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2018年1月21日(日)更新

ネゴシエーション

ネゴシエーションとは、意見や方向性の不一致が発生した際に議論によって合意や調整を図ることを指し、そのスキルやテクニックはネゴシエーションスキルと呼ばれます。営業職以外のビジネスマンにとっても大きな意味を持つネゴシエーションですが、実際の現場において誤解されたまま使用されることも少なくありません。ネゴシエーションの意味や効果を正しく理解し、様々なビジネスシーンで活用できるように解説していきます。

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ネゴシエーションとは

ネゴシエーション(negotiation)には『交渉』や『協定・取引の際の話し合い』という意味があります。

2台の機器が通信を確立することを目的としてお互いのモジュールやスイッチポート、通信規格、通信速度、ブラウザ、デバイスなどのあらゆる情報を提供し合うことを表すIT用語としても使用されているネゴシエーションですが、ビジネスシーンでも同様に、ある目的を達成するためにお互いに情報を提供し、すり合わせを行うという意味で使用されています。

ネゴシエーションの目的と必要性

ネゴシエーションは、相手の声にしっかりと耳を傾けることによって交渉において最重要視している項目がどれであるかを見極め、その部分について譲歩もしくは協働することで、自身の重要視している項目について受け入れてもらうことを目的としています。

ネゴシエーションの必要性を正しく理解することにより、ビジネスシーンへの積極的な導入が可能となるでしょう。

利害の衝突が生じるとき

ビジネスシーンにおける利害の衝突とは次のようなものを指します。

  • お互いに利益の追求を目指している企業間取引
  • より質の高い製品を生み出すために完成時期を延ばしたい製造部と販売機会を失いたくない営業部
  • 自発的な成長を促したい上司と的確な指導を求めている部下
  • 当日中に消化して欲しい仕事がある上司と翌日まで延ばして欲しい部下

このように双方の間に利害の衝突が生じた場合には、ネゴシエーションによって解決を図る必要があるでしょう。

問題の解決方法が不明確なとき

ビジネスシーンでは問題解決方法が不明確であり、お互いの主張をぶつけ合うだけとなるケースも少なくありません。

  • 売上アップにはキャンペーンの実施が必要だと考える営業マンと価格の見直しが必要だと考える小売業者
  • 攻めの経営戦略を組み立てる経営幹部と、今は守りに徹する時期だと考える従業員
  • 時代に合わせて変化していくべきだと主張する若手社員と伝統技術にこだわるべきだと主張するベテラン社員

解決方法が不明確である場合、お互いに主張し続けるだけでは解決の糸口を掴むことはできず、対立を深めてしまうことになりかねません。 ネゴシエーションはそのような事態の解消に必要不可欠なのです。

誤って解釈される『ネゴシエーション』

ネゴシエーションは全てのビジネスマンが身につけるべきスキルでありながら、交渉という言葉の持つ力強さから誤った解釈が行われ、敬遠されることが多々あります。 様々な問題を解決へと導いてくれる優秀なコミュニケーションツールとして会得するため、ネゴシエーションに対する誤解を一つずつ解いていきましょう。

ネゴシエーションは専門家だけが行うものか?

ネゴシエーションは交渉人などの専門家のみが扱う交渉術であると考えている方もいますが、決してそんなことはありません。 ネゴシエーションは意見が対立した際に議論することによって調整を行い、お互いに納得できる結論を導き出すための会話術なのです。

ネゴシエーションは無意識のうちに行われている

交渉の専門家が活用しているイメージの強いネゴシエーションですが、全てのビジネスマンは日々の業務の中で多くの課題や衝突と向き合っており、その解決方法として無意識のうちにネゴシエーションを行っているのです。 人生は選択と交渉の連続であり、交渉を有利に進めることのできるネゴシエーションは、人生の成否を左右する重要な要素であるといっても過言ではないでしょう。

要求貫徹と人間関係維持のジレンマ

お互いにどうしても譲れない条件がある場合、相手を説き伏せようとして論戦となることがありますが、このようなやり取りはネゴシエーションとは呼べません。 主張し合うだけの論戦では要求貫徹と人間関係維持がジレンマとなり、どちらを選んだとしても不利益を被る結果に終わってしまうのです。

