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2018年11月13日(火)更新

留職

留職とは新興国の現地NPO団体へ社員を派遣し、本業で学んだ知識やスキル、経験などを活用しながら社会課題の解決に取り組む企業向けの研修プログラムです。多くの企業が注目し、導入している留職ですが、どのようなメリットを受けることができるのでしょうか。留職が必要とされている社会的背景と、留職が与える企業や参加者への影響などを解説していきます。

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留職とは

留職は、全ての社会人が仕事を通じ、自分の内側にある想いや情熱を表現することができる世界を目指して提唱された全く新しい形の研修プログラムです。

『留職』は『留学』という言葉がベースとなっており、知識や理論だけではなく現地の雰囲気を実感することで目的達成に大きく近づくことが可能となるという思いが込められています。

留職プログラムを提供しているNPO法人クロスフィールズの小沼大地代表は、留職を通じて企業と新興国のNPO団体を繋ぐことがゴールなのではなく、プログラムを実施する数ヶ月間が両組織にとって価値のある時間にしていく必要があると考えています。

それはつまり、留職が単なる社会貢献だけを目的としたものではなく、日本企業の成長や発展も意識して行われているということを示しているのです。  

注目される背景

留職がなぜここまで注目されることとなったのか、その背景について考えていきましょう。

組織の垣根を越えたリーダーの不在・人員不足

日本企業にとってリーダーの育成は長年に渡る大きな課題となっています。 次世代のリーダー育成に頭を抱える企業も多く見受けられますが、現時点ですでにリーダー不在となってしまっている深刻なケースも多々存在するのです。

人事担当者や経営者にリーダー育成を行う意思はある、しかし具体的にどこから取り掛かればいいか分からない。 このような事情により、リーダー育成が後回しになってしまっているのです。

【関連】次世代リーダーとは?どんな課題や育成研修があるのかご紹介 / BizHint HR

新規市場開拓の難航・現地理解の不足

グローバル化が急激に進む現代社会において、事業の拡大と海外進出は目を逸らすことのできない選択肢となっています。

しかし、国内だけを市場として活動を行う日本企業にとっては未知の領域であり、まだ多くの情報を持たない新興国などの地域に対しては市場の開拓が非常に難しく、時間とコストを割いたけれど失敗してしまったというケースも多くあります。

このような失敗の原因が現地に対する理解不足だということは分かるものの、その解決策までは見出すことができず、新規市場の開拓を諦めてしまっていた企業も少なくないでしょう。

【関連】グローバル経営とは?グローバル経営管理の課題も合わせてご紹介 / BizHint HR

組織に漂う閉塞感

いつもと同じ職場で、同じメンバーと、同じ仕事を行う。 イレギュラーの起きない安定した職場は生産性を大きく向上させるため、一見とても素晴らしい環境のようにも思えます。

しかし、変化の無い日々の中で新たな発見や気付きに出会えることは少なく、積極的に変化を取り入れてこなかった組織の中には閉塞感を漂わせているところもあるのです。

現時点では安定したサービスや商品を取得していても、ちょっとした時代の変化によって需要が急降下すれば、瞬く間に収益は激減してしまいます。

そのような状況に陥ってしまった際に組織の成長が完全に止まってしまっていたら、何の対応も出来ないまま大きなダメージを継続的に受けることになってしまうのです。

企業が導入するメリット

日本企業が抱える数々の問題が浮き彫りとなりましたが、留職を取り入れることによってどのような解決策を見出すことが出来るようになるのでしょうか。

リーダー育成

リーダー育成と一言でいっても、その教育方法は企業の求めるリーダー像によって違います。 ですが、多くの企業が求めるリーダー像はおおよそ同じものとなっており、以下のようなものがあげられております。

  • 海外進出の先頭に立つグローバルリーダーとしての役割
  • 部下やチームメンバーに道筋を示し、先導できる実行力
  • 他者だけではなく自己評価においても客観的に行うことができる分析力
  • 様々な課題に対して現実的な解決策を導き出せる判断力

