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傾聴

2020年3月26日(木)更新

「傾聴」とは「耳を傾けて、熱心に聞くこと」を意味する言葉で、相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に「聴く」ことを指します。英語では「active listening(アクティブリスニング)」とも呼ばれます。今回は、この「傾聴」について、現代のビジネスシーンで求められる理由から、その効果、傾聴の3つの段階、傾聴を実施する上でのポイントや必須スキル、注意点まで幅広くご紹介します。

傾聴とは?

「傾聴」という言葉を辞書で引くと、「耳を傾けて、熱心に聞くこと」とあります。もともとはカウンセリングにおける技法で、相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に「聴く」ことを意味します。

臨床心理学における「傾聴」は英語で「active listening(アクティブリスニング)」と言います。これは「積極的傾聴」とも言われ、相手の話にしっかりと耳を傾けることで真意を引き出して理解することを指す言葉です。

【出典】デジタル大辞泉「傾聴」/ コトバンク

【関連】アクティブリスニングとは?例や実践方法も分かりやすくご紹介 / BizHint

「聞く」「訊く」「聴く」の違い

「きく」という行為は、「聞く」と「訊く」と「聴く」の3つのパターンに分けられます。

周囲の人とのコミュニケーションをうまく取るには、それぞれの意味を理解して、使い分けることがポイントです。

「聞く」

一般的に広い意味で使われる言葉ですが、辞書では「音・声を耳で感じ取る」とあるように、正確には「聞こえる」という方が近いニュアンスです。

つまり、特に意識せずに音や言葉が自然に耳に入ってくる状態で、英語では「hear」に該当します。

「訊く」

辞書では「たずねて、答えを求める。問う。」とあります。

持っている疑問を明確にするための行為で、相手の話をどんどん深掘りして、答えに迫るために質問することです。

「聴く」

辞書に「心を落ち着け、注意して耳に入れる」とある通り、意識して耳を傾けることを指し、これが「傾聴」に該当します。

音楽鑑賞の他、スピーチや講義を聴くという場合にも用いられます。英語で言うと「listen」です。

【出典】大辞林 第三版「聞く・聴く・訊く・利く」/コトバンク

漢字が表す「聴く」の意味

「傾聴する」という行為は、漢字を見るとよく解ります。「聴」という漢字は、「耳」「目」「心」という3つの文字が組み合わさっています。つまり、「耳だけでなく、目と心を併用してきく」ということを示す言葉と理解するとよいでしょう。

具体的には次のようなポイントが含まれます。

  1. 耳できく:相手の言葉に耳を傾けて最後までしっかりと聴く
  2. 目できく:表情やしぐさ、声のトーンなど話している相手の様子に注意を払う
  3. 心できく:相手の言葉を理解して受け止め、相手の真意や感情に寄り添って共感する

傾聴力が必要な理由

傾聴というと心理カウンセラーやプロコーチといった、特殊な職業の為のスキルのように思われるかもしれません。ですが、傾聴力は社会人基礎力の一つとも言えるほど広く必要とされるコミュニケーション能力です。

ビジネスシーンにおいて、傾聴力はなぜ必要なのでしょうか。

信頼関係の構築

傾聴力は、相手と信頼関係を構築するために必要な能力です。ビジネスの場では、意思疎通を図る、論理的かつ端的に伝える、説得や交渉、折衝を行うと言ったコミュニケーションスキルが要求されます。

これらのスキルの根幹となるのは、相手の人となりや考えを理解する「傾聴力」です。相手の考えや気持ちを的確に読み取れるからこそ、良好な人間関係を構築することが可能なのです。

営業力や交渉力の向上

傾聴力が優れていると、相手との会話の中から顧客ニーズを引き出すことができるようになります。相手の考えに寄り添い共感して意見を探ることで、何を求めているのかを理解できます

その結果、的を射た提案ができるようになるため、売り上げや業績アップにつなげることができるでしょう。

コミュニケーションの失敗を避ける

近年は職場における人材の多様性が広がっています。価値観やバックグラウンドが異なるメンバーと共にプロジェクトを推進していく中で、勘違いや誤解から指示が伝わらずやるべきタスクが上手く実行されなかったり、相手の感情や思考が理解できず不信感が募ってしまったりと、様々な問題が発生しています。

このような失敗を回避するには傾聴力の向上が有効です。これを高めることで、相手の考えや指示内容をより的確に理解できるようになります。

人事や管理職のベーシックスキル

社員の話を聴く機会が多い人事や管理職にこそ、より傾聴力が重要であると言えます。

若手や中堅層は、自分の意見が上司や経営側に届いている、受け止められていると感じられた場合にモチベーションが高まる傾向があります。部下の話を傾聴することは、信頼関係の構築と人材育成に大きく役立ちます