ソフトなネゴシエーターが抱える悩み

ソフトなネゴシエーターは協力的であり、人間関係に亀裂が入ることを強く恐れます。 そのため交渉の場では相手に理解を求め、それが叶わない場合には譲歩や妥協することを選びます。 その結果、自身にとって不利益な環境が構築されていき、辛い思いをしてしまうことになるのです。

ハードなネゴシエーターが抱える悩み

ハードなネゴシエーターは競争的であり、自らの要求が却下されることを嫌います。 そのため交渉の場では相手を説き伏せることに重点を置き、相手が折れるまで主張や要望を延々と続ける傾向があります。 その結果、相手との関係は著しく悪化し、継続的関係を構築することが困難となるのです。

ネゴシエーションは対立ではなく協働

主張し合うだけの論戦では、必ずといっていいほど要求貫徹と人間関係維持のジレンマが起こります。 なぜなら自己主張を通すことを目的とした交渉では、『押し進める』か『引く』かの選択肢しか存在しないからです。

ネゴシエーションはコンセンサス(合意形成)を目的とし、相手の理解を得ると同時に相手の主張に耳を傾けます。 双方にある程度の妥協を行う意思がなければネゴシエーションは絶対に成立しないのです。 ネゴシエーションは対立ではなく協働であると理解することにより、双方が価値を見出せる提案を行うことが可能となるでしょう。

ネゴシエーションの本質はゼロサムなのか?

ゼロサム(zero-sum=ゼロ和)とは、複数人が相互に影響を与える情況において、常に全員の利得の総和がゼロになることを指します。 ゼロサム状態においては、誰かが利益を得ている一方で必ず別の誰かが不利益を被っており、全ての人物が同時に利益を得ることはできません。

WIN-WINな関係の構築を目指す

主張をぶつけ合うだけの論戦ではゼロサム状態になることも少なくありませんが、お互いに主張を受け入れ、代替案や更なるアイディアを模索することによって、両者が同時に利益を得ることのできる提案を生み出すことも可能となります。 ネゴシエーションを行う際には、相手の利益を損なわせることによって自身の利益を確保するのではなく、WIN-WINとなる建設的な関係を築くことができるように努力しましょう。

交渉に必要なものは理論武装ではない

交渉を有利に進めたいという思いから、相手を論破するために完璧な理論武装を行う人もいますがそれは大きな間違いです。 ビジネスでは同じ相手と継続して取引することも多く、次回の交渉の場に険悪な空気が漂うことによって議論が難航するということだけは避けなければなりません。

信頼関係の構築が好循環を生み出す

交渉の基本は信頼関係の構築です。 初めての交渉でお互いに納得がいく結果が得られることは決して多くありません。 そのような中で強い自己主張を繰り返していては、信頼関係の構築など到底望めません。

利益を得たいのは自分だけではない。 可能であれば相手にも多くの利益を与えたい。 交渉という緊張感の場に立つことで忘れてしまいがちですが、この2つの言葉をしっかりと胸に焼き付けておくことにより、相手の言葉に耳を傾けやすくなるでしょう。

相手の言葉を素直に聞き入れることによって見えてくるものはたくさんあります。 相互理解を深めようとする姿勢を感じ取った交渉相手はあなたに対して信頼を置き、お互いにとって良い結果を導きだせるよう、こちらの提案についても前向きに検討してくれるはずです。 こうして構築された良好な関係は、次回以降の交渉にもプラスの効果を与え、双方に対する信頼を更に高め合っていくのです。

ネゴシエーションの手順

日々の生活の中で無意識に行われているネゴシエーションですが、プロセスをしっかりと意識し、実行することによってその効果を大幅に高めることが可能となります。

事前準備

ネゴシエーションは、問題点を発見するところからすでに始まっています。 入念な事前準備を行うことで、スムーズな交渉や信頼関係の構築へと繋がっていくのです。 事前準備は以下の4ステップにより構成されています。

  • 問題点の発見
  • ゴール設定
  • 代替案の検討
  • 戦略を組み立てる

問題点の発見

まず始めに、現状で発生している意見の不一致や方向性の違いについて洗い出しを行います。 これから提案する内容について、提案先と利害の衝突が予測される場合もこの段階で把握しておくようにします。

