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2017年8月15日(火)更新

OJT

OJTとは職場にて業務時間内に行われる実践的な人材育成方法です。指導者側も知識を深める機会として有益な時間を過ごすことのできるOJTは昔から多くの企業で扱われています。OJTの効果をより高めるため、OJTを扱う上での基本的知識から応用方法まで詳しく解説致します。

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OJTの意味とは

OJTとはOn-the-Job Trainingの略であり、実務を通して上司から部下へと、またはベテラン経験者から若手社員へと知識やスキルを伝承していくための施策です。 文化を伝承するという日本的考え方に非常にマッチしているOJTは、多くの企業が新入社員研修や社員教育の一環として積極的に活用しており、その存在を知らないビジネスパーソンはいないと思われるほどにメジャーな存在となっています。 しかしながら、その目的や必要性について詳しく説明できるほどに興味を持って向き合っている指導者や育成対象者は少なく、企業の経営者や人事部も形式的に行われているだけとなっている現場に対して大きな危機感を覚えていないというのが現状なのです。

OJTは手軽に導入し、実行することができます。 そして、その手軽さとは比較にならないくらいの効果を組織全体にもたらしてくれます。 OJTについて正しく理解を深め、それらの知識を現場と共有しながら実践することによって、他の企業に対して大きなアドバンテージを獲得することが可能となるのです。

また、OJTとメンターの違いに関してはメンター制度導入!メンターの持つ役割と意味とは!でご紹介しています。ご覧ください。

OJTの目的

OJTには、『教育による即戦力の育成』と『自発的な経験学習による実践力の定着』という、相反した性質を持つ2つの大きな目的があります。

即戦力の育成

終身雇用制度と年功序列制度がまだ問題なく稼動している頃は、まずはしっかりと企業に馴染んでもらい、それから時間をかけてゆっくりと育成していこうという方針を持つ企業がほとんどでした。 しかし日本的雇用システムが崩壊し、早期退職率が増加していくにつれ、時間をかけて育成するこれまでの考えを見直さなければいつまでも次世代を担う人材を育成することができないと危機感を覚えた結果、より早く、より確実に戦力化するためOJTを活用するという結論に至ったのです。

経験学習を通じた実践力の定着

OJTによって即戦力を育てるための教育を施す一方、一定の戦力化が終わった育成対象者に対して更なるOJTを実行し、自発的な意思によって実践力の定着と大きな成長を期待する企業も数多く存在します。

哲学者であり組織行動学者でもあったデイビット・A・コルブは、『経験・省察・概念化・実践』からなる経験学習モデルを用いて経験学習の必要性と重要性を説いています。 そして、その経験学習サイクルによって成功を収めた数多くの経営者やビジネスパーソンの姿から、経験則として経験学習の必要性と価値が認められることとなったのです。

このように、OJTには直接的教育と教育機会の提供という2つの目的が混在しており、育成対象者の成長度を正しく把握しながら使い分けていく必要があるのです。

人材育成全般に関するレポートは、成功する人材育成の方法とは?課題解決のポイントと参考事例集をご参考にご覧ください。

OJTの必要性

現代社会における様々な要因により、OJTの必要性は日々高まっています。 OJTを実行する上で方向性を見失うことのないよう、なぜ全ての企業がOJTを取り入れる必要があるのかを正しく理解しておく必要があるでしょう。

OJTの基礎的な理解に関しましてはOJTとは?いまさら聞けないOJTの意味や基礎知識とは!をご覧ください。

技術や技能の伝承

伝統的な技術を伝承する必要のある企業においては、先輩社員から後輩社員への知識や技術の引継ぎが欠かせません。 そしてその方法として、言葉で指導するのではなく熟練労働者の働く姿を見ることによって感覚的に学ぶ経験学習の形が多く取られてきました。

最近では即戦力化への期待から直接的な指導や教育によって技術を伝承する製造業や技術職も多くなりましたが、アプローチ方法が変わっただけでOJTの必要性に大きな変化はみられていません。 昔も今も変わらず、企業活動の質を維持するためにOJTは必要不可欠な存在なのです。

人材不足時代で企業が生き抜く術

かつては高度経済成長期、そして現在は少子化やバブル世代の引退による生産年齢人口の減少と、日本経済は長きに渡り人材不足時代が続いています。

高度経済成長期には、これから更に上昇していくであろう日本経済に期待を寄せて多くの若者が前向きに人材募集へ応募していたため、人材不足を解消する見通しがつかないという最悪の状況を免れることができていました。 しかし、長期低迷中の現在の日本経済に希望を持つことのできる若者は少なく、意欲の減退によって非労働力人口が増加し続けた結果、多くの企業が見通しのつかないまま人材不足の状態を維持してしまうこととなったのです。

