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2017年11月8日(水)更新

ジョブローテーション

ジョブローテーションとは、戦略的・計画的に行われる人事異動を指します。今回はジョブローテーションを行う意味・目的や、その際のメリット・デメリット、制度、事例などをまとめてご紹介します。

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ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、戦略的・計画的に行われる人事異動を指します。社員の専門や希望とは異なる分野も含め、数年ごとの異動で敢えて様々な部署を経験してもらい、キャリアアップを図る仕組みです。

リクルートワークス研究所の2013年の調査によると、東証一部上場企業の50.8%がジョブローテーション制度を導入しています。

ジョブローテーション導入の狙い

大企業の半数が活用しているジョブローテーション。真新しい仕組みではありませんが、その狙いには時代により変容もみられます。

ジェネラリストの育成

経営層には財務や人事を含め、企業のあらゆる事業に関する知識が必要になります。 ジョブローテーションで様々な部署を経験させることで、知識を培ったり社内外の人脈を築いたりと、経営幹部に必要な要素を身に着けてもらうのは大きな狙いの一つです。

このためかつては幹部候補生にのみ、ジョブローテーションの対象とする企業が多かったようです。

今では環境変化の速く大きい市場に対応するため、幹部候補に限らず幅広い社員をローテーションの対象として、柔軟性・視野の広さを身に着けてもらうケースも増えています。

【関連】ジェネラリストとは?スペシャリストとの違いとは? / BizHint HR

適材適所の発見

企業にとっては、採用時の面接などからは社員の向き・不向きがはっきり分かるものではありません。社員にとっても、本人の希望と実施に向いている業務が一致しているとは限りません。

様々な部署を実際に経験するなかで、その人に向いている職務をみつけられれば企業にとっても社員にとってもメリットがあります。入社10年目など、ある程度キャリアの方向性が見えてきた時点で、専門性を磨くため同じ部署で昇進していくパターンが多数です。

人材確保

人手不足社会の昨今では、優秀な人材を会社に集めるための方策としても活用されています。それには2つの意味があります。

1つ目は、新卒募集の際に会社の教育・研修制度としてアピールできる点です。 社会経験のない新卒の中には、自分がどんな仕事に向いているのか明確に見えず、希望業界・職種を絞り切れていない学生も多く見受けられます。自分の向き・不向きを入社してから探したい学生にとって、「いろいろな仕事を経験できる」会社は魅力的に映るのです。

2つ目は、社内の人事に柔軟性を持たせ、制約のある社員がより働きやすい環境を整える点です。出産・育児や介護などで働ける時間や場所に限界がある社員が増えるなか、それぞれの社員の専門性が高すぎると「その人がいない→仕事が回らない」状態が発生し、当人も周りも苦しくなってしまいます。

一方、部門をまたがって異動するシステムがあれば、欠員を穴埋めしやすいですし、当人も制約のある期間だけ別の部署で働くことができます。

ジョブローテーションのメリット・デメリット

ジョブローテーションの導入で多くのメリットが見込める一方、副作用もあります。 企業の経営戦略や規模に照らして、導入するかどうかや運用の仕方を決めることが大切です。

メリット

経験を積みながら社員の適材適所を図れる

ジョブローテーションが人事管理システムとして優れているのは、まず上で挙げたように経験を積みながら社員の適材適所を図れる点です。どんな仕事でも対応できるジェネラリストを養成するのにジョブローテーションが有効なのは言うまでもありませんが、最終的には専門性を磨いていくケースでも、途中で別の部署を経験して視野を広げるのは重要な意味を持ちます。

例えば同じ企画の仕事でも、財務面ではどんな問題を抱えているのか、営業・販売面ではどんな課題があるのか、などを一度経験してみることで、会社全体の業績に貢献する企画がどのようなものなのか、深く分かるようになるでしょう。

社内の風通しをよくする

部署間の敷居を低くすることで、社内の風通しをよくする効果もあります。同じ部署内だけで人材が固定すると、新しい発想が生まれなくなったり、悪い意味で慣れ合いが起きたりします。最悪の場合、不正を互いに黙認するような文化さえ生まれかねません。

部署間の異動が多ければ一種のダイバーシティ(多様性)強化となり、組織を活性化します。他の部署に人脈が広がることも、仕事の効率化につながります。

モチベーションアップ

毛色の違う仕事に携わることは社員にとってリフレッシュにもなり、モチベーションアップが期待できます。若手にとってはその旺盛な成長意欲を満たす機会となりますし、中堅以上にとっても仕事のマンネリ化を防ぐ効果があります。

デメリット

メリットと表裏一体のデメリットもいくつかあります。

スペシャリスト養成には不向き

ジェネラリスト養成には向いている半面、スペシャリストを育てるには回り道となります。その途中で転職されてしまっては意味がありませんし、そもそも人数的に回り道をさせる余裕がない企業もあるでしょう。 当人にとっても、若いうちに専門性を磨きたいと考えている場合には適した制度とは言えません。