また、昨今は人事や管理職の仕事において、メンバーの持つ能力や創造性を発揮させる施策がより重要視されるようになってきました。具体的には、「コーチング」や「エンパワーメント」、「パフォーマンスマネジメント」といったスキルや考え方が該当します。

これらの共通点として、相手の感情や思考を的確に理解し受け止める「傾聴」を行うプロセスが必ず存在します。傾聴は人事や管理職にとって重要なベーシックスキルとなりつつあるのです。

傾聴の効果

傾聴にはどのような効果があるのでしょうか。

相手の考えが理解できる

傾聴は、聴き手の思い込みや判断を挟むことなく、相手の話に集中して聴くことを意味します。通常の聴き方では気がつかなかった相手の考えや感情が理解できるようになります。

良好な人間関係が築ける

誰しも自分の話を真剣に聴き、理解しようとする人のことを悪くは思わないでしょう。傾聴は良好な人間関係の構築にもつながります。

相手の自己重要感が高まる

傾聴を行うことにより、相手の心理的充足感が高まるだけでなく、その承認欲求を満たし、自己重要感を高める効果があります。

現状を俯瞰的に整理し、新たな気づきが生まれる

傾聴してくれる聴き手がいることで、相手は現状を俯瞰的に整理することができます。結果、現在抱えている問題について、自然と気づきが得られ、新たな行動に繋がります

傾聴の「3つの段階」

傾聴には3つの段階があります。

レベル1「内的傾聴」

内的傾聴とは、相手の話を聴いてはいるものの、意識が相手ではなく自分(聴き手)に向かっているような聴き方です。

「相手の発言が自分にとってどのような意味があるのか」など、聴き手の意識は自分の考えや気持ちに向いています。相手ではなく自分自身にスポットライトが当たっている状態であるとも言えます。

レベル2「集中的傾聴」

集中的傾聴とは、相手の話をしっかりと意識する聴き方です。好奇心や集中力が高まり、話の内容だけではなく、体の動きや表情の変化、間のとり方などから、感情を読み取ることができます。

集中的傾聴が行われているときは、お互いの姿勢が自然と前のめりになることも。聴き手自身ではなく相手にスポットライトがあたっている状態とも言えるでしょう。

レベル3「全方位的傾聴」

傾聴への集中力が高まると感覚が研ぎすまされ、自分と相手だけでなく周囲の空気感や雰囲気などの「場」にも注意を払えるような状態になります。これが「全方位的傾聴」です。

傾聴とは、このレベル3の「全方位的傾聴」とレベル2の「集中的傾聴」を行ったり来たりするような状態を意味します。集中力が低下すると、レベル1の「内的傾聴」状態に戻ります。レベル1に陥っていないか、時々自分自身を観察しながら傾聴できると良いでしょう。

【参考】『コーチング・バイブル―本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション』ヘンリー・キムジーハウス、キャレン・キムジーハウス、フィル・サンダール(東洋経済新報社、2012年)

傾聴の実施ポイント

傾聴を行う上でのポイントについて解説します。

集中できる環境を整える

まずは、集中できる環境を整えましょう。周りが騒がしい場所では、話し手も聴き手も集中できません。隔離された会議室や静かで落ち着きのあるカフェなどを利用し、話に集中できる環境を整えましょう。

態度と姿勢で伝える

傾聴を行う際には、話し手に対し「私はあなたの話に好奇心があり、集中して聴きたいと思っている」というメッセージを、態度と姿勢をもって伝えなければなりません。

傾聴の姿勢としては、相手の顔や目を見て、表情は柔らかく、姿勢としては前のめりに近い状態になります。ですが、不自然にそのような姿勢を作ると、かえって相手の警戒心や緊張感を高めてしまいます。

無理に傾聴的な姿勢を作ろうとするのではなく、「自分がリラックスした状態であるか」「高圧的な姿勢をとっていないか」の2点を意識しながら取り組みましょう。

位置関係への配慮

話し手と聴き手の物理的な位置関係にも配慮しましょう。

座り方、向かい合い方

話を聴く際の席の位置により、話し手に与える心理的印象が異なります。座り方には、「対面法」「90度法」「平衡法」の大きく3つの方法があります。

  • 対面法:
    まっすぐ対面して向き合う座り方です。目と目が合うため、相手の状況をしっかり観察することができます。一方で、相手に緊張感を与えてしまう可能性もあります。
  • 90度法:
    相手に対し90度横の角度で座ります。相手は緊張感や威圧感を感じにくく、リラックスした状態で話すことができます。
  • 平衡法:
    相手の横に座り、同じ方向を見るようにしながら傾聴する方法で、他の座り方に比べ、より親密感が湧きやすい座り方です。共通のビジョンや夢を思い描くような会話をする際や、独白をただ聴くようなシーンで有効である一方、相手の表情や態度など言葉以外の情報を読み取りにくく、話自体も散漫になってしまうことも。

