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企業文化

2020年12月4日(金)更新

企業文化とは「従業員の間で意識的あるいは無意識的に共有されている価値観や行動規範」です。優れた企業文化は企業に大きな競争優位性をもたらしてくれます。企業文化は各企業の歴史や伝統、経営者の思考がベースとなっており、その内容は企業によって大きく異なるため、自社独自の企業文化を形成しなければ十分な成果を得ることができません。当記事では、独自の優れた企業文化を形成するために必要な情報やノウハウを、メリットと注意点、形成要素、醸成方法、企業事例などの項目に整理して分かりやすく説明します。

企業文化とは

企業文化とは、「従業員の間で意識的あるいは無意識的に共有されている価値観や行動規範」です。英語では「corporate culture」や「company culture」と表記します。

戦略的に扱う場合には、「ビジョンの実現やミッションの達成を目的として、全従業員で共有する価値観や行動規範」となります。

優れた企業文化は競争優位性の源泉になる

企業文化は、従業員の判断や行動に大きな影響を与え、外部からその企業を見た時のイメージにも結び付く重要なものです。

企業文化はその企業と従業員たちが長い時間をかけて作り上げてきた独自のものであり、模倣しても同じ効果を得ることはできません。マネジメントの父として多くの功績を残したピーター・ドラッガー氏も、企業文化の重要性を「企業文化は戦略に勝る(Culture eats strategy for breakfast)」という言葉で表現しています。

優れた企業文化は「全ての従業員が創業者や経営者の思いを正しく理解し、自分の役割を素直に受け入れ、同僚やチームメンバーと連携を図ることができる環境」を作り上げてくれます。従業員たちは、周辺環境の変化に戸惑うことなく迅速かつ柔軟に立ち回り、企業にとって最善の判断や行動をすることができるようになるでしょう。

自社で多くの成果をあげられる人材の獲得や育成を容易にし、長期に渡って高いパフォーマンスを発揮してもらえる状態は、競争優位性に繋がります。そのため、いち早く企業文化の醸成や変革に取り組む必要があるのです。

戦略的企業文化の5つの条件

企業文化が共通の価値観だと聞くと、抽象的な精神論かと思われることもありますが、成功企業の多くは、企業文化を仕組みにまで落とし込み、戦略的に活用しています。

そのような「戦略的企業文化」に必要な条件が以下の5つです。

  1. 企業文化は生き残るための「必須条件」
  2. 企業文化は事業と合致しているべき
  3. 企業文化は組織をまとめる土台となるもの
  4. コア・バリュー(価値観)に基づく仕組みをつくり浸透させる
  5. 計画的に段階に分けて企業文化を構築する

企業文化と企業風土の違い

「企業文化」と混同しやすい言葉に「企業風土」があります。この2つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。

「風土」という言葉には、「その土地の独自性によって生まれ、培われたもの」という意味があります。一方で「文化」という言葉には、「人間が自らの手で築き上げたもの」という意味があります。

「企業風土」は世の中の流れとは関係なく企業内部で自然に培われるものであるため、良い意味でも悪い意味でも世代を超えて継承され、大きく変化することはありません。それに対し、「企業文化」は外部の影響を取り入れながら変化することができるため、人の手によって戦略的に形成、醸成、変革することが可能です。

企業文化が組織にもたらす効果

元ザッポス社のCOOであり、現セコイア・キャピタル社のパートナーであるAlfred Lin氏は、優れた企業文化が会社にもたらす好影響として以下の6つをあげています。

  1. First principles … 物事を決定する際の第一原則となる
  2. Alignment … チームの皆の足並みを揃える基準となる
  3. Stability … 内部を安定させる
  4. Trust … お互いへの信頼を強固なものにする
  5. Exclusion … 誰を手放すべきかが明確となる
  6. Retention … 誰に残ってもらうべきかが明確となる

【参考】「結局、人材選びのコツは社風に合うか」 世界最高峰のVCセコイア・キャピタルが“企業文化”にこだわるワケ - ログミーBiz

この6つの好影響を企業視点のメリットとしてまとめると次のようになります。

意思決定のスピードと精度が上がる

ビジネスの現場では日々多くの決断を求められますが、全ての意思決定を素早く正確に行うことは容易ではありません。

しかし、物事を決定する際の第一原則として企業文化を共有しておくことで、迷いによるタイムロスや先入観による判断ミスをなくし、素早く正確に意思決定を行えるようになります。

