LMS(学習管理システム)
インターネット技術の発達により、時間や場所に囚われない学習を可能とするeラーニング。企業向けのeラーニングの需要も高まり、同時に学習状況を管理できるLMS(学習管理システム)にも注目が集まっています。本記事は、LMS(学習管理システム)の意味やメリット、導入方法からLMSの今後についてご紹介します。
LMS(学習管理システム)とは
LMS(Learning Management System:学習管理システム)とは、利用者情報や学習教材、学習進捗、成績など、eラーニングを運用する上で必要な情報を統合管理するプラットフォームのことです。LMSは主に企業の研修システムとして採用されており、指導者と学習者の相互間コミュニケーションを促進する補完システムとして活用されるケースもあります。
似たような言葉に「eラーニングシステム」や「教育管理システム」、「研修管理システム」などがありますが、いずれもLMSと同様の仕組みや機能を有しており、大きな違いはありません。
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LMSでできること
LMSを導入することによって、次のようなことが実現できます。
- 受講者の進捗率の把握と成果・成績の一元管理
- 学習教材の登録・管理
- 受講者に対する教材の割り当て
- 受講者への連絡(自動メール・SNSなど)
- 受講者同士のコミュニケーション促進
受講者は日々の学習からテストまで、すべてLMS上で行うことができ、企業側は、LMSで教材や受講者の進捗状況や成績まで一元管理できることになります。
LMSの基本機能
それでは、LMSには具体的にどのような機能が備わっているのでしょうか?
世の中には多種多様な機能を搭載したLMSが数多く出回っていますが、その中でも、多くのLMSに搭載されている基本的な機能には、以下のものがあります。
- 利用者管理機能 …受講者や管理者の登録、変更、削除、権限付与
- 教材管理機能 …学習教材の登録、削除、学習者への割り当て
- 教材作成機能 …独自の学習教材やテスト問題を作成
- 受講機能 …受講者による教材の利用、学習履歴の保存、集合研修の実施
- 学習管理機能 …進捗管理、成績管理、データ集計、データ分析
- コミュニケーション機能 …SNS、チャット、掲示板、コミュニティなど
LMS(学習管理システム)の歴史と注目される背景
LMSはなぜこれほどまでに多くの注目を集めるようになったのでしょうか。その背景を知るため、LMSの歴史について学んでいきましょう。
多くの問題や課題を抱えていたeラーニング
自習型システムである従来のeラーニングには、受講者がモチベーションを維持しにくく、分からないことや困ったことがあってもすぐに尋ねることができないという問題点がありました。また、教育担当者も受講者一人ひとりの進捗率や理解度を正しく把握できず、適切なアドバイスやフィードバックを実施できないことに対して大きな課題感を感じていました。
このような状況は、インターネットが普及し、ネットワークを通じて学習教材を配布するようになっても改善することはありませんでした。それどころか、通信技術に関する高度な知識や情報セキュリティに対する教育が新たに必要となるなど、受講者と教育担当者双方の負担を更に増加させる結果となったのです。
LMSの登場による環境の劇的な変化
eラーニングが抱える問題や課題の解決を目的として開発されたLMS。LMSというプラットフォームが登場し、eラーニングの運用に必要な情報を統合的に管理できる環境が整ったことで、教育担当者は受講者たちのデータをリアルタイムで取得し、戦略的に活用することが可能に。
また、学習履歴やテスト結果を自ら確認したり、最適なタイミングでサポートやフィードバックを受けられるようになったことで、受講者の学習意欲を刺激し、自発的な学習を促せるようになりました。
進化し続けるLMS
近年、利便性や学習効果の更なる向上を目指して、操作性に注力したLMSや多種多様なデバイスで利用可能なLMS、多言語に対応したLMSなど、新たなLMSが次々に開発されています。また、学習教材の流用が可能なSCORM規格対応のLMSや他システムとAPI連携できるLMS、設置から保守まで全て委託できるASPタイプのLMSなど、新規導入や乗り換え、社内でのデータ活用を支援するLMSも開発されています。
従来のeラーニングは、決して気軽に導入できるものではありませんでした。しかし、LMSの登場と進化によって高度な知識は不要となり、導入コストも大幅に低下。このように、導入のハードルが下がったことで、大企業だけではなく中小規模の企業もeラーニングへの関心が高まり、LMSの導入を検討するようになっています。
LMS導入のメリット
企業はLMSを導入することで、「時間・コストの削減」、「学習効果の質の担保」、「物理的制限からの解放」、「学習データの蓄積」という4つのメリットを得ることができます。
時間・コストの削減
