コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、知識や情報を整理分析して総合的判断を行うことにより、物事の本質を見極める能力です。経営者や人事部など多くの経営資源を扱う立場にいる人材が身に付けるべきマネジメントスキルとして、多くの注目を集めています。本記事では、構成要素や向上によるメリット、具体的な研修例や参考書籍まで、徹底解説いたします。
コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキル(conceptual skill)とは、物事の本質を的確にとらえることによって、個人や組織の持つ可能性を最大限にまで高めることができる優れた能力です。日本語では「概念化能力」と訳されます。
米国の経営学者でハーバード大学教授のロバート・L・カッツ(Robert L. Katz)氏が提唱した、管理者に必要な3つのビジネススキルのうちの1つです。
経営者や人事部など多くの経営資源を扱う立場にいる人材が身に付けるべきマネジメントスキルとして、多くの注目を集めています。
ロバート・カッツが提唱する管理者に必要な3つの能力
カッツ教授は、1955年に発表した『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道(Skills of an Effective Administrator)』という論文の中で、マネージャー層に必要な3つの能力として、
- コンセプチュアルスキル
- ヒューマンスキル
- テクニカルスキル
の3つを挙げました。
下記は、上記3つのスキルとバランスを管理者ごとに図式化した「カッツ・モデル」です。トップマネジメント(経営者層)で特に重要とされるのが「コンセプチュアルスキル」であることがわかります。
カッツ教授の生み出したカッツモデルは、組織のトップとミドル、ボトムが一体となって活動するために必要なスキルバランスを見事に表現した優秀なモデルであるため、組織内に存在する全職位を対象として組み直すことによって、マネージャー層以外に対しても活用することができます。
それぞれの役職や職位に求められるスキルバランスを正しく理解することにより、全ての従業員が自立的行動や判断を行うことができるようになるでしょう。
残りの「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」についても簡単に解説します。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキル(対人関係能力)には以下のようなスキルや要素が含まれます。
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ(統率力、調整力)
- コーチングスキル
- ファシリテーションスキル
- ネゴシエーションスキル(交渉力)
- プレゼンテーションスキル(提案力)
良好な人間関係を保ち、目標達成に向けた円滑なコミュニケーションを可能にするヒューマンスキルは、全てのビジネスマンに必要な能力であり、カッツ理論で用いられるカッツモデルにおいても全ての階層で一定量必要なスキルであるという評価を受けています。
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テクニカルスキル
テクニカルスキル(業務遂行能力)には以下のようなスキルや要素が含まれます。
- 商品知識
- 製造技術
- 加工技術
- 高度な専門知識
- パソコンスキル(ITスキル)
- プログラミング技術
テクニカルスキルは、与えられた職務や業務を正しく遂行するために欠かすことのできない能力であるため、第一線で活躍する作業員や技術者、現場に近い場所でマネジメントを任されている管理者などに多く必要なスキルだといわれています。
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コンセプチュアルスキルの構成要素
コンセプチュアルスキルは複数の要素が複雑に絡み合うことにより、単体スキルでは生み出すことのできない大きな力を発揮しますが、構成要素を5つに大別することができます。
- 課題発見スキル
- 困難課題対応スキル
- 情報収集スキル
- 問題解決スキル
- 対処法評価スキル
全スキルを余すことなく身に付けることが理想ではありますが、まずは各スキルから最低でも1つずつ身に付けることを目標にするとよいでしょう。
それでは、各スキルについて解説していきます。
課題発見スキル
