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ジョブローテーション

2020年4月6日(月)更新

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的とした戦略的・計画的(または定期的に)に行われる人事異動のことです。さまざまな部署・職種・職務を経験することで、社内人脈の構築、社内情勢の把握・理解に役立ちます。今回はジョブローテーションを行う意味・目的や、その際のメリット・デメリット、制度の目的から企業事例をご紹介します。

ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、「社員の能力開発を目的として、戦略的・計画的に行われる人事異動」を指します。

社員の専門や希望とは異なる分野も含め、数年毎の配属でさまざまな部署・職種・職務を経験してもらい、キャリアアップを図る育成計画のひとつです。

社内人脈の構築や社内情勢の把握・理解の促進のほか、部署間の連携力強化や組織風土の醸成にも役立ちます。

独立行政法人の労働政策研究・研修機構が2017年2月に発表した「企業における転勤の実態に関する調査 調査結果の概要」によると、調査対象となった日本企業の内、ジョブローテーションを導入している企業は53.1%と半数を超えています。また、正社員規模が大きくなるとほど、その割合が高いと結論づけています。

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構 :「企業における転勤の実態に関する調査」 調査結果の概要

ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションは主に、「新入社員」と「幹部候補」に対して実施されます。

それぞれの実施目的はどのようなものなのでしょうか。

新入社員のジョブローテーション

新入社員に対するジョブローテーションは、「適性の把握」や「企業理解の促進」を主な目的として実施します。

採用面接という限られた時間の中で、人事担当者が応募者一人ひとりの適正を正しく把握することは困難です。そして、新入社員側も入社段階では、各部署の特徴や雰囲気、業務内容をまだ十分に理解することができていません。

早期離職の防止と新入社員の早期戦力化は、全企業に共通する重要課題です。そのため、新入社員に対してジョブローテーションを実施する企業の多くは、新入社員研修の一環として複数の部署で仕事を経験させて、認識のズレの解消適性の見極めを行っています。

幹部候補社員のジョブローテーション

幹部候補社員に対するジョブローテーションは、「マネジメント能力の向上」や「社内人脈の構築」、「ジェネラリストの育成」を主な目的として実施します。

企業内に点在する多種多様な知識やスキルを全て習得しているジェネラリストは、企業にとって心強い存在です。ジョブローテーションを終えた幹部候補社員は、各部署の強みや各現場が抱えている課題を正しく把握しているため、経営者視点でマネジメントを行い、広い視野で物事を見ることができます。

ジョブローテーションの適切な期間とは

ジョブローテーションは、人材育成や能力開発を目的とした人事制度です。そのため、実施目的に合わせてローテーション期間設定しなければいけません。

仕事に慣れていない新卒入社社員や転職社員の場合、事業や業務の全体像を理解させるため、3~6ヶ月という比較的短い期間でジョブローテーションを実施するのが一般的です。

一方で、経営に関わる幹部候補社員の場合、業績向上や組織の課題解決を実現させるため、1~3年という長期間のジョブローテーションを実施し、社内人脈の形成やマネジメント能力の向上を図る必要があります。

ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションは、企業と従業員の双方に多くのメリットをもたらします。企業の経営戦略や会社規模に応じて、導入の検討や運用方法を決めることが大切です。

企業側のメリット

企業側のメリットとして、以下のものがあげられます。

  • 社員の適性を図りながら、適材適所の人員配置が可能
  • 社内の風通しが良くなり、ダイバーシティの促進にもつながる
  • 枠を超えた人材交流(人的ネットワークの構築)により、部署間連携を強化できる
  • 新入社員の入社後ミスマッチを防止し、離職率低下につながる
  • 業務の属人化防止の効果がある