この様々な要素を合わせたものがリーダーシップであり、次世代リーダーとして活躍出来る人材を育成したいと企業や人事は考えています。

しかし上層部の理想とは相反するように、日常業務の安定化がイレギュラーに対する対応力や反応感度を弱らせ、リーダー力を高めにくい環境を作り上げているのです。

それに対し、発展途上国の抱える社会問題は多岐に渡っており、一筋縄ではいかないものばかりとなっています。

これまでの知識や技術の活用による解決策を提案しようとしても、前提条件となる環境が整っていないことも多く臨機応変な対応を求められることから、実践的な力が問題解決のプロセスの中で自然と身に付いていくのです。

知らない土地を自分の足で歩き、住民達と関わりを持ちながら問題の原因を見極め、解決していくという経験は大きな自信となり、自分自身の中にあるリーダー力への信頼を高めることになります。

そのリーダー力は日本に戻った後も大きな力を発揮し、日々の業務に幅広く活かされることでしょう。

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現地理解

日本には古来より『習うより慣れろ』ということわざがあります。 どれだけ学習という形で情報や知識を蓄積しても、現状は刻一刻と変化をしているために実践力として大きな期待をすることは出来ないという意味の言葉ですが、日々大きな変化が起きている新興国においてはまさにこの言葉が当てはまるのではないでしょうか。

現地に立ち、自分自身の手足を使って情報を集めることによって、マーケティングでは吸い上げることの出来なかった現地の抱えている本当の問題や現地住民の想いに気付くことで、現地の状況を正しく把握して解決策を検討することが可能となるのです。

留職体験の中で手に入れた人脈や生きた情報は、企業がその国に進出する際に大きな道標となり、プロジェクトの成功を高めてくれることになるでしょう。

社内活性化

留職によりこれまで以上に広い視野を手に入れた人材が企業に戻ることは、職場で働く他の社員にとっても大きな刺激となるでしょう。

リーダー力を身につけた留職参加者の言葉には強い説得力が生まれ、これまで諦めていた多くの課題に再挑戦するきっかけを生み出します。

また、新たなプロジェクトを発足する際にも、その成功率を高めるための様々なアイディアやヒントを与えてくれます。 どのような状況においても決して諦めない不屈の精神はそう簡単に手に入れられるものではありません。

だからこそプロジェクトメンバーは留職先でそれを成し遂げてきた留職者の言動に信頼を寄せ、自分にもやればできるという希望を持ってプロジェクトに向き合うことが出来るのです。

「私も留職を行いたい」という新たな希望者が現れることによって、次なるリーダーを生み出していくことも可能となるでしょう。 成功体験が新しい成功体験を生み出すという好循環が作り出されることにより、社内の活性化が加速していくのです。

【関連】組織活性化とは?取り組みの方法・手法・施策および事例をご紹介 / BizHint HR

個人(従業員)が参加するメリット

留職には企業の肩書きを外した個人として参加することになります。 そのため、実際の留職現場では体験者本人にしか分からない、多くの不安と苦難が存在します。 しかし、この環境こそが先入観を取り除いた自由な発想を生み出す起爆剤になるのです。

  • 自発的に行動することの大切さ
  • なぜ働くのかという疑問に対する自分なりの答え
  • 自身の中に眠る才能や可能性の発掘

数々の出会いと挑戦から何を学び取るかは体験者自身に委ねられています。

しかし、留職体験が企業へ貢献するための能力を育てるだけではなく、体験者個人に対しても多くのメリットを与えていることは間違いないでしょう。

留職の流れ・内容

実際に留職プログラムを自社に取り入れようと考えた場合、どのようなプロセスを踏むことになるのでしょうか。 そして、留職プログラムはどのように行われていくのでしょうか。

互いの利益を追求するためのマッチング

留職プログラムに参加するためにはまずNPO法人クロスフィールズに連絡を行う必要があります。 そして、自社が留職プログラムに求めていることなどを伝えた上で、現地NPO法人とのマッチングを行うのです。

ここで忘れてはいけないのは、企業側の要望のみでマッチングが行われるわけではないということ。

留職は互いの利益を追求する目的を持つため、必ずしも自社にとって活動が行いやすい環境が整っているわけではありません。

留職による高い効果を期待するためにも、人事や経営者側から社員へ留職体験を勧める際にはこの点についてしっかりと説明を行い、プログラムに対する理解を深めておく必要があるでしょう。

