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2018年4月23日(月)更新

人材マネジメント

人材マネジメントとは組織構成員である従業員を重要な経営資源の一つとして認識し、経営理念の実現や経営戦略の推進のために活用する人事戦略です。企業に多くのメリットをもたらす優れた人材マネジメントを運営することができるよう、効果を最大化させるためのポイントや企業の成功事例を踏まえながら解説致します。

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目次[表示]

人材マネジメントとは

人材マネジメントとは企業目標の達成に向けて企業が一丸となるために実施する総合的な人事施策であり、激しい経済戦争を勝ち抜く企業を作り上げるために欠かすことのできない重要戦略です。

人材マネジメントの意味

マネジメント(management)には、『経営管理』や『目標達成に向けて必要な対策や分析』といった意味があります。

人材マネジメントは従業員一人一人に対して個人の持つパフォーマンス力を最大限に活かすためにはどのような企業努力や工夫が必要なのか検討し実施する作業であるため、一般的に事業規模と人材マネジメントの実施負担は比例するといわれています。

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人材マネジメントの構成要素

人材マネジメントを構成する要素は、人材採用、人事評価、人材育成、能力開発、人材配置、異動、昇進、昇格、報酬設定など、日頃から行っている人事業務とほぼ同様のものとなります。

ただし、人材マネジメントではこれらの要素を単独ではなく一体的に扱うという大きな特徴があります。経営者の思いや企業ビジョンといった経営側の思考を意識的に取り込み、その実現を目指して戦略的に運用される人材マネジメントは従業員と企業の成長に大きな力を与えることになるでしょう。

人材を人財として扱う

人は金や物といった経営資産とは違い、使用することによって総量が減ってしまうようなことはなく、様々な場面で経験を積ませることによって価値を更に高めることができる特殊な性質を持っています。

人材マネジメントはその性質に着目し、従業員を人財という一つの経営資産として企業内外で積極的に活用することによって、企業理念の実現とライバル他社よりも優位に企業活動を展開することのできる企業作りを目指して実施されます。

経営者や人事部、管理職の活動をスムーズに行うためには一般社員の活躍が欠かせません。一般社員の持つパフォーマンスを最大限に活かすことのできる環境を構築することによって、従業員個人の業績やモチベーションの向上といった狭い範囲だけではなく、企業全体の活性化や業務プロセスの効率化といった広範囲に好影響を与えることができるでしょう。

人材マネジメントを行うメリット

適切に人材マネジメントを運用することにより、企業は次のような効果を得ることができます。

  • 企業理念実現に向けた企業成長
  • 組織力の底上げと全体的な業績アップ
  • 組織活性化による企業活動選択肢の増加
  • 従業員のパフォーマンスの最大化
  • 企業と従業員のエンゲージメント向上
  • 従業員のモチベーションアップと個人業績の向上
  • 平均勤続年数の向上
  • 柔軟性の高い企業に成長できる
  • 自立型組織人を育成できる

企業成長へもたらす影響

人材マネジメントは組織力の底上げを行い、企業目標へアプローチするための選択肢を大幅に増やしてくれます。また同時に、企業が目指すべき方向へと突き進むために必要となるキーパーソンや将来を見通す力を与えてくれます。

自社の将来ビジョンや現状を正しく把握した上で適切に構築された人材マネジメントが生み出す人財には、持続性と自己成長力が備わっているため、人材マネジメントの運用期間に比例して段階的に自発的成長を遂げてくれることになるでしょう。

人材成長へもたらす影響

従業員たちは人材マネジメントを通じ、経営トップや人事パーソンの考えや現在の経営目標を正確に把握することができます。また、労働環境をより良いものにするための提案を行うことで現状に対する不満や悩みを解消するチャンスを得ることができます。

相互理解が深まることによってエンゲージメントはこれまで以上に高まり、従業員たちは自己実現や自己利益のためだけではなく、企業目標の達成や企業利益の増幅に向けても惜しむことなく全力を発揮してくれるようになるでしょう。