経営者達はこの状況を打破するべく、若者の就業意欲向上に重点を置いて人材育成方法の見直しを行い、積極的指導により成長を促す教育型OJTに多くの時間と人材を費やすことにしました。 自社に就職すれば積極的にスキルアップすることができ、自身の魅力や能力を更に高めることができることをアピールしたのです。 他の企業よりも多くの注目を集め、採用応募に参加するに至るほどの興味を引くため、組織改革に積極的な姿勢を示す一部の企業は次々に個性的なOJTを生み出していきました。

OJTへの力の入れ具合と人材確保数や人材定着率が比例することが明らかとなったことで、これまでOJTを単なる職場内研修として安易に扱っていた経営者や人事部もOJTの重要性に気付くこととなりました。 そして、これまでの遅れを取り戻すため、OJTに対する深い理解と効果的な実行方法について得ようと努力するようになったのです。

優秀な人材の余裕が更なる企業成長へと繋がる

OJTを活用することにより、OJT担当者と同じ価値観と視野、知識とスキルを持った人材を育成することができます。 企業規模の拡大や新規事業への挑戦には時間やお金だけでなく、素晴らしい能力を持った人材も数多く必要となりますが、OJTによって優秀な人材の増員に成功した企業の持つ選択肢は他企業に比べて多く、貴重なチャンスを逃がすことなく積極的にチャレンジすることが可能となるのです。

次世代リーダーの育成

OJTは次世代リーダーや事業継承を行う継承者候補の育成を目的としているサクセッションプランにも組み込まれ、大きな効果を発揮しています。 IT化が進みeラーニングなどの独学環境も以前に比べて充実していますが、どれだけ情報技術が向上したとしても事業に込めた想いまで独学で学ぶことはできません。 現リーダーや経営者達はOJTによる実践的な経験を通じ、単なる事業経営やリーダーシップのノウハウだけではなく、企業理念や今後のビジョンといった重要な要素も伝えていく必要があるのです。

【関連】次世代リーダーとは?どんな課題や育成研修があるのかご紹介 / BizHint HR

最新技術への効果的な対応策

グローバル化と情報化により、企業に求められる技術やスキルは日々高度なものへと進化を続けています。 しかし、その変化に対応しようと全社員に自主的なスキルアップを求めてしまうのは非効率的であり、通常業務へ与える負担も考えると最良な選択とはいえません。 このような場合、情報や技術の吸収(インプット)と整理、指導(アウトプット)を得意とする社員を数名ほど選出し、学んだことをOJTとして共有することによって効率的に組織全体へ拡散させることが可能となるのです。

OFF-JTとの違い

人材育成をテーマとして扱う際、職場内研修であるOJT(On-the-Job Training)と一緒に取り上げられるのが、職場外研修であるOFF-JT(Off-the-Job Training)です。 OJTやOFF-JTには複数のメリットとデメリットがありますが、その多くはBack to Back(背中合わせ)の関係となっているため、ここではOJT視点でのメリットとデメリットをあげていきたいと思います。

【関連】Off-JTとは?メリット・デメリット、OJDとの違いとは / BizHint HR

OJTのメリット

OJTのメリットには次のようなものがあります。

研修機会が多い

仕事時間は常に実践的な研修を行っているといっても過言ではなく、その就業時間を意識的に活用した人材育成方法がOJTなのです。 新人教育の内容は継続的かつ反復作業により身に付くものが多いため、研修機会の多さは早期習得に向けた大きなメリットとなるのです。

育成者の理解を十分に深めることができる

OJTでは上司や先輩社員がマンツーマンで指導する機会も多いため、個人の理解度に応じた柔軟で細やかな教育が可能となります。 臨機応変な指導により育成者の理解度は更に深まっていくため、高い研修結果を期待することができるでしょう。

追加コストがかからないため経済的

OJTでは現在の職場環境を活用するため、新たに研修のための場所を用意する必要がなく、外部講師などを雇う必要もありません。 労働時間を使用して教育を行うことによって上司や先輩の時間を新たに確保せずとも指導が可能となり、残業代や手当てなどの追加コストも発生しないため、とても経済的な人材育成方法であるといえるでしょう。

教える側の業務理解度、指導力が上がる

分からない人に分かりやすく教えるという経験を通じ、上司や先輩社員の業務理解は深まり、教育力も向上していきます。 OJTは指導係にとって新人指導研修や部下指導研修といった意味合いも持っているのです。 教えながら同時に学習するという双方向の教育機会であることを正しく理解して取り組むことにより、OJTの効果は更に大きなものとなっていくのです。