必要に応じてリモートチームを結成

留職は基本的に個人または少人数で行うものですが、現地で活動する留職者へのサポートを目的としたリモートチームを結成する場合もあります。

チームメンバーは異なる業種から選出することが一般的であり、それぞれの専門分野の知識や経験を活かし留職者のサポートを行うことになります。

留職者の原体験をリモートチームへと発信することにより、国内に居ながらも擬似的な留職体験を行うことができ、同じ問題意識を持ちながら社会課題解決へと突き進むことで未知の問題に向き合う際のチームコミュニケーションが図れます。

また、留職先の現状を正しく把握し、正しく伝える能力も鍛えられるでしょう。

事前研修により派遣先への理解を深める

留職体験を行う派遣者が決定したら、国内にて2~3時間程度の事前研修を4回行うこととなります。

事前研修では派遣先となるNPO団体の事業内容を確認し、国や地域が抱えている社会課題についての理解を深めていきます。 また同時に、自身がどのような活動を行うことによって社会課題解決を図れるのかという仮説構築も行います。

事前研修の前段階として、留職者は留職を通じて自身が取得したいスキルや留職を行うにあたっての成長目標について設定しておく必要があるでしょう。

留職者に関する業務の再分配

留職プログラムへ参加により、留職者は日々の業務から数ヶ月という長期間外れることとなるため、組織内では留職者が行う予定であった業務の再分配や、担当業務の代理責任者を立てるなどの準備が必要となります。

参加することになる留職プログラムがどのくらいの規模と期間を想定しているのかについて把握し、対応しておかなければ留職開始後に現場を混乱させてしまうことになるでしょう。

留職プログラムの実施

留職者がプログラム開催国に到着し、現地のNPO団体と合流するといよいよ留職プログラムが開始します。 最初の一週間はNPO法人クロスフィールズのスタッフが同行し、留職者と現地のNPO団体のコミュニケーションを見守ることになります。

この一週間の間に状況の把握を行い、現在抱えている社会的課題を浮き彫りにすることで、これからの数ヶ月をかけて行っていくべき業務内容(Scope of Work)を明確なものにしていくのです。

現地NPO団体から情報を得る中で新たな問題が浮上し、解決策の再検討を迫られることもあるでしょう。 また、時には風習の違いから解決策に対して強い反対意見が出ることもあります。

しかし、これこそが留職を通じて見ることのできる物事の本質であり、プログラム開催国の本当の姿なのです。

現状に対して全力で向き合うからこそ、現地の方々に心から喜んでもらえる。 これが先進国である日本で活躍する企業の社会的使命であり、社会貢献活動だといえるのではないでしょうか。

事後研修による本業への活用検討

派遣先での活動を終えて帰国した後も留職プログラムは続きます。 事後研修は留職体験による成果を企業全体へ反映させるための重要な工程なのです。

帰国後2~3回に渡って行われる事後講習の中で、留職者の学んだ経験や気付いたことなどを振り返り、本業にどう活かすことが出来るのかということについて検討し、落とし込みを行います。 また、社内関係者に向けた報告会などもプログラム内で行われます。

事前研修にて留職先での活動イメージをしっかりと行い、現地で想像していたものとの違いに戸惑いながらも全力で向き合い、事後研修として経験を振り返ることで確かなスキルへと完成させていく。 このようなプロセスにより、次代を担う人材育成が行われるのです。

海外での先行『留職』事例

日本で大きな注目を浴びている留職ですが、1990年以降から海外の一部企業によって先行的な試みとして同様の活動が行われていました。 その活動内容はどのようなものだったのでしょうか。

サムスン電子

サムスン電子は大韓民国最大の総合家電メーカーであり、電子部品や電子製品の分野においても世界トップレベルの企業です。

そんなサムスン電子が1990年に導入したのが『地域専門家制度』。 現在もなお続いている地域専門家制度は、他の企業が真似をすることの出来ない大きな特徴を持っているのです。

現地社会に溶け込むことで見えてくるもの

その特徴とは、一年間という期間だけを設定して一切の業務指令を与えないまま単身で現地に送り込むというもの。 そのため、対象者は自力で家探しを行い、日々の生活の中で言語や風習を学び、人との繋がりを作っていくことになるのです。