現時点で分かっている問題点は何か、それはネゴシエーションによって解決することが可能なのか。 問題の洗い出しと性質の見極めを十分に行っておくことで、交渉開始後に発生した新たな問題やイレギュラーに戸惑ってしまい、大きな進展の無いまま交渉時間が終了してしまうことを防止できるのです。

ゴール設定

ネゴシエーションによって解決することのできる問題点を発見できたら、その問題に対するゴールの設定を行います。 ここでいうゴールとは、自分の立場にとってこの条件だけは譲れないというラインであり、積極的思考と消極的思考による2つのラインを設定しておくことで柔軟な交渉を行うことが可能となります。

積極的ライン設定では『可能であれば達成したい大きな目標』を、消極的ライン設定では『最低限これだけは達成しておかなければならない小さな目標』を設定します。 このようにネゴシエーションによって目指す目標を設定しておくことにより、自身の妥協可能範囲が可視化され、代替案の検討がスムーズとなるのです。

代替案の検討

問題の明確化とゴール設定を終えたら、戦略を組み立てていきます。 戦略を組み立てる際には、交渉相手の情報を十分に収集しましょう。 相手の立場や権限、予想できる交渉手段や交渉内容についての情報を下に、現時点での双方のパワーバランスを確認し、提案できる代替案についての検討を行っていくのです。

代替案は相手にとっても十分にメリットを感じるものであり、相手側の視点で見たときに採用したいと感じる魅力のあるものでなくてはなりません。 また、可能であれば一つだけではなく複数の代替案を用意しておくとよいでしょう。

戦略を組み立てる

実際の交渉の流れをしっかりとイメージすることによって、効果的な戦略を組み立てることが可能となります。

  • どのタイミングで交渉の場を設けるのか
  • 交渉を行う場所はどこが適切か
  • どのような雰囲気作りが交渉に適しているのか
  • 交渉は一人で行うか、チームで行うか
  • 今回の交渉では問題解決を目指すのか、それとも信頼関係の構築を目指すのか
  • 先にこちらから代替案を提示するのか、相手のリクエストや要望を尋ねるのか

交渉の場では数々のイレギュラーが発生するため、どれだけ綿密に戦略を組み立てたとしても想像していた通りには進まないものです。 しかし、入念な準備を通して得た多くの情報や相手に対するイメージが無駄になることはなく、柔軟な対応力やメンタル面での余裕として表面化することでネゴシエーターの力となってくれるでしょう。

ネゴシエーション

準備を終えたらいよいよ交渉です。 交渉は以下の3ステップにより構成されています。

  • 戦略の遂行
  • 戦略の見直し
  • クロージング

戦略の遂行

事前に組み立てておいた交渉戦略に基づき、交渉の場をセッティングします。 緊張は交渉相手にも伝染し、空気を張り詰めさせてしまうものです。

相手は自分と敵対するために来たわけではない。 そして自分も相手にとって有益な提案を行うために来た。 協働作業を行うための場であることを再確認することで、リラックスした状態で交渉に臨むことができるでしょう。

戦略の見直し

準備段階で交渉相手の情報を収集し、分析してきましたが、その作業は交渉中も継続して行う必要があります。

  • 準備段階に収集していた情報との差異はあるか
  • 相手はどのようなスタンスでこの交渉に臨んでいるか
  • 相手は今回の交渉で問題解決まで進めたいと考えているか
  • 相手が用意してきた代替案や妥協案はこちらにとっても有益なものであるか

交渉中に得られる生の情報には大きな価値があり、それをいかに活用できるかがネゴシエーターの腕の見せ所となります。 このステップこそがネゴシエーションのコアであり、交渉の成否を分ける大きなポイントなのです。 相手のニーズや本音を聞きだしつつ、目標達成に向けて細かく戦略を修正していきましょう。

クロージング

交渉は最終的に以下のいずれかの結論に達します。

  • 『交渉成立』 双方いずれかの用意していた代替案や妥協案、または交渉中に生み出された新たな案が採用された場合、交渉成立となります。 設定していたゴールラインを超える条件で交渉成立したのであれば、今回の交渉は大成功であったといえるでしょう。