課題発見スキルは、自ら課題を見つけ出すことのできる能力だと言い換えられます。この中には以下4つのスキルが含まれます。
- クリティカルシンキング
- 好奇心
- 探究心
- 先見性
クリティカルシンキング(批判的思考)
クリティカルシンキング(Critical thinking)とは、物事の問題点や改善点を特定し、分析を行うことによって最適解を導き出す能力です。
クリティカルシンキングを扱える人は、組織内に潜んでいる成長や業績向上を足止めしているマイナス要素の存在にいち早く気付くことができます。また、複数挙げられた改善策の中から最もリスクの少ない最適解を選別することを得意としています。
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好奇心(知的好奇心)
好奇心とは、未知なるものに対して強い興味を示す能力です。好奇心を持っている人は、新分野に進出するためのプロジェクト立ち上げなどの際に誰よりも早く手を上げ、これまでとは全く異なる作業環境や仕事内容に不安を感じることなく積極的に新しい知識や経験、刺激を得ることができます。
探究心
探究心とは、物事に対して深い興味を示し、表面上から感じ取れる情報だけで満足することなく更に深い部分まで自発的に調べ続けようとする能力です。探究心を持っている人は、誰にも負けない専門的知識や技術を身に付けたり、物事の本質に近づくことで新たな一面を発見することができます。
先見性
先見性とは、現時点でまだ明らかとなっていない結果や事象について早期から高い精度で予測することができる能力です。先見性を持っている人は、中長期戦略を組み立てる際に具体的なビジョニング(Visioning)を行うことでリスクを最小限に抑え、成功確率を最大限に高めることができます。
困難課題対応スキル
このスキルは、困難な課題に直面した際、その課題にきちんと向き合える能力です。以下5つのスキルが含まれます。
- チャレンジ精神
- 好奇心
- 探究心
- 柔軟性
- 受容性
チャレンジ精神(挑戦力)
チャレンジ精神とは、困難な課題や未経験分野においても臆することなく果敢に挑戦する能力です。チャレンジ精神を持っている人は、他のメンバーが思わず躊躇してしまうような難解な課題であっても最初から諦めるようなことはせず、あらゆる手段を用いて全力で立ち向かうことができます。
柔軟性
柔軟性とは、しなやかな思考によって目の前の問題を解決または回避することができる能力です。柔軟性を持っている人は、予定とは異なる状況が起きた際にも動じることなく臨機応変に対処することができます。
受容性
受容性とは、対象となる物事や出来事をありのままに受け入れ、その事実から目を逸らさずに向き合うことができる能力です。受容性を持っている人は、自分とは異なる価値観や常識を持つ人物との出会いや想定外の出来事に対して頭ごなしに拒否することなく、お互いにとってプラスとなる環境の構築を前向きに検討することができます。
情報収集スキル
物事の本質を見極めるために必要な情報を集めることができる能力が「情報収集スキル」です。以下の3つが該当します。
- 多面的視野
- 俯瞰力
- 洞察力
多面的視野
多面的視野とは、1つの物事を真正面だけではなく様々な角度からアプローチをかけることにより、これまで見えなかった新たな一面を発見する能力です。多面的視野を持っている人は、同じ課題を与えた場合に他の人よりも多くの解決策や対策を思いつくことができます。
俯瞰力
俯瞰力とは、物事を高い位置から見下ろすことによって全体像を正確に把握する能力です。俯瞰力を持っている人は、主観的視野に加えて客観的視野から得た情報も活用することが出来るため、論理的分析や現実的判断が行いやすくなります。
洞察力
洞察力とは、物事の本質を正しく見極める能力です。洞察力を持っている人は、卓越した観察眼と的確な状況分析によって現状に最も適している行動や発言を導き出すことができます。
問題解決スキル
課題解決に向けた対処法を検討し、決定できるようになるのが「問題解決スキル」です。以下3つのスキルが含まれます。
- ロジカルシンキング
- ラテラルシンキング
- クリティカルシンキング
- 応用力
- 直感力
ロジカルシンキング(理論的思考力、論理思考力)
ロジカルシンキング(Logical thinking)とは、物事を理論的に整理したり説明したりする能力です。ロジカルシンキングを扱える人は、目の前の課題を理論的に整理し、解決までのプロセスを筋道立てて組み上げることができます。
また、解決するために第三者の協力が必要な場合には、協力を求める相手に対して現状の問題点と解決方法、協力者の必要性などについて分かりやすく説明を行い、比較的容易に理解を得ることができます。
