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2018年6月23日(土)更新

目標管理制度

目標管理制度とは、個人が自らの目標を定め、その達成度合いを指標にして評価を行うマネジメント手法のことです。その効果や問題点を説明し、失敗しない導入方法について紹介していきたいと思います。

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目標管理制度とは?

目標管理制度とは、経済学者P・ドラッカーが提唱したのが始まりとされるマネジメント手法です。正式には「Management By Objectives through Self Control(目標と自己統制による管理)」といい、略してMBOと呼ばれることもあります。

個人ごとに目標を設定し、その進捗や実行を自ら管理する手法 です。

目標管理制度を導入する目的

従来の日本企業の大きな特徴と言えば、「年功序列」や「終身雇用」ですが、不況の深刻化とともに、そのシステムは機能不全に陥っていると言えるでしょう。

代わりに普及したのが、「成果主義」です。業績や成果を上げた社員を高く評価する人事制度です。目標管理制度は、その成果主義にもとづき、成果を具体的で客観性のある指標で評価・判断するために導入され、広く普及しました。

また、目標管理制度は、人事評価のためだけのツールではなく、マネジメントツールでもあります。自ら目標を立てることで、社員のモチベーションアップを図り、能力を向上させることも大きな目的です 。組織目標にもとづいて個人目標を設定することで、組織と個人の方向性を統一することも可能になります

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目標管理制度を導入する前に整えるべきこと

目標管理制度を導入する前に、どのようなことを整えるべきでしょうか。

経営戦略の具体化をする

目標管理制度を導入した際に、個人の行動レベルで目標をたてることができるために、まず企業としての目標・戦略・計画を具体化しておく必要があります。

そこで大切なのが、 社員が情熱を感じられるような経営戦略を掲げること です。たとえば「売上を〇〇%上げる」「生産性を上げる」と言った、組織の業績のみのための目標に、社員は情熱を感じるでしょうか。人は、自分の欲求を満たすものでなければ、行動を起こそうと思いません。組織の目標は、個人の目標の基礎となるものです。この基礎が社員の欲求を満たすものでなければ、社員は個人の目標を達成しようというモチベーションを持つことはできません。経営者にとっては数字の目標が最重要であっても、それだけでは、社員の動機付けとなることはできません。

それでは、何が社員のモチベーションにつながるのでしょうか。それは、 「重要感」という欲求を満たすこと です。その目標を達成することで、自分の重要性を感じることができるか、自分の存在価値を高め、プライドを満足させることができるかが、大きなポイントになります。数値目標や理念の感じられない目標ではなく、社員がその達成により、成長や貢献、やりがいを感じることができる経営戦略を示すことが、目標管理制度の第一歩になるのです。

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管理者サイドの能力開発を行う

目標管理制度には、管理者サイドの制度に対する理解と能力を欠かすことができません

そのために、制度の導入は、初めは管理職階層のみに行います。このステップを省略し、いきなり全社的に導入したり、下の階級から行ったりした会社の多くは、制度導入に失敗してしまいます。ポイントは、いずれ部下の目標管理を支援し、評価者となる管理職階層からの制度導入です。

まずは階層を絞って制度を導入し、管理者が自ら目標設定を行い、制度の流れや評価の仕方について、実際に経験をしながら学んでいきます。その経験を元に、管理者の能力を開発し、制度への理解を深めた後、様子を見ながら、順次、制度の範囲を広げていきましょう。

また、目標管理制度は職種によっても向き不向きがあります。最終的には全ての職種での目標管理を目指す場合も、まずは営業や企画職など、向いている職種から取り組み、その後、事務や製造など、不向きの職種への導入を検討するとよいでしょう。