自立型組織人を育成する重要性

自立型組織人とは、上司や管理者からの指示を待つことなく自分で判断し行動できる従業員のことを指します。企業ビジョンを正しく理解し、動機付けをされた従業員は適材適所に配置されることによってその能力を存分に発揮することが可能となり、その成功体験が様々な課題に対する最適解を導き出すための知識と自信として蓄積されていくのです。

自立型組織人へと成長した従業員は、新たに発生した課題やリスクにいち早く気づき、初期段階で素早く適切に対処することができるようになります。また、思考を停止させることなく常に現状改善を心掛けながら業務を行うため、同僚やプロジェクトメンバーに対して大きな刺激を与えることで職場の更なる活性化を期待することができるでしょう。

人材マネジメントの戦略的活用により生まれ変わった戦略型人事部門は、旧来型人事部門が超えることのできなかった自立型組織人の育成土台構築という大きなハードルを軽々と越えていくことができるのです。

人材マネジメント戦略の組み方(プロセスの最適化)

人材マネジメントを戦略的に活用するためには、正しいプロセスを一つずつ丁寧に実施しなければなりません。人材マネジメントにより組織力を高めたいと考えている経営者や人事部は、それぞれの手順の実施意図や方法について把握しておく必要があるでしょう。

人材マネジメントによって達成したい課題の確認

企業は経営者の描く最終目標の達成に向け、いくつもの中間目標を達成しながら成長を続けています。人材マネジメントはそれらの目標を達成するために必要な課題の解決を目的として実施する経営戦略であるため、実施前には課題の洗い出しや見直しが必須となります。

  • シェアを拡大させるため事業エリアを全国に広げたいが、各エリアに特化した人材がいない
  • 企業の行く末を左右する重大プロジェクトを任せられるプロジェクトリーダーがいない
  • 現在の労働環境では各従業員が十分にパフォーマンスを発揮することができていない
  • 出産や介護を理由に毎年多くの人材が退職してしまい、時間をかけて人材育成を行うことができない
  • 次世代リーダーや協創型リーダーといった、企業の未来を委ねることができる人材を育成することができていない
  • 地域密着型の社会的企業へと成長したいが、社会問題に対する理解や意欲を持っている従業員がいない

人材マネジメントは繰り返し実施することによって効果が累積される性質をもっています。 PDCAサイクルをしっかりと意識し、適切な人材マネジメントを実施することで、経営状況や労働環境など企業内部の改善を目指したマイナス解消重視型の目標から企業の飛躍や更なる業績アップを目指したプラス獲得重視型の目標へと段階的にシフトアップしていくことでしょう。

ビジョン達成に必要な人材要素の洗い出しを行う

現在取り組むべき課題が明確となったら、その達成に必要な人材要素の洗い出しを行います。この時、人材要素をただ並べるだけではなく実際の人物像として具体的にイメージ出来るようにしておくことが大切です。

小規模企業であれば人材マネジメントの実行者が一名もしくは複数名のみということもありますが、一定以上の規模をもつ企業で人材マネジメントを実施するとなると多くの従業員が関わりをもつことになります。その時に各自の思い浮かべる人物像のイメージが異なっていると、課題達成の成功率を大幅に下げてしまうことになってしまうのです。

人材要素の洗い出しを行う際には、誰が見ても同じ人材像を思い浮かべることができるレベルまで詳細に落とし込んでおく必要があるでしょう。

企業内の人材状況を再確認し、不足している人材要素を明確にする

ビジョンの達成に必要な人物像を作り上げたら、企業内人材との比較を行います。

該当する人物が全く存在しない場合もあれば、大半の要素が該当するものの一部要素が不足している従業員がリスト上に上がることもあります。その不足した要素が人材育成や研修といった手段で補える性質のものなのか、それとも年齢やポテンシャルといった企業努力で補うことのできない性質のものであるのかにより、組み立てるべきプランの内容は大きく変わることでしょう。

不足要素を補う方法を検討し、計画する(プランニング)

