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2019年2月5日(火)更新

ジョブローテーション

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的とした戦略的・計画的(または定期的に)に行われる人事異動のことです。さまざまな部署・職種を経験することで、社内人脈の構築、社内情勢の把握・理解に役立ちます。今回はジョブローテーションを行う意味・目的や、その際のメリット・デメリット、制度の目的から企業事例をご紹介します。

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ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、「社員の能力開発を目的として、戦略的・計画的に行われる人事異動」を指します。社員の専門や希望とは異なる分野も含め、数年毎の配属でさまざまな部署・職種を経験してもらい、キャリアアップを図る育成計画のひとつです。

社内人脈の構築や社内情勢の把握・理解の促進のほか、部署同士が連携できる体制や組織風土の醸成にも役立ちます。

独立行政法人の労働政策研究・研修機構が2017年2月に発表した、「企業における転勤の実態に関する調査 調査結果の概要」によれば、調査対象の企業の内、ジョブローテーションを導入している企業は53.1%と半数を超えています。また、正社員規模が大きくなるとほど、その割合が高いと結論づけています。一方で、スペシャリスト(専門性の高い能力を持つ社員)育成には不向き、公正・公平な人事評価・給与の決定がしにくいなどのデメリットもあります。

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構 :「企業における転勤の実態に関する調査」 調査結果の概要

ジョブローテーションの対象社員

ジョブローテーションの対象社員は新入社員と幹部候補社員が中心となります。

新入社員のジョブローテーション

新入社員のジョブローテーションは主に「新入社員の適性判断」「企業の全体像を把握させる」の2つが目的ですが、面接では測り知れない適性を把握して適材適所の人員配置をするための事前準備でもあります。

様々な職場体験を通して仕事に対する視野拡大や業務内容の把握、組織連携の重要性が学べます。業界によっては、全工程の業務を体験することで会社の全体像や流れを掴めるため、新人研修の一環として採用する企業もあります。

幹部候補社員のジョブローテーション

次世代の経営幹部を育成するために、ジョブローテーションを実施する企業も存在します。さまざまな職場を渡り歩くことで、多種多様な人材のマネジメント能力の向上や、社内人脈の構築、幅広い業務に精通したジェネラリストの育成が期待できます。中でも経営視点でのマネジメント能力の向上に効果があるとされ、会社全体を見通した上での判断力を身につけられます。

ジョブローテーションの適切な期間とは

ジョブローテーションの適切な期間は、目的や対象社員によって、異なります。仕事に慣れていない新卒入社社員や転職社員の場合、3~6ヶ月の短期間が良いとされています。一方で、経営に関わる幹部候補社員の場合、社内人脈の形成やマネジメント能力の向上は短期間では実現できません。そのため、1~3年間の長期間でのジョブローテーションが適切といえます。

ジョブローテーション普及の背景

ジョブローテーション普及の背景には、新卒一括採用終身雇用を前提として、視野の広い幹部候補社員を育てることを目的にした日本企業の社風があります。また、就職に直結しない大学教育や、職業訓練制度が充実していないなどの社会的背景があったため、 OJTの一環として、ジョブローテーションが効果的だったため、普及したと考えられます。

しかし、終身雇用制度の見直しや雇用の流動化が一般的となった現代では、ジョブローテーションを見直すべきという議論も活発になっています。

【関連】日本型雇用システムの特徴とメリット・デメリット / BizHint

ジョブローテーション導入の目的

大企業の半数が未だ活用しているジョブローテーション。真新しい仕組みではありませんが、その導入目的はさまざまです。

人材育成・能力開発

ジョブローテーションは、多くの場合、人材育成・能力開発を目的に実施されます。複数の職場を経験させ、社員の適性を判断する一方、さらなるビジネススキルの向上が期待できます。

また、複数の部署・職種を経験する中で、特化すべき自分自身の専門分野や管理職へのキャリアパスの発見につながります。また、新たな発想や管理職視点での組織運営についても学べます。

企業や事業に対する理解の促進

企業規模が大きくなれば、企業の全事業や部署に関する知識と理解が必要です。 ジョブローテーションでは、財務や人事といった間接部門も含めた、さまざまな部署・職種を経験できます。