状況によって座り方を選べるとベストですが、基本的には90度法が無難な座り方であるとも言えます。

距離感

傾聴を行う上で、相手との距離感は重要な要素です。

人には「パーソナルスペース」と呼ばれる、他人に近づかれると不快感を覚える範囲があります。この範囲の広さは性別や社会文化、民族や個人の性格によっても差があると言われています。相手の表情を見ながら距離感を調整しましょう。

傾聴に必要なスキル、技術

傾聴を行う上で必要となる基本的なスキル、技術について解説します。

ペーシング

ペーシングとは、心理学やコーチングなどに使われる用語で、話し手の話すペースに聴き手が同調していくことを意味します。

声の抑揚、話すスピードやテンポ、呼吸など、相手と自分のペースをシンクロさせていきます。これにより、話し手と聴き手の間に一体感が生まれ、リラックスして何でも話しやすい状態を作ることができます。

ミラーリング

ミラーリングとは、鏡のように相手と同じ動作を行うことです。姿勢や表情を相手と合わせることで、親密感を高めることができます。

しかし、完全に相手と同じ動きをするのは逆効果です。心理学では、少しタイミングを外したり、左手と右手を変えて動作すると良いと言われています。

バックトラッキング(オウム返し)

バックトラッキングとは、日本語で言うと「オウム返し」です。相手の言ったことを反復します。

ただし、完全にコピーするのではなく、要約や一部抜粋を返すと良いでしょう。

理解の確認(言い換え)

相手の話を理解していることを伝えるために、相槌に加え、キリの良いところで聴いた内容を言い換えて返しましょう

相手の話をしっかり聴いている、というメッセージになります。

傾聴に必要な心理状態

スキルだけではなく、傾聴できる心理状態を整えることも必要です。

感情をリセットする

傾聴が始まる前に一度深呼吸をし、それまで抱えていた考え事や雑念、そして先入観などのあらゆる感情を一度リセットします。完全にフラットな状態ができたら、傾聴を始めましょう。

リラックスする

リラックスして臨みましょう。聴き手自身が緊張していたりストレスを感じているような状態では、相手にその感覚が伝わってしまいます。

好奇心を持って聴く

前述の通り、傾聴には様々なスキルやテクニックがありますが、全ての根源は相手への好奇心です。好奇心を持って聴けば、自然と理想的な傾聴姿勢が取れたり、的確な質問ができることでしょう。

傾聴の注意点と対策

傾聴を行う上での注意点と、その対策も含めて解説します。

信頼関係ができていない

そもそも相手が話をしたいと思えるような関係性が構築できていないケースがあります。

日頃から雑談のような簡単なコミュニケーションを重ね、傾聴の前提となる人間関係を育む必要があります。

【関連】心理的安全性が職場にもたらす効果と高め方、測定方法まで徹底解説 / BizHint

自分自身の先入観や感情を捨てきれない

傾聴を行う際には、自分自身の先入観や感情は横に置いておかなければなりません。内的傾聴状態に陥っていないか注意しましょう。

求められていないのに意見や提案を述べる

よくある失敗にとして、求められていないのに、自分の意見や提案を述べてしまうことが挙げられます。特に経験のあるマネージャーが、経験の浅い部下に対して行いがちなケースです。

指導や教育のフェーズとしては有効なこともありますが、傾聴に関しては相手からの信頼を損なってしまう可能性があります。

トレーニング不足

ぎこちないペーシングや不自然なミラーリングは相手の信頼度を増すどころか、不信感を募らせる結果になります。まずはロールプレイなどで練習し経験を積んだ上で、自然とスキルを発揮できる状態を目指しましょう。

聴く人役と話す人役に分かれ、模擬的な会話をした後に相互フィードバックを行う、といったトレーニングが有効です。

まとめ

  • 「傾聴」とは「耳を傾けて熱心に話を聞くこと」。相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に「聴く」ことを意味する
  • 信頼関係の構築、コミュニケーション不全の解消、営業力や交渉力の向上といった効果がある。また、人と多く接する人事や管理職にこそ必要であるとも言える
  • 大事なのは相手への好奇心とリラックス、そして先入観やそれまで持っていた感情のリセット。時々自分自身の状態を観察しながら聴こう

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