この地域専門家制度には、特別な業務を行わせるのではなく現地社会に溶け込むことでより本質的な部分での理解を深め、その地域に進出した際の担当者として育成するという意図があります。

現地社会に溶け込むことにより生み出されたアイディア

地域専門家制度を通じてインドに派遣されたある社員は、巨大なスラム地域にて住み込みながらニーズを探ることを決意しました。

そして、日々の生活の中でスラム地域の住民達にとって一番の娯楽がテレビでのスポーツ観戦であるということを学びました。

しかし、スラム地域という環境上、列車や車両が通り過ぎる際に発生する騒音によってテレビ音声が一時的に聞き取れなくなるという問題が生じていたのです。

インドという国を表面上だけ観察しただけでは見逃してしまいそうな些細な事象ですが、住民達にとっては長年悩み続けてきた深刻な問題でした。

それに気付いた社員は、押している間だけ音量が最大になるボタンをリモコンに搭載した新商品を開発したのです。

小さな発見から生まれたリモコンは大ヒット商品となり、スラム地域の住民達からも「自分達の生活をよく理解してくれている」という高い評価を得ることが出来たのでした。

【参考】サムスン、日本を“大きく”超えた強さの秘密 地域専門家制度、驚異の宣伝方法/Business Journal
【参考】サムスンの戦略的マネジメント

IBM

単身で現地へ送り込み、生活環境に溶け込ませるという手段を通じてニーズの洗い出しと市場進出への地盤固めを図ったサムスン電子に対し、IBMは10人程度のグループを組んで現地へ入り、自社の持つICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を用いて問題を解決するCSC(Corporate Service Corps)という取り組みを2008年に開始しました。

IBM版青年海外協力隊

CSCはIBM版青年海外協力隊とも呼ばれており、IBMのビジネス戦略上において重要な地域となるアフリカ諸国や中南米を中心に実施されています。 活動期間は1ヶ月と短い設定になっているためコスト面での負担は小さく、グループ単位での活動によりチームワーク力の向上にも期待ができます。 しかし、CSCには更に大きな3つの狙いがあったのです。

CSCの3つの狙い

CSCの3つの狙いとは以下のものです。

  • 新興国の現状を深く理解したリーダーの育成
  • 次世代リーダーとして現地住民との親交を深める
  • ボランティア活動を通じてビジネスチャンスを探る

このように明確な目標があったからこそ、現地に派遣されたグループメンバー達は短期間のうちに大きな成果を残すことが出来たのです。

社会的企業としての活動が本業への利益を生み出す

CSCの取り組みにおいて新興国との最初の接点はボランティア活動となります。

無償にも関わらず自社の技術者達を惜しげもなく投入する姿勢は社会的企業そのものですが、それらの活動は全て企業の利益にしっかりとリンクしているのです。

大きなビジネスチャンスを生み出したボランティア活動の事例を1つ紹介致しましょう。

ブランド構築を成功させたカルテの電子化

IBMからCSCとしてナイジェリアのクロスリバー州にグループが派遣された時の話です。 当時、クロスリバー州の保健所では情報管理が正しく行われておらず、再診であっても前回受診時の情報が確認できないため初診と同じ扱いになるという問題が起きていました。

そこで派遣されたグループはカルテを電子化し、簡単かつ正確なシステムを作成したのです。 作成したシステムは高く評価され、有償で州の全ての保健所に電子カルテを導入して欲しいというナイジェリア保健省からの依頼を受けることになりました。

こうして見事にCSCでの活動をビジネスチャンスへと繋げることに成功したのです。

その後も評判を聞きつけた他の州からの依頼が殺到し、IBMはアフリカの実情をよく理解している企業として確かなブランド力を確立することとなりました。

アメリカ全土で爆発的な広がりをみせているICV

現地の行政機関やNPOを通じて効率的にニーズを吸い上げることにより、短期間にも関わらず大きな成果を上げることに成功したCSCを自社にも取り入れようと、アメリカ国内の企業が開始した様々な活動を総称してICV(International Cooperate Volunteering)と呼びます。

企業から派遣された人材が新興国において本業のスキルを活用して現地の社会課題解決に取り組む。 この活動は、今日本で注目されている留職と非常によく似た性質を持っているのです。 ICVを実施している企業には以下のような大手企業も含まれています。

