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ストレスコーピング

2020年4月30日(木)更新

「ストレスコーピング」とは、日常生活や職場などで感じたストレスに、上手く対処しようとすることを言います。ストレスに直面したとき、その受け止め方、およびストレスコーピングをうまく実施できるかが、ストレス反応に大きく影響するとされています。当記事では、まずストレスの構成要素を理解したうえで、ストレスコーピングの種類や実践法、そして実施ポイントやマネジメントにおける対策、おすすめ書籍まで丁寧に解説していきます。

ストレスコーピングとは

ストレスコーピング(stress coping)とは、「ストレスの基(ストレッサー)にうまく対処しようとすること」を表すメンタルヘルス用語です。

これはアメリカの心理学者リチャード・S・ラザルスによって提唱された、「認知行動理論」の中のストレス対処の考え方。人がストレスに直面したとき、そのストレスに対する受け止め方、およびストレスコーピングをうまく実施できるかが、ストレス反応(ストレスによる身体的・心理的・行動反応)に大きく影響するとされています。

【出典】ストレスコーピング/e-ヘルスネット(厚生労働省)

ストレスを構成する3つの要素

ストレスは、『ストレッサー』『認知(評価・解釈)』『ストレス反応』の3つの要素により構成されています。ここでは、ストレスを感じる仕組みについてご説明します。

ストレッサー

ストレッサー(stresser)とは、ストレスを引き起こす因子のことを指します。厚生労働省は、ストレッサーの分類として『物理的ストレッサー』『化学的ストレッサー』『心理・社会的ストレッサー』の3つをあげています。

  • 物理的ストレッサー…暑さや寒さ、騒音や混雑など
  • 化学的ストレッサー…公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など
  • 心理・社会的ストレッサー…人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など

これらの事象が原因となり、ストレスが発生します。以下に、労働環境における物理的、精神的因子の一例を記載します。

  一例
物理的因子 ・温度や湿度、騒音などの劣悪な作業環境
・安全性が確保されていない危険な作業現場
・キャパシティを大幅に越えて与えられる仕事量
・IT機器を導入した職場に順応できない
精神的因子 ・上司によるパワーハラスメント
・同僚、上司によるセクシャルハラスメント
・円滑に進まない人間関係
・社内や営業先で受けるいじめ
・資格試験に落ちることが出来ないプレッシャー
・仕事に対して理解の無い家族

【出典】ストレスとは:ストレス軽減ノウハウ|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(厚生労働省)

認知

認知(cognition)には『ある事柄をはっきりと認めること』という意味があります。 つまり、身の周りに存在するストレス要因に対して認知的評価が行われ、自身がストレスを感じているのだと自覚するのです。

ただし、ストレスから自分自身を守るために無意識に認知を行い、実際に本人はストレスを感じている事に気付いていないというケースもあります。そのため、必ずしも全てのストレッサーをはっきりと自覚することができるとは言い難いでしょう。

ストレス反応

ストレッサーによって発生したストレスを認知すると、体は様々な症状を発します。 その諸症状をまとめてストレス反応(stress reaction)と呼びます。

ストレス反応には身体的反応、心理的反応、行動反応があります。 ストレスは自律神経にも大きな負担を与えるため、全身に対して想像し得ないような様々な症状が発生する可能性がある事をしっかりと理解しておきましょう。

反応の種類 具体的な症状
身体的反応 頭痛、吐き気、胸やけ、腹痛、胃腸症状、食欲低下、血尿
空腹感、めまい、動悸、生理不順、倦怠感、疲労感、不眠、下痢 など
※一見ストレスとは関係の無さそうな身体的反応:
目の疲れ、ドライアイ、肩こり、腰痛、蕁麻疹、湿疹 など
心理的反応 不安感、過剰反応、焦燥感、苛立ち、意欲減退、 集中力低下
気分の低下(抑うつ状態)、無関心、緊張感 など
行動反応 作業に対するミスの増加、遅刻、早退、欠勤、欠席、 飲酒量の増加
喫煙量の増加、ぼんやりしている、事故を起こす、事故に遭う、 蒸発(行方をくらます)
暴力、ひきこもり、ギャンブル依存 など