  • 『継続』 お互いに用意していた代替案や妥協案では話がまとまらず、更なる交渉を必要とする場合には継続となります。 今回の交渉で得た新たな情報を持ち帰り、再び準備から手順を踏むこととなります。 準備段階で今回の交渉の目的を信頼関係の構築に設定していた場合には問題視する必要はありませんが、交渉の場を何度も設けているにも関わらず交渉成立まで至っていない場合には、お互いの希望している最低条件や組み立てている戦略についてしっかりと見直しを行い、交渉成立に至っていない原因を究明する必要があるでしょう。

  • 『交渉決裂(行き詰まり)』 十分な検討を行ったものの、両者が納得できる代替案や妥協案が用意できず、これ以上の交渉に期待することができないと判断した場合には交渉決裂となります。 ネゴシエーションによって解決することが可能であるかどうかは問題発見時に見極めておくべき事項ですが、交渉中に明らかとなった新たな条件によって交渉の継続が困難となることも少なくありません。 行き詰まってしまい成立させることの出来なかった交渉においても、双方の信頼関係を良好な状態で保てるよう努力することが重要です。 良好な関係は次回の交渉時に和やかな雰囲気を生み出し、交渉成立の可能性を大きく高めてくれるでしょう。

フォローアップ

ネゴシエーションは交渉の成立または決裂によって終了するものではありません。 的確なフォローアップを行うことにより、更なる効果を生み出すのです。 このフォローアップは以下の3ステップにより構成されています。

  • 決定事項の実施
  • 次回以降のプラン立案
  • ネゴシエーションスキルの開発

決定事項の実施

双方の合意によって契約が成立した場合には、速やかに決定事項を実施することが大切です。 可能であれば交渉の場で実施スケジュールの打ち合わせも行っておきましょう。 交渉相手とは別の人物が決定事項の実施を担当する場合に備え、交渉結果を明確にまとめて各関係者に報告しておくことで、実施時に起こりうるリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

次回以降のプラン立案

ビジネスにおいて同じ相手と何度も交渉を行うことは日常茶飯事です。 その相手に関する情報を多く保持している交渉終了直後こそが、次回以降の交渉を有利に進める戦略を検討するベストなタイミングなのです。 相手の表情や癖、提案してくる代替案の傾向などをまとめておくことによって、相手が受け入れやすいポイントの把握を可能とし、効果的な代替案の提示が容易となります。 次回の交渉を成功へと導くため、必要な情報をいつでもすぐ引き出せるように管理しておきましょう。

ネゴシエーションスキルの開発

交渉力研修においてもネゴシエーションスキルを高めることは可能ですが、その効果は実戦の場で受ける刺激や影響に遠く及びません。 今回の交渉によって学び、感じたことを整理することは交渉力の向上に大きく役立ちます。

自分の声のトーンや表情、代替案を提案するタイミングは適切だったか。 そして、相手はどのような戦略を組み立てて交渉に臨んでいたか。 交渉の流れを振り返る中で、多くの事に気付き、反省することになるでしょう。 その反省こそが交渉力を磨く鍵であり、交渉スキルを構成する重要なパーツなのです。 情報が鮮明であるうちに見直しを行うことで、自身の交渉力を更に優れたものへと成長させていきましょう。

交渉の良し悪しを判断する3つの客観的基準

ネゴシエーションは取引の成立に重要な要素であり、企業に大きな利益をもたらすビジネステクニックです。 しかし、全ての交渉の場において絶大な効果を発揮するわけではありません。

ハーバード大学交渉学研究所の所長であるロジャー・フィッシャー氏と副所長のウィリアム・ユーリー氏は、3つの客観的基準に照らし合わせることにより、その問題の解決法としてネゴシエーションが適しているかどうか判断することができると説いています。

賢明な合意をもたらすか

どれだけ時間をかけて話し合いを行ったとしても、明らかなミスマッチであり、両者ともに代替案を出すことができなければ時間の無駄でしかありません。 お互いに相手の意見を尊重し、譲歩する意思を示した上で交渉するからこそ、その会話に意味が生まれ、費やす時間に価値を見出せるのです。 ある程度の妥協をする覚悟を持った両者が交渉の場に立った時、ネゴシエーションは大きな力を発揮してくれるでしょう。

