連載:第16回 中竹竜二さんが聞く【新しい組織・リーダー論】
「自分とは違う見方を知ること」が世界を広げる【医療法人社団悠翔会理事長・佐々木淳さん】
「在宅医療サービス」は住み慣れた自宅で、充実した最期を迎えるための総合的ケアサービス事業。医師、歯科医師、看護師、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、管理栄養士など多様なプロたちがチームを編成して、献身的なサービスを提供しつづけている「難しくもやりがいがある仕事」です。首都圏最大の在宅医療サービスを展開する医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長に在宅医療の現場について聞きました。後半では、在宅医療における「チームワーク」に焦点を当てます。
医療法人社団悠翔会
理事長・診療部長 佐々木淳さん
1973年生まれ。筑波大学医学専門学群卒業後、三井記念病院内科、消化器内科にて勤務。井口病院副院長、金町中央透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック設立・理事長。2008年医療法人社団悠翔会に法人化、理事長に就任。 編著に『これからの医療と介護のカタチ~超高齢社会を明るい未来にする10の提言』(日本医療企画刊)、『在宅医療 多職種連携ハンドブック』(法研刊)、『在宅医療カレッジ: 地域共生社会を支える多職種の学び21講 』(医学書院刊)などがある。
前編のポイント
- 「病気」を治せないことは「人生の敗北」じゃない
- 充実した最期を迎えるため「在宅医療サービス」は1つの選択肢
- 在宅医療は医者、看護師、介護福祉士など多様なプロが集まる成り立つチームサービス
- 多様なメンバーが集まるチームでは、1人ひとり対話することで進めることが肝心
- 患者の自ら生きる力を奪わないよう、家族も患者も「人生の目的」を実現するためのチームメンバーにする
- 多様なプロが集まるサービスでは、最終目的とプロセス、お互いの役割をちゃんと共有していることが大事
中竹竜二さん(以下、中竹): さて、後編では2つのことをお伺いしたいと思います。1つは、在宅医療のお仕事の「やりがい」と「働き方」について。もう1つは在宅医療サービスの未来についてです。
在宅医療は、病院に通えなくなった方のご自宅に伺い、患者さんの介護・看護・治療する総合サービスです。病院の治療が「病気を治すためだとすれば、在宅医療はその人がより充実した最期の時間を過ごせるよう支援すること。佐々木さんの医療法人社団悠翔会では現在、11のクリニックがあり、現在4000人の患者さんがいらっしゃる。そのうち毎年1000人の方が亡くなっていると聞きました。メンバーが熱心にケアしてもいつかはお別れが待っている、というのは仕事とはいえ簡単に割り切れることではないとは思います。プロの方々はどうやって、悲しみを乗り越えているのでしょう。
「ありがとう」と言われる機会が多い仕事、言いたいことを言い合える関係に
佐々木淳さん(以下、佐々木): 実は、最近10年近くお付き合いしていた方が亡くなりました。覚悟していたとはいえ、やはり悲しいし寂しいです。患者さんとの別れはいつまでたっても慣れるものではありません。
ただ、それでも私は、主治医として「自分なりにやれることはできた」という想いもあるんです。 在宅医療の仕事は、患者さんやご家族から「ありがとう」と言われることが多い んです。病院に居た頃は、感謝される機会と同じだけ「苦情・クレーム」を受けていました。医者も看護師たちも本当に頑張って仕事しているんですが、どうも頑張っている方向が違うのか……。患者は不満を抱え、医者も苦情を受ける。「なんでこんなに頑張っているのに……」という残念な気持ちを抱いてました。
でも在宅医療では、生活の支援が中心です。「医師対患者」という関係性は、少しずつ「人間対人間」に、そして、 医師と患者は向かい合うのではなく、伴走するという形に変わっていきます。 何かを提供するのではなく一緒に手に入れる。ともにゴールを目指す仲間だから、連帯感も生まれる。だからこそ「ありがとう」といわれる機会が多いんだと思います。言いたいことを言い合える関係になるから、クレームも少ない。
世の中はツライ世界だけでできていない
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