組織力の強化や人材配置の最適化に効果的で、企業の人事管理システムとして機能しやすい点がジョブローテーションの大きな魅力です。

また、ジェネラリストや幹部候補社員を養成しやすく、ダイバーシティ(人材の多様性)の実現に向けた社風の醸成も行えます。

従業員側のメリット

従業員側のメリットとして、以下のものがあげられます。

  • モチベーションの維持向上(成長意欲の刺激)
  • 事業や業務に対する理解が深まる
  • マンネリ化防止につながる
  • 新たな発想・イノベーション創出のきっかけになる
  • 企業知識の強化

多くの成長機会を提供し、モチベーションの維持向上や企業知識の強化、アイデアの創出などを実現させることで、従業員たちに自己の成長を実感させることができます。

また、1つの職場環境に縛られず、ルーチンワークによるマンネリ化を防止することで、上司や同僚との人間関係の悪化を抑制します。自分の将来像をイメージしやすくなることから、従業員エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。

ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションには、いくつかのデメリットも存在します。

企業側のデメリット

企業側のデメリットとして、以下のものがあげられます。

  • スペシャリストの養成には不向き
  • 公正・公平な人事評価・給与の決定がしにくい
  • 教育・指導に時間や労力がかかる
  • 成果主義の評価体制では導入が困難
  • 業務効率や生産性の低下
  • 優秀な人材の退職リスクの増加
  • 問題社員の押し付け合いの発生

ジョブローテーションはジェネラリストの養成に効果がある一方で、専門分野に特化したスペシャリストの養成には向いていません。

また、特異な才能を持つ優秀な人材の活躍の場をなくし、退職リスクを高める可能性があります。短期間での異動によって生産性が一時的に低下することや、教育や指導に多大な時間と労力が必要となる点も事前に正しく理解しておきましょう。

従業員側のデメリット

従業員側のデメリットとして、以下のものがあげられます。

  • 個人の専門性を伸ばしにくい
  • 再就職で不利になるケースがある
  • 意向に沿わない人事異動が行われる

ジョブローテーションは終身雇用を前提とした施策のため、キャリアが中途半端になりやすく、再就職で不利になるケースがあります。また、社内公募などの自主的な異動とは違い、ジョブローテーションによる配置転換は戦略的かつ計画的に行われるため、特定のスキルを磨き上げたいスペシャリスト志望の従業員としては、モチベーションが下がるきっかけにもなりえます。

一定期間ごとに異動が発生するジョブローテーションには、仕事が「腰かけ」になるリスクも存在します。立ち上げに関わったプロジェクトの成果を確認できないことで、モチベーションを大幅に低下してしまう可能性があることを理解しておきましょう。

ジョブローテーションは向き・不向きがある?

ジョブローテーションは、事業内容や社内体制、企業規模、業界などによって向き不向きがあります。

ジョブローテーションが向いている企業と向いていない企業の特徴を把握し、自社に適しているかどうかを見極めましょう。

ジョブローテーションが向いている企業

ジョブローテーションは、以下のような企業に向いています。

  • 複数の業務が一連の流れで繋がっている企業
  • 本支店間や部署間の連携が業績に大きく影響する企業
  • 業務遂行に幅広い知識が必要な企業
  • M&A後など、企業文化の浸透や醸成を図りたい企業
  • 従業員数が多い大企業

ジョブローテーションが向いていない企業

ジョブローテーションは、以下のような企業には向いていません。

  • 業務遂行に専門的な知識やスキル、ノウハウを必要とする企業
  • 知識やスキル、ノウハウの習得に長い時間を要する企業
  • 非定型業務の割合が多い企業
  • 長期プロジェクトが数多く発生する企業
  • 従業員数が少ない中小企業

ジョブローテーションを成功させるためのポイント

ジョブローテーションの効果を正しく得るためには、次の3つのポイントをしっかりと押さえておく必要があります。

社員の希望やキャリアパスの確認

社員が思い描く将来像と会社が望む成長の形が一致しないままジョブローテーションを実施してしまうと、モチベーションの低下や不満の噴出など思わぬトラブルを招くことがあります。

面談を通じて本人の希望やキャリアパスを確認し、今後の見通しや期待している活躍を伝えた上で、双方にとって価値のあるジョブローテーションになるようにすり合わせを行いましょう。