マネジメントのシステム化

制度導入の準備として、マネジメントをシステムに落とし込むことも必要です。

まず取り組むべきなのは、目標を管理する基本書類となる 「目標シート」の設計 です。目標シートは組織目標や本人の目標などを、記録・管理していくためのものですが、単なる記録のための書類ではなく、目標シートそのものが、制度に対する思想やロジックを表現したものになります。必要そうな項目を漫然と並べるのではなく、どんなことを書くべきなのか、部門や個人にとっての成果とは何か、組織の業績とは何か、といった点について、よく議論し、検討したうえで設計しなければなりません。

シートの構造を決めるための項目は多岐にわたります。たとえば、目標の設定方法は、職種や階層で分けるのか、目標を定める期間はどうするのか、いくつの目標を設定するのか、難易度設定は行うのか、業績評価と結びつけるのか、と様々な項目が考えられます。こうした項目について検討を重ね、制度のコンセプトを明確にしたうえで、目標シートを設計しましょう。しかし、最初から完璧なものをつくるのは難しいため、導入当初はシンプルなシートを用意し、運用を進めながら、少しずつ項目や記述方法の最適化を図っていくものいいでしょう。

そして、目標シートに並んで、システム化すべきなのが、 面談制度の導入 です。目標管理制度には、上司と部下の面談が必須になります。日頃から十分にコミュニケーションが取れていると感じる場合でも、改めて面談の場を設け、目標や業務について話し合うことが大切です。

面談の回数は、企業の考えによって異なりますが、部下にとっては、定期的に上司と個別に話しをする機会が必ずあるという意識だけで、モチベーションがあがり、小さな不満に対する耐性が高まります。いずれは上司に相談することができると思うことで、日頃の不満に対して爆発せずにすむのです。そういった理由からも、日頃のコミュニケーションや日常業務による忙しさを理由に、目標管理における面談を省略してはいけません。面談こそが目標管理導入の鍵であり、組織運営のための重要な機会なのです。

また、目標シートや面談制度をよりスムーズにシステム化するために、マニュアルの整備や説明会・研修の場も設けるとよいでしょう。可能な限り、想定できる準備を進めておき、細かな質問や問題に対する回答は、導入後に整理していくケースが一般的です。

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目標管理制度導入の手順と重要なポイント

目標管理制度導入の手順とそれぞれの段階における重要なポイントについて説明します。

組織の目標を従業員に共有する

個人の目標を設定する前に、組織の目標を従業員に共有します。この際に大切なのは、 目標を全社員が共有し全社の一体感を醸成すること 。間違っても、「黙って目標を達成しろ!」というような、一方的な通達であってはなりません。

理想は、経営者自らがイメージしやすいかたちで夢を語ることです。従業員と組織の方向性を統一するためには、従業員が経営者の夢に共感することが鍵になるのです。

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個人目標の設定をする

個人目標の設定において、まず重要なのは組織の目標と社員の努力の方向性を一致させることです。

それには、上司によるチェックがポイントになります。部下が設定した目標をそのまま認めてしまっては、個人目標は達成したものの、場合によっては、組織としての業績に結びつかないという事態になりかねません。個人の目標を設定する段階で、上司がそれぞれの目標の軌道修正を行いましょう。個人目標が「会社の目標」及び「部門の目標」と一致してはじめて、社員一人ひとりの努力と成長が組織としての目標達成につながるのです。

また、目標のレベルも目標管理における重要ポイントになります。まずは現時点で自分がどのレベルにいるかを正確に認識し、過去の経験も踏まえて、どのレベルまで到達するべきなのかを考えます。目指すレベルは、高すぎると現実味がなく挫折につながりやすくなりますし、必ず達成できるレベルにしようと低い目標を設定すると、個々の成長や組織全体の目標達成に結びつかなくなってしまいます。

社員の最大限の工夫と努力を引き出せるよう、 適切な目標を設定し、そのための作戦と計画をたてること が重要です。

目標達成までのプロセス管理

目標を設定した後は、それを達成するまでのプロセスを管理していきます。このプロセス管理には PDCAサイクルが有効 です。

まず、「Plan(計画)」として取り組むべきなのが、目標を具体的な行動に落とし込むことです。

「売上を10%アップさせる」という目標を立てたのであれば、その目標達成のためにどんな風に自分の仕事を進めていくのかを掘り下げ、具体的な行動として明確化することが大切です。たとえば、「1日3件新規顧客にアプローチする」や「1ヶ月に50件の企画書を送る」など、具体的な数値や方法を打ち出すことが必要です。