プランニングでは、不足要素の補填方法の選択と計画の詳細設定を行っていきます。

不足要素の補填方法を選択する

不足している人材要素の補填は様々な方法で行うことができます。

  • 社内育成を前提とした新規雇用
  • 即戦力となる経験者や有識者の中途採用
  • 社員研修による資格やスキルの取得
  • 労働環境の改善によるボトルネックの解消
  • 福利厚生の充実による人的資源の最大化
  • 複数メンバーの共同作業による不足要素のカバー

必ずこうでなくてはならないといった既成概念や先入観にとらわれることなく、多くの選択肢の中から自社の現状に最適なものを選ぶことによって、無理のない人材マネジメントを実施することが可能となります。

計画の詳細を設定する

不足要素の補填方法を決定するだけでは計画として不十分です。計画実行後のイレギュラー発生リスクを最小限にするため、補填方法それぞれに対して必要な詳細をしっかりと設定しておきましょう。

  • 人材採用…採用手法、採用担当者、採用予算、採用にかける期間
  • 人材育成…人材育成手法、育成担当者、育成予算、育成期間
  • 労働環境の改善…具体的な改善方法、計画実行者、改善に必要な費用、期間
  • 福利厚生の充実…従業員間の公平さの確保、実行によって得られる企業利益と新たに発生する企業負担の概算
  • チームの結成…チームリーダーの有無、メンバー間における負担の分散、報酬や手当て、本業は平行して行うのか他の従業員に引き継がせるのか

企業全体で情報を共有する

人材マネジメントの成功には既存従業員の理解と協力が欠かせません。そのため、立案したプランは全従業員に全て公開し、細部に渡って正しく情報共有しておく必要があります。

企業が目標を達成することにより得ることのできるメリットを把握することによってモチベーションを高めることのできた従業員は、実行後に発生したイレギュラーに対処する際に心強い味方となってくれることでしょう。

プランを実行する

いよいよプランを実行フェーズへ移行します。ここまでの手順を一つずつ丁寧に行っていれば、大きなトラブルが発生することはほとんどないでしょう。

だからといって気を抜いてはいけません。計画時に描いていた実行イメージと現状にどれだけの差が発生しているのか、そしてその差はどのような要因によって生み出されているのか。このような点に注意しながら実行フェーズを進めていくことにより、実行後の振り返りや修正がスムーズとなり、精度の高いプランニングスキルを身につけることが可能となります。

プラン立案者自身も人材マネジメントを通してスキルアップする気持ちで挑むことで、PDCAサイクルを回すことによる相乗効果は更に大きなものとなっていくでしょう。

実行結果の評価を行う

ビジネスシーンにおいて実施される施策の多くは継続的または断続的に実施する必要性があるため、経験やノウハウを蓄積することで次回以降のコスト削減や効果の向上といったメリットを享受することができます。そのため、実行結果について正しく評価を行い改善点や反省点を見つけ出すことは、プランニング以上に重要だと主張する経営学者も少なくありません。

Plan(計画)、Do(実行)、Check(検証・振り返り)、Action(改善)の4つから構成されるPDCAサイクルの中でCheck(検証・振り返り)が最も難しいとされていますが、全データを一箇所に集め(一元化)、グラフや表を活用(可視化)するなどの工夫を施すことにより、データ管理がこれまで以上に容易なものとなるでしょう。

人材マネジメントによる効果を最大化させるためのポイント

人材マネジメントはこれまで多くの企業がぶつかってきた人的資源の最適化や次世代リーダー育成といった人事に関する課題を理論的に解決へと導いてくれる施策です。

その効果を最大化させるためにもまたロジカルシンキングは必要不可欠であるため、企業経営や人事に関わる全ての人物が戦略人事の実行に必要なエッセンスを十分に把握しておかなければならないのです。