チーム力の向上

「この企業では何が正しくて何が間違いなのか」という共通の基準を知っていることで、従業員たちは「自分の言動が否定されるかもしれない」という不安を感じることなく、リラックスした状態で働けるようになります。

また、組織内のコミュニケーションが活性化し、自発的に情報共有や連携が行われるようになります。

【関連】心理的安全性が職場にもたらす効果と高め方、測定方法まで徹底解説/BizHint

生産性の向上

「企業のコアとなる価値観」や「企業が求める具体的な行動」を正しく理解した従業員たちは、自分のあるべき姿について考え、パフォーマンスの最大化に向けて意欲的に取り組むようになります。

また、組織内で不毛な争いや駆け引きが行われなくなり、ミッションの達成に向けて一丸となって取り組めるようになることで、生産性が大幅に向上します。

採用の精度があがる

「自社の企業文化に合っているか」という基準で応募者を評価することにより、採用のミスマッチを未然に防ぐことができます。また、常日頃から外部に向けて自社の企業文化に関する情報を発信しておくことで、自社の企業文化に合っている人材からの応募を増やすことができます。

企業文化を扱う上での注意点

企業文化を作る・浸透させることはメリットが多いように見えますが、扱う上での注意点もあります。合わせて確認しておきましょう。

  • 斬新なアイデアやイノベーションが生まれにくくなる可能性
    思考パターンや行動パターンが極端に似ている人材ばかりを集めてしまうと、企業内部で斬新なアイデアやイノベーションが生まれにくくなることも
  • 排他性が高まりやすい
    独自性の強い文化であるほど排他性が高く、その企業文化に馴染むことができなかった従業員が退職したり、外部に「関わりにくい企業」という印象を与えることもあるので注意が必要

企業文化を形成する8つの要素

企業文化は、以下の8つの要素で形成されています。

  1. ビジョン(Vision)
  2. 果たすべき使命(Mission)
  3. 価値観(Values)
  4. 慣行(Practices)
  5. 人材(People)
  6. ストーリー(Narrative)
  7. 場所(Place)
  8. 外部からの影響(Environment)

1.ビジョン(Vision)

企業文化の土台となる重要な要素であるビジョンとは、経営者が思い描く自社の未来像です。「企業理念」や「経営理念」という言葉に置き換えられることもあります。

ビジョンを明確に打ち立て、スローガンなどの形で明文化することで、従業員たちの意思決定や行動を正しい方向へと導くことができます。

【関連】経営理念とは?意味や目的、メリットから作り方、企業事例までご紹介/BzHint

2.企業が果たすべき使命(Mission)

ミッションとは、その企業が果たすべき社会的使命であり、ビジョンを実現するための手段です。

ミッションを十分に浸透させることによって、従業員たちは自社の存在意義や自身に割り当てられた仕事の必要性を理解し、やりがいを感じながら仕事に取り組めるようになります。

3.価値観(Values)

価値観とは、その企業にとっての価値観や価値基準、行動指針です。自社の中核となる価値観を「コアバリュー」と呼ぶこともあります。

ビジョンの実現やミッションの達成のために心掛けるべき事項や内容をバリューにすることで、従業員たちは自分の判断や行動が企業の成長や発展に大きな影響を与えることを正しく理解します。

4.慣行(Practices)

慣行とは、日常的かつ継続的に取っている行動です。どんなに素晴らしいビジョンや価値観を打ち出しても、それらが慣行として定着しなければ何の意味もありません。

「誠実・公正」という経営理念を掲げるのであれば、誰から見ても公正なビジネスルールを定め、人事評価や社内制度、組織体制においてもその言葉を体現する。また、「組織力」を重んじるのであれば、全社員が連携を図り、一丸となって仕事に取り組めるように環境を整備する。ビジョンや価値観を慣行として定着させるためには、制度の見直しや環境の整備など、企業側からの働きかけが欠かせないのです。

5.人材(People)

人材は、企業文化の形成や醸成を行う上で最も重要な要素です。ビジョンや価値観に共感し、判断基準や行動基準として活用する従業員の割合に比例して企業文化は活性化します。

企業文化への適応性が高い人材は、適応性が低い人材に比べて離職率が低く、多くの成果をあげることができます。そのため近年は、採用時に「優れたスキルや経験を保有しているかどうか」よりも「カルチャーフィットしているかどうか」を重視する企業も増えています。

6.ストーリー(Narrative)