こうして立てた「Plan(計画)」にもとづき、「Do(実行)」に取り組んでいきます。

さらに、行動を進めていくために、定期的に進捗状況を確認していきます。これがPDCAサイクルの「Check(確認)」にあたります。毎週、隔週、月に1回など、頻度を決め、目標に対して現在の自分がどの位置にいるのかを、振り返る場を設けるのです。この確認は、部下自身だけでなく、上司も交えて行います。目標設定時には想定しなかった問題点があれば、改めて方法を見直し、行動計画を修正していきます。

この修正が「Act(改善)」です。

この時、上司はアドバイザーに徹することが大切です。命令や強制ではなく、部下自身に今後どのようにしたらいいのかを考えさせましょう。上司が進捗状況を把握し、部下の自主性をサポートしていくことで、信頼関係の構築につながり、部下のモチベーションもアップするはずです。

このように「Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Act(改善)」のサイクルを繰り返し、上司は部下の目標達成までのプロセスをサポートしていきます。

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目標達成結果の測定・評価

期末には目標達成結果の測定と評価を行います。

目標管理では、まず本人が自己評価をし、それを受けて上司が評価を行うという流れが一般的です。注意すべきなのは、達成度の測定・評価における原則は、「結果が全て」ということです。期初に設定した目標に対して、どのレベルに達しているかを判断することが重要であり、どれだけ努力したかということを、評価基準に持ち込んではいけません。

もちろん、達成までのプロセスや目標に取り組む姿勢も重要なことですので、目標管理制度以外の枠組みでフォローすることも大切でしょう。しかし、あくまでも、目標管理制度においては、「評価=結果」ということを忘れないでください。

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目標管理制度導入のメリット

つづいて、目標管理制度導入のメリットについて説明します。

モチベーションの向上

目標管理制度は、自ら目標を設定し、そのプロセス管理や評価も含めて自分で行うという、非常に自主性を重んじる制度です。

この「自主性」が社員のモチベーションをアップさせるためのポイントです。経営学者であり心理学者であるダグラス・マグレガーは、人間の行動理論を、「人はもともと怠け者であり、責任を嫌い、厳しい規律や罰で統制しなければ働かない」というX理論と、「人間は働くことを喜び、条件次第で目標達成のために努力し、進んで責任を負う」というY理論の2つに分けられることを示しました。

目標管理制度は、このY理論にもとづく制度で、社員の自主性を支えることが、社員のモチベーションを高め、進んで働くことを促すと考えられています。また、自分の成長や努力が、会社の業績向上や発展にリンクするという意識によって、経営への参加意識が高まることも、社員のモチベーションや意欲の向上を大きく促進します。

【参考】モチベーション理論を学ぶ(3)「X理論Y理論」:『ロジックとパッションの狭間から。。。』家弓正彦Blog

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従業員の能力向上

目標管理制度には、従業員の能力向上も期待できるというメリットがあります。

まず、自分で個人目標を設定するプロセスを踏んでいるうちに、「問題意識」や「状況分析」、「情報収集」などの能力が育ちます。

さらに、設定した目標を達成するため、「自主性」や「自己管理」能力も高まるでしょう。もちろん、目標達成のため、直接業務に関わるスキルや能力も磨かれていきます。

また、目標を設定した本人だけでなく、上司の管理者としての能力も向上します。部下に対する指導や支援、動機付けといったマネジメントスキルの向上が期待できることも、目標管理制度のメリットになります。

