社内研修
「社内研修」とは、その名の通り外部に委託せず、社内で完結する研修のことを指します。「社外研修」と比較してオリジナルの研修を設計できることや、研修内容を業務に反映しやすいこと、そして自社に合った時期や場所の設定が可能など多くのメリットがあります。今回は、この社内研修について、メリット・デメリットや「社外研修」との違い、社内研修の種類、その目的や、効果的な企画のためのステップについて詳しくご紹介します。
社内研修とは
「社内研修」とは、その名の通り外部に委託せず、社内で完結する研修のことを指します。ここでは「社外研修」との違いや、社内研修の種類ついて見ていきましょう。
社外研修との違い
社内研修と相反するものに「社外研修」があります。これは、社外の企業、例えば研修会社などが実施するセミナーに参加したり、自社オリジナルの研修の設計を委託するなどして実施するものを指します。
「社内研修」「社外研修」それぞれの特徴を、メリット・デメリットを挙げながらご紹介します。
社内研修のメリット・デメリット
ます、社内で完結する社内研修から見ていきましょう。
【メリット】
- オリジナルの研修を設計できる
- 研修内容を通常業務に反映しやすい
- 自社に合った時期や場所の設定が可能
【デメリット】
- 研修の設計や手配などの人的コストがかかる
- 受講生のモチベーションの維持が難しい
- 社員を講師とするケースが多く、教え方に差が出る
社外研修のメリット・デメリット
次に、外部の研修への参加や、外部企業への委託を行う「社外研修」について見てみましょう。
【メリット】
- 外部委託のため人的コストがかからない
- プロの講師による研修で、学びが身につきやすい
- 他社の受講生との交流により新たな視点を得られる
【デメリット】
- 委託コストがかかる
- 既成の研修の場合、自社に合わせた内容になりにくい
- 既成の研修の場合、時期や場所を指定しにくい
社内研修の種類
そもそも社内研修には、大きく分けてOJTとOff-JTの2種類があるといわれています。
OJT研修
「OJT」とは、「On-The-Job Training」の略称で、実際の職務現場において業務を通して行う教育訓練のことをいいます。
部下が職務を遂行していく上で必要な知識やスキルを、上司や先輩社員などの指導担当者が随時与えていく人材育成方法のひとつです。
【メリット】
- 実践を通して業務を身につけられる
- 指導する側の人材育成にもつながる
- 対象者のスキルによって柔軟に対応が可能
【デメリット】
- 業務と同時進行であるため、体系的な知識を得づらい
- 指導する側のスキルによって、学びに差が出る
- 指導する側の負担が大きい
【関連】OJTとは?いまさら聞けないOJTの意味や基礎知識を徹底解説/ BizHint
OFF-JT研修
「Off-JT(Off The Job Training)」とは、職場から離れた場所で、業務遂行に必要な基本となる知識・スキルを体系的に学習するために行う教育訓練のことです。
例えば、新入社員に対する「ビジネスマナー研修」や管理職に対する「マネジメント研修」などがこれにあたります。
【メリット】
- 専門的な知識を習得できる
- 研修や訓練に集中できる環境
- 多くの対象者に同時に同じスキルや知識を提供できる
【デメリット】
- 研修内容を業務へ落とし込むことが難しい
- 研修の組み立てが難しい
- 人事部門の手間やコストがかかる
【関連】Off-JTとは?OJTとの違いやメリット・デメリットを解説/ BizHint
社内研修の目的
社内研修は次のような目的で行われます。
自社業務に関わる知識や経験の習得
最も大きな目的と言えるのは、社員に必要な知識やスキルの習得であり、人材育成です。
例えば、新入社員や中途社員が業務にスムーズに入れるよう、具体的な業務フローやシステムの使い方などのレクチャーを受けます。営業職などの場合、販売のロールプレイなどを行う場合もあります。
【関連】人材育成とは?対象別の求められるスキルや育成方法、成功ポイントまでご紹介/BizHint
ミッションやビジョンの共有
社員に対して、自社の理念やミッション、ビジョンの共有を行うためにも実施されます。
ワークショップなどを活用しながら、自社の成り立ちや事業の方向性を理解し、どのように行動していくべきか、受講者が自ら判断できるようにします。
【関連】ミッション・ビジョン・バリューとは?企業事例や作り方まで徹底解説/ BizHint