社内コミュニケーションが活発になる

OJTは指導員と学習者が密なコミュニケーションを図りながら行われます。 そのため必然的にコミュニケーションの機会が増え、社内全体のネットワークも活性化されていくのです。

【関連】社内コミュニケーション活性化の方法と事例をご紹介! / BizHint HR

戦力への直結

外部研修で学ぶ知識や技術は必ずしも実際の現場で活用できるとは限りません。 しかし、OJTであれば実務を使用して研修を行うため、実践的な力を効率的に身につけさせることができるのです。 正しく活用することによって学習時間がそのまま戦力へと直結するOJTは、組織にとって大きな武器となるでしょう。

OJTのデメリット

OJTを正しく活用することにより、企業に対して多くのメリットがもたらされることが分かりました。 しかし、問題点の存在しない施策が存在しないように、OJTにもデメリットといえる側面が存在します。

指導者の能力に大きく依存する

OJT研修における指導者は、外部から招かれた専門講師ではなく上司や先輩社員であるため指導スキルには大きな差があり、持っている知識や能力、態度によっても教育の質は大きく左右されてしまいます。 そのため同じ教育内容を扱った場合でも習得度にばらつきが生じることがあるのです。 OJTによる効果が指導者の能力に依存してしまうことは質の高い人材育成を行う上で大きな障害となりうるため、指導の質を安定させるための改善策を検討する必要があるでしょう。

指導者の時間的負担が大きい

人材育成には時間もパワーも必要です。 上司や先輩は、自分の業務を進めながら指導しなければならないケースが多く、仕事と教育の両立負担は大きくなります。 人事担当者や責任者達も育成計画の立案や検討に積極的に関わりを持つことで指導者の負担を軽減し、指導者自身の業務に影響が出ないようにサポートする体制を作り上げることで長期間に渡るOJTの実行も可能となるでしょう。

体系的な指導が難しい

人材育成には周到な計画が必要ですが、上司や先輩は教育の専門家ではないため、そのような知識やスキルはほとんど持ち合わせていません。 そのため、日々の業務に追われながらの指導になりやすく、基礎的で体系的な教育機会の提供が難しくなってしまうのです。

OJT開始前に基礎知識と全体の流れをしっかりと学ぶことのできる環境を用意することで、このデメリットを最小化させることが可能となります。 また、目の前の業務に意識が集中するあまりに指導内容も短期的なものが中心となってしまった結果、長期的視野を持つ人材の育成に失敗してしまうことの無いように、OJT実行前にしっかりとプランニングしておく必要があるでしょう。

変化に対する応用力が弱い

職場外研修では常に最新の経済状況を意識して研修プログラムを組み立てているため、様々な社会経済情勢の変化に対応しうる知識やスキルを身につけることができます。 しかし、OJTではすでに存在する業務を使用して研修を行うため、新たな知識やスキルの習得が育成計画に組み込まれていない限り、その効果を期待することができません。

新たな知識やスキルの習得を目標の一つとして育成計画に組み込んだとしても、その知識やスキルを教えることができる人材が存在しなければ成立しないため、指導できる人材の育成という新たな課題が生まれることになってしまいます。 このようにスキルアップや応用力向上はOJTとの相性が悪いため、更なるステップアップを目指す場合には別の人材育成方法を活用することが多いのです。

学習意識が生まれにくい

職場外研修では他の参加者が取り組む姿から学習意欲が刺激を受け、自分はここに学ぶために来たのだという学習意識が生まれることで高い効果へと繋がっていきます。 しかし、通常業務の中で行われるOJTでは気持ちの切り替えが難しく、学習意識が生まれないまま流れ作業のように業務に向き合ってしまう育成者も少なくありません。

OJTが育成者の成長と将来に期待して行う研修であることを正しく理解してもらい、育成者自身もプランニングに巻き込むことによって、中身の濃い職場内研修を行うことが可能となるでしょう。

OFF-JTとの使い分けが育成の鍵を握る

このようにOJTには様々なメリットとデメリットが混在しているため、学んでもらいたい内容や会得して欲しいスキルによってはOFF-JTを活用することも検討する必要があります。 OJTとOFF-JTを上手に使い分けることによって、新入社員育成や新規能力開発の幅は更に広がり、組織全体に活力を与えることが可能となるのです。

OFF-JTの活用機会を正しく把握するためにはOJTへのより深い理解が必要不可欠です。 OJTの実施フローや効果を高めるポイントについて学ぶことによって、OFF-JTを単なる補修のための穴埋めではなくプラスアルファを生み出すための追加施策として扱うことができるようになるでしょう。