各事業の知識・経験の蓄積、社内外の人脈の構築は、特に経営幹部候補生に必要な要素といえます。かつては幹部候補生のみを対象とする企業が多かったようですが、経営を取り巻く外部環境や市場の変化に対応するため、新入社員を含む幅広い社員を対象にし、柔軟性や視野の広さを身につけてもらう目的でも実施されています。

業務の属人化・マンネリ化防止

何年も同じ部署や職場で同じ業務を担当すると、業務の属人化が進み、業務効率化にも悪影響を与えます。また、ルーチン化した業務は社員のマンネリ化を招き、モチベーション低下や離職にもつながってしまいます。新たな環境と業務に関わることで、社員のモチベーションを高め、自分の成長を実感できます。

また、定期的な異動は組織の活性化を促し、多角的な視点から本来の業務内容を見直せるため、生産性向上にもつながります。その他にも業務の属人化防止による内部統制の強化も期待できます。

ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションの導入は企業側にも従業員側にも多くのメリットがあります。企業の経営戦略や会社規模に応じて、導入の検討や運用方法を決めることが大切です。

企業側のメリット

ジョブローテーションの実施は、企業側に以下のメリットをもたらしてくれます。

  • 社員の適性を図りながら、適材適所の人員配置が可能
  • 社内の風通しが良くなり、ダイバーシティの促進にもつながる
  • 部署同士の交流(人的ネットワークの構築)が深まり、部署間連携を強化できる
  • 新入社員の入社後ミスマッチを防止し、離職率低下につながる
  • 業務の属人化防止の効果がある

ジョブローテーションは、組織力の強化や適材適所の人材配置に効果が出やすく、企業の人事管理システムとして機能しやすい点が大きなメリットです。

柔軟力や対応力があるジェネラリスト・幹部候補社員を養成しやすく、今後、主流となるダイバーシティ(従業員の多様性)を実現する社風も構築できます。

従業員側のメリット

ジョブローテーションの実施は、従業員側に以下のメリットをもたらしてくれます。

  • モチベーションの向上(成長意欲の刺激)
  • 事業や業務に対する理解が深まる
  • マンネリ化防止につながる
  • 新たな発想・イノベーション創出のきっかけになる
  • 企業知識の強化

従業員にとっては、モチベーションの向上や企業知識の強化、新たな発想の創出など、社員が自分の成長を実感できる点がのメリットです。

ひとつの業務だけでなく、ルーチン作業によるマンネリ化も防ぎ、ひとつの職場環境に縛られないため、上司や同僚との人間関係の悪化しにくくなります。さらに、社員も自分の将来像を描きやすくなることから、従業員エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。

ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションには、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。

企業側のデメリット

ジョブローテーションによる企業側のデメリットは以下の内容が挙げられます。

  • スペシャリスト育成には不向き
  • 教育・指導に時間や労力がかかる
  • 成果主義の評価体制では導入が困難
  • 特異な才能を持つ人材が生まれにくい
  • 短期間の異動による業務効率の低下
  • 優秀な人材の退職リスクの増加
  • 問題社員の押し付け合いの発生

ジョブローテーションはジェネラリスト養成には効果がある一方で、専門性の高い能力を持つスペシャリストの育成には向いていません。今後、次世代の成長産業を生み出す上でもスペシャリストの存在は不可欠です。

また、ジョブローテーションの実施は特異な才能を持つ人材の活躍の場をなくし、優秀な人材の退職リスクにもつながる可能性があります。その他、業務効率の低下や教育・指導に多大な時間と労力がかかる点も企業経営には大きな影響を与えます。

従業員側のデメリット

ジョブローテーションによる従業員側のデメリットは以下の内容が挙げられます。

  • 個人の専門性を伸ばしにくい
  • 公正・公平な人事評価・給与決定が得られない
  • 意向に沿わない人事異動が行われる

ジョブローテーションは専門性を追求したい社員にとって、専門性を伸ばしにくく、キャリアが中途半端になりやすくなります。また、ジョブローテーションによる人事異動や転勤は社員の意向が反映されにくいため、社員の意思が尊重されないことも珍しくありません。

さらに年功序列終身雇用の要素が強いため、公正・公平な人事評価、給与決定が難しい面もあり、社員の不満にもつながりやすいといえます。ジョブローテーションは一定の間隔で異動があるため、仕事が「腰かけ」となってしまうリスクも発生します。長期にわたるプロジェクトの立ち上げに関わったとしても、プロジェクトの成果に立ち会えないなどモチベーションの低下にもつながってしまう可能性もあります。