  • シスコシステムズ
  • スターバックス
  • ティンバーランド
  • ファイザー
  • ペプシコ

ICVの実施企業は毎年急速に増えており、今後もその勢いは加速し続けると予測されます。

【参考】IBM 社会貢献 コーポレート・サービス・コー - Japan
【参考】サムスンを超えるIBMの人材育成/東洋経済ONLINE

国内企業の導入事例

新興国での社会課題解決を通じて人材育成を目指す留職ですが、国内ではどのような企業が導入しているのでしょうか。

代表的な導入企業

NPO法人クロスフィールズの行っている留職プログラムを導入している主な企業は以下の通りとなります。

  • アサヒビール株式会社
  • アステラス製薬株式会社
  • テルモ株式会社
  • ハウス食品グループ本社株式会社
  • パナソニック株式会社
  • 株式会社NHKメディアテクノロジー
  • 株式会社トライアンフ
  • 株式会社ベネッセコーポレーション
  • 株式会社電通国際情報サービス
  • 株式会社日立システムズ
  • 株式会社日立ソリューションズ
  • 株式会社日立ハイテクノロジーズ
  • 株式会社日立製作所
  • 株式会社博報堂
  • 日産自動車株式会社
  • 日本たばこ産業株式会社
  • 日本電気株式会社

【参考】NPO法人クロスフィールズ

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社からインドネシアの村落部に派遣されることになった二名の留職者は、1ヶ月間という短い期間の中で水力発電における電力自動測定システムの開発と設置を目指しました。

しかし、このプロジェクトを完遂させるには1ヶ月という期間では到底足りません。 そこで、社会課題解決に向けた仮説を立てる事前講習の段階で社内の有識者の力を借りてシステムの開発を行い、現地に持ち込んで設置する方法を選びました。

対等な立場から物事に向き合う大切さ

いざ留職を開始すると様々な問題点が表面化し、現地のリソース不足などにより想定していたように作業を進めることが出来ませんでした。 しかも、自分の持つスキルでは対処することが難しいため、現地住民の協力無くしてはシステムの設置は実現不可能となったのです。

多くの人々の協力によって目標を達成することができた留職者の二人は、自分達の心の隅にあった「私達は教えてあげる立場なんだ」という考え方を改め、パートナーとして同じ目線で向き合うことで心を開いてもらうことが出来たと振り返っています。

また、何事に対しても理解しようとする姿勢こそが大切であり、チャレンジなのだと学んだそうです。

【参考】現地での対話を通じてこそ社会課題の本質が見える/NPO法人クロスフィールズ

株式会社日立ハイテクノロジーズ

株式会社日立ハイテクノロジーズからカンボジアのプノンペンに派遣された当時28歳の留職者は、グローバルビジネスリーダーへ成長したいというしっかりとした目標を掲げ、『主体性』『リーダーシップ力』『グローバル社会におけるコミュニケーション力』の3つを手に入れるために留職へ参加しました。

本業で得たスキルや知識が社会課題を解決へと導く

児童買春が大きな社会問題となっているカンボジアでは、貧困からの脱出をサポートするため多くのNGO(Non-Governmental Organizations=非政府組織)が問題解決に向けて日々活動を行っています。

このような背景から、農村女性たちの手工芸品製造現場において発生している素材の調達方法や管理方法、より効率的な製造方法などの課題に向き合うこととなったのです。

株式会社日立ハイテクノロジーズの営業本部に所属していた留職者は本業で身につけた様々なスキルを存分に発揮し、見事に全ての課題を解決させることが出来ました。

留職体験が現地にもたらした数々の影響

留職者の活躍に対し、受け入れ先のNGOは「コミュニティに深く入り込んで課題を発見し、現地のスタッフと議論を重ねながら質の高い仕組みを作ってくれた。

特に、最後まであきらめない姿勢はとても尊敬している。」と高い評価を行うとともに、「今後も是非このような優秀な人材を受け入れたい。」と留職プログラムに継続して参加していく意思を示しました。