このような症状が出現する事により、周りの人間も違和感を覚え始め、ストレスによる問題が表面化していくのです。

ストレス反応を放置すると病気になることも

仕事をしているとストレスを感じる事が日常茶飯事となり、対応が後回しになりがちです。しかし、体からのSOSであるストレス反応を放置してしまうと以下のような重大な病気に発展してしまうことも。

そうなると、身体の回復はもちろんのこと、職場への復帰が難しくなる可能性もでてきてしまいます。事前に正しく対応することが出来るよう、ストレスコーピングという技術を学び、身につける必要があるのです。

ストレスコーピングの種類

ストレスコーピングには優先的に行うべき「問題焦点型」と「情動焦点型」、そして「ストレス解消型」の計3種類が存在します。

ここからは、これら3つの種類を順番に解説していきます。

ストレスコーピングの種類① 問題焦点型

「問題焦点型」のアプローチには、問題焦点型コーピングと、社会的支援模索型コーピングの2種類があります。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングは、ストレッサーそのものに働きかけを行い、認知させないようにするという方法です。「問題焦点コーピング」や「問題解決型コーピング」、「問題中心型コーピング」などの名称でも呼ばれています。

ストレッサーを根本的に消滅させることによってストレス反応を抑えようとするその対応方法から、問題焦点型コーピングをプライマリーコントロール(初原的調整作用)として扱う場合もあります。

得られる効果は一番大きいものとなりますが、ストレス源というのは自分よりも強く大きい立場のものであることが多く、問題焦点型コーピングが使用できる場面というのはそう多くはないでしょう。

実践例

上司によるパワーハラスメントにストレスを感じている場合には、例えばその上司に直接パワーハラスメントを止めてもらえるようにお願いする。もしくは更に上の上司に事実を伝えて注意してもらうという方法があります。

また、別の方法としては、自分と上司との関係を解消するため、異動もしくは退職を申し出るという選択肢です。しかし、いずれも簡単な方法であるとは言えません。

社会的支援模索型コーピング

問題に直面してストレスに悩んでしまった際、上司や同僚、家族や友人などに相談してアドバイスを求める方法を「社会的支援探索型コーピング」と言います。悩みや不安を一人で抱え込まず共有することにより、ストレスを分散させます。

実践例

上司によるパワーハラスメントにストレスを感じている場合、まずは家族、そして同じ環境で働く同僚に相談しアドバイスを受ける。もしくは、労働基準監督署や、社内のハラスメントを扱う部署などの専門の窓口に相談するという手法もあります。

ストレスコーピングの種類② 情動焦点型

「情動焦点型」のアプローチには、情動焦点型コーピングと、認知的再評価型コーピングの2種類があります。

ストレッサーの除去が難しい場合においても、発想の転換や受け入れ方を変えることによって状況が一変した結果、ストレスと認知されなくなり解決へと繋がることもあります。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングはストレッサーに対しての向き合い方や受け止め方を変える事によってストレス反応を軽減させることを目的とした処方法です。「情動焦点コーピング」や「情動中心型コーピング」などの名称でも呼ばれています。

ストレッサーとなる環境そのものを変えるのではなく、環境に向き合う自分自身を変えるという対応方法から、情動焦点型コーピングをセカンダリコントロールとして扱う場合もあります。

この世の中に存在する多くの物事は良い面と悪い点という2面性を持ち合わせています。 自分にとっては不快であったり不利益であることでも、他の誰かにとってはとても重要であり欠かせないものであるといった状況は、誰しも身に覚えがあるでしょう。今まで悪い面しか見えていなかったストレッサーの良い面を探したり、存在の必要性や価値を見出そうとする行為が情動焦点型コーピングなのです。

実践例

職場のデジタル化が急激に進み、全ての書類をパソコンで作成しなければいけなくなり、新入社員にまで遅れを取ってしまう現状にストレスを感じるようになった。

このようなストレッサーに対し、情動焦点型コーピングでは以下のようなアプローチを実施します。

  • 新しい技術や知識を得るチャンスだと考える
  • パソコンが得意な社員とのコミュニケーションのきっかけになると考える
  • 同じ業務を繰り返すだけであった日々に新しい刺激が加わったと考える

