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2017年12月9日(土)更新

リカレント教育

リカレント教育とは、生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システムです。個人が変化し続ける社会に適応するためには、生涯学び続けることが必要であると考えます。近年働き方が多様化する日本でも注目を集めています。ここでは、リカレント教育の概念と人事面における課題、そしてリカレント教育の具体的事例をご紹介します。

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1. リカレント教育とは

まず、リカレント教育の概念がどのようなものかご説明します。

リカレント教育とは?

リカレント教育とは、スウェーデンの経済学者であるレーンが初めに提唱し、1970年代に経済協力開発機構(OECD)で取り上げられ、国際的に知られるようになった生涯教育構想です。義務教育や基礎教育を終えて労働に従事する職業人になってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムを指します。

リカレント(recurrent)は、反復、循環、回帰を意味する言葉であり、日本では回帰教育や循環教育と訳されることもあります。急速に変化する社会に適応していくためには、教育は人生の初期だけで終わりではなく、生涯にわたり続けていくことが重要であり、必要に応じて個人が就労と交互に行うことが望ましいと提言しています。

欧米のリカレント教育

近年世界的に注目を集めているリカレント教育ですが、実際の取り組み状況は各国によって異なります。特に欧米と日本では、社会的慣行の影響もあり、状況の差異は大きくなっています。

欧米は、本来のリカレント教育の概念に近い取り組みが進んでいます。もともと欧米の労働市場は流動性が高く、キャリアアップのために社会人になってから教育機関で学習するシステムを取り入れやすい状況にありました。欧米のリカレント教育は、仕事をし始めてからも、学習機会が必要となった場合は、比較的長期間にわたって正規の学生として就学することを推奨しています。個人の職業技術や知識を向上するために、フルタイムの就学とフルタイムの就労を交互に繰り返すことができます。

リカレント教育の取り組みの具体例としては、スウェーデン、フランス、イタリア、ベルギーなどの有給教育制度、アメリカのコミュニティカレッジなどが挙げられます。

日本のリカレント教育

一方日本では、高度経済成長期を経て社会的に長期雇用の慣行があるため、社会人になってから教育機関にもう一度戻って学習するというというシステムは馴染みにくい状況となっています。仕事に必要な技術や知識は、キャリアを中断して外部で学ぶのではなく、就職した企業内で習得していくのが通例です。

日本においても、転職でのキャリアアップを目指す人が増加するなど働き方が多様化しており、キャリアアップに必要なスキルを身につける方法としてリカレント教育が注目されています。しかし、本来のリカレント教育の概念のように正規の学生としてキャリアを中断して就学することは難しい現状があります。そのため、日本ではリカレント教育の概念が諸外国よりも広義に解釈されており、企業で働きながら学んだり、仕事でなく生きがいのために学んだり、学校以外の場で学んだりする場合も含む言葉として使われています。

日本におけるリカレント教育の取り組みの具体例としては、大学の社会人入学制度、社会人特別選抜制度、科目等履修生制度、夜間部・昼夜開講制度、通信教育、公開講座、専門職大学院、サテライトキャンパスなどが挙げられます。高等学校や専門学校、高等専門学校でも、公開講座という形でリカレント教育の取り組みを行なっている学校もあります。

2. 日本のリカレント教育の必要性と課題

次に、日本のリカレント教育の課題について確認します。

社会的要因によるリカレント教育の必要性の高まり

先述したように、長期雇用が慣行となっている日本でも、近年はリカレント教育の重要性が認知され始めています。背景としては、転職でのキャリアアップや女性の社会進出の増加によって、職業技術や知識を外部の教育機関で学習したいというニーズが出てきたことが考えられます。

男性中心の長期雇用が前提であれば、企業内教育のみに依存していても、働いていく中で自然と仕事上必要な知識や技術が身についていきました。しかし、転職を前提とし、短期間で企業を変えていったり、女性が産休育休を挟んでキャリアを積んでいったりするのであれば、企業内教育で継続的に仕事上必要な技術や知識を身につけることは難しくなります。自分のキャリアパスに合わせて、自ら学習機会を作ることが求められます。

リカレント教育を受け入れる環境整備が課題

このように企業内教育の穴を埋め、学習ニーズを満たすシステムとして、リカレント教育は注目されています。ただ、実際に日本でリカレント教育を実践していくためには多くの課題を解決する必要があります。

例えば、日本におけるリカレント教育に関する公的な補助や支援制度、関係機関の連携は未発達な部分が多い上に情報も少なく、労働を中断して教育に参加することが難しい現状があります。欧米のような有給教育制度がある企業は、日本ではまだ多くはありません。リカレント教育の機会が得られたとしても、教育費用が増大した場合の行政からの支援や給付金が少なく、学習者の負担が大きくなるリスクも懸念されます。

そして、社会人が受講できる教育機関や生涯学習関連機関、カリキュラムも未だ不十分と言えます。キャリアアップとしてリカレント教育のシステムを活用することは、日本の一般的な社会人にとってはハードルが高い状況となっています。

現在、文部科学省や地方自治体では、生涯学習審議会や生涯学習センターなどを設置し、「生涯学習社会」の実現に向けて動いている流れがあります。今後社会人が学びやすい環境が整備されていくのか注目されます。