企業の成長を促す
人材の成長は、最終的に組織の成長にも繋がります。
人材は、最も重要な「経営資源」であると言われています。人材育成に力を注ぐことにより、社員一人ひとりのスキルがアップするだけでなく、その成長によってパフォーマンスを最大化することができ企業全体の競争力をアップさせることが可能となります。
また、社員自身が成長を実感することにより、エンゲージメントも高まり、優秀な人材の流出防止にもつながります。
【関連】エンゲージメントとは?それぞれの定義と高め方、測定方法や事例まで徹底解説/BizHint
効果的な研修計画の立て方
それでは、社内研修の効果的な計画のプロセスを見ていきましょう。
課題を明確にする
研修の計画を作る前に、自社の置かれている状況や課題を明確にしましょう。
例えば、自社の課題が売上の最大化なのか、コスト低減なのかにより、当然ながら、研修での打つべき施策が異なります。前者の場合は営業の販売スキル向上、後者の場合は営業事務の効率化などが該当します。
社内研修では、毎年同様の研修が開催されることが多くなりがちですが、「今、会社の抱える課題は何か」という視点を持つことが非常に重要です。
目的と受講者を決める
自社課題を特定したら、研修の目的と受講者を決めます。
想定した課題に対して、複数の受講者候補がいる場合、誰にどのような状態になってほしいのかを明確にした上で、企画を進めましょう。
例えば、会社全体の売り上げを伸ばすために営業力を強化する必要がある場合、幹部層と現場のどちらに対して研修を行ったほうが良いかを検討する必要があります。研修によりもたらされる効果を検討し、費用対効果が高い方を選択します。
目標を決める
目的と受講者を決定したら、研修の目標を設定しましょう。
目標とは、設定された目的に対して、研修でどこまで達成するのか、具体的な水準を設定します。
営業現場の若手の売り上げ向上が目的の場合、例えば、「顧客ごとの課題体系図を作成できるようになる」など、具体的な達成ラインを明確にしましょう。
研修内容を決める
目標を設定したら、研修内容を決めていきます。
どのような内容にすれば、研修の目的・目標を満たし、受講者の行動を変えることができるのか、具体的なイメージを持って企画を進めましょう。
講師を決める
研修内容が決定したら講師を選定します。
講師は自社の社員が務める場合と社外から講師を招く場合があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
社内講師
社内講師で研修を行うメリットとしては、コスト面や、講師自身のスキルや経験の棚卸しになるなどのメリットが挙げられますが、対象の社員は、通常業務に加えて負荷がかかることや、研修のプロではない点が懸念されます。
社内講師を見つける際には、特定の業務に熟達したスペシャリストに依頼したり、公募するなどの方法があります。
ただし、集合研修の場での伝え方や、プレゼンとしてのまとめ方、議論のファシリテーションの仕方には普段の業務とは異なったノウハウを必要とします。講師役の社員とは事前に目的や、なぜ講師を依頼したいのかといった点を伝えた上で、当人のスキルが研修で正しく伝達されるよう、プレゼン内容などのフィードバックなど、サポートが必要でしょう。
社外講師
社外講師に依頼するメリットとしては、研修のプロのため、品質が安定していることや、課題の設定や研修内容の整理の段階で、新たな視点で提案を受けられることが挙げられます。しかし、委託費用が発生する点には注意が必要です。
アンケートで効果測定をする
社内研修は、実施した後に効果を測定することが重要です。研修直後の対象者アンケートで「理解度」を探るものや、後日、どの程度業務に定着しているのかを本人だけでなく上司にも問うなどして、今後の研修設計に生かしましょう。
その際、点数による定量評価とコメントによる定性評価をひろいあげ、企画者・実施担当者・講師で共有することが大切です。
社内研修の好事例
最後に、BizHintでインタビューした社内研修の事例を2社ご紹介します。
社内の人間が講師となり、己の知識を社内に共有
社員同士が共に学び合う場を作っているのが、価値共創をコンセプトに事業戦略立案からその実行、運営までを支援するコンサルティング会社「シグマクシス」と、スマホゲームや比較情報サイトなどを運営する「エイチーム」。
この2社による対談記事です。社内での学び合いで得られる成果や、プログラムを推進する上での秘訣などについて、語ってもらいました。