【関連】ロジカルシンキングの意味とは?トレーニング方法やおすすめ本をご紹介 / BizHint HR

組織戦略との一貫性を持たせて運用する

人材マネジメントは企業の推進力である人材の力を最大限に高めることを目的として実施する総合的な人事施策です。人材マネジメントの単体実施でも一定の効果は得ることができますが、その効果を最大化させるためには企業戦略や事業戦略、採用戦略、人材育成戦略といった組織戦略と一貫性を持たせて運用しなければなりません。

企業内活動を組織戦略や人事システムとして意識的に連動させるからこそ、従業員の視点からも企業が目指している目標がより明確となり、自信をもって突き進むことができるようになるのです。

従業員に個人目標を設定させる

企業が向かうべき方向を正しく理解することができた従業員に対し、企業全体の目標を達成するためにどんな努力や工夫を行うことができるのか考えてもらい、個人の目標設定を行ってもらいましょう。

経営陣や人事の人間といった直接的な関係者だけではなく、全従業員が自分の中で目標を設定することにより、これまで以上に企業が行っている活動や戦略の内容に興味を示してくれるようになるのです。

情報をしっかりと公開し、共有する

せっかく従業員が企業活動に興味を示してくれても、肝心の情報が公開されていなければ十分な理解を得ることはできません。企業側は情報管理体制の構築と外部への情報漏えいを防止する取り組みを行った上で、現在の組織構造図や人事情報、経営環境、社員教育システム、今後の組織づくりのビジョンといった様々な情報を公開し、共有を計りましょう。

この時に勤務態度や成果物、ポテンシャル(潜在能力)、資格といった評価要素が人事評価にどの程度の影響を与えているのかについても公開することで企業の行っている人事評価に対する信頼性や透明性が高まります。人事評価制度に対しての理解も深めることができた従業員は、企業が求める人材により近づけるように自発的努力を行ってくれるでしょう。

フレームワークを活用する

ロジカルシンキングは物事を正しく伝え、実行するために欠かすことのできないスキルであり人材マネジメントという人事戦略の効果を最大限に高めるためにも必須となるスキルですが、習得と活用の難しさゆえ完璧に使いこなすことができるビジネスマンがほとんどいないというのが現状です。そのロジカルシンキングを誰でも手軽に、オペレーションミスなく行うことができるようにサポートしてくれるツールがフレームワークです。

フレームワーク(framework)には『構造』、『枠組み』、『骨組み』といった意味があり、ビジネスシーンでは組織戦略の組み立てや課題解決に向けたプランニングなど、物事を順序立てて実行する必要のある作業を行う際に活用されています。また、フレームワークの活用により様々な情報が可視化されることで情報管理や情報分析が容易となるため、計画段階だけではなく戦略実行後の効果判定や失敗原因の洗い出しといった振り返り作業にも大きな力を発揮してくれます。

様々な状況に対して的確に対応できるように多くの種類が存在するフレームワークですが、その中から人材マネジメントのプランニングや振り返り作業と相性の良い5つのフレームワークをピックアップし、実践的な使用方法とともに紹介したいと思います。

SWOT分析の活用

SWOT分析は企業活動に影響を与える様々な要因を、強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)からなる内部要因と、機会(Opportunities)と脅威(Threats)からなる外部要因に分類することによって状況整理をスムーズに行うためのツールであり、主に企業経営や事業活動の現状分析を行う際に使用されています。

人材マネジメントの第一段階である課題の洗い出しにSWOT分析を活用することで、対策するべき課題の一覧化が行えます。経営状況や事業活動状況と照らし合わせることで優先順位の設定が容易となるだけではなく、強みや機会を活かした戦略的課題解決手段の発見や課題の見落としによって生まれる致命的なダメージを回避するといったメリットも与えてくれるSWOT分析を人材マネジメントに活用しない手はないでしょう。

【関連】SWOT分析とは?やり方や事例まで解説 / BizHint HR

ロジックツリーの活用

企業を根底から支え、前進させ続けてくれているのは現場で働く従業員です。日々の業務の中で見えてくる問題点や課題の中には重要なものも多いため、課題の洗い出しを行う際には現場の声にもしっかりと耳を傾けなければなりません。この時、従業員視点から見た企業の現状を十分に理解し、人材マネジメントに活用するためにフレームワークを導入することを推奨致します。

