また、マネジメント職に就いたばかりの人材でもわかりやすく解説されており、学習する組織やチーム学習について学ぶことができます。チームマネジメントを担う人材だけでなく、自分自身の思考を変えるにも有効な著書です。

【参考】amazon 学習する組織――システム思考で未来を創造する

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

システム思考の手法の一つであるシステムダイナミクスモデルを体系的に学べる著書です。課題解決能力やシステム思考を身につけたい方はもちろん、より複雑なシステム思考を習得したい方にも読み応えがある著書でもあります。スウェーデン政府の人口政策の考え方など豊富な具体例を用いて、システム思考を解説してくれています。

【参考】amazon 世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

『入門!システム思考』の著者でもある環境ジャーナリストの枝廣淳子氏が執筆している、システム思考の入門書です。システム思考の基本的な考え方や手法や概念をわかりやすく解説しており、読みやすいと評判です。解決困難な問題に直面している方や、マネジメントにおいて試行錯誤を行なっている方に読んでいただきたい著書です。

【参考】amazon なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

まとめ

  • 優れた組織を作り上げるのに、必要不可欠であるシステム思考。経営者はもちろん、マネジメントを担う人材や社員ひとり一人が身につけるべき思考でもあります。
  • しかし、このシステム思考は一朝一夕で身につけることはできません。システム思考を使ったトレーニングやフィードバックを何度も行う必要があります。
  • まだまだ日本の企業には浸透しきっていない思考でもあるため、組織の硬直化に悩んでいる人事担当者も学ぶべき思考でもあります。

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