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2019年1月20日(日)更新

リカレント教育

リカレント教育とは、生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システムです。個人が変化し続ける社会に適応するためには、生涯学び続けることが必要であると考えます。近年働き方が多様化する日本でも注目を集めています。ここでは、リカレント教育の概念と人事面における課題、そしてリカレント教育の具体的事例をご紹介します。

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リカレント教育とは

リカレント教育とは、義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムを指します。スウェーデンの経済学者であるレーンが初めに提唱し、1970年代に経済協力開発機構(OECD)で取り上げられ、国際的に知られるようになった 生涯教育構想 です。

リカレント(recurrent)は、反復、循環、回帰を意味する言葉であり、日本では回帰教育や循環教育と訳されることもあります。急速に変化する社会に適応していくためには、教育は人生の初期だけで終わりではなく、生涯にわたり続けていくことが重要であり、必要に応じて個人が就労と交互に行うことが望ましいと提言しています。

働き方改革や人づくり革命の中でも重要施策のひとつとされており、現在日本でも注目を集めているワードです。

【関連】働き方改革とは?必要となった背景や実現会議と実行計画、事例まで徹底解説 / BizHint

リカレント教育のメリット

リカレント教育のメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 教育を受ける目的や対象が明確なため、学習意欲の高さが習得効果の向上にも繋がる
  • 学び直しによってより深められた専門的な知識や知見を仕事に活かすことができる
  • スキルアップやキャリアアップに繋がるほか、新たなキャリアに挑戦するきっかけになる
  • 共に学ぶ仲間や教育者との人脈が刺激となって自己成長を促す

社会人経験を経てからのリカレント教育は、学習効果による自己成長が仕事に直結するメリットがあります。具体的には、スキルアップによる生産性向上や専門分野へのキャリアアップ、新たな人脈による刺激や意欲が仕事でのモチベーションやイノベーションに活かされることなどが期待できます。

欧米のリカレント教育

近年世界的に注目を集めているリカレント教育ですが、実際の取り組み状況は各国によって異なります。特に欧米と日本では、社会的慣行の影響もあり、状況の差異は大きくなっています。

欧米は、本来のリカレント教育の概念に近い取り組みが進んでいます。もともと欧米の労働市場は流動性が高く、キャリアアップのために社会人になってから教育機関で学習するシステムを取り入れやすい状況にありました。欧米のリカレント教育は、仕事をし始めてからも、学習機会が必要となった場合は、比較的長期間にわたって正規の学生として就学することを推奨しています。個人の職業技術や知識を向上するために、フルタイムの就学とフルタイムの就労を交互に繰り返すことができます。

リカレント教育の取り組みの具体例としては、スウェーデン、フランス、イタリア、ベルギーなどの有給教育制度、アメリカのコミュニティカレッジなどが挙げられます。

日本のリカレント教育

日本においても、転職でのキャリアアップを目指す人が増加するなど働き方が多様化しており、キャリアアップに必要なスキルを身につける方法としてリカレント教育が注目されています。

しかし日本では、高度経済成長期を経て社会的に長期雇用の慣行があるため、社会人になってから教育機関にもう一度戻って学習するというというシステムは馴染みにくい状況となっています。仕事に必要な技術や知識は、キャリアを中断して外部で学ぶのではなく、就職した企業内で習得していくのが通例です。

そのため、日本ではリカレント教育の概念が諸外国よりも広義に解釈されており、企業で働きながら学んだり、仕事でなく生きがいのために学んだり、学校以外の場で学んだりする場合も含む言葉として使われています。

日本におけるリカレント教育の取り組みの具体例としては、大学の社会人入学制度、社会人特別選抜制度、科目等履修生制度、夜間部・昼夜開講制度、通信教育、公開講座、専門職大学院、サテライトキャンパスなどが挙げられます。高等学校や専門学校、高等専門学校でも、公開講座という形でリカレント教育の取り組みを行なっている学校もあります。