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ラテラルシンキング(水平思考)
ラテラルシンキング(Lateral thinking)とは、マルタの心理学者であるエドワード・デボノ(Edward de Bono)氏が提唱した思考法であり、細かなルールや固定概念にとらわれることなく、自由な発想で斬新なアイディア(アイデア)を次々に生み出すことができる能力です。
ラテラルシンキングを扱える人は、思考が行き詰まった際にいくつかの前提条件を取り除いた上で解決策を検討し、取り除いた前提条件の代わりとなるものを見つけ出すことによって問題を解決へと導くことができます。
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応用力
応用力とは、すでに得ている知識や経験を活用して新たな課題に対応することができる能力です。応用力を持っている人は、過去に解決した課題と似ている性質を持つ課題を得意としており、それぞれの共通点を見極めることによって素早く核心まで迫ることができます。
直感力(ひらめき力)
直感力とは、物事を感覚的に捉え、瞬時に反応する能力です。直感力を持っている人は、常識やルールに囚われない自由な発想によって、先人が成し遂げることの出来なかった高いハードルを飛び越えることができます。
対処法評価スキル
選択した対処法の効果を予測判定する能力が「対処法評価スキル」です。2つのスキルで構成されています。
- クリティカルシンキング
- 先見性
コンセプチュアルスキル向上によるメリット
コンセプチュアルスキルは組織が成長を続けるために欠かすことのできない重要スキルです。経営陣が積極的に組織全体のコンセプチュアルスキル向上を図ることによって、組織は次のようなメリットを享受することができるでしょう。
全ての業務に好影響を与える
コンセプチュアルスキルの問題解決力は、現場のトラブル解消や課題達成に大きく役立ちます。また、相手の深層心理を正しく理解しようと向き合う姿勢は人間関係にも良い刺激を与えます。
このように、コンセプチュアルスキルはテクニカルスキルやヒューマンスキルと相乗効果を生み出しながら、全ての業務に対して好影響を与えてくれるのです。
イノベーションの源泉となる
日々の業務を通じて積み重ねられた知識や経験は、新たに何かを始めようとする時に思考を正解へと導いてくれますが、インパクトの強過ぎる知識や経験は時として先入観や固定概念といった形で思考妨害を行うこともあります。
しかし、コンセプチュアルスキルを身に付けた管理者や従業員は、知識や経験を活用しながらも先入観にとらわれない自由な発想を行うことができるため、多くのイノベーションを生み出すことができるのです。
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生産性や質が高まる
コンセプチュアルスキルで作業工程や取り組み方に改良を加えることによって、現場の作業効率は大きく向上します。また、商品の素材見直しや技術革新、サービス面における課題の洗い出しを行うことにより、商品やサービスの質向上も図ることができます。
損失を最小限に抑えられる
コンセプチュアルスキルの優れている部分は、目先の対策だけではなく長期的視野を用いた戦略を組むことができるところです。その場しのぎの対策を繰り返すだけでは、発生する損失を最小限に抑えることはできても発生回数を減少させることはできません。
しかし、コンセプチュアルスキルを身に付けた従業員であれば、損失の発生回数そのものを最小化させることが可能となるのです。コンセプチュアルスキルはリスクマネジメント(リスク管理)においても重要な役割を担っているといえるでしょう。
優先順位を正しく設定できる
物事の本質を見極められるということは、これから取り組むべき複数の施策に対して正しい優先順位を設定することができるということです。 それぞれの関連性や影響力を踏まえて設定された優先順位を活用することで、より効果的な戦略フローチャートを組み上げることが可能となるでしょう。
コンセプチュアルスキルを向上させるポイント
コンセプチュアルスキルを高めることは決して容易ではありません。しかし、容易ではないからこそ意識的に高めることでライバル他社のビジネスマンとの差別化を図ることができるのです。
強い組織を作り上げるためにもコンセプチュアルスキル向上を実現させるコツをしっかりと押さえておきましょう。
スキル・アプローチによる人事評価制度の構築