認知的再評価型コーピング

情動焦点型コーピングにかなり近いアプローチが、「認知的再評価型コーピング」です。情動焦点型コーピングが、自分自身のストレッサーに対する向き合い方を変えることにフォーカスしていたのに対し、認知的再評価型コーピングは、ストレッサーそのものに対する見方をポジティブなものに変化させることにより、ストレスを軽減する手法です。

実践例

例えば、作業できる時間に対して明らかに多すぎる仕事量というストレッサーに対して認知的再評価型コーピングを適用させると以下のようなアプローチが考えられます。

  • 自分への評価が高いからこそ、たくさん仕事を与えてもらえていると考える
  • 作業速度の向上や効率化を追及し、自身の更なる成長を目指す

ストレスコーピングの種類③ 気分転換型

気分転換型コーピングは、例えばショッピングや美味しい食事、音楽鑑賞など、自身の好きな事を生活に取り入れる。あるいは、リラクゼーションなど身体をリラックスさせる事によりストレスを軽減するもので、一般的によく知られた方法です。これは、「気晴らし型コーピング」「ストレス解消型コーピング」とも呼ばれています。

問題焦点型コーピングや情動焦点型コーピングを検討したが、ストレスの除去や軽減が望めなかった…。そのような場合でも諦める事無く、気分転換型コーピングを行うようにします。

ストレスは予想しえなかった方向から突然降りかかってくるものです。 その為にも普段から自分に合ったストレス解消法を見つけておく必要があるでしょう。

長期に亘ってストレスの要因を解消することが見込めない場合にも、一時的に気分転換型コーピングにより心身のダメージを外部に逃がすことで、ストレスが軽減されます。

ストレスコーピングを実施する際のポイント

ストレスコーピングを成功させるためには重要な2つのポイントが存在します。 そのポイントとは一体どのようなものなのでしょうか。

課題を客観的に把握する

まず、自身の課題を客観的に把握する事です。そのためには、周囲の人へ自身の課題について話す、相談する事が大切です。

ストレス反応によって心身ともに衰弱した状態では、分析力や判断力といったストレス対処能力は通常時に比べ低いものとなってしまいます。 そのような状態でストレス対処方法の検討を行い、効果的なコーピング方法がはたして見つかるでしょうか。

問題の全体像を正しく把握する事はもちろん、自分一人では考え付くことの出来なかった対処方法に出会うチャンスを増やすという意味でも、人への相談は非常に効果的なものであるといえます。

相談相手については家族や親友、同僚、上司、カウンセラー、心療内科のドクターなど相談したい内容と置かれている状況によって使い分けると良いでしょう。

主体性を持って行う

もう1つのポイントは、問題を解決したいという意思をしっかりと持ち、主体性をもって行うということです。

情動焦点型コーピングの概要でも触れましたが、ストレスコーピングでは肉体的ストレスや精神的ストレスをしっかりと認知し、それに対して向き合う姿勢を持つことが基本となります。

自分自身がしっかりと状況を理解し、自覚的にストレス対策を行うからこそストレスコーピングに効果が生まれるという事を今一度しっかりと覚えておきましょう。

マネジメントにおけるストレスコーピング

それでは、実際に職場でストレスコーピングを推進するにあたり、マネジメントとしてはどのような対策を実施すれば良いのか見てみましょう。

従業員に知識を提供する

まず、それぞれの従業員に対し、ストレスコーピングについての知識を提供する事です。定期的に研修やセミナーなどを開催し、ストレスの種類や、ストレスを放置する事で陥る状態、そしてストレスコーピングの具体的な手法などを詳しく伝えます。

それにより、一人ひとりがストレスに対する意識が高まり、結果的にモチベーションの向上や離職率の低下などにも繋がるでしょう。

【関連】ストレスマネジメントとは?コーピングとの違い、実施法、お薦め本までご紹介/ BizHint

メンター制度やコミュニケーションの推進

まだ社会人経験の浅い社員や、ストレスを感じていても言い出しにくい社員などに対しては、メンター制度で個別にケアしたり、日常会話やこまめな面談などを増やすなどして、コミュニケーションを促進する必要があります。

