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連載:第18回 組織作り その要諦

「企業は人なり」3分の2が辞めても追求した、価値観でまとまる「強い町工場」

Logo markBizHint 編集部 2020年2月5日(水)掲載
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東京スカイツリーや六本木ヒルズ、あべのハルカスといった、全国的に有名な建築物にも使われるエレベーター向けのボタンやランプを製造する島田電機製作所。東京都八王子市に拠点を置く同社の創業は1933年。それ以降、エレベーター業界で確固たる地位を占めながらも、年功序列、社員の経験や勘でものづくりをする、昔ながらの中小企業だったといいます。 そんな同社の経営は、2000年に当時の社長が亡くなり、大手グローバル企業で活躍してきた先代社長が就任して以降、一変しました。社員の3分の2近くが辞めるという変革をくぐり抜けながら、成長著しい中国市場に進出して売上を伸ばし、年功序列を撤廃したことで若手求職者からの応募も倍増したといいます。いかにして変革を成し遂げたのか?現社長の島田 正孝さんに伺いました。

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株式会社 島田電機製作所
代表取締役社長 島田 正孝さん

1969年2月1日、東京都生まれ。専門学校卒業後、祖父が創業した株式会社島田電機製作所に入社。設計、生産管理、工場長を経て、2008年にメーカーとしてのさらなる自立を目指し、中国・上海に進出。現地に生活拠点を移し、現地法人を指揮。2013年、八王子市大和田町への本社工場の移転を機に、5代目代表取締役社長に就任。“過去にとらわれず前を向く”をモットーに、100年企業を目指して常に新しいことに挑戦し続けている。


~この記事でわかること~

  1. 年功序列の風土を変えるために何から着手したのか?
  2. 組織変革を経て、いま重視している採用基準は何か?
  3. 変革をやり抜くために、経営者が大切にすべきことは?

時代に取り残されつつある町工場の経営に、初めて危機感を感じた

――貴社の事業についてお教えください。

島田 正孝氏(以下、島田): 島田電機製作所は、高層ビルなどに導入される、エレベーターの表示器具を製造する会社です。分かりやすく言うと、皆さんがエレベーターに乗る時に押すボタンや、エレベーターの到着を知らせるホールランタン、階数を表示するインジケーターを作っています。お客様の細かなご要望にも対応出来るように、自社で設計から製造まで一貫してオーダーメイドによる生産を行ってきました。

2007年からは中国に進出し、現地の経済成長のスピードに合わせた製造に挑戦しています。日本ではエレベーターが年間2万台作られていますが、中国では年間60万台と約30倍の市場規模があるんです。中国のユーザーのニーズや好みをもとに作ったデザインがヒットして、進出から10年経った今でも現地での売上を順調に伸ばしています。

島田電機製作所が製造した、日本や中国で実際に使用されているエレベーターのボタン。形状は丸型と角型、大きさは35mmが一般的

――どのようなご状況だったのですか?

島田: 島田電機はエレベーター業界では歴史が長く、業界内での立ち位置も確立していました。そのため営業活動もせず、既存のお客様にご満足いただけていれば良いと「顧客満足」だけを目標に掲げていたのです。

社内では「声の大きい人が一番偉い」という暗黙の了解があり、年功序列がまかり通っていました。20数年前は 社員の働き方やものづくりの基準も曖昧だったので、社員は経験や勘でものを作っていた んですね。弊社が手がけるエレベーターの表示器具は注文を受けてからオーダーメイドで作るので、自動化や機械化のような秩序立った環境を作って働くことはできないだろうとも思っていました。

ところが、2000年になって当時の社長が亡くなり、叔父が社長に就任した時から私の意識は一変しました。叔父は大手グローバル企業で海外赴任も経験し功績を上げてきた人です。家庭にもホームステイの学生を海外から受け入れるような、海外に対して視野の開けた人でした。

そんな叔父は、1つのことだけをやり続けてきた、当時の島田電機を見て「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」と表現しました。