対象者と現場の双方に対してサポートを行う

次々に職場と仕事内容が変化するジョブローテーションは、対象者はもちろん、教育を担当する現場にとっても大きな負担です。

担当者のメンタルヘルスケアや指導マニュアルの作成など、負担軽減に向けた取り組みも同時に行うと良いでしょう。

異動先・仕事内容・配属順を最適化する

ジョブローテーションを実施する上で、「どのような経験を積ませるか」や「どのような順番で経験を積ませるか」は非常に重要な要素です。

ジョブローテーション後に多くの成果を生み出してもらうためにも、社内で活躍している人材の異動パターンを分析し、異動先・仕事内容・配属順の最適化を行いましょう。

この最適化を行うためには「タレントマネジメントシステム」の活用が有効です。

【関連】タレントマネジメントシステムとは?導入メリットや注意点・お勧めシステムもご紹介 / BizHint

ジョブローテーションを導入している企業事例

ジョブローテーションを人材育成施策として活用する企業は数多く存在します。

ここでは、明確な目的意識を持ち、戦略的にジョブローテーションを実施している2社の事例をご紹介します。

ダイバーシティの拡大を狙う日本郵船株式会社

世界TOP10に入る総合物流企業であり、ダイバーシティの推進に力を入れている日本郵船株式会社では、陸上職の全社員を対象に3~4年に1度のジョブローテーションを実施。

多様な知識や経験の獲得、人的ネットワークの形成などを目指し、国内外のさまざまな部署で営業系と管理系の仕事を体験させています。

【参考】日本郵船株式会社
【参考】日本郵船株式会社:キャリア採用の考え方

社員のキャリア形成を促す株式会社ヤクルト本社

乳酸菌飲料メーカー大手の株式会社ヤクルト本社では、入社から10年の間に、約3~4年の期間で、総合職の従業員を対象に定期的なジョブローテーションを実施。

営業部門と管理部門、海外事業所において、さまざまな業務と勤務地を経験させることで、社員たちが自分の適性を見極め、キャリア形成を行えるように支援しています。

【参考】株式会社ヤクルト本社
【参考】株式会社ヤクルト本社:ジョブローテーション制度

ジョブローテーション、今後はどうなる?

日本企業において、次世代を担うリーダーや管理職を長期的かつ戦略的に育成する際に用いられることが多いジョブローテーション。しかし、終身雇用という考え方がなく、キャリアプランの実現に必要な仕事を自分で選び、そのポジションを勝ち取らなければならない海外では、ジョブローテーションを実施している企業をほとんど見かけません。

ジョブローテーションには数多くのメリットが存在しますが、その一方で従業員の自主性を損ないやすく、スペシャリストを目指す従業員の意向に沿うことができないといったデメリットも存在します。

先行きが不透明で変化が激しいVUCA時代を生き抜くためには、主体性を持ち、自ら決断し、最後までやり抜くことができる人材が必要不可欠です。

個々の従業員が描くキャリアパスをしっかりと把握し、ジョブローテーションと社内FA制度社内公募制度を上手く組み合わせながら実施することによって、人材の持つ力を最大限に引き出すことができるでしょう。

【関連】社内FA制度とは?メリット・デメリットや導入企業・事例をご紹介 / BizHint
【関連】社内公募制度とは?メリット・デメリットや注意点を一挙ご紹介 / BizHint

まとめ

  • ジョブローテーションは、終身雇用を前提としている日本企業にマッチした人材育成施策であり、多くの場合、新入社員と幹部候補社員を対象に実施される
  • ジョブローテーションの主な目的は、企業や事業に対する理解の促進や、人材育成・能力開発、組織の活性化・部署間の連携強化である
  • ジョブローテーションの導入・運用には、事業内容や社内体制、企業規模、業界などによって、向き不向きがある
  • ジョブローテーションのメリットを最大化し、デメリットを最小化するため、3つのポイントをしっかりと押さえながら実施しなければならない

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