日本のリカレント教育の必要性と課題

次に、日本のリカレント教育の課題について確認します。

社会的要因によるリカレント教育の必要性の高まり

先述したように、長期雇用が慣行となっている日本でも、近年はリカレント教育の重要性が認知され始めています。背景としては、転職でのキャリアアップや女性の社会進出の増加によって、職業技術や知識を外部の教育機関で学習したいというニーズが出てきたことが考えられます。

男性中心の長期雇用が前提であれば、企業内教育のみに依存していても、働いていく中で自然と仕事上必要な知識や技術が身についていきました。しかし、転職を前提とし、短期間で企業を変えていったり、女性が産休育休を挟んでキャリアを積んでいったりするのであれば、企業内教育で継続的に仕事上必要な技術や知識を身につけることは難しくなります。自分のキャリアパスに合わせて、自ら学習機会を作ることが求められます。

リカレント教育を受け入れる環境整備が課題

このように企業内教育の穴を埋め、学習ニーズを満たすシステムとして、リカレント教育は注目されています。ただ、実際に日本でリカレント教育を実践していくためには多くの課題を解決する必要があります。

例えば、日本におけるリカレント教育に関する公的な補助や支援制度、関係機関の連携は未発達な部分が多い上に情報も少なく、労働を中断して教育に参加することが難しい現状があります。欧米のような有給教育制度がある企業は、日本ではまだ多くはありません。リカレント教育の機会が得られたとしても、教育費用が増大した場合の行政からの支援や給付金が少なく、学習者の負担が大きくなるリスクも懸念されます。

そして、社会人が受講できる教育機関や生涯学習関連機関、カリキュラムも未だ不十分と言えます。キャリアアップとしてリカレント教育のシステムを活用することは、日本の一般的な社会人にとってはハードルが高い状況となっています。

現在、文部科学省や地方自治体では、生涯学習審議会や生涯学習センターなどを設置し、「生涯学習社会」の実現に向けて動いている流れがあります。今後社会人が学びやすい環境が整備されていくのか注目されます。

リカレント教育と政府

政府は、リカレント教育の推進に対して積極的に取り組んでいます。具体的には、教育訓練給付金制度を設けているほか、介護や育児など様々なライフステージでも社会人として活躍できるための支援として、リカレント教育に関する予算を増やすなどの施策を行っています。

リカレント教育に対する補助金

厚生労働省では、リカレント教育を支援する制度として、費用の一部を補助する教育訓練給付制度を設けています。

教育訓練給付金とは

教育訓練給付金とは、就業の安定や再就職の促進を目的に、働く人が短期間または中長期に渡って主体的に行う能力開発の取り組みにかかった費用の一部が支給されるものです。

教育訓練給付金には、「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2つがあります。

支給の対象者となるには、それぞれ前提条件があります。

  • 一般教育訓練給付金:厚生労働大臣が指定した一般教育訓練の受講を修了していること
  • 専門実践教育訓練給付金:厚生労働大臣が指定した専門実践教育訓練の受講を修了していること

また、どちらの給付金も対象者は以下になります。

  • 在職中で初めて給付金を受け取る場合:雇用保険に1年以上加入している人
  • 在職中で2度目に給付金を受け取る場合:雇用保険に3年以上加入しており、前回の給付金を受け取ってから3年以上経っている人
  • 離職中で初めて給付金を受け取る場合:離職日の翌日から受講開始日までが1年以内で、雇用保険に1年以上加入していた人
  • 離職中で2度目に給付金を受け取る場合:離職日の翌日から受講開始日までが1年以内で、雇用保険に3年以上加入しており、前回の給付金を受け取ってから3年以上経っている人

教育訓練給付金の支給額

【一般教育訓練給付金】

  • 費用の20%を支給
  • 支給の上限金額は10万円

※ただし費用の20%が4,000円を超えない場合は支給はない

【専門実践教育訓練給付金】

受講中に専門実践教育訓練給付金を受け取る場合

  • 費用の50%を支給
  • 受講中の支給の上限金額は、受講期間が1年の場合40万円、2年の場合80万円、3年の場合120万円

受講終了後に追加で受け取れる専門実践教育訓練給付金

  • 必要な資格などを取得して、受講修了翌日から1年以内に被保険者として雇用された場合は、費用の20%を追加で支給
  • 受講終了後の支給の上限金額は、受講期間が1年の場合16万円、2年の場合32万円、3年の場合48万円