eラーニングを単独で運用する場合、学習者一人ひとりの進捗状況や理解度を正しく把握するためには、日々のレポート作成と提出を義務付けるか個別連絡で確認するしかありませんでした。また、教材作成のハードルが非常に高く、ベンダーから提供された学習教材をそのまま使用するか、独自の学習教材を作成するために別途コストを支払うかを選択しなければなりませんでした。
しかし、LMSであれば個々の学習状況をパソコンなど手元のデバイスでリアルタイムに確認することができ、独自の教材作成も簡単に行えるため、人材育成に費やす時間やコストを大幅に削減することができます。
学習効果の質の担保
個人指導の指針となるデータをリアルタイムで取得できるようになることで、適切なタイミングでのフィードバックが可能となります。また、良質な学習教材を作成して配信することで、講師の質による理解や進捗の差をなくし、学習効果の質を担保することができます。
LMSの導入は、学習意欲やモチベーションの維持向上を図る上でも有効です。苦手分野や努力するべき方向性を知ることができた受講者は、コミュニケーション機能や問い合わせ機能を活用しながら疑問や悩みを解決し、弱点の克服や目標の達成に向けて励むことができるようになります。また、学習教材から会社が求める知識やスキルのレベルを理解できれば、一日も早くそのレベルに達することができるよう、主体性と課題感を持って学習に取り組めます。
物理的制限からの解放
WebサービスやクラウドサービスのLMSであれば、電子機器・紙ベースの教材配布を必要とせず、学習事項に関する連絡、学習者からの質問対応といった煩雑で手間のかかる作業をネットワーク上で完結させることができます。また、受講管理や学習進捗の把握、採点、分析、評価などの作業もシステムが自動で行ってくれるため、人事担当者や教育担当者の負担を大幅に軽減し、研修の効率を最大限にまで高めることができます。
物理的制限を受けないLMSは、ユーザー数が多い企業や教育担当者が少ない企業であっても無理なく導入、運用することができるシステムなのです。
学習データの蓄積
WebサービスやクラウドサービスのLMSでは、学習に関するさまざまな情報がデジタルデータとしてサーバー内のデータベースに蓄積されます。
このデジタルデータは加工や分析が容易なため、学習時の個別フォローや教育内容の見直し、人材配置の最適化など幅広い分野で活用することができます。
LMSの活用シーン
元々、eラーニングのデメリットを補う存在として生まれたLMS。しかし、最近では学習分野だけではなく、さまざまな場面でLMSの機能や蓄積されたデータを活用する企業が増えています。ここでは、LMS活用の一例をご紹介します。
コミュニケーション機会の提供
近年、SNSとの連携機能やチャット機能、掲示板機能などコミュニケーション機能を強化したLMSが急増しています。
受講者同士や教育担当者と気軽にコミュニケーションを図れる環境を提供することは、学習に対するモチベーション向上や従業員エンゲージメントの向上、一体感の醸成などを実現させる上でとても重要なことです。SNS連携機能やコミュニティ機能を搭載したLMSを選択し、コミュニケーションの手段として活用してもらうことで、知識の習得やスキルアップを図りながら仲間意識を育むことができるでしょう。
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学習の個別フォロー
LMSに備わっている学習管理機能を活用することで、受講者一人ひとりの苦手分野や学習進捗を可視化し、学習ペースが遅れている受講者に対して迅速かつ的確なフォローを行うことができます。
また、成績や学習ペースの低下といった細かな変化に気付き、声掛けや相談に乗るなど柔軟な対応を取ることで、強固な信頼関係を構築し、学習意欲や就労意欲を再向上させることにも役立ちます。
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教育内容の見直し
学習教材の割り当てを行える教材管理機能を活用すれば、全受講者に対して同一の学習教材を一斉配信するだけでなく、受講者一人ひとりに対して個別の学習教材を配信することもできます。
教育内容の完全な個別化は管理側の負担を考えると現実的ではありませんが、共通の学習教材に追加する形で個人目標の達成やキャリアプランの実現に向けた学習教材を個別に配信することは十分に可能でしょう。
学習データを元にした人材配置
サーバーに蓄積された膨大な学習データを分析していくと、個々の受講者が今どのような分野に興味を持ち、どの分野を得意としているのかが見えてきます。
人材配置を検討する際、判断材料の一つとしてこの情報を活用することで、人材配置のミスマッチを未然に防ぎ、配置先で最高のパフォーマンスを発揮してもらうことができます。
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LMS提供会社まとめ
企業へのeラーニング導入を検討する際に参考となるよう、4社のLMSを導入目的別に整理して紹介致します。
企業研修