ロジックツリーは新入社員や若手社員でも簡単にロジカルシンキングを実行できるツールであり、従業員にも積極的に課題発見プロセスへ参加してもらいたいときに有効なフレームワークです。従業員個人が感じる問題点とその原因をツリー化することで、企業に求める改善点と自身が実行するべき改善点を明確にすることができるでしょう。

PEST分析の活用

PEST分析は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)といった外部要因が企業活動にどのような影響を与えているのか整理するためのツールであり、現在描いている将来ビジョンが実現可能であるかどうかの確認や外部要因によるリスクの早期発見という形で活用することができます。

外部要因は日々大きく変化しているため、PEST分析を人材マネジメントに活用する際にはPDCAサイクルの回転に合わせて定期的に実施するといった工夫を行うと良いでしょう。

VRIO分析の活用

VRIO分析は企業内に存在する経営資源の評価する際に使用されるフレームワークであり、その評価は価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)という4項目に分けて行われます。同業他社に対するアドバンテージの獲得や差別化を意識して使用されることの多いVRIO分析ですが、それぞれの項目の持つ解釈を変えることによって企業内人材の活性化やマンパワーの底上げといった形で活用することもできます。

通常のVRIO分析と人材育成を意識した人材マネジメント向けVRIO分析を適切に使い分けることにより、様々なシーンに最適な戦略を構築することが可能となるでしょう。

バリューチェーンの活用

バリューチェーン(Value Chain)とはアメリカの経営学者であるマイケル・ポーター(Michael Eugene Porter)氏が著書『競争優位の戦略』内で使用した経済用語であり、日本語では『価値連鎖』と訳されています。

本来バリューチェーンは、商品やサービスが顧客の元へ届くまでの一連の流れを一つの価値を共有する連動した企業活動として取り扱うために使用されますが、この対象を人材や企業目標などに置き換えることによって更に幅広い活用が可能となるのです。

初期段階においては、目標の達成に向けて必要となる環境や要素を並べて「対象者の成長や覚醒を妨げている原因は何か」といった不足要素の洗い出しを行い、企業内で継続的に大きな成果を上げている優秀な人材に共通する成功因子や行動特性(コンピテンシー)を特定した後、それらの要素を順次追加していくことによって自社独自のバリューチェーンを作り上げていくことができるでしょう。

ポテンシャルに対する評価を行える環境を構築する

人材マネジメントはプランニングの仕方によって継続的な効果を生み出すことのできる人事施策です。その効果を十分に活かすためには、現在表面化している能力や成果だけではなく開花していないポテンシャルについても正しく評価し、長期戦略に組み込んでいく必要があります。

しかし、ポテンシャルという要素は一般的な評価スケールというものが存在しないため、評価点という形で数値化して評価テーブルで管理することが難しいものです。そのため、企業は向上心やチャレンジ精神、器用さといった先天性要素の中から自社に合った要素を洗い出して評価スケールを設定し、それを活用することのできる評価者を育成しなければなりません。

扱いが難しい要素であるからこそ、ライバル他社との差別化が図れるのです。多角的な評価を取り入れることによって、自社の貴重な人的資源を最大限に活用することのできる環境を構築していきましょう。

就業意欲への刺激と公平性の両立

人事制度の整備により社内の様々な要素が明確なルールとして設定されることで、大きなイレギュラーの発生しない安定した企業経営を行うことが可能となります。また、活き活きと働くことのできる職場作りは従業員の就業意欲を強く刺激し、組織力の向上に大きな力を発揮します。

ただし、労働環境の整備や福利厚生の充実など従来の環境に変化を加える場合には注意が必要しなければなりません。なぜなら、環境変化に関する施策は一部の対象者にのみ利益や効果をもたらす事が多く、対象外である従業員から反感を買うことが少なくないからです。施策によって従業員たちのモチベーションを高めようとしたにも関わらず、結果として多くの従業員のモチベーションを低下させてしまったのでは意味がありません。