効果的であるか

その提案がお互いにとって利益をもたらすか否かというのは、交渉において最も重要なポイントです。 どちらか一方が不利益を被ってしまう提案しか行えないのであれば、ネゴシエーションを正しく活用できたとはいえないでしょう。 お互いの利益の確保が可能であると判断した場合には、臆することなく交渉の場を設け、積極的に双方の利益獲得を目指しましょう。

当事者間の関係性を改善・もしくは損なわないものか

交渉によって両者の関係が悪化する可能性がある状況下ではお互いの意見を尊重し合う余裕を失ってしまい、賢明な合意などの要件を満たすことが困難となるため、ネゴシエーションによる解決を図るべきではないと判断することができます。 本来、ネゴシエーションは関係の維持ではなく改善や向上を目的としています。 少なくとも今の関係性が損なわれないことを確認した上で実施するべきでしょう。

人を動かす6つの『影響力の武器』

アメリカを代表する社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニ氏は、心理学に基づいたアプローチ方法として6つの『影響力の武器』を提唱しています。 相手の心を刺激し、こちらの提案を魅力的に感じさせるこのテクニックは、ネゴシエーションを力強くサポートしてくれるでしょう。

返報性(reciprocation)

返報性とは、受けた恩に対してお礼をしたくなるという心理的感情です。 ネゴシエーションにおいて相手側の利益についても真剣に考えているという姿勢を示し、具体的な譲歩案を提示することによって、相手もこちら側に対して誠意的な態度を示してくれるという事象が返報性にあたります。

希少性(scarcity)

希少性とは、限られたものほど欲しくなるという心理的感情です。 当初より提示していた案にプレミアムな付加価値を持たせることにより、その他の条件に関して一切妥協することなく相手の満足度を高めるといった形で、ネゴシエーションに応用することができるでしょう。

権威(authority)

人は肩書きや経験などの権威を持つ人物に対し、厚い信頼を寄せる傾向があります。 自身の肩書きの弱さや経験の浅さの影響により、どれだけ素晴らしい提案を用意しても話に耳を傾けてもらえないということも少なくありません。

このような場合には、その感情を逆手に取って所属する部署のトップや責任者の協力を仰ぎましょう。 交渉相手に大きな影響を与えることのできるキーパーソンとの繋がりがあり、交渉の場への同席を実現させる力があるならば、交渉成立に向けて大きく前進することができるでしょう。

コミットメントと一貫性(consistency and commitment) 

人は一度決定した事項について守り通そうとする意思を持ち、コミットした内容に類似する要望であれば自然と受け入れやすい特性を持っています。 しかし、交渉成立後に後出しで少しずつ条件を付加していくことは取引相手に対する裏切り行為であり、信頼を失う原因となるため行うべきではありません。

ネゴシエーションにおいてこの特性を取り入れる場合には、交渉を何段階かに区切り、ステップアップさせながら一つ一つの交渉を行うようにするべきです。 交渉成立を積み重ねることによって信頼関係もより強固なものとなり、本命の交渉に対して前向きに向き合ってもらえるようになるのです。

好意(liking)

尊敬する上司や先輩のアドバイスというものは受け入れやすいものです。 また、初対面の取引相手であっても好感を持てる人物であれば好意的に接することができます。 この特性をネゴシエーションに応用するとどのようになるのでしょうか。

相手の意見をしっかりと聞き入れることにより受容と共感の姿勢を示し、両者が利益を得られる提案を行うことで仲間意識が芽生えます。 エンゲージメントを高めることは信頼関係の構築にも繋がるため、自分に対する相手の好感度を高める数々の努力は最優先で行うべき基礎戦略といえるでしょう。

社会的証明(social proof)

世の中のあらゆる物事において多数派は大きな影響力を持っています。 ネゴシエーションにおいてもそれは同様であり、訴求力の高いものは決まってメジャーな存在となっています。 プレミアムな付加価値を提案しながらもマストな部分はしっかりと押さえることにより、交渉相手の心を少しずつ揺さぶることができるでしょう。

ネゴシエーションの活用例

ネゴシエーションは双方の利益の確保を目指す交渉手段として非常に優れた力を持っています。 実際のビジネスシーンにおいてどのように活用されているかを把握することで、単なる知識から実行可能なスキルへと昇華させましょう。