企業研修を目的としたeラーニングサービスには以下のようなものがあります。
LMS(学習管理システム) LearningWare / 株式会社プロシーズ
内定者向けLMS『内定者パック』を提供している株式会社プロシーズは、既存職員を対象としたLMSとしてLearningWare(ラーニングウェア)を提供しています。
LearningWareではライブ配信機能による1人対多人数のリアルタイム学習を行うことができますが、一般的な集合研修とは違い研修用のスペースを確保する必要が無いため、対象人数を無制限に増やすことができる上、教育コストの大幅な削減という効果を得ることができます。
その際、ライブ配信映像を動画コンテンツとして記録しておくことにより、その時間帯に学習することのできなかった従業員に対するフォローアップや振り返り学習の機会提供など更にワンランク上の教育環境を構築することも可能です。
また、自社開発であるという強みを活かし、各企業に合わせて細かくカスタマイズを行うことができるというアピールは、自社にマッチしたLMSを探し求めている企業にとってLearningWareを選択する決定打となりうるでしょう。
eラーニングシステム【Platon】 / ロゴスウェア株式会社
ロゴスウェア株式会社は、管理者の満足と受講者の満足を両立させた本格派eラーニングシステムとしてPlatonを提供しています。
Platonは進捗管理こそがeラーニングの要であるという考えの下、講座の受講状況の把握やテストの成績、学習進捗状況などのありとあらゆる情報を分かりやすく管理画面に表示してくれます。
また、受講者の学習効果を最大限に高めるため、一般的なテキスト形式や音声、動画などに加えてデジタルブック形式でのコンテンツの配信も可能としていることも大きな特徴です。
標準で日本語、英語、中国語(繁体語・簡体語)、タイ語、スペイン語の5ヶ国語に対応している上、任意の言語を表示させるためのテキストファイルを追加することによってどのような言語にも対応することができるPlatonは、グローバル化によって多国籍人材を抱えている企業の強い味方となってくれるでしょう。
内定者フォロー
内定者フォローを目的としたeラーニングサービスには以下のようなものがあります。
内定者フォロー・研修SNS「内定者パック」 / 株式会社プロシーズ
コンテンツの制作や販売、ASP配信などのeラーニング事業を中心に、企業の次世代を担う人材の育成に関する事業に力を入れている株式会社プロシーズでは、内定者フォローに特化した『内定者パック』というサービスを提供しています。
『内定者パック』は内定者と企業の繋がりだけではなく、内定者同士の繋がりも意識して制作されており、掲示板機能では全国の内定者が互いの投稿を確認し、『いいねボタン』によって投稿内容に興味を持ったという意思表示を行えるようになっています。
また、入社前の学習支援コンテンツとして、ビジネスマナーや文章力といったビジネス基礎に関するものだけではなく、ExcelやWordなどOFFICE系ソフトの基礎学習、プログラミングや画像加工技術、簿記や医療事務といった専門的なスキルまで幅広く提供しているため、内定から入社までの期間を利用して内定者たちは積極的なスキルアップを図ることが可能となっています。
内定者向けeラーニング~STUDIOフレッシャーズ~ / ミテモ株式会社
http://www.mitemo.co.jp/studio/fresher.html
ミテモ株式会社は、社名に込めた『みることから学ぶ』という思いを業務内容にも反映させており、映像やスライドショーなど様々な視覚効果を活用したコンテンツの制作を行っています。
視覚学習のノウハウを存分に活かした映像教材視聴サービスの『STUDIO』を内定者向けにパッケージ化したものが『STUDIOフレッシャーズ』。
1IDの発行は3,000円(税抜)と低価格になっている上、発行ID数によって最大で25%の割引が受けられるという特典もあるため、一定数以上の内定者を抱える企業にとっては非常にコストパフォーマンスの良い選択肢となるでしょう。
また、クラウド型のeラーニングシステムのため、特別なソフトのインストールは不要です。お申込み後、最短5日で利用可能となっています。
まとめ
- LMSとは、eラーニングを運用する上で必要な情報を統合管理するプラットフォームのことです。
- LMSの基本機能は「利用者管理機能」「教材管理機能」「教材作成機能」「受講機能」「学習管理機能」「コミュニケーション機能」の6つに大別できます。
- LMSの進化に伴い、導入ハードルが低くなったことで、多くの企業がeラーニングに興味を持ち、LMSの導入を検討するようになりました。
- LMSを導入することで、管理側の負担を最小化し、効率的かつ効果的な研修を実施することができます。
- LMSの特徴や機能を正しく理解することによって、さまざまなビジネスシーンでLMSや蓄積したデータの活用が可能です。
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