創業にまつわるエピソードや企業の価値観に結びつく創業者の生い立ちなど、長年に渡って語り継がれるストーリーは企業文化をより明確で強固なものにします。公式か非公式に関わらず、こうした企業独自の歴史が繰り返し語られることで、企業文化が醸成されていくのです。

7.場所(Place)

場所も企業文化の形成や醸成に大きな影響を及ぼす要素です。本社や支社が設置されている土地にも独自の文化が存在しますし、建物のデザインやオフィス内のレイアウトによっても従業員たちの働き方は変化します。

企業文化を戦略的に形成、醸成する際には、立地やオフィス環境が従業員に与える影響も十分に考慮しなければならないのです。

8.外部からの影響(Environment)

周辺環境や時代の変化といった外部からの影響も構成要素の一つです。

外部からの影響を全く受けない企業は存在しません。企業文化は一度形成して終わりではなく、その時点における事業内容や目的と合致するように変化し続けなければならないのです。

企業文化の醸成・浸透方法

これまで、「企業文化は自然発生的に形成されて歴史とともに育つもの」という認識が一般的でした。しかし、近年では企業文化を戦略的に形成し、ビジョンの実現やミッションの達成に役立てたいと考える経営者が増えています。

企業文化を形成することは決して難しいことではありませんが、大切なのは作った企業文化を組織全体に浸透させることです。

企業文化の醸成や浸透には、以下のような施策が効果的です。

  • 企業文化の明文化
  • 経営者が自らの言葉で従業員に伝える
  • 制度の見直しや環境の整備
  • 経営陣や管理職がロールモデルになる
  • カルチャーフィットを重視した採用を行う

企業文化の明文化

まずは、自社の目指したい企業文化をしっかりと見極め、明文化させることが重要です。以下の3ステップを参考にしてみてください。

ステップ1:ビジョン・ミッション・バリューを明確にする

ビジョン・ミッション・バリューが曖昧なままでは、現状とのギャップを見極めることも、従業員たちから理解や共感を得ることもできません。

情報収集や企業文化のデザインに先がけて、「自社の存在理由」や「事業を通じて実現したいこと」、「そのために必要な価値観や行動指針」を明確にし、具体的な表現を用いて明文化しておきましょう。

ステップ2:自社の現状把握

起業からの期間や企業規模を問わず、人が存在する場所には多少なりともカルチャーが存在しています。全従業員を対象とするヒアリングやアンケートなどを実施し、企業に対して抱いている思いやイメージ、自社と自身の望ましい将来の姿、従業員の間で共有されている価値観や行動規範などを把握しましょう。

また、可能であれば顧客に対してもヒアリングやアンケートを実施し、自社の魅力や改善点、現時点における企業イメージ、好きな商品やサービスとその理由などについて把握しておくと良いでしょう。

ステップ3:自社独自の企業文化を形にする

現状の把握が終わったら、ビジョン・ミッション・バリューと照らし合わせながらカルチャーの取捨選択や追加を行います。

企業にとって強みや特徴となるカルチャーを残し、ビジョンの実現やミッション達成に寄与するカルチャーを追加することが理想的ではありますが、現状と大きく異なる企業文化は形骸化しやすいため注意が必要です。理想と現実のギャップがあまりにも大きく、従業員たちのモチベーション低下や形骸化などのリスクが高い場合には、時間をかけて段階的に移行することも検討しなければなりません。

経営者が自らの言葉で従業員に伝える

企業文化をきちんと明文化できたら、経営者から従業員に生の声で伝えましょう。

経営者が自らの言葉で事業に対する思いやこれまでの歴史について語り、企業文化を育む重要性について根気強く訴えかけることで、より多くの共感と理解を得ることができるでしょう。

制度の見直しや環境の整備

どれだけ優れた企業文化をデザインしても、制度や環境が伴っていなければ従業員たちは行動に移すことができません。

労働条件や評価制度、福利厚生、職場環境のレイアウト変更など、取り組むべき内容は多岐に渡ります。従業員の意見に耳を傾けながら制度の見直しや環境の整備を行い、根付かせたい企業文化との整合性を図りましょう。

経営陣や管理職がロールモデルになる

企業文化は、スローガンや理想として掲げるだけでなく、実際の行動にまで落とし込むことが大切です。しかし、手本を示さないまま「今後はこのようにしなさい」と指示を出しても現場は戸惑ってしまいます。

従業員たちにとって最も身近で影響力のある人物は経営陣や管理職です。経営陣や管理職がロールモデルとなって企業文化を体現し、企業文化に基づいたフィードバックを実施することで、従業員たちも次第に企業文化に基づく判断や行動を行うようになります。

