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2018年5月6日(日)更新

ブラザー・シスター制度

人材育成方法として人気のブラザー・シスター制度。既に多くの企業が導入している制度ですが、その成果を出すには取り入れ方に工夫もが必要です。今一度ブラザー・シスター制度を振り返り、その効果を向上させるための工夫を事例でご紹介します。

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ブラザー・シスター制度とは?

「ブラザー・シスター制度」とは、新入社員の教育方法の一つで、同じ部署の先輩社員を兄(ブラザー)、姉(シスター)に見立て、先輩社員が新入社員に仕事の進め方や仕事に対する心構えを指導するとともに、職場の人間関係など業務や社会生活における不安や悩みを聞き、アドバイスを行う人材育成制度です。通常、新入社員一人に対し一人の先輩社員がつきますが、企業によっては複数の先輩社員がつく場合もあります。

似たような制度に「メンター制度」「OJT(日常業務を通じた社員教育)」があります。「OJT」と「ブラザー・シスター制度」は、業務指導という点で見ればほぼ同じですが、「OJT」が社員全体を対象としているのに対して、「ブラザー・シスター制度」は新入社員に限ったものと一般的には捉えられています。

また、「OJT」が目の前の業務に対する教育を第一義としているのに対し、「メンター制度」は指導者である「メンター」(先輩社員)が教育を受ける「メンティ」(後輩社員)のメンタル面やキャリア形成などもサポートするといった違いがあります。「ブラザー・シスター制度」は新入社員向けであることから、指導者が新入社員の相談にのるなどのメンタル面のサポートも含む場合が多く、中には新入社員向けの「メンター制度」のことを「ブラザー・シスター制度」と呼ぶこともあります。

以上のように、それぞれの制度は重なり合う部分が多い上に、「ブラザー・シスター制度」とほぼ同じ制度を「エルダー制度」、医療系企業では「プリセプター制度」という場合があるなど、類似の呼称が複数存在します。企業によって言葉の概念に違いが無いとはいえないことから、単に言葉のみで捉えてしまうと、認識がずれてしまう恐れがあります。そのため、ここでは各制度を以下のとおり整理します。

【各制度の主な違い】

■ブラザー・シスター制度( 「エルダー制度」「プリセプター制度」)

  • 対象者:新入社員
  • 指導者:同じ職場の年の近い先輩
  • 対応範囲:実務指導、職場生活上の相談
    ※企業によってはサポート範囲に職場生活上の相談が含まれないこともある。

■OJT

  • 対象者:全社員
  • 指導者:同じ職場の先輩または上司
  • 対応範囲:実務指導

■メンター制度

  • 対象者:全社員(時には経営者も対象となる)
  • 指導者:別の職場の先輩または上司
  • 対応範囲:メンティのキャリア形成、メンタルサポート

【参考】Bizhint:メンター制度導入!メンターの持つ意味と役割とは?
【参考】Bizhint:OJTの意味とは?計画の立て方、研修の内容・手法・メリットをご紹介

ブラザー・シスター制度が注目される理由

厚生労働省が行なった最新の調査によると、平成25年3月に大学を卒業して就職した新卒社員のうち、1年目に会社を辞めた人が12.7%、2年目が10.1%、3年以内が9.1%と、3年以内に仕事を辞めてしまう人は31.9%にも達しています。 これらの状況から、今や企業にとって若手社員の離職防止対策は重要な命題であり、新入社員の気持ちを理解しつつ、就業における躓きを解決する方法としてブラザー・シスター制度が注目を浴びています。

【参考】厚生労働省: 新規学卒者の離職状況「新規大学卒業就職者の事業所規模別離職状況」

ブラザー・シスター制度のメリットとは?

人材育成は時代の変化とともにその方法も変わり、メリットも時代の変化による特色が出ています。

新入社員の離職防止と企業への定着

かつて多くの職場は人間関係が濃く、特に役割を決めなくとも先輩社員の叱咤激励などにより、新入社員は自ら徐々に職場や仕事に慣れていくことが少なくありませんでした。しかし、昨今では人間関係が希薄になり、急激な生活環境の変化による不安や戸惑い、あるいは悩みを誰にも相談できず、一人で抱えてしまうことが少なくありません。