OJTの効果的な計画から実行までのフロー

OJTは特別な追加コストをかけることなく次世代を担う人材を育成できる素晴らしい人材育成戦略です。 正しい手順を理解し、実行することによって、より効果的なOJTを実現させましょう。

組織が人材育成に求めていることを知る

職種や階層に応じて、企業や会社が個人に求める能力やスキルレベルは異なります。 そのため、その現場をより詳しく理解している責任者や上司が中心となって、OJTの実行により、どのような能力やスキルの習得を目指すべきかを共有する必要があります。 この段階に経営幹部や人事部が関わりを持つことにより、更に具体的な理想像を描くことが可能となり、OJTを戦略要素の高い施策へと昇華させることが可能となるでしょう。

育成対象者の知識、経験レベルを知る

経験年数や能力によって、育成すべき内容は異なります。 対象者が新卒社員であれば新人育成のための基礎知識や基本の技術を中心とした新人研修を、ある程度スキルを持った中途採用の社員であれば組織の求めている理想の人物像との差異を確認し、補足しながら更なるスキルアップを図るための実践研修を行う必要があるのです。

対象者にマッチした指導担当者を選ぶ

OJTにおいて指導担当者の選出は非常に重要なポイントとなります。 世代間ギャップがあまりにも大きい場合には、コミュニケーションを円滑に行うことができず、十分な学習効果を得ることのないままOJTが終了してしまうこともあります。 そのため、新卒社員の指導担当者を選出する際には入社5年前後の若手社員などから選ぶことが望ましいでしょう。

業種によっては専門的な知識や技術を扱うため、指導者がベテランの方が適している場合もあります。 そのような場合には、対象者が萎縮することなくコミュニケーションを取れるよう、指導者側から積極的に声をかける姿勢が大切です。

指導担当者に若手社員に起用した場合には、効果的な指導や助言が行えない可能性もあります。 指導担当者の状況を常に把握し、必要に応じてサポートを行うOJTリーダーのような役割を用意することにより、OJTの成功率は更に高まることでしょう。

OJT実施計画を立てる

指導担当者が決定したら育成対象者と接点を設け、共有するべき目標の設定を開始します。 『目標レベル』『現状レベル(現状の課題)』『具体的な達成方法』『スケジュール』などを細かく落とし込み、OJT実施後に達成度を確認するための土台作りを行うのです。

新卒社員は業務の流れや詳細が分からない状態で目標設定を行うことになります。 そのため、指導担当者は会話の中で仕事への興味をより高め、全体の流れをイメージさせることで目標設定のサポートをする必要があるでしょう。 また、初期に設定する目標をシンプルで明確なものにすることで自己評価が容易となり、達成感や満足感を得やすくなります。 一方、育成対象者がある程度の業務経験を持っている場合には目標を段階的に設定し、具体的な項目まで掘り下げることによって、密度の濃い教育訓練を行うことが可能となるでしょう。

OJTを実施。体験を通じた学びの機会を提供する

全ての準備が整ったら、いよいよ研修計画の実行へと移ります。 OJTを実行する上で大切なのは、業務を通じて実践的な力を習得することです。 指導担当者から一方的に知識やスキルの説明を行うだけではなく、体験させることによってしっかりと身につけてもらえるように意識しながら行いましょう。

例えば、営業部配属となった1年目の社員が、飛び込み営業(新規開拓営業)から業務をスタートするケースがあります。 このように、実際にお客様先に足を運んで自分の目でその反応を確かめることが出来るからこそ「こうアプローチすれば話を聞いてもらえる」「こんな資料を持って行くと好反応」といった自分なりの経験を重ねていくことができ、営業スキルの習得に役立つのです。

他にも、顧客先に提案する資料を作ってもらう、商談でのプレゼンを一部分だけ任せるなど、様々な場面で育成者の実践的参加を促すことができます。 いずれのケースにおいても重要なのは、育成初期の段階では扱うことが難しい困難な業務を強制的に押し付けたり、過度なプレッシャーを与えてしまわないということ。 まずは簡単なものから始め、少しずつ難易度の高い応用技術へと実務内容を変化させることが大切です。

個別面談を行い、評価をきちんと伝える

OJTを進める上で欠かせないのが、実施内容の評価を本人にフィードバックすることです。事前に共有した実施項目内容にそって、「何ができたか」「できていないか」を確認していきます。 コミュニケーションの機会を増やすために、月に1回程度フィードバックをするのが理想的です。 指導者が若手社員の場合は、OJTリーダーと評価のすり合わせを必ず行い、場合によってはOJTリーダーも同席の上で、面談を行うといいでしょう。