カルチャーフィットを重視した採用活動を行う

カルチャーフィットを重視した採用活動は、企業文化の活性化や浸透を図る上でとても効果的です。自社の企業文化に適合する人材を意識的に採用することで、新入社員が自社にとって望ましくない文化を持ち込んでしまうリスクも最小化することができます。

【関連】カルチャーフィットの意味とは?注目される背景や見定め方、事例を紹介/BizHint

企業文化を変革するには

ここまで、企業文化を1から作る方法と浸透方法について説明してきました。では、すでに根付いている企業文化を根底から変えたい場合はどうすればよいのでしょうか。


【企業文化の変革方法】

  • ビジョン・ミッション・バリューの見直しを行う
  • 自社の現状を把握する
  • 新たな企業文化をデザインし、明文化する
  • 必要に応じて制度の見直しや環境の整備を行う
  • 経営者が自らの言葉で従業員に発信し、経営陣や管理職がロールモデルになる
  • カルチャーフィットを重視した採用を行う

上記を見ると分かるように、企業文化の変革方法は1から場合とほとんど同じです。しかし、長い時間をかけて醸成、浸透した企業文化を短期間で大きく変えることは決して容易なことではありません。

エンゲージメントやモチベーションを大幅に低下させてしまったり、離職率が急増してしまわないように、従業員たちの声にしっかりと耳を傾け、取り組みに対する反応を確認しながら少しずつ進めていきましょう。

優れた企業文化を持つ企業事例2選

最後に、優れた企業文化を持つ企業の事例を2つ紹介します。

ザッポス社

ザッポス社は顧客第一の企業文化で有名な米国企業で、靴のネット通販市場におけるパイオニアです。

コアバリューの1つとして「サービスを通してWOWを届けよ」を掲げるザッポス社では、カスタマーサービスの現場オペレーターが「顧客満足のためであれば、ほとんど何をしてもよい」という絶大な裁量権を持っています。また、コアバリューの浸透と実践を徹底するため、採用時には保有スキルよりも企業文化との適合性を重視し、教育にも驚くほどの時間とコストをかけています。

ザッポス社の採用面接に合格した人材は、研修が終わった時点で2つの選択肢を与えられます。1つはザッポス社で働くこと。そして、もう1つが4000ドルをもらってザッポス社を去ることです。

このように「自分はこの会社に合わない」と感じた人材が自発的に辞退を申し出やすい仕組みを設けることで、ザッポス社は高いカルチャーフィット率とユニークな企業文化を維持しているのです。

【参考】従業員の幸せが顧客と社会の幸せを生む―米国優良企業が実践する「コアバリュー経営」

株式会社リクルートホールディングス

株式会社リクルートホールディングスも明確な企業文化を持つ会社です。

創業者の江副浩正氏が創業当初から言い続けていたのが、「社員は皆、経営者である。」という言葉。社内にはこの言葉通り、社員が何かに挑戦することを奨励する空気があります。加えて、社内制度もこの社風に準じたものになっていて、企業文化をより確固たるものにしているのです。

たとえば「新規事業提案制度」では、勤続年数や職位に関わらず提案をすることができ、提案が承認されると、実際に提案者自身が中心となって事業化されることになっています。このような制度により、社員は事業経営のセンスを磨き、主体的に業務に取り組んでいきます。

株式会社リクルートホールディングスでは、こうした企業文化のもとで育成された社員たちが、企業の業績に貢献していく仕組みを構築しているのです。

【参考】リクルート創業期の「心理学的経営」とは何か?/人材・組織開発の最新記事(コラム・調査など)/リクルートマネジメントソリューションズ
【参考】新規事業生む組織とは?リクルート名物制度の秘密:日経ビジネス電子版

まとめ

  • 企業文化とは社員の行動や意思決定を規定し、外部から見た企業イメージに結びつくなど、事業経営に様々な影響を与える重要なものである
  • 社員一人ひとりの自主性と創造性が必要とされる現代のビジネス社会において、企業文化の重要性はますます高まっている
  • 企業文化は各企業の歴史や伝統、経営者の思考がベースとなっているため、他社の企業文化を模倣するのではなく、各企業が自社独自の企業文化を作り上げなければならない
  • 今後の企業経営には、企業が存続していくために明確な価値観や行動規範を打ち出し、それを計画的に浸透させていくという、戦略的な企業文化の構築が必要になっていく

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