また、本来新入社員を教育し、相談を受ける立場にあるべき先輩社員も、年功序列の廃止、成果主義の導入になどにより、新入社員の面倒を見る余裕がなくなってきています。

このため、当面の業務に対する職場訓練と併せて、悩みの相談などもサポートできるブラザー・シスター制度を上手く活用することにより、新入社員の離職を防ぎ、企業への定着率向上につなげることができます。

弟・妹のスキルアップ

ブラザー・シスター制度では、通常、新入社員と年齢が近い先輩社員を指導者とします。年齢が近いことによりジェネレーションギャップが少なく、業務に対する疑問点や悩みなどを相談しやすいことや、物事に対する価値観などを共有しているため、問題を早く解決することが可能です。これにより、新入社員にとって気持ちの安定した職場環境となり、早くスキルを身につけることができます。

指導者・非指導者の同時育成

一方、指導者である先輩社員は、新入社員を教育することで、自らも経験を積むことになります。新入社員の相談にのることは、問題解決能力の向上も見込めるため、指導側の成長を促すことができます。

このように、ブラザー・シスター制度は新入社員だけでなく、指導を任された若手社員も育成できる、企業にとって一石二鳥の効果があります。

ブラザー・シスター制度のデメリットとは?

社会経験のない新入社員と、指導経験がない若手社員の組み合わせゆえに、いくつかのデメリットも存在します。

信頼関係への依存

新入社員と先輩社員の間に信頼関係ができるのは本来喜ばしいことですが、相談しやすい関係が災いして、新入社員が先輩社員に依存し過ぎてしまうことで新入社員の自分で解決する姿勢が希薄となり、却って自立が遅れてしまうことがあります。

先輩社員への負荷

ブラザー・シスター役の先輩社員は、その役割を果たすための業務的負荷が増加します。企業はそのためのサポートはもちろん、指導経験が少ないことを補うためのサポートも必須です。しかし、それらを十分行わず、結果的に新人教育が上手くいかなった場合の責任を負わせる企業もあります。

このため、新入社員は定着したものの、指導にあたった若手の先輩社員が業務過多で退職してしまうこともあります。

「先輩・後輩社員の当たり外れ」に関する不公平感

新入社員と先輩社員の関係が近いといっても、双方にお互いにを理解しようという気持ちがなければ、人材育成として成り立たない可能性があります。「隣の芝生はよく見える」との例えのとおり、新入社員が先輩社員に不満を持つと先輩社員の「当たり外れ」に不公平感を抱き、上手くいっている同期を羨んでモチベーションを低下させてしまいます。

一方で、先輩社員は日常の業務に忙殺されているにもかかわらず、新人の世話を命令されているケースが多々あります。無理して指導に時間を割いたものの、担当した新入社員の「やる気」が見えない場合、例えば、同じことを何度も聞かれる、自分で考えようとしないなどが顕著になると、指導意欲が低下し投げやりになってしまいます。

こうしたことを防ぐためには、先輩社員に対する事前のトレーナー研修、先輩社員同士の指導スキルや意識などを統一、更には企業としての組織的サポート、例えば管理者の指導役社員に対する評価や的確なアドバイスが必要です。

ブラザー・シスター制度の導入事例

実際に導入で効果を出している企業はどのような工夫を行なったのでしょうか。導入によって効果を得た企業の事例をご紹介します。

事例1.アサヒビール株式会社

アサヒビールでは、ブラザー・シスター制度を数十年前から導入しており、長い歴史を持っています。運用に関しては時代とともに少しずつ変わっていき、2006年からは公募型に切り替えています。公募型に切り替えるにあたって、「多忙な中、社員が自ら手を上げてくれるのか」人事部としてはリスキーに感じていたにもかかわらず、結果的には定員を上回る人数が名乗りを上げています。

デメリットにもあったように、命令だからと嫌々指導にあたっていてはいい結果につながりませんが、公募形にすることで、やる気のある社員に指導役を任せることができています。研修期間は半年ほどで、少し高いハードルとなる課題を出しつつも、指導側がしっかり新人の様子を見ることで、新入社員の自主的な成長を促すような研修を実施しているそうです。

入社2〜3年の社員に指導をいきなり任せてこのようなことが必ずできるわけではありません。公募制にしたからということもありますが、長年ブラザー・シスター制度を継続して取り組んできていることでノウハウが蓄積され、また、会社内で人材育成の風土ができていることが、このような研修を可能にしているポイントと言えます。

先述の通り、新規学卒者が3年以内に離職する率は3割を超えていますが、アサヒビールでは同制度を長年実施している効果もあって、全社の離職率が0.9%と著しく低く、社員の離職を防ぐことに成功しています。