社員の離職率は人材育成の質と量に大きく左右されるといわれています。 自分の仕事の進め方をよく観察し、積極的なコミュニケーションを図ってくれる指導担当者の姿勢に対して、育成者は「自分たちを育てようとしてくれている」「人を大切にする会社だ」という肯定的認識を持ってくれるでしょう。 育成者と育成担当者の、そして育成者と企業のエンゲージメントが高まっていくことにより、OJTによる育成が終了した後も長期的に活躍してもらえる環境が構築されていくのです。

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OJTを行う上で大切なこと(ポイント)

OJTは効果的なフローに従って実行することにより、育成者や指導担当者、企業に対して一定の効果をもたらしてくれます。 しかし、OJTをビジネス戦略として扱う以上、ただ効果が得られるというだけで満足していてはいけません。 OJTの効果を更に高め、質の良い人材育成を可能とするためにも、抑えておくべきいくつかのポイントを理解しておく必要があるのです。

PDCAサイクルにより最善化を図る

ビジネス戦略や長期計画を実行する際に用いられるPDCAサイクルは、OJTにおいてもその効果を十分に発揮してくれます。 『Plan(計画)』『Do(実行)』『Check(検証・振り返り)』『Action(改善)』の4つの段階に区切り、それぞれを正しく管理することによって、計画の内容はより現実に即したものとなり、計画の効果を最大限にまで引き上げることが可能となるのです。

Plan(計画)

Plan(計画)において特に意識するべき点は以下のものとなります。

  • 育成対象者の成長の目標値が、期間とともに設定されているか
  • OJTの実施計画が作成されているか
  • 育成対象者に合った、適切な指導者が選ばれているか
  • OJTの実施計画、育成への方針が指導者とその上司の間で共有されているか

Do(実行)

Do(実行)において特に意識するべき点は以下のものとなります。

  • 実施期間中に、指導者と対象者がこまめにコミュニケーションを取っているか
  • 面談機会が定期的に設定されているか
  • 指導者が孤立せず、OJTの指導方法を学ぶ機会があったり、アドバイスを受けたりと、周りからフォローが入る環境があるか

Check(検証・振り返り)

Check(検証・振り返り)において特に意識するべき点は以下のものとなります。

  • OJT期間中、育成対象者、指導者、その上司の間で定期的な振り返りの機会があるか
  • OJT実施計画は、指導の進行状況に応じて更新されているか
  • 指導者の育成内容について、本人にフィードバックが行われているか
  • 上司や現場が、OJTの重要度を理解しているか

Action(改善)

Action(改善)において特に意識するべき点は以下のものとなります。

  • 計画立案時や振り返りの際、育成対象者にどんな行動を求めるか具体的に示しているか
  • 実施計画の実績が可視化されているか
  • OJT期間が何をもって終了となるのか、条件が明確になっているか
  • 次年度のOJT研修が、今年度のフィードバックに基づいて高度化されている

指導者と育成対象者それぞれがOJTに前向きに打ち込む

OJTの実行によってもたらされる効果は多岐に渡りますが、その全てを正しく享受するためには全ての関係者が積極的かつ前向きに取り組まなければなりません。 育成対象者はOJTが組織内で長期的に活躍することを期待して実施されている施策であり、自身の成長を促す重要な機会であることを正しく理解し、指導者はOJTを通じて自身の中にある知識やスキルの定着を行いながら指導育成スキルを向上させるチャンスであることを理解した上でOJTに取り組む必要があるのです。

OJTは指導者から育成担当者に向けた一方的な学習機会ではありません。 「自分は新人社員だから教育を受けて当然だ」という受身での姿勢や「新人や部下の育成は先輩であり上司である自分の役目だから、業務時間を割くことになるが仕方がない」といった義務的感情ではなく、「このOJTを通じて一つでも多くのものを手に入れよう」という前向きな姿勢で向き合えた時、OJTは素晴らしい結果をもたらしてくれるでしょう。

短期と長期での振り返りを行う

OJTでは計画し、実施した内容の振り返りが非常に大切です。 育成対象者本人が実際の業務を通じて何ができるようになったのか、何ができていないのかを短いスパンで振り返り、指導者と共有することで、掲げた目標達成に向けた次の課題が見えてきます。

もっとも短いスパンの振り返りは「日報」で行います。 その日の業務内容、目標の達成度と未達成部分の原因予測、明日の業務内容と達成目標などを記したものを指導者が確認し、コメントを行います。 1カ月毎に実施する振り返り面談では、下記のようなコミュニケーションシートを共有して現状レベルを可視化させることで、次の1カ月間の行動目標が立てやすくなるでしょう。