どれだけ優れた先天的要素を持っている人材がいたとしても、その能力を高く評価する人事評価制度が組織内に存在していなければ、評価者や人事担当者は本当の魅力に気付くことができません。
コネクションや人間性を大きく評価していた以前の日本企業では、「あの人ならきっとやってくれる」といった漠然とした期待だけで人材を評価し、重要な役割を与えることが少なくありませんでした。ですが、この評価方法はスキルアップに対するモチベーションを高めることができないため、人材が自発的に成長できない負の組織風土として根付いてしまいます。
人は目標や目的が明確であるほど努力を積み重ねていくことができる生き物です。企業が今どのようなスキルを持つ人材を求めているのかということが一目瞭然となるモデル像を作り上げ、スキル・アプローチによる人材評価を行うための制度構築を進めることによって、従業員たちは積極的にスキルを磨き、魅力的な人材へと自ら成長してくれるようになるでしょう。
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ロジックとインスピレーションを共存させる
物事の本質を正しく掴んで概念化させるためには理論的思考が欠かせません。しかし、持っている知識や経験をフル活用することにより問題解決を目指す理論的思考だけでは、未知の領域に立ち向かうことが困難となってしまいます。
どのような困難も乗り越えられる強いコンセプチュアルスキルを手に入れるため、理論的思考と直感力や瞬間的ひらめきを共存させた柔軟性の高い思考回路を構築するように心掛けましょう。
瞬間的思考と継続的思考を使い分ける
物事の本質を正しく掴むためには、瞬間的思考と継続的思考を上手に使い分けなければいけません。大局的視野で物事を見ている時に全ての課題が同時に解決するということは稀であり、多くの場合は課題を細分化した上で時間をかけて一つずつ解決策を探るという形を取ることになります。
しかし、せっかく解決の糸口が見つかっても関連情報が整理されていなければ全体像が曖昧な状態を脱することはできません。より早く、より正確に思考パズルを完成させるため、部分的に集中する瞬間的思考と満遍なく全体を眺める継続的思考を使い分ける技術を身に付ける必要があるでしょう。
階層別研修の実施
コンセプチュアルスキルは全ての階層や職位に共通して求められる重要スキルですが、経営幹部や管理職、現場職員など立場や役割によってスキルの扱い方は大きく異なります。
経営者や人事部が率先して組織全体のコンセプチュアルスキル向上を目指す場合、スキルの扱い方が階層ごとに大きく異なることに留意し階層別研修を実施することで、スキル開発やスキル育成を効果的に行うことができるでしょう。
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コンセプチュアルスキル診断や外部研修の利用の検討も
株式会社プロジェクトマネジメントオフィスが運営するPMstyleはコンセプチュアルに重点を置いた様々なサービスを展開しています。その中の1つであるコンセプチュアルスキル診断は、思考と行動の両面から診断対象者のコンセプチュアルスキルのレベルを判定することができる優れたサービスです。
また、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスの他にも、複数の企業がマネジメントレベルを測定するマネジメント能力診断や、現時点で不足しているコンセプチュアルスキルの見極めと習得をサポートするコンセプチュアルスキル研修を実施しています。
自社内にコンセプチュアルスキルを高めるノウハウが存在せず、従業員のスキル育成に自信が無い場合には外部サービスの利用を検討するのも一つの手だといえるでしょう。
【参考】PMstyleコンセプチュアルスキル診断 / PMstyle
実践と内省を積み重ねていく
コンセプチュアルスキルは困難課題を様々な視点から観察し、解決策と将来ビジョンを自分の力で生み出し、予測と結果の差異から反省点や修正箇所を洗い出す作業を繰り返すことによって意識的に磨き上げることができます。
また、実践と内省の積み重ねを現場で行うことによって、育成対象者が所属する階層や役職に求められるコンセプチュアルスキルの種類や特性について組織側が正確に把握することが可能となります。
コンセプチュアルスキル研修の具体例
ここまでコンセプチュアルスキルの構成要素とスキル向上のために押さえておくべきコツについて学んできました。それらの知識を十分に活かしながら以下のトレーニングを実施することにより、コンセプチュアルスキルを構成する要素を効果的に高めることができるでしょう。
マインドマップトレーニング
