Off-JT
Off-JTは、職場外で行う教育訓練のことです。ビジネスマナーから高度な専門分野まで体系的に学べる反面、研修時間の確保や業務への応用が難しいといった特徴があるため、メリットとデメリットを把握した上で目的に応じて選択する必要があります。本記事では、OJTとの違いやメリット・デメリット、教育効果を高めるポイントについてご紹介します。
「Off-JT」とは
「Off-JT(Off The Job Training)」とは、職場から離れた場所で、業務遂行に必要な基本となる知識・スキルを体系的に学習するために行う教育訓練のことです。「職場外訓練」とも呼ばれます。
Off-JTは階層別・職能別・目的別に実施されるケースが一般的です。
- 新入社員に対するビジネスマナー研修
- 中堅社員向けのリーダーシップ研修
- 新任の管理職に対するマネジメント研修 など
社内で開発した研修を行うケースもありますが、外部の教育研修会社に依頼する集合研修がほとんどです。
Off-JTの実施状況
厚生労働省の平成29年度「能力開発基本調査」によると、正社員を対象にOff-JTを実施した事業所は75.4%と増加傾向にあります。
【OFF-JTを実施した事業所】
【出典】厚生労働省:平成29年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
階層別にみると、新入社員では62.9%、中堅社員は62.7%、管理職は52.5%に対して研修を行っています。
【OFF-JTの実施状況(職層別 正社員)】
【出典】厚生労働省:平成29年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
企業別・階層別どちらもOff-JTは毎年増加していることから、多くの企業が業務に必要な基礎を習得させるために実施していることが分かります。
Off-JTのメリット
Off-JTは有効な教育研修であり、実施することによっていくつかのメリットをもたらします。
専門的な知識の習得
Off-JTでは、その企業の実務からひとまず離れ、一般化された知識や技術などを学ぶことにより、その技術や業務が本来どのような意味を持つかなどを体系立てて習得することができます。
研修や訓練への集中
日々の業務に追われ、その必要性は感じていながらなかなか勉強できない最先端技術やノウハウなどを、職場環境に左右されず集中的に習得することができます。
集団への訓練実施
Off-JTは、実質的に個別ではなく集団研修となることがほとんどです。対象者一同に対して同じ研修・訓練を行うため、個々への「研修の濃淡」が起こりづらくなります。
Off-JTのデメリット
職場から離れた研修ゆえに、いくつかのデメリットも存在します。
業務への落とし込みが困難
Off-JTは、その企業の実務から離れることで普段取得できないものを学ぶわけですが、研修後には当然学んだものを実務に反映しなければなりません。
Off-JTでは性格上、外部機関に研修を依頼又は委託する場合が多々ありますが、外部機関に研修成果の実務への落とし込みまで委ねることは(企業内事情の流失の可能性も含めて)難しく、研修生自らが実務への落とし込みを考えなければならない場合も少なくありません。研修成果が必ずしも実務に活かされない場合があり得るわけです。
費用の発生
同様に外部機関を利用するOff-JTでは、外部機関に依頼又は委託する費用が発生します。また、社外で実施した場合には会場費が発生します。研修の中身にもよりますが、こうした費用は年々増加する傾向です。
厚生労働省の平成29年度「能力開発基本調査」では、過去3年間にOFF-JTに支出した費用の実績が「増加した」とする企業は25.8%、「増減なし」とする企業が24.0%となっています。
【OFF-JT及び自己啓発支援費用の実績等 過去・今後3年間(正社員)】
【出典】厚生労働省:平成29年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
「OJT」とは
「OJT(On-The-Job Training)」は、職場で実務に携わりながら仕事に必要な知識・スキルの習得を目的に、先輩や上司が指導する教育訓練のことです。「職場内訓練」とも呼ばれます。
OJTのメリット
OJTを行うメリットは以下が挙げられます。
- 現場の戦力として必要な知識やスキルをストレートに習得できる人材育成方法