指導効果の測定を行う

OJTによる効果の測定が必要なのは育成対象者だけに限った話ではありません。 指導者もまた、上司やOJTリーダーと定期的に面談する場を設け、育成対象者に対する指導方法や日々のコミュニケーションが適切であるか見直しを行う必要があるのです。

以下のチェック内容を参考にしながら指導内容の振り返りシートを作成することで、問題点を早い段階で発見することが可能となり、今後の課題なども見えてくるでしょう。

指導方法や説明の仕方について

  • 能力やタイプを見極め、指導計画の軌道修正を行っているか
  • 仕事を依頼する時は、目的や意味を伝えているか
  • 相手の理解度を考慮し、説明の仕方を変えているか
  • 仕事内容への質問を受け入れ、相手が納得するまで説明しているか

実施時の対応について

  • 忙しい時でも相手の話を遮らず、丁寧に対応しているか
  • 親しき中にも礼儀ありの節度を守り、接しているか
  • 報告や相談の機会を設けているか
  • 仕事の反省点や改善点を共有する場を設けているか
  • ミスがあれば、その場で注意しているか
  • 仕事の結果をフィードバックしているか
  • 育成対象者が成功体験を積めるように配慮しているか
  • 自分のミスがあれば、素直に認めて謝っているか

OJT実施に向けた心構え

見本となるような行動ができているか 自己鍛錬を重ねているか

不測の事態にスムーズに対応できる準備をしておく

新人や部下を育成するにあたり、不測の事態やトラブルは多少なりとも発生します。 予測していなかった事態への対応は決して容易ではありません。 しかし、早期対応により問題が更に拡大する前に対応することで、スムーズに処理することが可能となるのです。

早期対応を行うために何よりも大切なのは、指導者と育成対象者の関係性です。 どのような些細な事であっても、また逆に重大な過失による大きなトラブルであっても、隠すことなくありのままに報告できる関係性を日々のコミュニケーションによって構築しておくことが問題解決への大きな糸口となるでしょう。

問題解決も貴重な学習機会ですので指導者がすぐに全て処理してしまうのは得策とはいえません。 早急に対応するべき部分のみ指導者や上司が対応し、原因と解決方法、再発防止策については育成担当者に検討し、実行してもらいましょう。

不測の事態への対応は育成対象者と指導者を大きく成長させ、よりよい育成計画へと繋がっていきます。 指導者側はしっかりと心構えをしておくことで、単なるトラブルではなく素晴らしい実践的指導へと生まれ変わらせることが可能となるのです。

フィードバックを適切に行う

指導者側からのフィードバックは、育成対象者の成長効果を最大化させるために欠かすことのできない重要なポイントとなります。 双方の関係性やOJTの実行効果に対しても大きな影響を与えるフィードバックですが、具体的にどのような点に気をつけて行う必要があるのでしょうか。

話を聞く

育成対象者の評価を正しく行うためには、まずしっかりと話を聞く必要があります。 そして正確に話を聞き出すためには、自発的に話したいと思える環境を作ってあげなければならないのです。

気付く

日々交わされるコミュニケーションの中で育成対象者の成長した部分や自発的に努力している事に気付くことからフィードバックは始まります。 この気付きに対する反応こそがフィードバックであり、活動に対する評価となります。 つまり、一つでも多く気付くことによって育成対象者に対してより多くの評価を行えることとなるのです。

成功、成長、努力した場合

プラスの結果が生み出されていた場合には、しっかりと褒めてあげることが重要です。 努力が認められることにより成功体験が確立し、同じような場面に向き合った時に自信を持って行動し、挑戦することができるようになります。 まずは取った行動そのものを褒め、次に育成対象者に自分の思いや考えを語ってもらった上で更に褒めるべき点を補足することによって、自分でも気付いていなかった細かな成功にも気付かせることができるでしょう。

失敗など反省や修正、指導が必要な場合

指導方法によっては信頼を大きく失ってしまい、育成計画の続行が不可能となる場合もあるため注意する必要があります。

注意や叱責と指導の一番の違いは、受け取り側の心への届き方。 批判的な思いを吐き出しているのではなく、今回の失敗を活かして更に成長できるよう建設的なアドバイスを行っていると感じてもらうことが重要なのです。 感情的で勢いだけの指摘になるのではなく、しっかりと育成対象者の言葉に耳を傾け、冷静かつ的確に助言を行うことで、「指導者として自分を正しい方向に導くため発言してくれている」というように受け入れてもらうことができるでしょう。

また、失敗を正しく修正することができた際に高い評価を与えることで、失敗体験を成功体験で塗り変えることができるため、フォローアップも忘れずにしっかりと行いましょう。