マインドマップ(Mind Map)とはイギリスの著述家であるトニー・ブザン(Tony Buzan)氏が提唱した思考法の1つであり、思考整理力や想像力、発想力を高めるのに効果的な思考ツールとして有名です。マインドマップトレーニングでは、自身の思考の限界を超えるためのツールとしてこのマインドマップを活用します。
【手順】
1.決められたキーワードに対して各自がマインドマップを作成する
- マインドマップはできるだけ多く枝分かれするように心掛ける
- 他の研修参加者との相談や意見交換は一切禁止とする
- 作成期間は3日~1週間程度と十分に検討できるよう長めに設ける
2.作成期間終了後、互いのマインドマップを見せ合う
- 自分と他人のマインドマップの共通点と差異を確認する
- 「なぜこのワードが連想されたのか」などの疑問点をメモしておく
3.他者のマインドマップの疑問点について質問を行い、質問された者はその理由について説明する
- 批判的な形で質問してはいけない
- 理由は必ずしも論理的に正しくなくても構わないが、可能な限り質問者を納得させられるように心掛ける
通常、自身の思考整理を目的として作成されるマインドマップですが、自身と他者の共通点や差異を見極めることによって独自の視点や不足している視点を把握することができます。
また、自身の思考を相手に理解してもらえるように説明することで論理力を、相手の思考に対して興味を示すことによって探究心や多面的視野を養いながら, 思考の引き出しを増やすことができるでしょう。
プレゼンブレインストーミング
ブレインストーミング(Brainstorming)とはアメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン(Alex F.Osborn)氏によって考案された会議方式であり、集団思考や集団発想法とも呼ばれています。
アイディアをより多く生み出すために用いられることが多いブレインストーミングを、ロジカルシンキングとラテラルシンキングのトレーニングに応用したものがプレゼンブレインストーミングです。
【手順】
1.課題やテーマに沿って通常通りのブレインストーミングを行う
- 他者の意見を絶対に批判してはいけない
- アイディアは自由に出すことが望ましい
- 現実的に不可能なアイディアでも構わない
- より多くのアイディアが出せるように心掛ける
- 他者のアイディアを発展させていく
- 急いで結論を出そうと焦らない
2.十分なアイディアが出揃ったらテーマに対する最適解を各自で導き出す
- ブレインストーミングを終了した後は意見交換を行ってはいけない
- 複数のアイディアを組み合わせても構わないが、対策や改善策として実行する本筋は1本にまとめる
- 自身の導き出した答えに対して起こりうるリスクを予測し、その対処法も検討しておく
3.各自の導き出した最適解とその理由、具体的な実行方法についてプレゼンテーションを行う
- 聞いている側は疑問点や問題点、素晴らしいと感じた点をメモしておく
- プレゼンテーション中に指摘や質問をしてはいけない
4.プレゼンテーション後、指摘や質問を受けて回答する
- 全ての指摘や質問に正しく回答することができなくても構わない
- その場で回答することができなかった内容はアフター研修として持ち帰って検討する
5.予測していたリスクの中で指摘されなかったものについて、その対処法とともに発表を行う
6.発表者の素晴らしかった点について意見を挙げる
プレゼンブレインストーミングは、プレゼンテーションに重点を置くことで他者理解を得られるレベルまで思考を深めることができるだけではなく、自由な発想を一箇所に集約することによって水平思考を感覚的に身に付けることができます。
また、問題点や素晴らしい点を発見する洞察力やリスク予測を行う先見性など、コンセプチュアルスキル向上に必要とされる要素を同時に鍛えることができるでしょう。
5Why5Answer
5Why分析は、トヨタ自動車株式会社の元副社長である大野耐一氏が著書『トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして』の中で綴ったトヨタ自動車株式会社独自の問題解決手法です。
ある課題に対して「なぜ?」を5回繰り返すことによって表面上に見える大まかな理由ではなく、根本的な部分に潜む真因を突き止めることで同じ過ちを繰り返さないようにする本質分析テクニックとなっています。「なぜその現象が起きてしまったのか」という疑問を繰り返し持ちながら、1つの事象に向き合う姿から『なぜなぜ分析』とも呼ばれています。