また、専門実践教育訓練給付金についても、費用の20%が4,000円を超えない場合には支給されません。

教育訓練給付金制度について、あるいは具体的な対象者や支給金額、申請方法などの詳細については、厚生労働省または関連するサイトをご確認ください。

【参考】厚生労働省「教育訓練給付制度」
【参考】ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付の概要」

リカレント教育に対する文部科学省の予算はどれくらいあるのか

平成30年度の文部科学関係予算のうち、リカレント教育の取り組みとして使われた予算は総額で106億円で、前年より6億円増加しました。具体的に取り組まれる事業としては、専修学校による地域産業中核的人材養成や男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援などがあります。

【参考】文部科学省「平成30年度文部科学関係予算(案)のポイント」

日本のリカレント教育の事例

日本のリカレント教育はまだ課題が多い状況にありますが、一部には積極的に取り組んでいる教育機関が存在します。最後に、日本のリカレント教育を推進している事例を5つご紹介します。

ここで紹介する他にも、生涯学習情報をホームページで提供している地方自治体も数多く存在します。例えば、愛知県はリカレント教育の振興方策を審議し、ホームページで情報提供しています。興味がある場合には自分の住んでいる地域を調べてみることがおすすめです。

日本女子大学

日本女子大学のリカレント教育過程は、文部科学省の2007年度「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採用された「キャリアブレーク中の女子大学卒業生のためのリカレント教育・再就職あっせんシステム」を前身としています。

2010年に文部科学省の委託を離れ、現在は日本女子大学が独自で運営しており、1年間を通して語学や社会保険労務士の資格取得など女性のキャリアアップに役立つカリキュラムを学ぶことができます。

社会の変化に適応するために、大学卒業後も学べる場所を提供する日本初のリカレント教育課程として、現在まで多くの卒業生を輩出しています。学習成果を活かした再就職支援も手厚く、高い就職率を誇り、多方面で現在注目を集めるプログラムです。

日本女子大学 リカレント教育課程

明治大学

明治大学は、生涯学習の拠点として「明治大学リバティアカデミー」を設置しています。明治大学の知的財産を地域社会に還元することを目的とし、駿河キャンパス、和泉キャンパス、生田キャンパス、中野キャンパス、黒川農場の5つの場所で年間400を超える講座を開設しています。

講座の内容は、ビジネスや語学、資格取得など幅広く、これまで約2万人が学んできました。考古学学習講座や世界の民族音楽に触れ合う講座など、自分の興味関心を伸ばすことができるプログラムも数多く存在します。

講座は、3,000円の会員になることで受講できます。法人優待制度があるので、企業の人材育成の一環として企業単位で会員となり、社員のスキルアップに活かすことも有効です。

明治大学リバティアカデミー

放送大学

放送大学は、日本の生涯学習の中核を担っていると言っても過言ではありません。これまでに130万人以上が学び、現在の在籍者数は9万人以上と言われています。年齢層も幅広く、30代と40代を中心とし、10代の若者から90代の高齢者まで学んでいます。

学びたい人がいつでも学ぶことができる「開かれた大学」を目指し、基本はテレビやラジオ、インターネットで講義を受講することができます。学生になることで、いつでも好きな時間に自宅で学習できるため、忙しい社会人も取り組みやすくなっています。全国57ヶ所にある学習センターとサテライトスペースの施設で、教員から直接講義を受けることも可能です。

大卒資格の取得や大学院修了、その他様々な資格取得を目指すことができる豊富なカリキュラムが魅力となっています。

放送大学

筑波大学

筑波大学 東京キャンパス社会人大学院は、東京都文京区に設置されている社会人のための大学院です。主に平日の夜間と土曜の昼間を使って授業が開講されるため、社会人がフルタイムの仕事をしていても大学院に通うことができます。2つの研究科に10の選考とコースが用意されており、いずれも本格的な研究や学習を行うことが可能です。