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よく起こりがちなOJTの失敗例(OJTが機能不全に陥る理由)

手順に従って準備をしてきたけれど、いざOJTを実行してみると正しく運用することができず、効果を得ることができなかったというケースは少なくありません。 OJTを機能不全に陥らせてしまう代表的な原因をいくつか紹介したいと思います。

プランニングの際に育成対象者の関与が少ない

育成という言葉が付いているために指導者主体での施策になりがちなOJTですが、育成対象者の積極的な関わりなくして成功はありえません。 プランニングには育成過程における目標設定だけではなく、育成終了後の組織内における自分の存在価値を見出す目的もあるため、この段階から育成対象者を排除してしまうと自発的な成長が望めなくなってしまうのです。

一方的に業務を与え、処理してもらうだけなのであれば、わざわざOJTとして行う必要はありません。 育成対象者がどのように組織で活躍していきたいと願っているのかを聞き出し、そのために必要な知識やスキルを洗い出して計画に盛り込んでこそ、OJTのプランニングであるといえるでしょう。

指導を正しく聞き入れてもらえない

新入社員に対して自社で必要な実践的技術やスキルを身につけてもらうことを目的としているOJTですが、すでに独学で身につけていた技術や別の職場で習った手順にこだわることで指導を受け入れてもらえないといったトラブルが起こることがあります。

このような状況を改善させるには、なぜその手順や方法を使用しなければならないのかを明確に説明することが重要です。 指導者個人のこだわりを押し付けた指導ではないことを理解してもらうのはもちろんのこと、効率性や利便性だけではなく正確性や安全性も加味した上で作り上げられた組織のルールであり、多くの経験則から生み出された方法であることを理解してもらいましょう。

ただし、育成対象者側の考えや思いに耳を傾けないまま、一方的に押さえ込んでしまってはいけません。 その中に実務で活用することのできる技術や手順を発見した際には、OJTリーダーや経営者などに報告相談し、実用性のある形にして実務に導入することも検討すると良いでしょう。

指導者の質のばらつきによる意欲低下

OJTの一番のウィークポイントともいえる指導者の質のばらつきは、経営者や人事部が積極的に関わり、改善していくべきポイントです。 指導者それぞれが得意とする分野があることは個性として評価するべきことですが、苦手分野を放置してしまっては育成対象者の意欲や育成結果にも大きな影響を与えてしまうため、早急に対応する必要があるでしょう。

対応方法は必ずしも指導者側の育成だけとは限りません。 大切なのは育成対象者に必要な知識やスキルを持ち合わせ、コミュニケーションが円滑に行えることです。 指導者候補の得意分野と不得意分野を正しく把握し、育成対象者と適切にマッチングを行うことにより、このような問題が起こるきっかけを解消することも可能であることを理解しておきましょう。

フォローアップの欠如

新しいことを身につけようとしている段階においての失敗体験は、その後の活動に大きな影響を与えます。 同じ過ちを繰り返してしまうかもしれないという不安は冷静な判断を妨害し、更なる失敗を招く原因となってしまうのです。

こうして失敗を重ねた育成対象者の中には自分に素質がないと決め付けてしまい、成長することを諦めてしまう者もいます。 組織における戦力化を期待してOJTを行っているにも関わらず、早期退職などの望んでいない結果を招いてしまうのでは元も子もありません。 そのため、失敗した際の叱責やアドバイスだけではなく、その後の行動に対するフォローアップも欠かさずに行う必要があるのです。

指導者に負担を押し付けてしまっている

育成対象者への対応や評価、判断を指導者のみに押し付けてしまった結果、指導者自身の業務に支障が出てしまう場合や、業務の遅れを取り戻すためにOJTによる育成という名の下に自身の業務の手伝いを行わせるといったトラブルが発生することがあります。

OJTは指導者にとっても学習内容の定着や成長機会というメリットを与えてくれますが、それによって通常業務に支障が出ることはあってはなりません。 経営者や人事部、責任者達はOJTが組織全体で取り組む課題であることをしっかりと理解し、組織が一つのチームとして協力することで新たな戦力が育っていくのだという認識を持つ必要があるのです。

OJTの仕組みをしっかりと構築し、指導者自身の業務時間も確保する。 その上でOJTリーダーなどを設置し指導方法についてもサポートしていく。 このように整った環境を提供することにより、指導者は安心して新たな戦力の育成に取り組むことができます。 そして、その育成結果は巡り巡って組織に大きな成果という形で還元されていくのです。

OJTの限界を壊す新OJTの提案

ここまで様々な視点からOJTの効果を最大化させるための方法を解説してきました。 しかしOFF-JTとの比較にて説明したように、現状のOJTには数多くのデメリットが存在しており、OJTという仕組みそのものに改善の余地が残っているのです。