教育や指導に時間・労力が必要

全く違う仕事を担うわけですから異動の直後はほぼ「新人」状態に逆戻り。 本人も慣れるまで全力疾走はできませんし、周りも教育・指導に時間を取られます。 引き継ぎがうまくいかないと業務が一時的に停滞することになります。対外的にも「担当者が変わって、どこまで話が進んでいたのか分からなくなってしまった」など迷惑をかけるかもしれません。

仕事が中途半端になってしまう可能性

一定の間隔で異動があると社員のリフレッシュになる一方で、仕事が「腰かけ」となってしまうリスクもあります。長期にわたるプロジェクトになると、立ち上げに苦労しても結果が出るころには自分は担当から外れている…ということになり、必ずしもモチベーションアップにつながるとは限りません。

また優秀な社員はどの部署もなかなか手放さず、手に負えない社員の押し付け合いとなって「適材適所」発掘の目的に結びつかない可能性もあります。

日本型雇用システムとの結びつき

ジョブローテーションは長らく、日本企業の人材育成の柱の一つとして機能してきました。 それは新卒一括採用・終身雇用を前提として、視野の広い幹部を自社内で育てるには様々な部署を経験させるのが最も有効だったということです。また大学では就職に直結する教育が忌避され、職業訓練制度も他国ほど充実していないなかで、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの一環としてジョブローテーションを採り入れざるを得ない、という側面もあります。

この点、海外ではジョブローテーションは一般的ではないようです。多様な知識・経験を身につけたい労働者は、社内での異動を待たずに会社を飛び出して転職すればいいわけです。日本に拠点を置く外資系企業についても、日本国内では異動があまりみられません。日本でも終身雇用制度の見直しや雇用の流動化が繰り返し議論になっています。

雇用システムの変容が進めば、日本独特のジョブローテーションも新たな形に変わっていくかもしれません。

【関連】日本型雇用システムの特徴とメリット・デメリット / BizHint HR

導入事例

新卒採用においてジョブローテーションを充実した研修・教育制度の一つとして積極的に売り出している企業もいくつかあります。どのようなサイクルでどのような異動パターンがあるのか明記することは、入社後にギャップが発生するのを防ぐ意味でも重要です。事例を二つ見てみましょう。

日本郵船株式会社

日本郵船の新卒採用ページでは、ジョブローテーションの狙いをこう説明しています。

国際的な総合物流事業を展開する日本郵船で活躍するには、船の専門知識だけでなく、人材、物資、資金、情報といった経営資源を活用してビジネスを推進するための多様な能力と幅広い経験が求められます。そのために約3年に1回のペースでジョブローテーションをして、新しい業務体験を通じて自分が持っていない視野やスキルを習得します。

全社員がローテーションの対象で、キャリア段階によってその位置づけも変化します。 入社後10年は、担当者としての自立・チームへの貢献を目指す段階。

そして自分の得意分野・適性を見つけるためのローテーション、さらに身に着けた経験・スキルを幹部として会社に還元する段階へとつながっていきます。

ローテーションの範囲は国内と海外間の異動のほか、海上職が陸上職を経験したり、陸上職のうち事務系と技術系内でそれぞれ色々な経験を積んだりするシステムを設けています。

株式会社ヤクルト本社

ヤクルトでは総合職事務系・海外系に絞ってジョブローテーションを採り入れています。その目的として以下の2点を掲げています。

  1. 「全社的な視点を持つジェネラリスト」への成長
  2. 個々の適性を生かして「スペシャリスト」へのキャリアアップ

ローテーションがあるのは入社後10年。2回以上の異動、3つ以上の部署で仕事をしながら、自分の適性を発見していきます。

営業部門と海外部門をまたぐのが基本となり、早期からの海外赴任希望者を対象とする海外系では、第1次ローテーションで営業部門を経験し、第2次ローテーション以降は海外勤務の可能性が高くなるというキャリアステップを明記しています。

ジョブローテーションが効果を発揮する企業とは

このように見ていくと、やはり大企業で社員数が多く、部署・職種が多岐に渡っているとジョブローテーションが有効なようです。

海外展開している企業も、国内・海外の両方を経験させることで視野の広い社員が育ちやすくなります。 また金融機関では不正の発生を防ぐために定期的な異動を定めています。

中小企業でも幹部候補生の育成に有効な手段でしょう。 先に挙げたデメリットを防ぐためには、会社側の都合だけではなく本人の希望ともすり合わせる、スムーズな引継ぎの環境を整える、最終的には専門性を磨けるキャリアを用意する――といった工夫が必要です。

まとめ

  • 日本独特のシステムで副作用も少なくないジョブローテーションには批判的な意見も多くみられ、導入・継続には検討が必要。
  • 社員の考え方もそれぞれで、多様な経験を積みたい人もいればひたすら専門性を磨きたい人も。異動をポジティブに捉えて成長につなげられるかどうかは、結局その人の姿勢次第。
  • 社員の要望・不満に場当たり的に応えるのではなく、企業としてどのような人材を育てたいのかを中心に据えて考えることが重要。

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