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2018年9月19日(水)更新

サーバントリーダーシップ

「サーバントリーダーシップ」とは、「まず相手に奉仕し、その後相手を導く」という考えの元に生まれた「支援型リーダーシップ」です。今回は、そんなサーバントリーダーシップについてご紹介します。

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1.サーバントリーダーシップとは?

それでは、サーバントリーダーシップとは、どのようなリーダーシップなのでしょうか。

サーバントリーダーシップ(支援形リーダーシップ)

サーバントリーダーシップは、アメリカのロバート・グリーンリーフ博士が提唱したリーダーシップ哲学で、「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考え方に基づくものです。

そもそも「サーバント」とは、「使用人」「召使い」という意味。部下に対して、奉仕の気持ちを持って接し、どうすれば組織のメンバーの持つ力を最大限に発揮できるのかを考え、その環境づくりに邁進するリーダーシップです。これは「支援型リーダーシップ」とも呼ばれ、従来の所謂「支配型リーダーシップ」とは相対するものです。

支配型リーダーシップ

日本においてこれまで主流となっていたリーダーシップスタイルである「支配型リーダーシップ」は、強い意思のもと、リーダー自身の考え方や価値観を貫き、部下を強い統率力で引っ張って行くようなリーダーシップ像でした。

部下を管理・命令する事で、組織を動かしてきたのです。これは「強制型リーダーシップ」とも呼ばれます。 ただ、ビジネスの環境変化が激しくなり、人材にも多様性が求められるようになった近年、このリーダーシップとは正反対とも言える「サーバントリーダーシップ」が注目されるようになってきました。

2.従来型の「リーダー」との違い

それでは、従来型のリーダー、所謂「支配型リーダー」と「サーバントリーダー」の違いを、7つの視点で比較してみましょう。

  支配型リーダー サーバントリーダー
モチベーション 大きな権力の座につきたい 地位にかかわらず、他者に奉仕したい
重視すること 競争を勝ち抜き自分が賞賛されること 協力して目標達成し、皆がウィンウイン
部下への影響力の持ち方 権力を使い、部下を畏怖させる 信頼関係を築き、部下の自主性を尊重
コミュニケーション方法 部下に対し、説明し、命令する 部下の話を傾聴する
業務遂行方法 自身の能力を磨き、その自信を元に指示 コーチング、メンタリングから部下と共に学ぶ
成長への考え方 社内でうまく立ち回り、自身の地位をあげて成長 個人のやる気を重視し、組織の成長と調和させる
責任への考え方 失敗した際にその人を罰する為の物 責任を明確にし、失敗から学ぶ環境を作る

【出典】”The Essentials of Servant-Leadership: Principles in Practice” Ann McGee-Cooper and Gary Looper  

※一部文言を変更

支配型リーダー

支援型リーダーは、自分中心の考え方で組織を動かします。自身の組織における権力のため、他者と競争したり、社内での地位を意識します。

部下に対しては、その権力を使って一方的な説明や命令を出す事でコミュニケーションをとります。そして、「責任」は部下を罰するためにあると考えています。

サーバントリーダー

一方サーバントリーダーは、「奉仕」の精神の元、部下を中心に考えた組織運営を行います。信頼関係を重視しており、部下の話に耳を傾け、協力しながら目標を達成していきます。メンバー個人個人のモチベーションを意識し、例え失敗してもそれを学びに変える環境づくりに取り組みます。

3.企業がサーバントリーダーシップを組織マネジメントに取り入れるメリット

それでは、実際にサーバントリーダーシップを取り入れた場合、組織にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

組織のメンバーの行動を変え、生産性を向上させる

まずは、組織のメンバーの行動に変化をもたらし、結果的に生産性を向上させます。メンバー一人ひとりの声に耳を傾け自主性を尊重するリーダーの存在により、メンバーたちの仕事へのモチベーションがアップします。

上司と部下との信頼関係も生まれ、チームが一体となって目標達成を成し遂げようと努力します。そうする事で、結果的に組織の生産性を向上させる事も繋がります。

【関連】「生産性向上」は日本経済の課題!知っておきたい法律や改善方法、導入事例をご紹介 / BizHint HR

消費者の意見に沿った経営が可能となる

過去にサーバントリーダーシップを取り入れた企業の例を見ると、これまでの組織のヒエラルキーとは逆の「逆ピラミッド型組織」が導入されています。

そして、このピラミッドの最上位に「顧客」を位置づける事で、常に消費者の意見を意識した経営戦略が行えます。顧客の事を一番理解している現場の声が尊重され、そうする事で従業員のモチベーションが向上するだけではなく、「顧客満足」をも向上させる事ができます。

