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連載:第19回 組織作り その要諦

「企業は人なり」3分の2が辞めても追求した、価値観でまとまる「強い町工場」

BizHint 編集部 2020年2月6日(木)掲載
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東京スカイツリーや六本木ヒルズ、あべのハルカスといった、全国的に有名な建築物にも使われるエレベーター向けのボタンやランプを製造する島田電機製作所。東京都八王子市に拠点を置く同社の創業は1933年。それ以降、エレベーター業界で確固たる地位を占めながらも、年功序列、社員の経験や勘でものづくりをする、昔ながらの中小企業だったといいます。 そんな同社の経営は、2000年に当時の社長が亡くなり、大手グローバル企業で活躍してきた先代社長が就任して以降、一変しました。社員の3分の2近くが辞めるという変革をくぐり抜けながら、成長著しい中国市場に進出して売上を伸ばし、年功序列を撤廃したことで若手求職者からの応募も倍増したといいます。いかにして変革を成し遂げたのか?現社長の島田 正孝さんに伺いました。

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株式会社 島田電機製作所
代表取締役社長 島田 正孝さん

1969年2月1日、東京都生まれ。専門学校卒業後、祖父が創業した株式会社島田電機製作所に入社。設計、生産管理、工場長を経て、2008年にメーカーとしてのさらなる自立を目指し、中国・上海に進出。現地に生活拠点を移し、現地法人を指揮。2013年、八王子市大和田町への本社工場の移転を機に、5代目代表取締役社長に就任。“過去にとらわれず前を向く”をモットーに、100年企業を目指して常に新しいことに挑戦し続けている。


この記事でわかること

  1. 年功序列の風土を変えるために何から着手したのか?
  2. 組織変革を経て、いま重視している採用基準は何か?
  3. 変革をやり抜くために、経営者が大切にすべきことは?

時代に取り残されつつある町工場の経営に、初めて危機感を感じた

――貴社の事業についてお教えください。

島田 正孝氏(以下、島田): 島田電機製作所は、高層ビルなどに導入される、エレベーターの表示器具を製造する会社です。分かりやすく言うと、皆さんがエレベーターに乗る時に押すボタンや、エレベーターの到着を知らせるホールランタン、階数を表示するインジケーターを作っています。お客様の細かなご要望にも対応出来るように、自社で設計から製造まで一貫してオーダーメイドによる生産を行ってきました。

2007年からは中国に進出し、現地の経済成長のスピードに合わせた製造に挑戦しています。日本ではエレベーターが年間2万台作られていますが、中国では年間60万台と約30倍の市場規模があるんです。中国のユーザーのニーズや好みをもとに作ったデザインがヒットして、進出から10年経った今でも現地での売上を順調に伸ばしています。

島田電機製作所が製造した、日本や中国で実際に使用されているエレベーターのボタン。形状は丸型と角型、大きさは35mmが一般的

――どのようなご状況だったのですか?

島田: 島田電機はエレベーター業界では歴史が長く、業界内での立ち位置も確立していました。そのため営業活動もせず、既存のお客様にご満足いただけていれば良いと「顧客満足」だけを目標に掲げていたのです。

社内では「声の大きい人が一番偉い」という暗黙の了解があり、年功序列がまかり通っていました。20数年前は 社員の働き方やものづくりの基準も曖昧だったので、社員は経験や勘でものを作っていた んですね。弊社が手がけるエレベーターの表示器具は注文を受けてからオーダーメイドで作るので、自動化や機械化のような秩序立った環境を作って働くことはできないだろうとも思っていました。

ところが、2000年になって当時の社長が亡くなり、叔父が社長に就任した時から私の意識は一変しました。叔父は大手グローバル企業で海外赴任も経験し功績を上げてきた人です。家庭にもホームステイの学生を海外から受け入れるような、海外に対して視野の開けた人でした。

そんな叔父は、1つのことだけをやり続けてきた、当時の島田電機を見て「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」と表現しました。

従業員マインドが抜けていなかった私も、そんな叔父に影響され経営マインドに変わり、会社全体や会社が置かれている状況について考えるようになっていきました。それまでも、職人気質の社員が好き勝手に振る舞っているな、と感じてはいましたが、叔父から 「島田電機は慣れきった環境で商売をしているけれど、このままじゃ経営も危ない」と言われ、初めて危機感を覚えた のです。

2000 年までは「やればやっただけ、時間をかければかけただけ売上が伸びた時代」でしたが、市場環境や顧客の要求も変化し、コストを重視する時代になりつつありました。そうした中で客観的に社内を見てみると、古い町工場の体質のまま、時代に取り残されていることに気づいたのです。

私は「このままではまずい、会社を変えなければ」と考えていましたが、社内は古くからいる人、声の大きい人の意見が通るような年功序列の風土となっていて、新しいことを受け入れることができませんでした。

そこで、何が正しいのか、会社は何を社員に求め、何を目指しているのか、そもそもの定義を明確にしなければならないと考えたのです。

「社員の成長なくして会社の発展はない」という理念のもと、 社員と一緒に新しいこと、難しいこと、面白いことに挑戦し続ける社長の島田さん

会社をよくするためなら遠慮をしない「良い社員」の満足を追求する

――社内の問題に気付いてから、何から変えていきましたか?

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