社員自身が講師になる。ともに学び合う場が強い組織を育む【シグマクシス・エイチームの研修】
「反転学習」でカリキュラムを設計。オンライン研修でも対応
新型コロナウイルス感染拡大により、従来どおりの集合研修やOJTを実施することが難しくなっている今、新人研修もオンラインへの切り替えが求められています。
この中で、スムーズにオンライン研修へ移行し、成果をおさめているのが株式会社スタディストです。
同社が行っているのは「手順書ベースの自学自習と反転学習のスタイル」での社内研修。今年に入ってからは、新人に学んでほしいコンテンツを育成担当が順序立ててカリキュラム化し、事前配信・受講管理する方式に変えたのだとか。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
やってわかったテレワーク社員研修の極意。受講者・育成担当・経営の三方よし
まとめ
- 社内研修・社外研修にはそれぞれにメリット・デメリットがあり、自社の現在の状況やコスト面、対象者のスキルや人数など複合的な要素を踏まえた上で検討が必要
- 社内研修は、業務に必要なスキルの向上だけでなく、企業のミッション・ビジョンの共有などの目的も有している
- 効果的な研修を成功させるには、まず現状の課題を把握した上で目的・目標を設定し、実施した後もアンケートなどによって効果測定を実施することが重要
この記事もあなたにオススメ
-
1対500名のオンライン研修は実現するのか?理論編①(5000字)
研修進化論(高松康平)|note
-
研修や勉強会をオンラインで実況したら、学習速度が段違いだった話
サイボウズ式
-
オンラインzoom研修を成功させるための17の視点〜2日間の研修をzoomでやり切って見えてきたこと〜
しむしむさん(志村智彦/zoom研修プロデューサー)
-
あなたの会社では「中間管理職の育成」を一日こっきりの「神隠し研修」に委ねていませんか?
立教大学 経営学部 中原淳研究室 大人の学びを科学する
-
経営者必見!従業員研修でもらえるお金
BizHint 編集部
-
研修に3年で1億円以上…ペイしてるのか振り返ってみた(怖)
Hidehito Yoichi - 世一英仁|note
-
ロジカルを重視する文化だから、前例に縛られない! 全社員に徹底する「ロジカルシンキング研修」とは?1
Oisix ra daichi (オイシックス・ラ・大地)|note
-
研修会社に頼らない「研修内製化」の極意 科学的なメソッドで研修効果を最大化する方法
@人事
人材育成の記事を読む
- アダプティブラーニング
- コンピテンシー
- プロパー社員
- エンプロイアビリティ
- タイムマネジメント
- ストレスコーピング
- 自己効力感(セルフエフィカシー)
- オンボーディング
- Off-JT
- OJT
- 新入社員研修
- LMS(学習管理システム)
- eラーニング
- 新入社員 モチベーション
- ジョブローテーション
- ナレッジワーカー
- 傾聴
- マイクロラーニング
- T型人材
- ブラザー・シスター制度
- ワールドカフェ
- グリット
- マネジメント研修
- 多能工化
- ストレッチ目標
- OJD
- ポジティブフィードバック
- サーバントリーダーシップ
- 新人教育
- レジリエンス
- OJTとは
- スペシャリスト
- 社員教育
- 人材アセスメント
- ジェネラリスト
- アグリゲーター
- 部下育成
- ロールモデル
- 経験学習
- コンセプチュアルスキル
- 次世代リーダー
- 社会人基礎力
- ケースメソッド
- 認知的徒弟制
- メンター制度
- 人材開発
- 評価者研修
- ラテラルシンキング
- グローバル人材
- コア人材
- マインドフルネス
- アサーション・トレーニング
- エフィカシー
- アクティブリスニング
- 中途採用 研修
- アクションラーニング
- フォローアップ研修
- 新入社員教育
- リカレント教育
- グローカル人材
- アイドルタイム
- 階層別研修
- 幹部候補
- マイスター制度
- ソーシャルラーニング
- 人間力
- インストラクショナルデザイン
- テクニカルスキル
- ヒューマンスキル
- セルフマネジメント
- サクセッションプラン
- インバスケット思考
- ビジネスコーチング
- 留職
- マネジャー育成
- 行動特性
- ホーソン効果
- ホーソン実験
- アンラーニング
- リフレクション