5Why5Answerは、5Why分析を行う過程で出てきた各原因に対して解決策や回避策を検討することで、垂直思考の重要性と水平思考の可能性を同時に学ぶことができます。
【手順】
1.実際に組織内で過去に起きたトラブルや事故、クレームをテーマとして5Why分析を実施する
- この時にはまだ解決策や代理策は検討せず、思考を深めることに集中する
- 扱うテーマは研修実施者の所属する部門や部署など身近な場所から用意する
- 「なぜ?」を5回繰り返しても真因まで辿り着いていないと判断した場合には「なぜ?」を続行する
2.5Why分析による真因の洗い出しと改善策が確定したら、そこに辿り着くまでに挙げられた複数の問題点について真因に対する直接的アプローチ以外での解決策や回避策を検討する
- 代替案を実行するために必要な経営資源が実際に組織内に存在するかどうかは問わない
- 提案の仕方は「もし仮に○○が××だとしたら…」といった前提条件を設けた仮定法でも構わない
- より自由な発想を導き出すため、挙げられた内容について否定的な意見を言ってはいけない
3.水平思考により導き出された新たな解決方法について、実行結果の予測やリスク予測を行う
実際の現場では真因への直接的アプローチが最優先事項として扱われます。しかし、水平思考による代替案をいくつか挙げておくことにより、不測の事態に対する柔軟な対応や更なるステップアップを図ることができるのです。
5Why5Answerではこの一連の流れを自身の中で順を追って確認することで、場当たり的な対応を取りがちな従業員であっても、イメージの広がりを意識しながら思考展開させることができます。1つの部署だけを対象にスキル研修を実施する場合であれば、5Why分析によって挙げられた問題点をテーマとして、プレゼンブレインストーミングに移行するのも良いでしょう。
プランニングチャレンジ
どれだけ優れたトレーニングであっても実戦経験に適うものはありません。しかし、組織の利益に直接関わる判断を研修者に任せた結果、大きなトラブルへ発展してしまったということも決してあってはなりません。そのようなリスクを回避しつつ、次世代リーダーの育成と現役リーダーへの刺激を同時に行える次世代人材育成トレーニングが、プランニングチャレンジなのです。
【手順】
1.現在の課題や目標について現任者と研修者の間で十分な情報共有を行う
- 現役リーダーは情報共有を通じてこれまで得た情報の整理を行う
- 真因など問題解決に直接関わる情報については伝えず、後継者自身に分析や検討する余地を与える
- トレーニング中は先輩後輩や上司部下などの関係性を一切排除し、対等な立場で関わりを持つように心掛ける
2.現役リーダーが通常通りプランニングを行っている間、研修者も独自の視点でプランニングを行う
- 当事者意識や問題意識を持ってプランニングに取り組む
- プランニングに必要な追加情報は現役リーダーに随時確認する
- 現在の経営資源で実行可能な案だけではなく、一定の条件をクリアすることによって実行可能な案も挙げておく
3.現役リーダーが作成したプランの説明を受け、そのプランを実行した場合に生まれる結果やリスクを予測する
- 研修に対する理解が十分に醸成された組織であれば予測結果を現役リーダーに直接伝える
- 人間関係悪化などのトラブルが不安な場合には予測結果を人事部に提出する
4.研修者が作成したプランの問題点を現役リーダーが指摘し、研修者と共に改善策や対応策を検討する
- 現役リーダーはクリティカルシンキングを意識して行う
- 否定的な意見は感情論ではなくロジカルシンキングを用いて行う
- ラテラルシンキングと現実逃避した突飛なアイディアは分別して扱う
プランニングチャレンジは、現任者が日頃行っているプランニングを後継者や後継者候補に擬似的に体感させるだけでなく、研修者の作成したプランを通じて現任者に新たな発見や刺激を与えることも目的としています。 また、実際のプランを結果予測の題材にしていることにより、リスク予測に対する自己評価を実施することが可能となっています。
自己評価と他者評価による多面評価を実施できるプランニングチャレンジは、他のコンセプチュアルスキル研修の効果測定を兼ねた実践的育成方法といえるでしょう。
コンセプチュアルスキルの参考書籍
コンセプチュアルスキルは構成要素の多さゆえに取り掛かりにくいイメージが強く付いていますが、先駆者のノウハウを活用することによって効果的に身に付けていくことができます。世の中には優れた参考書籍が数多く発表されていますが、その中から特に強い刺激を受けることができる4冊を紹介致します。
スキル・アプローチによる優秀な管理者への道