【参考】DAIAMOND online: ブラザー・シスター制度を公募型に切り換えたアサヒビールの「かまい力」~教えられる側と教える側の両方を経験した若手社員に聞く
【参考】東洋経済ONLINE:【キーマンズ・インタビュー】驚異の定着率を誇るアサヒビール–林雅子・人事部キャリア開発・ダイバーシティ推進担当部長に聞く

事例2.三井住友海上火災保険株式会社

三井住友海上火災保険株式会社は、入社して3年間を義務教育期間と位置づけるなど、長い時間を要する新人教育を行っています。集合研修や現場でのOJTを繰り返し、3年間で義務教育を卒業していく育成プログラムを実施しており、そのプログラムの中にブラザー・シスター制度の導入が含まれています。

もう一つのポイントとして、新人の指導担当者の制度を大きく変革し、新人側だけでなく指導側に対して「新人指導担当者研修」を実施しています。また、狙いを明確にしたことで、ブラザー・シスターとなる指導者側の位置付けや指導方法、意識などを統一することができています。

<新人指導担当者研修の狙い>

  1. 次期マネージャー育成
    ブラザー・シスター制度によって、指導者側に人材育成経験を積ませる。
  2. 全社的な取り組みの強化
    個人ごとに指導方法にムラがあり、重要な取り組みであるということを全社的に発信することで、指導のばらつきをなくす。
  3. 指導担当者の位置づけの変更
    ブラザー・シスターの役割を「新人とのパイプ役」とすることで、孤立することなく、周辺社員を巻き込みながら、職場全体で新人を教育していく。

研修の狙いをはっきりさせたことで具体的な指導イメージができたと受講生から高い評価を得ています。

同社では、指導担当者研修後に「指導担当者の指導に変化があったか?」という社内アンケートを新入社員に対して実施したところ、3割以上が「変化があった」との回答を得ており、人事部では研修の成果を好意的に捉えています。この変化は数字にも現れ、総合職社員200名ほどが12月の時点でも離職率が0人という結果につながっています。

【参考】ToBeings:人事担当者様インタビュー「事例紹介 三井住友海上火災保険株式会社」

事例3.その他の事例

先述の通り、呼称の違いはあるものの、エルダー制度とブラザー・シスター制度はほぼ同じ内容のため、エルダー制度の事例も合わせてご紹介します。

大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社は2010年から「OJTエルダー制度」を導入しています。同社の工夫ポイントは、指導者側の意識や指導内容のレベルを合わせるため、「教育マニュアル」を作成し、指導者側と上司に配布することで教育の質の統一を図っています。

また、「Di-Q(ディーキュー:Daiwahousein-housestaffQuolification)検定」という独自の社内向け社員資格制度を実施しており、専門スキルチェックシートを使用して、上司やOJTエルダーと情報を共有しています。これにより、OJTエルダーが新人の知識レベルを把握することができるため、レベルにあった指導で成長を促すことができます。

【参考】産労総合研究所:事例No.032大和ハウス工業「集合研修・現場実習・職場でのOJTの連動と自社独自の「Di-Q検定」で必要な知識・技能を習得」

株式会社イシダテクノ

中部地区に事業所を展開している中小企業イシダテクノでは、エルダー制度実施の際に、自分が身につけたいことなどを書いた「自己啓発計画書」を新入社員に作成してもらいます。それを元に指導担当の先輩社員が「育成計画書」を作成し、2ヶ月ごとに振り返りながら指導を進めていきます。

また、同社では仕事の悩みやプライペートな相談を、ご飯を食べながら気軽にできるようにと、2ヶ月に1度、食事代程度の経費が支給されています。

【参考】株式会社イシダテクノ: イシダテクノブログ「エルダー制度」

まとめ

  • ブラザー・シスター制度は、同じ部署の先輩社員を兄(ブラザー)、姉(シスター)に見立てた新人向け人材育成制度。
  • 新入社員の離職防止と新入社員と指導を任された先輩社員の双方を育成できるのが大きなメリット。
  • 先輩社員の指導に係る負担や新入社員の過度な依存、先輩後輩の組み合わせが悪い場合に生じる不公平感などのデメリットも。
  • 適度なハードル、企業全体での人材育成体制、指導方法や指導に対する意識の統一などを工夫することでデメリットを抑え、メリットを高めることができる。

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