特定の人物や部署だけを特別扱いするような施策になっていないか。
巡り巡って全従業員にメリットが与えられるような仕組みを構築できているか。
このように従業員間の公平性を意識してアイディアを提案修正することにより、大きな効果を生み出すことのできる施策を実施することができるでしょう。

ダイバーシティの推進とマイノリティの受容

様々な業種においてグローバル化が進み、大企業だけではなく中小企業においても人材の多国籍化が進んでいます。しかし、多くの日本企業はこの変化に対して困惑してしまい、外国人労働者の力を活かすための環境構築が不十分なままとなっているのです。

人種や年齢、性別、障害の有無などに関わらず誰もが平等な機会を得られるダイバーシティ(Diversity=多様性)の推進は、グローバル企業への成長を目指す企業にとって避けて通ることのできない重要な課題ですが、その土台を支えるものがマイノリティ(Minority=少数派、社会的少数者)の受容であるということを理解している経営者はそう多くありません。多様なワークスタイルを受け入れるためには、しっかりと小さな声にも耳を傾けなければならないのです。

だからといって、全ての意見や要望を無条件に受け入れなければならないというわけではありません。従業員たちの様々な思いを聞き入れた上で、組織文化や組織目標との調和や兼ね合いを意識しながら前向きに検討しようとするその姿勢がダイバーシティの推進には必要なのです。

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人材マネジメントを成功させている企業事例

人材マネジメントは適切に活用することによって大きな効果を生み出します。その効果を最大限に高めることに成功した企業の事例を2つ紹介しましょう。

ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard Company)

2015年11月にHP Inc.とヒューレット・パッカード・エンタープライズという2つの独立会社に分割されたヒューレット・パッカード(以下HP)は、24万人の従業員を抱え、170カ国という広範囲で活動を行っています。様々な国籍の従業員たちが1つの目的に向かって足並みを揃えて突き進むため、HPではどのような人材マネジメントを実施しているのでしょうか。

多様性を全面的に受け入れる『HP Way』

1939年に共同創業者としてデビッド・パッカードと共にHPを設立したビル・ヒューレットは創業当時からずっと「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだ」という確固たる信念を持っていました。

その思いを行動規範として明文化し、全社員に向けて発信したものが『HP Way』です。

  • Customer loyalty(顧客からの尊敬と信頼の獲得)
  • Profit(適正な利益)
  • Market leadership(市場でのリーダーシップ)
  • Growth(成長)
  • Employee commitment(働く人へのコミットメント)
  • Leadership capability(リーダーシップの発揮)
  • Global citizenship(良き市民)

この中で特に注目すべきは『Employee commitment』です。コミットメントには『責任を持ってしっかりと係わり合いを持つ』という意味があり、「全ての従業員が自分のパフォーマンスを最大化させた状態で仕事に向き合うために必要となる環境を必ず構築して提供する」という創業者たちの強い意思がこの項目に詰まっているのです。

国という概念を排除した組織運営

HPでは効率と作業性を第一に考えており、『国』という概念については重要視していません。そのため部署内でも多国籍化が進み、上司と部下が別の国籍を持っているということも全く珍しくないのです。

HPは組織構造として、縦軸に事業部、横軸に営業部、そして斜め軸に管理部門を置いた三次元マトリックスを導入していますが、その中でも国籍という概念の排除は積極的に行われています。日本における活動の給与計算を中国で行い、現場からの質問に対する応対業務はインドで行うなど、地球全体を1つの大きなワークスペースと認識して活動を行っているのです。

人事制度の世界共通化

人事マネジメントを困難にさせる大きな要因として地域性があげられます。地域によって異なる生活習慣や思想、行動特性を全て受け入れようとした結果、従業員間にひずみが発生し、意思疎通が難しくなることで組織力を低下させてしまったということも少なくありません。