OJTのメリットを更に伸ばし、デメリットを補うことによって、OJTはこれまで以上に大きな効果を生み出し、個人の能力だけではなく組織力までも爆発的に向上させることが可能となります。 これまでの常識や先入観を取り除いた新OJTともいえる新しい育成方法は、組織に大きな刺激と新たなビジネスチャンスのきっかけを与えることになるでしょう。

上司や管理者も学ぶ立場に

これまでOJTは新入社員や中途採用社員、別部署への異動により技術の習得を必要としている社員に対して実践的技術やスキルを教育するための育成方法として取り入れられてきました。 つまり、組織ピラミッドの上から下へ情報や技術を伝達するという形式が確立されていたのです。

知識や技術、スキルの伝承という必要性を考えるとこの上下関係は自然なものであり、何の問題もありません。 しかし、この形式では世の中の変化や新しく生まれた技術などに対する対応力がないため、これからの時代を乗り切るための人材を育成するという点では非常に大きなリスクともなっていたのです。

OJTが単なる新人教育などではなく、総合的なスキルアップを目的とした職場内研修であることを考えれば、その指導者が新たな技術を持つ新入社員で育成対象者が上司や管理者であるといったケースも可能であることが分かるはずです。 若い力や新しい発想力を積極的に評価し、ベテラン社員や上層部の経験や知識、技術と組み合わせることで革新的かつ実践的なスキルへと昇華させる。 新たな刺激を柔軟に受け入れる姿勢を持つことによって組織を動かす主要社員の能力は飛躍的に高まり、その後の新人育成にも大きな力として活用されることとなります。

ただし、新入社員が育成側として活躍するのは本人の基礎研修を終えた後であり、新人研修としてのOJTはこれまで同様に行う必要があることを忘れてはいえません。 また指導スキルを全く持ち合わせていないことが予測される場合には、通常のOJT以上に組織のサポート力が求められることも抑えておかなければならないでしょう。

多様な学習形式を持つOFF-JTを応用する

OFF-JTでは現場での実習形式の他に、座学形式やワークショップ形式、eラーニング形式など様々な学習形式を用意しています。 それらの学習形式にはそれぞれメリットとデメリットがあり、組み合わせながら活用することによって学習効果を高めているのです。 現在行われているOJTのほとんどは実習形式のみとなっていますが、このOJTにOFF-JTのような学習形式を取り入れるとどのようになるでしょうか。

座学形式では、複数の育成対象者に対して均一な知識を教えることができます。 また、OJTで後回しにされてしまいがちな基礎知識の習得も可能となっています。 ただし、座学を行っている間は教授者と受講者双方の業務の手が止まってしまうため、しっかりとした計画の下に実行しなければ、企業は大きな損失を被ることになってしまうので注意が必要です。 自主的に学習する意欲が高まるまでの間は座学を中心として行い、その後は復習や応用学習をeラーニングにて行うという形式を取ることにより、更に効率的に幅広い分野の学習が可能となるでしょう。

積極的に外部の意見を取り入れる

OFF-JTの学習形式の中には、自社以外の職場における実践研修もあります。 そこには普段の仕事で感じることのできない多くの刺激が存在し、新たな発見があるのです。 それに対し、OJTでは一貫して内部のメンバーだけで行っているために新たな発見や改善点に気付きにくく、同様の育成計画をずっと使い回しているケースも少なくありません。

このようなマンネリ化を防ぐため、インターンシップや体験学習などの形で外部から人を招きいれ、その活動に対する感想や疑問点を吸い上げることにより現状を客観的に評価するといった積極的な行動が必要となります。 OJTとの直接的な関係性が無いようにも思えるこの施策ですが、外部からの新たな刺激は少しずつ確実に育成計画の質を高めていってくれることでしょう。

OJTでの経験を次なるステップへと繋げる

OJTは成長の第一歩目を踏み出すきっかけでしかありません。 育成対象者は、指導者による指導を大きな道標にして、組織内で活躍できる人材になるべく成長を続けていくことになります。 OJT実行中に組織へのエンゲージメントが十分に高めることができた育成対象者は、組織と一体化し、運命共同体として一層の努力を行っていくことでしょう。

まとめ

  • OJTとは組織の将来を支える人材を育成するために重要な、優先度の高い人材戦略である
  • 伝統を重んじる日本では、文化や技術の伝承という形でOJTに似た性質の教育が実施されてきた
  • 正しくOJTを理解して実施することによって、ライバル企業に対して大きなアドバンテージを得ることが可能となる

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