- 業務上行われるため個別に指導する機会が多い
- 職場のコミュニケーションが活性化される
- Off-JTに比べてコストが安く、手軽に取り組める
- 指導者の業務理解が促進され、指導力が向上する
OJTは職場内で取り組める人材育成手法であることから、低コストで業務に役立つ内容について柔軟な指導ができることがメリットです。
OJTのデメリット
OJTを行うデメリットとしては以下が挙げられます。
- 実務の中で行われるため、体系的に学ぶことが困難
- OJTによる習得の度合いは指導者の知識・スキルの量や能力によってばらつきがある
- 指導者や所属部署の業務負担が増える
- 教わる側の知識・スキルレベルに応じた指導が必要なため、教育訓練する範囲を固定できない
- 業務に必要な知識・スキルの習得に限定される
OJTでは、指導による効果は指導者の能力に依存する部分が大きくなります。また、個別対応が可能な反面、指導する範囲が固定できないため、指導者や所属部署の業務負担が大きくなることがデメリットです。
【関連】OJTの進め方と成果をだすためのポイントを、失敗例も交えながら解説/BizHint
Off-JTとOJTの違い
ここまでご紹介してきたOff-JTとOJTの違いを表にしたものが、以下になります。
項目 | Off-JT | OJT |
---|---|---|
目的 | 業務の基本となる知識を体系的に学習する | 業務に必要な知識・スキルを習得する |
実施場所 | 職場から離れた場所 | 職場内 |
費用 | 研修の受講料 受講者の交通費など |
実質的な費用はかからない |
実施対象 | 階層別・職能別・目的別の対象者として選抜された人 | 業務未経験者や経験の浅い人 |
実施方法 | 集団で受講する | 一対一で指導を受ける |
習得できるスキル | 業務に必要な基礎知識 専門的な知識・スキル |
業務遂行のための知識・スキル |
Off-JTとOJTではそれぞれ強みが異なるため、活用の際には目的に応じて使い分るなどの工夫が必要です。
例えば、Off-JTは体系的な学習が必要な場合や大人数で受講した方が効果的といったケースが考えられます。一方OJTは、実務に即した内容や経験しながら繰り返し教育訓練を行うことが効果的なケースが向いているといえるでしょう。
従業員教育の効果を高めるポイント
ここでは、昨今のビジネス環境の変化に対応できるなど、効果的な人材育成に必要なポイントについてご紹介します。
3つの人材育成手法を理解する
主な人材育成の手法として一般的なのは、以下の3つです。
- OJT :実践的で業務経験を通した学習と指導
- Off-JT :役職や専門分野など目的に応じて体系的に学ぶ
- SD(自己啓発) :業務時間外に自主的に学んで仕事に活かす
最適な人材育成を行うためには、3つの手法それぞれのメリット・デメリットをよく把握した上で、目的に応じた選択をすることが重要です。
OJTとOff-JTの連携
人材不足や働き方改革で生産性向上が求められるなか、人材育成の必要性は認識できているもののそれにかけられる時間が限られているのが現実です。効率的な人材育成にはどちらか一方だけではなく、それぞれの強みを活かしたOff-JTとOJTの連携が効果的です。
例えばOff-JTで仕事に必要な基礎を体系的に学び、業務で実践しながらOJTを受けて学びを深め、応用力をつけていくといった活用ができます。こうした相互補完した活用によって教育効果も高まります。
Off-JTの重要性を理解する
新たな役職に就くとき、あるいは未経験の業務に携わるなど、仕事の土台づくりが必要な場合にはOff-JTが最適です。
業務の基礎となる知識・スキルがあれば、繁忙期などでOJTの実施が困難な場合に短時間のOJTで済むなど、指導者の業務負担を小さくすることができます。
まとめ
- Off-JTは、仕事に必要な知識・スキルを職場外で行われる教育訓練によって習得する人材育成方法です。
- Off-JTのメリットは、階層別・職能別など目的に応じて体系的に学習できることです。一方デメリットは、習得内容を業務に反映しにくく研修時間の確保が必要といった点があります。
- ビジネス変化の速さに対応した人材育成には、OFF-JT・OJT・OJDの特長を生かした使い分や、組み合わせによる相乗効果を狙うなど目的に応じて活用することが重要です。
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