このように多様性の受け入れはグローバル社会に適した企業として成長するために欠かすことのできない重要な要素でありながら、その対策を一歩間違えると企業内に大きなダメージを生み出してしまう難しい課題でしたが、HPは世界統一基準と指数評価による地域別対応という2つの人事制度を組み合わせることによってこの問題を解決させました。

HPでは以下の人事制度を世界共通のルールに従って運用しています。

  • 人事システム
  • ブロードバンディングによる職務等級管理
  • 評価基準や評価方法、プロセスといった人材評価制度
  • 賃金や賞与、福利厚生などの処遇条件
  • 研修やメンタリングなどのキャリア開発
  • ITインフラやフレキシブル・ワークプレイスなどの就業環境

多様性を受け入れるということは従業員一人一人が持つ生活背景や思想に対して理解を示すことですが、必ずしも全てを人事制度に盛り込まなければならないわけではありません。人材マネジメントの最終目標は全従業員が自分らしく活き活きと働くことのできる環境の構築であるため、経営者や人事部は企業経営の安定にもしっかりと意識を向けておかなければならないのです。

ビル・ヒューレットが『HP Way』に託したダイバーシティへの思い。そして、『HP Way』の下に実施された人材マネジメントによって構築された独自の人事制度。

HPは世界規模で活動するために最適な環境を適切な人材マネジメントによって構築することができた成功例であるといえるでしょう。

【参考】Our Values / HPE 日本 - HPE.com 【参考】グローバル企業・HPの「世界共通の人事制度」と「人事営業」

楽天株式会社

1997年に株式会社エム・ディー・エムとして設立してわずか20年。「イノベーションを通じて人々と社会をエンパワーメントする」という強い想いを胸に精力的な活動を続けてきた楽天株式会社は14,134名(2016年12月31日時点)もの従業員を抱える大企業へと成長を遂げました。その目覚しい成長の裏にはどのような企業努力があったのでしょうか。

グローバル化への積極的な取り組み

日本最大級のショッピングモールやプロ野球球団の運営、保険事業に電気通信事業と多角的事業展開を行っているイメージの強い楽天株式会社ですが、積極的に取り組んでいるのは新規事業への挑戦だけではありません。

2005年に世界初のアフィリエイトサービスプロバイダーであるアメリカのLinkShare Corporationを完全子会社化したことをきっかけに、その後も世界各国の企業に対して出資を行うことで事業範囲を拡大してきた楽天株式会社はベンチャーキャピタル(Venture Capital)部門においても大きな成果を残してきました。

その結果、企業内の多国籍化は急激に進み、80カ国以上の異なる国籍を持つ従業員たちが一堂に会して仕事をするという環境が構築されていったのです。

企業内の多国籍化と人材管理

全従業員の3分の1が日本国外で働いている楽天株式会社では、より多くのイノベーションの創出を目指して今現在もグローバル社会に対する積極的なアプローチを続けています。その1つが新卒採用における外国人の採用率。なんと楽天株式会社では数年前から毎年20~25%もの割合で日本国籍以外の人材を採用しているというのです。

多国籍化が進めば進むほどに人材管理の難易度は上昇していきます。しかし、楽天株式会社はこの問題を人材グレードの均一化という手法によって解決したのです。

企業内人材グレードの均一化がもたらすメリット

楽天株式会社は『楽天主義』という経営理念の下、成功するために必要なエッセンスをいくつも生み出し、それらをトレーニングパイプラインという教育体系にまとめ上げました。4つのステップから構成されたトレーニングパイプラインによって楽天株式会社に蓄積された様々な成功ノウハウを段階的に学んだ従業員たちは、質の揃った優秀な人材へと成長していきます。

その人材を世界各国に点在するグループ企業に適切に配置することによって各企業の人材のスキルや能力が均一となり、異動人事を実施した場合でも企業内バランスが崩れることが起きない環境を構築しているため、楽天株式会社は次々に攻めの経営戦略を実行することができるのです。