4.部下の行動における、従来型との違い

従来の「支配型リーダー」と「サーバント(支援型)リーダー」、それぞれに従う部下の、行動における違いを8つの視点から見てみましょう。

  支配型リーダーの部下の行動 サーバントリーダーの部下の行動
行動動機 恐れや義務感 自主的な「やりたい」気持ちから
行動順序 指示命令を受けてから行動 言われる前から行動
アウトプット方法 言われた通りに言われたことだけ 自身で創意工夫できるところを見つけ、アウトプットする
業務遂行時の 対リーダーとのコミュニケーション リーダーの機嫌を常に伺う やるべきことに集中する
リーダーから受ける指示の解釈 役割や指示内容に集中し、それだけを聞く リーダーの示すビジョン、 やりたいこと(目的)を意識する
業務遂行過程の リーダーとの関係性 リーダーに従っている感覚 リーダーと一緒に行動している感覚
リーダーとの信頼関係 リーダーをあまり信頼しない リーダーを信頼する
業務を経て身につく教育へのスタンス 自己中心的、支配的な姿勢を身につけやすい 周囲の役に立とうとする姿勢を身につけやすい

従来型(支配型)リーダー

支配型リーダーに対して、部下は恐れを感じており「義務感」で指示に従っています。そもそもリーダーを信頼していないため、言われた事しかせず、自主的に動く事がありません。

また、リーダーへの恐れから常に機嫌を伺っており、業務への集中力に欠けます。そして、そのようなリーダーの元で育った部下は、また支配型リーダーとして新たな部下の上に立つ事になります。

サーバント(支援形)リーダー

サーバントリーダーは部下から信頼を得ており、同じ目標に向かって共に邁進しています。部下は安心して「やるべき事」に集中でき、自主的に工夫しながら行動します。そうする事で、結果的に組織の生産性の向上にも繋がります。

また、サーバントリーダーの元で育った部下は、奉仕的な姿勢を身につけやすいとも言われています。

【参考】日本サーバントリーダーシップ協会「サーバントリーダーシップとは?」

5.サーバントリーダーシップ10の特性

それでは、サーバントリーダーシップにおける10の特性をご紹介します。

傾聴

「傾聴」は、10の特性の中で最も重要です。まずは、人の話にしっかり耳を傾けます。

そして、相手が本当に伝えたい事を聞き出し、そのためにはどうすれば良いのかを考えます。また、自分自身の心の声にも耳を傾けます。

【関連】「傾聴」 /BizHint HR

共感

誰しも完璧ではないという事を理解した上で、まずは相手の立場に立って考え、相手を受け入れて気持ちを理解します。

癒し

相手の心の傷を無くし、その本質的な力を回復させます。組織の中では、欠けている部分を補完し合えるような状態を言います。

気づき

物事を敏感に感じ取り、その本質を見ます。そうする事で自身も気づきを得られ、相手にも気づきを与えられます。

納得

自身の権限を使って服従させることなく、相手に同意を得ながら納得させます。

概念化

組織の将来を見据えた目標を持ち、それを相手にも分かりやすく伝えます。

先見力

今起こっている事や過去の事例などから、今後の展望を予測します。

執事役

相手より一歩引いた立ち位置を心がけます。自身の利益よりも、相手が利益を得る事に喜びを感じます。

人々の成長への関与

メンバーそれぞれの可能性や価値に気づいていて、それぞれの成長を促す事に深く関与します。

コミュニティづくり

メンバーに対する愛情にあふれ、それぞれが成長できるコミュニティを作ります。

【参考】日本サーバント・リーダーシップ協会「サーバントリーダーシップの10の特性」

6.ただ「優しいリーダー」との違い

サーバントリーダーは「優しいリーダー」とも思われがちですが、ただ「優しい」だけではありません。その違いを見ていきましょう。

優しいリーダー

優しいリーダー=良いリーダーとも思われがちですが、「優しいだけ」なのであれば、それはメンバーへの「無関心」の表れであるケースも。

何か問題が起きてもメンバーの代わりに自分で解決してしまったり、メンバーの欠点に目を瞑ったり…それは「優しさ」ではなく無責任であり、メンバーや組織の成長を阻害している場合もあります。

ただ「優しいリーダー」との違い

サーバントリーダーシップは、リーダーがメンバーに「奉仕する」という考え方に基づいています。この事から「優しいリーダー」と思われがちですが、単にメンバーに対して「優しい」というだけではありません。

メンバーに積極的に関わり、その話に耳を傾け、組織の明確な方向性を示します。そして、メンバーを陰で支えながらもその可能性を引き出します。

7.サーバントリーダーシップ導入における注意点

それでは、実際にサーバントリーダーシップを導入する際、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。

トップから「サーバント」の精神を

組織にサーバントリーダーシップを導入する際、まずは経営層など組織のトップが自らその精神を持つ事が重要です。前提として、顧客やスタッフの満足を最優先に考えます。その上で、管理職からスタッフへと、徐々にその精神を浸透させていきます。