留職者が得ることの出来た多くの原体験

一方の留職者は、この留職プログラムから以下のようなことを学んだといいます。

  • 自ら現場に足を運んで課題を発見しなければ、本当に必要な提案は行えない
  • 解決への手順を一方的に伝えるのではなく、共に課題に向き合い、一緒に考える
  • 仕事に巻き込む時は、参加するメリットを示すだけではなく相手の感情にも配慮する
  • 曖昧な理解のまま返事をしても相手にはすぐに気付かれる

いずれも理屈では分かっていながら実行することが難しい内容です。 しかし、それを行動に移さなければ課題解決が行えないのが留職なのです。

留職体験を終えた留職者は「自分の目指すリーダー像がより明確になった」という感想を述べています。

自分自身が目指す社会人像を明確にすることで仕事に対するモチベーションは更に高まり、意識改革の第一歩を踏み出すことにも繋がるのです。 多くの原体験を与えてくれる留職は、企業だけではなく社員個人も注目するべき良質な実践型人材育成プログラムであるといえるでしょう。

【参考】現地NGOと協業する中で見えてきた理想とするリーダーシップ/NPO法人クロスフィールズ

株式会社ベネッセコーポレーション

児童教育のプロフェッショナルである株式会社ベネッセコーポレーションからインドネシアのジャカルタとマカッサルに派遣された留職者は、幼児教育の活性化に5ヶ月かけて取り組むこととなりました。

現地において最初にぶつかった壁は、情報量の圧倒的な差です。 別部署により調達された情報を元に定量的な分析などを行っていた日本での業務とは異なり、留職では全ての情報を自分自身の手と足で集める必要がありました。

右も左も分からない土地で自発的に行動しなければならない。 それは決して簡単なことではなく、留職中に多くの苦労をしたといいます。 しかし、この経験があったからこそ、自分の力で集めた情報でなければ解決できない問題もあることに気付けたと留職者は振り返っています。  

最新が必ずしも最善ではない

株式会社ベネッセコーポレーションでは毎年様々な学習用機器やコンテンツを製作し、発表しています。

開発途上国を中心として世界人口の約7割を占めるといわれているBOP層(Base of the Economic Pyramid=年間所得が購買力平価ベースで3000ドル以下の低所得層)においてタブレット学習が大きな注目を集めているという現状を把握していた留職者は、最新技術こそが現地の人々に必要とされているものであり、問題を解決する最善の方法であると考えていました。

しかし、実際に求められていたものは最新技術そのものではなく、その技術やコンテンツを現地の人たちの生活に馴染ませ、誰でも簡単に扱うことのできるレベルに調整して提供することだったのです。

自分が最善であると考えるものが相手にとっても最善であるとは限らない。 実際に現場を見て、人々から話を聞くことで留職者の発想は以前にも増して柔軟なものへと成長していきました。

リモートチームとの原体験の共有

留職者が会得した需要に対する正しい理解は、日本からサポートを行っていたリモートチームにも大きな刺激を与えました。

留職開始当初、株式会社ベネッセコーポレーションの持つ様々な最新技術をフル活用して現地の幼児教育を活性化させてあげようと提案するリモートチームのメンバーと、生活環境や習慣に馴染ませる形で新たな教育方法を提供してあげたいと考える留職者との間には見解の相違が生じていました。

しかし、留職者自身も渡航前にはリモートチームと同様の仮説を構築していたため、見解の相違が先入観によるものだとすぐに見抜き、留職先の現状や人々の想いを今一度詳細に伝えることによって理解を深めてもらえるよう努めたのです。

その結果、日本にいるリモートチームのメンバーも留職者が向き合っている課題を正しく把握することができ、効果的なサポートを行うことに成功しました。

留職者自身も渡航前には同様の仮説を構築していたため、これこそが現場を知らないことによる先入観だったのだと気付くことができ、メンバーに現状を伝えることで日本にいるだけでは見えない事実がたくさんあるという重要な発見を共有することに成功したのです。

【参考】「世界の教育に貢献したい―」呼び覚まされる自分の想い/NPO法人クロスフィールズ

まとめ

  • 留職は次世代リーダー育成の手段として多くの企業から注目されている
  • 留職プログラムでは社会貢献活動を行いながら多くの原体験を得ることができる
  • 留職経験を組織内で共有することにより組織全体に刺激と活力を与えることができる

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