【参考】イベントレポート いま求められる、グローバル人材マネジメントとは――日本ヒューレット・パッカードと楽天の事例から考える : ワークデイ株式会社 / 日本の人事部HRカンファレンス

タレントマネジメントシステムが日本の人事を大きく変える

海外では以前よりタレントマネジメントを専門的に行うシステム開発が活発に行われており、その効果の高さは日本でも大きな話題を呼んでいます。

タレントというと日本では芸能人などのテレビ出演者といったイメージが先行しますが、その語源は重量や貨幣の単位であるtalantonという古代ギリシャ語です。そのタレントという言葉を企業内人材に結びつけ、タレントマネジメントとして実施していることから、海外ではいち早く従業員を価値ある企業資産として扱っていたことが分かるでしょう。

タレントマネジメントシステム導入による効率化

タレントマネジメントシステムは戦略的タレント育成に特化したシステムであり、多くの情報を分かりやすく整理し、可視化させることでデータ分析を容易にします。タレントマネジメントシステムを導入することにより、経営者や人事担当者は次のようなメリットを得ることができます。

  • 採用から退職まで一貫して行われる雇用管理
  • 企業内人材の配置状況や人員構成、企業内人材マップの可視化
  • 従業員を事業部門別や等級別にリストアップ
  • 従業員の個人目標管理シートやアクションプランシート(アクションシート)と進捗度の一元管理
  • 人事評価シートと評価者の紐付け、評価者の評価傾向の分析
  • コンピテンシーモデルの作成と企業内人材との比較
  • 従業員同士のスキルやキャリアによる比較と人事異動シミュレーション
  • 専門職と一般職の割合や年齢構成などのグラフ化による人材分析

このように様々な人事事務作業を一元管理することで作業の効率化を実現させるタレントマネジメントシステムは、企業の管理能力や経営能力を大きく高める即戦力となることでしょう。

【関連】タレントマネジメントシステムとは?導入メリットや注意点・お勧めシステムもご紹介 / BizHint HR

人材マネジメントの今後の課題

「数年前まで通用していた考えや戦略が今では全く通用しない」といったことが次々に発生する程、企業を取り巻く周辺環境は日々大きく変化しています。生産年齢人口の減少やグローバル化、後継者問題に日本型雇用システムの事実上崩壊など、どれも一筋縄ではいかない課題ばかり積み上げられてしまっている現状に対して、経営者や人事担当者は今後どのように人材マネジメントを活用していくべきなのでしょうか。

ITインフラの整備や技術力の向上によって企業間における大きな技術的格差は無くなってしまいました。そして、企業レベルのフラット化は大手企業には企業内人材に対する見直しを行う機会を、中小企業には飛躍的成長によるシェア拡大のチャンスを与えました。

今、全ての企業に求められているのは激しい市場競争に勝ち抜くために必要な人材の獲得と育成です。そのためには、一般従業員だけではなく人事担当者や採用担当者、管理者といった評価側の評価管理や育成管理も欠かせません。また、経営者も意識的に従業員理解を深め、人材管理に関するスキルアップを図っていく必要があります。

それら全ての課題解決を最短距離で実現し、維持するために適切な管理を行う施策が人材マネジメントだということを正しく認識して取り掛かることが成功への第一歩となるでしょう。

まとめ

  • 人材マネジメントとは人事業務を一体的に扱うことで発生する相乗効果を経営理念や企業目標の達成に向けた原動力として活用する戦略的施策である
  • 組織構成員を価値ある経営資源として認識し、適切に扱うことが人材マネジメント成功の秘訣である
  • 人材マネジメントという概念を正しく理解して実施することにより、ライバル他社に大きな差をつけることのできる人材と組織を生み出すことができる
  • PDCAサイクルや各種フレームワークを自社の企業特性に合わせて活用することで、人材マネジメントの効果は高まっていく
  • タレントマネジメントシステムを導入することにより、人材マネジメントプロセスが可視化され、人材管理や配置検討などの負担が大幅に軽減される

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