逆ピラミッド型組織

一般的な組織は「ピラミッド型」と言われ、上から社長・役員・部長・課長・一般社員などの順で並んでいます。しかし、サーバントリーダーシップを導入するにあたっては、これを逆さにした「逆ピラミッド型組織」を意識する事が大切です。

組織の中では、顧客の事を一番よく知っている「一般社員」が最上位に位置する事になります。そうする事で、サーバントリーダーシップ推進のためだけではなく、「顧客第一主義」を元に、本当に市場の動きに沿った経営の舵取りが可能となります。従業員満足と顧客満足の、両方を向上させられるのです。

決してトップダウンではない

一番注意したいのは、サーバントリーダーシップの推進がトップダウンの一方的なものにならないようにする事。サーバントリーダーシップ自体が、対話型のリーダーシップであることを忘れてはいけません。

トップが明確なビジョンを示す事は重要ですが、それが一般社員の意見に耳を傾けた結果である事が大切です。

8.サーバントリーダーシップの事例・効果

それでは、実際にサーバントリーダーシップを取り入れている企業の事例を見てみましょう。

資生堂

後に「サーバントリーダーシップ入門」という書籍も執筆する、資生堂元社長の池田守男氏。池田氏は、当時経営の厳しかった資生堂の社長に就任し「会社を再建する」「新しく生まれ変わらせる」という使命の元、組織改革を行いました。

「店頭基点」を念頭に、顧客を一番上に置く逆ピラミッド型組織を推進し、組織にサーバントリーダーシップの精神を根付かせました。具体的には、池田氏自ら、ビューティーコンサルタントや営業職の会議に顔を出し、現場スタッフの話に耳を傾けました。そうする事で資生堂の組織は次第に活性化し、経営も上向きに転じたのです。

【参考】「サーバントリーダー」とは? / 『日本の人事部』

スターバックスコーヒー

世界的コーヒーショップのスターバックスコーヒーも、サーバントリーダーシップを取り入れている企業の一つです。スターバックス・インターナショナルの元社長ハワード・ビーハー氏は「”サーバントな文化””人を大切にする文化”を原動力に、スターバックスを世界的なコーヒーショップにした」と語っています。

この精神から、スターバックスはストアマネージャーを対象にした「奉仕型リーダー育成セミナー」を行っています。サーバントリーダーシップの精神が組織に根付いた事により、現在では全世界で約2万4000店舗、日本でも約1700店舗(2016年3月現在)を誇る巨大コーヒーチェーンとなっています。

【参考】部下をやる気にさせる上司のサーバント・リーダーシップ 第4回アメリカで飛躍するサーバント・リーダーシップ企業

良品計画

無印良品を運営する良品計画元社長の松井忠三氏は、業績が急落したタイミングで社長に就任しました。就任後、松井氏は全国のほぼ全ての店舗を回り、店長や現場の話に耳を傾ける機会を設けました。

そして、そこで見えてきた課題を元に、業務を見える化するための「MUJIGRAM」というマニュアルを作成。

同時にスタッフの声を吸い上げるシステムも開発し、その声を元に毎月ブラッシュアップを重ねています。これは、サーバントリーダーシップの特性にある「概念化」「先見力」を駆使した事例だと言えます。

良品計画は2000年から業績を悪化させていましたが、2001年に松井社長が就任すると、その後V時回復を達成し、現在は増収増益を続けています。

【参考】無印良品がV字回復できた理由 / NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

ダイエー

ダイエーの元社長である樋口泰行氏は、自らサーバントリーダーシップを体現しました。赤字店舗の閉鎖にあたり、その対象50店舗に対し直接説明や御礼に訪れました。

すると、対象店舗のスタッフ達のモチベーションが向上。その努力により成功した「閉店売りつくしセール」が影響し、2年4ヶ月ぶりの前年比プラスの売り上げを記録しました。

閉店後も、スタッフたちのモチベーションは維持され、異動先のスタッフたちに積極的に働きかけを行った事で、ダイエーは11ヶ月連続の前年比プラスの売り上げを達成しました。

【参考】あなたはサーバント・リーダーか、支配型リーダーか?/ プレジデントオンライン PRESIDENT Online

9.まとめ

  • サーバントリーダーシップとは、従来の支配型リーダーシップとは真逆の、部下に奉仕し支援するタイプのリーダーシップを指す。
  • サーバントリーダーシップは、部下の話に耳を傾け、しっかりと相手の伝えたい事を見極める「傾聴」などの10の特性を持っており、それらは部下の行動をも変える。
  • サーバントリーダーシップは、資生堂ほか企業のトップにも影響を与え、導入した企業は一定の成果を挙げている。

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