コンセプチュアルスキルやヒューマンスキル、テクニカルスキルなどのマネジメントスキルの存在を世に知らしめ、スキル・アプローチの重要性を説いたロバート・L・カッツ氏の論文『Skills of an effective administrator』を日本語訳したものが本書です。
本書はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに掲載された論文の書籍化を行っているダイヤモンド ハーバード・ビジネス・ライブラリーから購入することができます。
カッツ氏の論文を読み解くことによって、コンセプチュアルスキルが組織に与える影響を理解し、強い人材と組織を作り上げるために必要なノウハウを吸い上げることができるでしょう。
【書籍情報】スキル・アプローチによる優秀な管理者への道
- 原題:Skills of an effective administrator
- 著者:Robert L. Katz
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発行年月:1982年6月
問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
株式会社ビジネスコラボレーション代表の齋藤嘉則氏は「優れた問題解決者となるためにはまず優れた問題発見者となる必要性がある」という持論を下に、優れた問題発見者となるために必要な技術を問題発見構想編と問題発見分析編という2部構成で分かりやすく解説しています。 問題発見と分析のノウハウが惜しみなく詰め込まれた本書は、問題発見を苦手としているビジネスマンの心強いサポーターとなるでしょう。
【書籍情報】問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
- 著者:齋藤嘉則
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発売日:2001年12月1日
具体と抽象
ビジネスコンサルタントで著述家の細谷功氏は、本書で具体性だけを追求することのリスクと抽象的思考の持つ可能性について分かりやすくまとめています。抽象的で曖昧なビジョンの重要性を理解することによって、具体と抽象の往復思考を実行することができるようになるでしょう。
【書籍情報】具体と抽象
- 著者:細谷功
- 出版社:dZERO
- 発売日:2014年11月27日
ロジカル・シンキング
数々の現場で実績を積んできた平井孝志氏と渡部高士氏の共著である本書には、論理的思考力を実践で活用するために必要な手法やフレームワークが所狭しと詰め込まれています。数多くのテクニックを学ぶことによって、自身の中の論理的思考力を実務レベルまで昇華させることができるでしょう。
【書籍情報】日経文庫ビジュアル ロジカル・シンキング
- 著者:平井孝志、渡部高士
- 出版社:日本経済新聞出版社
- 発売日:2012年4月14日
ビジネス思考法使いこなしブック
外資系コンサルティングファームで働く吉澤準特氏の綴った本書には、ロジカルシンキングとラテラルシンキング、クリティカルシンキングという3つのビジネス思考を持ったキャラクターが登場します。それらのキャラクターが様々な状況に向き合う姿を描くことで、それぞれの思考を用いた場合に導き出される解答の比較や分析をケース毎に行うことができるようになっているのです。
3つのビジネス思考の特性や長所、短所を正しく理解することによって、現場で次々に発生する困難ケースに対して最も効果的な思考を選択することが可能となるでしょう。
【書籍情報】ビジネス思考法使いこなしブック-ロジカル・ラテラル・クリティカルの基本がしっかり身につく-
- 著者:吉澤準特
- 出版社:日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日:2012年7月28日
まとめ
- コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を見極めることによって正解答が存在しない事象に対して最適解を導き出すことができる能力である
- コンセプチュアルスキルは全ての職位に必要なスキルだが、運営や人事など戦略を組み立てる機会の多い役職ほど取得優先度が高くなる
- コンセプチュアルスキルは多くのイノベーションを生み出し、リスクを最小化させる
- コンセプチュアルスキルの構成要素は非常に多く、スキルアップを図る際にはそれらの要素を満遍なく高める必要がある
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