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連載:第8回 「人と組織の科学」―人事データ・ピープルアナリティクス最前線―

社会の課題を解決しながら、人と組織はどう変化していくのか【早稲田大・村瀬俊朗准教授×鹿内学さん】

BizHint 編集部 2019年3月20日(水)掲載
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リーダーシップとチームワークについて研究している早稲田大・村瀬俊朗准教授と鹿内学さんの対談。後半では、テクノロジーの進歩・発展にともなう「ソシオマテリアリティ」を考慮した新しいリーダーシップについての話に向かっていきます。社会が変化するなかで、人と組織もどのような変化が求められているのでしょうか。

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「ソシオマテリアリティ」−技術からの影響を議論せずして、企業の組織活動は考えられない

鹿内学さん(以下、鹿内): 対談の前半では、村瀬さんが長年、研究者として過ごされてきたアメリカにおけるチームワーク、リーダーシップに関する最新の知見であるとか、そもそもリーダーシップやチームワークは何のために存在し、何を解決してくれるものなのか……といった意義などについて、ざっくばらんに語り合ってきました。

村瀬俊朗さん(以下、村瀬): 前半で、現代におけるリーダーシップやチームワークに関する議論には、経済的環境や社会的環境の変化だけでなく、テクノロジーの進歩・発展と、それにともなう働き方の変化なども加味して思考しなければならない、と指摘しました。

鹿内: たとえば、ICTの進化によりテレワークが容易になったり、といったことですね。

村瀬: はい。その話題に関連して、私は最近、ある言葉に強い興味を持っています。「ソシオマテリアリティ*1」という言葉をご存じですか?

鹿内: ソシオマテリアリティ?

村瀬: 敢えて、日本語に訳すなら「社会物質性」といった感じです。 モノ……たとえばテクノロジーは社会に多大な影響をもたらす存在ですが、それを単に認識論だけで解釈するのではなく、実在的本質からも見極めよう、という議論 です。私なりの解釈でいうと「テクノロジーと人間の融合」「オンの世界とオフの世界の融合」といった視点になってくる。

鹿内: もう少し詳しく教えてください。

村瀬: いわゆるICTが普及する以前は、テクノロジーと人間はそこそこ切り離せるものだったと思うんです。でも、現代の我々の生き方であるとか、世界との関わり方を見ると、たとえば ネットを通じて、もしくはテクノロジーを通じて、オンとオフの世界は融合しだしている。 「会話」という営みひとつとっても、対面の会話、電話や音声通話アプリを介した会話、チャットツール上の会話などが同じレイヤーで存在していて、それらの違いをあえて意識するような感覚はどんどん薄れてきていますよね。テクノロジーと人間は、もはや切り離せるものではなくなっている。

誰もがスマートフォンを持つようになり、自分の手元が世界とそのまま繋がっているような状況にもなっています。これもオンとオフの融合。オンとオフの差異を意識することのない状況といえるでしょう。

こうした視点は、当然、組織の議論においても強く意識すべきだと、私は考えています。テクノロジーを使って、これまではオフの世界でやってきたことを、オンの世界と融合させて作業できるようになると、たとえば社員の発想力がより豊かになったり、コミュニケーションがもっと円滑になったりするだろうと。

鹿内: 技術によって働き方も変わってきますし、重要な視点になると思います。

村瀬: ええ。これまでは、みんながオフィスに出社して、同じ場所で作業をしていました。業務を円滑に進めるのに好都合だったから、みんなそうしてきたわけです。ただ、いまはノートパソコンやタブレット、スマホなどでインターネットに繋がれば、ビデオチャットや音声チャットでいくらでも会話することができますし、ファイルシェアもリアルタイムでできます。同じファイルを同時に閲覧しながら加筆修正を加えたりすることも可能です。もちろん、異なる時間、場所で修正することもできます。

鹿内: クラウドでのファイル共有技術を使うことで、「みんなが同じ時間に働く必要がなくなる」という意図されていなかった新しい影響がでてくるということですね。

Eメールは、手紙よりも簡単で便利な連絡手段であっただけなのに、いまでは僕らに、仕事の即時性・同時性までを求めてきますよね。返信が2〜3日遅れると気まずい(苦笑)。

村瀬: そのとおりです。さらにいうと、これまでのようなオフラインでの働き方ではできなかったことが可能になる。 「テクノロジー」と「働き方」が融合すればするほど、もっとイノベーティブなアウトプットができるようになるかもしれない わけです。

企業もテクノロジーを上手く使って……いや「使う」というより、テクノロジーを上手く現実世界に融合させていくほうがいいと、私は考えます。コミュニケーションひとつとっても、方法が「並行」しているのではなく「融合」しているほうがいい。そのほうがよりフレキシブルさがでてくると思うんです。要は、テクノロジーをどのようにして上手くプロセスのなかに融合させていくか、という視点で捉えていくべきだろうと。オンとオフの両方が自然に融合している世界を前提にして考えていくほうが、問題解決にも質の高い答えが出てくるようになるはずですから。

鹿内: 確かに、現代ではオンライン上のコミュニケーション量もチャットツールで交わされた文字データを通じて分析できます。オフラインのコミュニケーションもビーコンを付けて誰と誰がどの程度会話したかや、どんなトーンの会話だったかなども分析ができる。

村瀬: ええ。ICTツールを使ってさまざまなコミュニケーションに関するデータが大量に取れます。それらのデータを分析して、優秀なリーダーたちがどのような行動をとっているのか、リーダーがどのような発言をすると社員のモチベーションが上がるのか、といったことがいろいろ見えてくると思うんです。

鹿内: これまでにない、新しいリーダーシップですね。それは、データを見ないと(笑)。また、ピープルアナリティクス自体が、コミュニケーションツールの一つになりますよね。 データを取って、先を見据えて「誰を幸せにするのか」を考えなければならない。

日本人はチームワークが実は苦手な人達!?

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