従業員マインドが抜けていなかった私も、そんな叔父に影響され経営マインドに変わり、会社全体や会社が置かれている状況について考えるようになっていきました。それまでも、職人気質の社員が好き勝手に振る舞っているな、と感じてはいましたが、叔父から 「島田電機は慣れきった環境で商売をしているけれど、このままじゃ経営も危ない」と言われ、初めて危機感を覚えた のです。

2000 年までは「やればやっただけ、時間をかければかけただけ売上が伸びた時代」でしたが、市場環境や顧客の要求も変化し、コストを重視する時代になりつつありました。そうした中で客観的に社内を見てみると、古い町工場の体質のまま、時代に取り残されていることに気づいたのです。

私は「このままではまずい、会社を変えなければ」と考えていましたが、社内は古くからいる人、声の大きい人の意見が通るような年功序列の風土となっていて、新しいことを受け入れることができませんでした。

そこで、何が正しいのか、会社は何を社員に求め、何を目指しているのか、そもそもの定義を明確にしなければならないと考えたのです。

「社員の成長なくして会社の発展はない」という理念のもと、 社員と一緒に新しいこと、難しいこと、面白いことに挑戦し続ける社長の島田さん

会社をよくするためなら遠慮をしない「良い社員」の満足を追求する

――社内の問題に気付いてから、何から変えていきましたか?

バックナンバー (19)

組織作り その要諦

  1. 第19回 終身雇用制度の維持不可、エンジニア採用の激化など商社・ベンチャー企業経営者と2010年代の組織と働き方を振り返る
  2. 第18回 「企業は人なり」3分の2が辞めても追求した、価値観でまとまる「強い町工場」
  3. 第17回 個人の働き方改革をしながら……企業が強い組織を作るには【法政大・田中研之輔教授】
  4. 第16回 「ピラミッド型組織」は「ネットワーク組織」に変われるのか【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  5. 第15回 ゴールを決めた瞬間、控えの選手たちは本気で喜んでいるか?【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  6. 第14回 史上最強チーム・バルサにはなれないけど、学ぶことはできます【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  7. 第13回 顧客3万社、営業12名。売上を追わない営業部門と社長が重視する、最も大切な指標とは
  8. 第12回 ベイスターズの躍進を支え続けたマーケティングチームの心得。「それしかなかった」ものとは
  9. 第11回 「日本でいちばん大切にしたい会社」特別賞。企業理念を徹底する業界2位の老舗ランドセルメーカーは、社員に株を無償配付していた
  10. 第10回 全国一の自動車教習所は究極のボトムアップ組織だった。人的余裕が施策を生みだす好循環。
  11. 第9回 障がい者の活躍が事業を拡大し、健常者が社内マイノリティに。「助ける」ではなく「ビジネスとして成立させる」
  12. 第8回 「超属人的組織」だからこそ仕事が面白い。一人の職人のみが持つ技術も「継がなくて良い」
  13. 第7回 デイサービスを「男性向け」で差別化。従業員の定着率を高める「公平感ある」職場づくり
  14. 第6回 数字必達主義から「対話型の組織」へ、福島トヨペットの社内変革【福島トヨペット・佐藤修朗社長/佐藤藍子副社長】
  15. 第5回 「ブラックサンダー」で46億円から100億円企業に伸びた有楽製菓の秘密
  16. 第4回 雅叙園復活のカギ「作業員ではなくホテルマン」。 圧倒的なハードの魅力を伝える、人・ソフトの再生術
  17. 第3回 手取り足取りの指示ではない。「任せる」ことで「自分ごと」を重ねた経営となる【スマイルズ・遠山正道さん】
  18. 第2回 若手の当事者意識を引き出す「自律・分散型組織」を作る【ポーター賞受賞企業・ネットプロテクションズ】
  19. 第1回 「組織づくりとクルマづくりは似ている」 元自動車エンジニアの人事が語る採用の秘訣

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