ジョブローテーションの導入・運用する場合の注意点

ジョブローテーションを導入・運用するためには、メリット・デメリットを理解した上で、いくつか気をつけたい注意点が存在します。

自社の特性を把握する

ジョブローテーションの導入は、企業や業界によっては、向き不向きが存在します。中でもエンジニアやデザイナー、研究者といった専門性の高い社員が多い企業では、ジョブローテーションとの相性が悪いといえます。また、コンサルティング業務など長期的なプロジェクトを多数抱える企業や従業員数が少ない中小企業での導入も控えるべきです。

一方、業務工程の全てが関連性を持つ製造業や本部と支店の強固な連携が求められる金融機関、M&Aによる経営統合を終えた企業、従業員数が多い大企業などがジョブローテーションとの相性が良いといえます。

目的と適切なローテーション期間の設定

ジョブローテーションにはさまざまなメリットや効果がありますが、本来は人材育成、能力開発を目的とした人事制度のひとつです。そのため、ジョブローテーションを実施する目的を明確にし、適切なローテーション期間を設定しなければいけません。3年以内に人材マネジメント能力やプロジェクト管理能力を獲得するなど、企業が求める成果と成果を達成するための期間を可視化することが大切です。

一般的に幹部候補社員には、業績向上や組織の課題解決という目標を持たせ、1~3年間の期間を与えましょう。一方で、新卒入社社員や転職してきた新入社員には、事業や業務の全体像を理解させる目標を立て、研修の一環として、3~6ヶ月の期間を持たせることが適切です。

社員の希望やキャリアパスの確認

ジョブローテーションには、社員の適性を判断し、適材適所の人員配置が可能というメリットがあります。しかし、会社都合でのジョブローテーションは社員の意欲を削ぎ、不満を高めてしまうため、本人・会社の成長につながりません。

適切なジョブローテーションを実施するには、社員との面接を通じて、社員のキャリアパス(管理職か、スペシャリストか)への希望や伸ばしたいスキルを確認し、企業側が判断した適性とのバランスを取り、異動先の部署や期間を決定しましょう。

ジョブローテーションを導入している企業事例

ジョブローテーションを人材育成の重要な施策と認識する企業も複数存在します。今回は明確な目的と意図を持って、ジョブローテーションを実施している企業事例をご紹介いたします。

ダイバーシティの拡大を狙う日本郵船株式会社

世界TOP10に入る総合物流企業である日本郵船株式会社は、ダイバーシティの推進に力を入れており、全社員にビジネスを推進するための多様な能力と幅広い経験が求められます。全ての社員を対象に約3年に1度のジョブローテーションを実施し、国内外の営業系、管理系の業務を体験させています。約5人に1人の社員が海外に勤務しており、新しい業務体験を通して、多様な能力や幅広い経験、人的ネットワークの形成を期待しています。

【参考】日本郵船株式会社
【参考】日本郵船株式会社:キャリア採用の考え方
【参考】日本郵船株式会社:多様な人材を競争力に変える戦略

社員のキャリア形成を促す株式会社ヤクルト本社

乳酸菌飲料メーカー大手の株式会社ヤクルト本社では、入社後10年の間に、約3~4年の期間で、総合職の従業員を対象に定期的なジョブローテーションを実施しています。営業部門と管理部門、海外事業所において、さまざまな業務と勤務地を経験することで、社員が自分の適性を見極め、自身のキャリア形成の確立を促しています。

【参考】株式会社ヤクルト本社
【参考】株式会社ヤクルト本社:ジョブローテーション制度

まとめ

  • 日本独自の人事育成計画であるジョブローテーションは、主に新入社員と幹部候補社員を対象に、目的に応じた適切な期間で実施されます。
  • ジョブローテーションは、企業や事業に対する理解の促進や、人材育成・能力開発、組織の活性化・部署間の連携強化が目的です。
  • ジョブローテーションには、企業・従業員双方にメリット、デメリットが存在します。
  • ジョブローテーションの導入・運用には、企業や業界、職種の内容によって、向き不向きが存在する。また、ジョブローテーションは企業の希望と社員の希望・適性を考慮して、目的に応じた適切なローテーション期間で実施しましょう。

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