ビジネス科学研究科では、経営システムや法曹関連、人間総合化学研究科では、カウンセリングやスポーツ健康システムマネジメントなどの分野が開講されています。各選考それぞれ募集定員が決まっているため、入学するためには入学試験に合格することが求められます。

筑波大学 東京キャンパス社会人大学院(夜間)

グロービス経営大学院

グロービス経営大学院は、MBA(経営学修士)に強みを持つ専門職大学院です。アメリカにおいてMBAは、経営幹部になるために必須の修士号と言われており、年間7万から10万人が取得しているとされます。

MBAのプログラムでは、経営に必要な知識や能力を習得することができます。グロービズ経営大学院は、忙しい社会人でもMBA取得のために学び続けることができるよう、平日の夜間と週末を使って講義が開かれます。また、通学とオンラインどちらか学び方を選ぶことができ、オンラインの場合でもリアルタイムでディスカッションに参加することができます。

また、経営研究科経営専攻は厚生労働大臣より専門的・実践的な教育訓練講座として認められているため、条件を満たせば最大で96万円の給付金を受給することができます。教育資金のサポートがあるのは嬉しいポイントです。

グロービス経営大学院

リカレント教育を推進する民間企業

経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」は、ライフステージのどの段階でも活躍し続けるために求められる力として、学び直しによる知識やスキルの向上と、新しい知識やスキルの獲得が必要不可欠なものとしています。また、社会人基礎力は業種や職種に関わらず、仕事で成果を出し続けるために必要となる基本的能力としています。

ここでは、人生100年時代の社会人基礎力の取り組みに賛同し、リカレント教育を提供する企業についてご紹介します。

【参考】経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力とリカレント教育について」

ベネッセi-キャリア

ベネッセi-キャリアでは学生から新人社会人を対象に、特に大学と連携して社会で必要とされる力を伸ばして就職後のキャリア形成に繋がる支援サービスを提供しています。

サービスの主な内容はアセスメントの実施と結果データの活用です。特にアセスメントデータの活用の主な目的は対象者によって異なります。

  • 就職活動前の学生の場合:社会で必要とされる能力を伸ばすために今の自分の能力を把握して、今後の目標など自主的な成長を促すきっかけづくり
  • 就職活動期の学生の場合:就職活動対策としてエントリーシートの作成支援や就職試験対策のほか、キャリアデザインのためのテキストなど幅広い支援

この他にも、学生の問題解決力育成や教学改革コンサルティング、入社後の新卒社員の育成計画など、幅広く事業を展開しています。

【参考】株式会社ベネッセi-キャリア「大学向け 教育・キャリア教育支援」

リクルートマネジメントソリューションズ

リクルートマネジメントソリューションズでは新人社会人から中高年社会人を対象に、企業における人材育成や組織活性化など、企業と社員の成長をトータルに支援するサービスを提供しています。

具体的には、人材と組織を多角的に把握するためのアセスメントやリクルートマネジメントスクールによる行動変容を促すトレーニングのほか、コンサルティングサービスも提供しています。

【参考】人材育成・研修・組織開発のリクルートマネジメントソリューションズ「サービス」

まとめ

  • リカレント教育とは、1970年代から国際的に知られるようになった生涯教育構想である。急速に変化する社会に適応するために、義務教育が終わり社会に出てからも、個人が就学と就労を交互に行いながら、仕事に必要な知識や技術を学び続けることが望ましいと提唱している。
  • 労働市場が流動的な欧米では、リカレント教育の取り組みは進展している。リカレント教育の本来の意味通り、個人が仕事に必要な知識や技術を取得するために、フルタイムの就学とフルタイムの就労を繰り返すことができる環境が整備されつつある。
  • 一方日本では、働き方が多様化する中でリカレント教育の有用性は認知されつつあるものの、長期雇用の慣行があるため、環境の整備は未熟である。現状は、働きながら学んだり、生きがいのために学んだりできる社会人大学院や通信教育が、学習活動の場として活発に活用されている。

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