3. 日本のリカレント教育の事例

日本のリカレント教育はまだ課題が多い状況にありますが、一部には積極的に取り組んでいる教育機関が存在します。最後に、日本のリカレント教育を推進している事例を5つご紹介します。

ここで紹介する他にも、生涯学習情報をホームページで提供している地方自治体も数多く存在します。例えば、愛知県はリカレント教育の振興方策を審議し、ホームページで情報提供しています。興味がある場合には自分の住んでいる地域を調べてみることがおすすめです。

日本女子大学

日本女子大学のリカレント教育過程は、文部科学省の2007年度「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採用された「キャリアブレーク中の女子大学卒業生のためのリカレント教育・再就職あっせんシステム」を前身としています。

2010年に文部科学省の委託を離れ、現在は日本女子大学が独自で運営しており、1年間を通して語学や社会保険労務士の資格取得など女性のキャリアアップに役立つカリキュラムを学ぶことができます。

社会の変化に適応するために、大学卒業後も学べる場所を提供する日本初のリカレント教育課程として、現在まで多くの卒業生を輩出しています。学習成果を活かした再就職支援も手厚く、高い就職率を誇り、多方面で現在注目を集めるプログラムです。

日本女子大学 リカレント教育課程

明治大学

明治大学は、生涯学習の拠点として「明治大学リバティアカデミー」を設置しています。明治大学の知的財産を地域社会に還元することを目的とし、駿河キャンパス、和泉キャンパス、生田キャンパス、中野キャンパス、黒川農場の5つの場所で年間400を超える講座を開設しています。

講座の内容は、ビジネスや語学、資格取得など幅広く、これまで約2万人が学んできました。考古学学習講座や世界の民族音楽に触れ合う講座など、自分の興味関心を伸ばすことができるプログラムも数多く存在します。

講座は、3,000円の会員になることで受講できます。法人優待制度があるので、企業の人材育成の一環として企業単位で会員となり、社員のスキルアップに活かすことも有効です。

明治大学リバティアカデミー

放送大学

放送大学は、日本の生涯学習の中核を担っていると言っても過言ではありません。これまでに130万人以上が学び、現在の在籍者数は9万人以上と言われています。年齢層も幅広く、30代と40代を中心とし、10代の若者から90代の高齢者まで学んでいます。

学びたい人がいつでも学ぶことができる「開かれた大学」を目指し、基本はテレビやラジオ、インターネットで講義を受講することができます。学生になることで、いつでも好きな時間に自宅で学習できるため、忙しい社会人も取り組みやすくなっています。全国57ヶ所にある学習センターとサテライトスペースの施設で、教員から直接講義を受けることも可能です。

大卒資格の取得や大学院修了、その他様々な資格取得を目指すことができる豊富なカリキュラムが魅力となっています。

放送大学

筑波大学

筑波大学 東京キャンパス社会人大学院は、東京都文京区に設置されている社会人のための大学院です。主に平日の夜間と土曜の昼間を使って授業が開講されるため、社会人がフルタイムの仕事をしていても大学院に通うことができます。2つの研究科に10の選考とコースが用意されており、いずれも本格的な研究や学習を行うことが可能です。

ビジネス科学研究科では、経営システムや法曹関連、人間総合化学研究科では、カウンセリングやスポーツ健康システムマネジメントなどの分野が開講されています。各選考それぞれ募集定員が決まっているため、入学するためには入学試験に合格することが求められます。

筑波大学 東京キャンパス社会人大学院(夜間)

グロービズ経営大学院

グロービズ経営大学院は、MBA(経営学修士)に強みを持つ専門職大学院です。アメリカにおいてMBAは、経営幹部になるために必須の修士号と言われており、年間7万から10万人が取得しているとされます。

MBAのプログラムでは、経営に必要な知識や能力を習得することができます。グロービズ経営大学院は、忙しい社会人でもMBA取得のために学び続けることができるよう、平日の夜間と週末を使って講義が開かれます。また、通学とオンラインどちらか学び方を選ぶことができ、オンラインの場合でもリアルタイムでディスカッションに参加することができます。

また、経営研究科経営専攻は厚生労働大臣より専門的・実践的な教育訓練講座として認められているため、条件を満たせば最大で96万円の給付金を受給することができます。教育資金のサポートがあるのは嬉しいポイントです。

グロービズ経営大学院

4. まとめ

  • リカレント教育とは、1970年代から国際的に知られるようになった生涯教育構想である。急速に変化する社会に適応するために、義務教育が終わり社会に出てからも、個人が就学と就労を交互に行いながら、仕事に必要な知識や技術を学び続けることが望ましいと提唱している。
  • 労働市場が流動的な欧米では、リカレント教育の取り組みは進展している。リカレント教育の本来の意味通り、個人が仕事に必要な知識や技術を取得するために、フルタイムの就学とフルタイムの就労を繰り返すことができる環境が整備されつつある。
  • 一方日本では、働き方が多様化する中でリカレント教育の有用性は認知されつつあるものの、長期雇用の慣行があるため、環境の整備は未熟である。現状は、働きながら学んだり、生きがいのために学んだりできる社会人大学院や通信教育が、学習活動の場として活発に活用されている。

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