連載:第6回 人材育成 各社の取り組みを追う
社員自身が講師になる。ともに学び合う場が強い組織を育む【シグマクシス・エイチームの研修】
社内研修の一環として昨今増えつつあるのが、社内の人間が講師となり、己の知識を社内に共有するというスタイル。社員同士がともに学び合う場を作ることが、どんな成果を生み出すのでしょうか。実際にそうした社内教育の場を導入している企業同士で座談会を実施しました。価値共創をコンセプトに、事業戦略立案からその実行、運営までを支援するコンサルティング会社・シグマクシスの内山そのさんと植村ルミさん、スマホゲームや比較情報サイトなどを運営するエイチームの中久木健大さんと安藤春香さんが参加して、社内での学び合いで得られる成果や、プログラムを推進する上での秘訣などについて、語ってもらいました。
(左からシグマクシス内山そのさん、植村ルミさん、エイチーム中久木健大さん、安藤春香さん)
社員同士が共に学び合う場を作るシグマクシスとエイチーム
植村ルミさん(以下、シグマクシス植村): まず、エイチームさんでは、2018年4月から「社員が講師となって教え合う」という研修を始められたそうですね。外部ではなく、社内の方に講師をお願いする理由はなんだったんでしょうか?
中久木健大さん(以下、エイチーム中久木): 一方的に外部の講師の方に教えを受けるだけだと、どうしても受け身になってしまうので、避けたかったんですよね。もともと協調的な社員が多いので、もっと 互いに能動的に取り組めるように、「社員が講師となり、自分の知識を別の社員に教え、学び合う」形式にし、「チームラーニング」と名付けて運営 しています。現在、1か月に2回、金曜日の夕方に、それぞれの社員が部門を越えて、自分の持っているノウハウを共有する場を設けています。
安藤春香さん(以下、エイチーム安藤): シグマクシスさんでは、創業期からきちんとした研修制度を設けられていると伺っています。我々はまだ始めたばかりということもあり、今日はぜひいろいろなお話をお伺いできればと思っています。
内山そのさん(以下、シグマクシス内山): 弊社はコンサルティング会社なので、もともと 「価値を生みだすのは人財」という価値観のもと事業を運営 しています。組織の成長は、個々の社員が成長しないとなしえない。そのため、創業当初からラーニング環境の整備には力を入れています。
シグマクシス植村: 大事にしていることは“自律”。 押し付けられて学ぶのでは効果が半減する と思っています。私たちが「教育」という言葉は使わず、「学習(ラーニング)」という言葉を使う理由はそこにあります。弊社では、必ず受けなければいけないトレーニングは入社してから半年間行われる新人研修“だけ”です。以降のプログラムは、 全て本人が自分にとって必要と思う内容を自分で考え、自分で選んでもらうようにしています。 ただし、忙しいメンバーが多いので、学びたいと思ったらすぐ学べるように環境を用意するのが我々の仕事。オフィスに2つのトレーニングルームを併設し、年間30日以上のトレーニングを実施していますし、オンライントレーニングも充実させています。また、社内外のプロジェクトの成功事例や失敗事例や最新の技術動向などのナレッジを共有するナレッジフェアというライトなプログラムも多数開催しています。
エイチーム安藤: 弊社でも、必ずしも「全員参加」というわけではなく、参加者は自分から手をあげてもらうようにしています。やはり「自分が学びたい」という気持ちをいかに持ってもらうかが大切ですよね。なお、組織内で社内の知識を共有する場を作るという点では、シグマクシスさんの取組みは、弊社と近い部分があると思うのですが、実際に続けられてみていかがですか?
シグマクシス内山: まず、自分の欲しい情報だけではなく、予想しなかった情報も手に入るので、事業そのものが活発化してきますね。 VUCA時代と言われますが、数年前から市場の変化のスピードがさらに加速し、会社としても常に進化を続けないといけない と認識しています。情報をシェアしてフィードバックし合うことで、自分自身も組織も活性化していかないと、という意識が一人ひとりの社員に広がっているのではないでしょうか。自己変革のスピードを加速させるひとつの場が、ラーニング環境になっているかなと感じます。
エイチーム中久木: 弊社も同様です。市場の移り変わりに適応しながら成長してきた弊社では、現在、ECやゲーム、WEBサービスなどに部門が分かれているので、部門を越えての交流の場はあまりありませんでした。ただ、このチームラーニングを始めてからは、部門を越えたコミュニケーションが活発になり、新しい取り組みや気づきなども生まれているように思います。
エイチーム安藤: 特に評判が良いのは、社内実例などを紹介しながら、学びを深めていることですね。過去失敗した体験談を紹介する講師が多いですね。部署を越えても、失敗のパターンは似通っていたりもするので。 『しくじり先生』ではないですが、失敗から学ぶことは意外と多い ようです。
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