目標管理制度導入のデメリット

目標管理制度導入のデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

導入の仕方でモチベーションが低下する

うまく機能すれば社員のモチベーションをアップさせる目標管理制度ですが、導入の仕方を誤ると、反対にモチベーションの低下を招いてしまいます。

目標管理制度を導入した企業でよく見られる問題ですが、制度が組織マネジメントのツールではなく、人事評価のツールのみとして用いられてしまうのです。こうなると、目標管理は人事考課の判断材料として考えられ、単なるノルマ管理ツールとなってしまいます。社員にとって、目標が「達成しなければいけない」という命令・指示になってしまうのです。

こうした押し付け感が強まれば、社員の自主性が失われ、目標達成による達成感や満足感を得ることも難しくなります。結果的に、社員のモチベーションが低下してしまうのは当然と言えるでしょう。

個人プレーに走りすぎてしまう

設定された目標課題を達成することだけに集中してしまうと、「目標さえ達成できればいい」という考えを持つ人が現れることも考えられます。

そうなると、短期的な結果だけを追い求め、長期的な視点で考えることができなくなってしまったり、個人プレーに走り、周囲と協力する仕事をないがしろにしてしまったりするなどの問題が起こります。

極端に目標達成を重視してしまうと、各社員が個人の行動のみに注力し、お互いをフォローしたり、わからないことを教え合ったりといった姿勢が失われてしまう可能性もあるのです。

設定が困難

目標設定の難しさもデメリットの一つと言えるでしょう。

営業職や企画職などの場合は、金額や件数など定量的な目標を設定しやすく、目標達成の判断も容易ですが、職種によっては、このような目標を設定することが困難なこともあります。

たとえば、間接部門の業務などは数値化できるものが少なく、目標も立てづらく感じられます。無理に改善課題を探して目標として設定してみたとしても、実際には手をつけられなかったり、些細な改善が高く評価されてしまったり、といった状況も起きてしまいます。

評価者の能力と負担が必要になる

目標管理制度のデメリットとして、評価者への負担が増えることも上げられます。

期初の目標設定、進捗管理を行う中間面談、期末に行う評価、など、面談を行う機会が大幅に増えますし、評価を行うための研修やスキルアップなどにも、時間と手間がかかります。

また、評価者の能力が不足している場合、社員の間に不満や不公平感が生まれてしまいます。制度を適切に運用するため、人事担当者にとって、評価者のマネジメント能力育成も大きな課題となるでしょう。

目標管理制度導入のデメリット克服のための取り組み例

これまであげてきたようなデメリットを克服するため、様々な取り組みが行われています。その例を2つほどご紹介します。

参加者間でディスカッションを行う

目標管理制度におけるデメリットは、参加者間の制度に対する理解のズレが原因の一つです。

そのズレを解消するため、参加者を集めてディスカッションを行います。それぞれが制度に対してどのように考えているのかを話し合い、全体の価値観の共有を図るのです。経営方針についてどう感じるか、目標とは何か、どのように目標設定をするのか、目標達成のために重要なことは何か、管理者はどのようなフォローをしていくべきかなど、立場のちがう人々で意見交換を行います。

ディスカッションによって、お互いの考えを理解し合い、改めて目標管理制度の本質について考えることが、制度導入のデメリット克服につながります。

複数の評価者で総合的な判断をする

評価の偏りによる不公平感を払拭するため、複数の評価者で総合的な判断をするのも効果的です。

たとえば、課長が1次評価者、部長が2次評価者となり、最終的な判断は2つを総合して行うことで、評価の偏りを防ぐことができます。

また、1人だけに評価されるよりも、複数の視点からの評価の方が、評価される側も率直に受け止めることができると考えられています。

まとめ

  • 目標管理制度とは、社員が自主的に設定した目標に向かって仕事をし、目標の達成度合いによって評価を行うマネジメント手法である。
  • 社員の自主性を重んじることで、それぞれのモチベーションを高め、能力向上にも役立つ。
  • 目標管理制度にはメリットがある一方、いつかのデメリットもあげられる。そうしたデメリットへの対処方法も検討したうえで、制度の導入を進めていくべきであろう。

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