活用例1

A部長はパソコンがとても苦手である。 明日までにパソコンを使用して会議資料を作成しなくてはいけないが、とても間に合いそうにない。 パソコンを得意としている新入社員のBに資料作成への協力を依頼したが、今日中に片付けなくてはいけない仕事が山積みとなっており、協力する時間を確保できないことを理由に断られてしまった。

Bの行っている業務は基本的な内容であり、自分であればすぐに片付けることができる。 抱えている多くの仕事を消化することができれば、Bは資料作成に協力してくれるのではないだろうか。 このように考えたA部長はBに対して業務交換を提案した。

業務を交換した結果、両者とも5時間以上かかると予測されていた業務を1時間で片付けた。 お互いに得意としている分野を担当し合うことにより、両者は4時間以上の時間を生み出すことができたことになる。

価値創造型交渉

この例のようにお互いの価値を生み出すことによってゼロサムからWIN-WINな関係に変えていくことを価値創造型交渉といいます。 価値創造型交渉は提案に賛同することにより生み出される価値が相手視点からも明確となっているため交渉成立に至りやすく、現実的な提案を行っているため結果にも正しく反映されやすいといったメリットがあります。

活用例2

小売業者Cは、長年付き合いのある仕入先Dから主力商品Eの掛け率アップを求められた。 しかし、掛け率を上げることによる利益の縮小を許容することはできないため、可能であれば現在の取引条件を維持したい。

そこで、売り場にEの専用コーナーを設けて大々的な宣伝活動を行うことで販売数を増やし、仕入れ数を増加させるという形で仕入先の利益に貢献することを提案し、これまでの掛け率を維持することに成功した。

プラスサム交渉

1つのパイを取り合うことによって利得の総和がゼロになってしまうゼロサムに対し、パイの大きさそのものを大きくすることで互いの利益を確保する交渉方法をプラスサム交渉といいます。 掛け率アップの要求は小売業者Cの利益が仕入先Dへと移行する典型的なゼロサムでしたが、小売業者Cの行った提案によって両者の利益が増大するプラスサムへと変えることができました。

仕入先Dの突然の要求に対して怒りを覚え、感情的な初期対応を行っていたらこのような結果を迎えることはできなかったでしょう。 小売業者Cの冷静な分析と判断が、この素晴らしい結果を生み出したのです。

参考文献

心理学や行動経済学とも大きな関わりを持つネゴシエーションスキルは一朝一夕の知識や経験により会得できるものではなく、時間をかけてじっくりと熟成させていく必要があります。 これから紹介する2冊の本は、ネゴシエーションをより深く理解し、実践的なスキルへと昇華させるために必要な多くのエッセンスを含んでおり、あなたの学習意欲をサポートする心強いパートナーとなってくれるでしょう。

ハーバード流交渉術 イエスを言わせる方法

『ハーバード流交渉術 イエスを言わせる方法』は、ネゴシエーションを適用するべきかどうか判断する3つの客観的基準を説いたハーバード大学交渉学研究所所長のロジャー・フィッシャー氏と副所長のウィリアム・ユーリー氏による共著です。 論理的な対決方法と感情的な解決方法を対比させながら展開しているため、ネゴシエーションの効果がとても分かりやすく、汎用性の高い内容となっています。 また、原則立脚型交渉術や柔道型交渉術など様々な交渉術にも触れているため、より深い知識の構築に役立つことでしょう。

プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中 「決まる!」7つの交渉術

M&Aアドバイザーやネゴシエーターとして活躍するインテグループ株式会社代表取締役社長の藤井一郎氏の著書『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中 「決まる!」7つの交渉術』は、全てのビジネス交渉に活用することのできるネゴシエーションスキルやテクニックが余すことなく綴られた一冊です。 「素質がなくても、正しく学べば誰もが交渉の達人になれます。」という謳い文句の通り、とても分かりやすくまとめられているため、読み進めていくだけで自然にスキルアップを図ることができるでしょう。

まとめ

  • ネゴシエーションは双方の利益の確保を目指す交渉術である
  • ネゴシエーションスキルは全てのビジネスマンが会得しておくべきスキルである
  • ネゴシエーションの本質は対立ではなく協働である

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