メンターや上司は、傾聴の姿勢を保ち、話しやすい雰囲気づくりを意識しましょう。

【関連】傾聴とは?傾聴力が必要な理由や効果・基本スキル&実施ポイントまで/ BizHint

ストレスチェックを実施する

平成27年に施行された「ストレスチェック制度」により、労働者数50名以上の企業において年に1度のストレスチェックが義務化されています。このストレスチェックとは、従業員に調査票の記入を促し、その結果によって本人のストレス状況を判断。必要によっては医師の面談を行う場合もあります。また、集団の結果を分析し、職場環境の改善にも役立てます。

ストレスチェックに関しては、義務化の有無に関わらず、以下の厚生労働省のサイトからもダウンロードできます。従業員のストレス度および職場環境を測るために、有効な手段であると言えます。

【関連】ストレスチェックダウンロード/厚生労働省
【関連】ストレスチェック制度とは?概要やチェックの流れ、罰則、助成金まで徹底解説/ BizHint

ストレスコーピングの参考本

ストレスコーピングについて更に知識を深めていくために、参考となる本をいくつか紹介させて頂きます。

「1日30秒」でできる 新しい自分の作り方

元女子シンクロナイズドスイミング選手で、10代の頃より日本代表として活躍し、ソウルオリンピックで銅メダルを獲得した田中ウルヴェ京氏。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士の資格も取得しています。

「1日30秒」という気軽に手に取りやすいタイトルと、日常的に行いやすい実践方法の数々が話題を呼び、ストレスコーピングの入門書として多くの人に支持されています。

【参考】「1日30秒」でできる 新しい自分の作り方:田中 ウルヴェ 京/フォレスト出版

ストレスに負けない技術-コーピングで仕事も人生もうまくいく!

こちらも同じく田中ウルヴェ京氏の著書。この本で同氏はストレスパターンを7つに分類し、それぞれの対処法を紹介しています。

  • イライラ型(焦燥型)
  • ビクビク型(不安型)
  • ムカムカ型(立腹型)
  • クヨクヨ型(後悔型)
  • ヘトヘト型(消耗型)
  • イジイジ型(内攻型)
  • ウツウツ型(憂鬱型)

感覚的に分かりやすい分類方法と、世界で戦う多くの選手を間近で見てきた田中ウルヴェ京氏の言葉の持つ説得力によって、難しく捉えがちなストレスコーピングの世界を分かりやすく、そして詳しく学ぶことができます。

【参考】ストレスに負けない技術-コーピングで仕事も人生もうまくいく!/Amazon

ワーキングストレスに向き合う力 ストレスコントロール手法<コーピング>でビジネスに強くなる

離婚専門の行政書士として多くの悩みや相談と向き合ってきた経験を活かし、ストレス対処コンサルタントとして様々な企業においてストレスコーピングの技術を教える研修や公演の講師も行っている坂上隆之氏。

コーピングをストレス対処スキルであるとしながらも、ただ単純に対処するだけではなく、自身の新たな力として活用していくという大胆な発想を提唱しています。

ストレスに向き合う時間や体力を無駄にしないという意識を持つことで、これまで以上に自覚を持ってストレスコーピングを行うことが出来るのではないでしょうか。

【参考】ワーキングストレスに向き合う力 ストレスコントロール手法<コーピング>でビジネスに強くなる:坂上隆之/日刊工業新聞

まとめ

  • ストレスは「ストレッサー」「認知」「ストレス反応」で構成されており、この要素ついて正しく理解することからストレスコーピングは始まる
  • ストレスコーピングの主な種類としては、ストレッサーそのものを認知させないようにする「問題焦点型コーピング」や、受け止め方を変える「情動焦点型コーピング」等がある
  • ストレスコーピングを実施する際には、自身の課題を客観的に把握すること、そして自覚的に行う事で効果が増幅される

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