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2018年11月12日(月)更新

グリット

グリットとは『やりぬく力』であり、1つの物事に継続して向き合い完遂する能力のことです。才能や努力に続く第3の成功因子として注目を集めているグリットですが、ビジネスシーンにおいてどのように活用することが出来るのでしょうか。グリットを育むことによるメリットとその方法について解説していきます。

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グリットとは?

グリット(grit)は日本語で『勇気』『闘志』『根性』などの意味があります。

これらの意味を持つ英単語はそれぞれ別に存在しますが、グリットには『(歯を)食いしばる』 という意味もあるように、困難な問題や高い壁にぶつかってしまっても諦めない心という特別な状況下における一種のスキルのような意味合いが込められているのです。

gritlessという単語が『根性なしの』や『度胸のない』という形容詞であることからも、グリットの持つ力強さを感じ取ることが出来るでしょう。

このような背景から、グリットは『完遂力』や『達成力』、『我慢強さ』という形でも使用されています。

グリットが注目された背景

グリットという言葉は心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース(Angela Lee Duckworth)氏が研究成果を発表する場で何度も使用したことにより話題となりました。

しかし、なぜここまで『やりぬく力』であるグリットに大きな注目が寄せられることになったのでしょうか。

そこには成果主義という人事評価を取り、成功者に対する共通項を探し求めてきたというアメリカならではの成功への強い想いがあったのです。

アメリカでは、「成功者」の共通項を探していた

アメリカでは長年に渡り、才能と努力のどちらがより成功への鍵となるのかという議論が行われてきました。

しかし、いずれの因子でも評価することのできない成功者の存在があることから結論には至らなかったのです。 そこに第3の成功因子として提唱されたのが、やりぬく力であるグリットでした。

そのため、多くの人々はグリットの示す新たな可能性に惹かれ、注目することとなったのです。

では、アンジェラ・リー・ダックワース氏(以下アンジェラ氏)がグリットの研究を始めたきっかけとはどのようなものだったのでしょうか。

教育環境におけるIQと成績の不一致

アンジェラ氏は経営コンサルトから教師に転職し、その後心理学者になったという異色の経歴を持ちます。

教師時代、宿題やテストの採点を行う中でIQの高さと成績の高さが比例しない事に気付いたアンジェラ氏は、生徒を取り巻く教育環境に対して疑問を抱くこととなります。

当時は知能指数が成績に大きく関わっていると考える教師や親が多数を占め、児童教育の常識のように扱われていました。 しかし、授業で扱う内容は決して難しいものではなく、時間をかければ誰でも習得が可能なレベルだったのです。

それにも関わらず成績が低迷している生徒がいるという事実から『時間をかけて物事に取り組む』能力の有無が成績に深く関係しているのではないかと考えたのです。

何人もの生徒達が、才能やセンス、努力という言葉を用いて諦めてしまう姿を見てきたアンジェラ氏は、心理学的見地からのアプローチによって子供たちをより深く理解し、学習に対するモチベーションを高めてあげる必要があると考え、教育界を離れ、心理学者へと転身しました。

グリットが成功者共通の力である根拠

心理学者となったアンジェラ氏が掲げた研究テーマは『各分野における1番の成功者は誰?そしてその理由は?』というものでした。 様々な分野における成功者達の共通項から成功するために必要なものを探るという手法はこれまでにも多くの研究者達が行ってきたことでした。

しかし、アンジェラ氏は以前より用いられてきた才能や努力に加え、グリットという新しい要素を加えて研究を実施したのです。

その結果、どの分野においてもグリットが大きな影響を与えていることが明らかとなったのでした。

厳しい軍事トレーニングに耐えられる士官候補生の予測

米国陸軍士官学校の中でも特に厳しいトレーニングを実施しているウエスト・ポイント・ミリタリー・アカデミーでは、毎年多くの脱落者が出ることで有名なビーストバラックと呼ばれる初年度の夏季基礎訓練を耐え抜くことができる士官候補生の予測を行いました。

この予測を行うにあたり、士官候補生たちの高校時代の成績、SAT(大学進学適性試験)スコア、ポテンシャルスコア、PAE(体力テスト)、グリット・スケール(独自のグリット測定法)など様々なデータを収集しました。

その結果、SATやPAEなどで高いスコアを出したにも関わらず中途退学してしまった士官候補生が多くいる事実が判明したのです。 一方、グリット・スコアの高い士官候補生内からの脱落者は少なく、グリットが高いほど精神力を試される厳しいトレーニングにも耐えられることが分かったのです。

ナショナル・スペリング・ビーの優勝者予測

『英単語のスペル暗記大会』や『英単語綴り大会』とも呼ばれている、単語の綴り(スペル)の正確さを競う競技会ナショナル・スペリング・ビーでは、どの生徒が最後まで勝ち残るかという予測を行いました。

グリット・スコアと勝ち残った生徒に大きな関連性があったことから、グリットという要素が記憶力にも大きな影響を与えることを証明することができました。

過酷な教育現場で一定期間まで残る教員と、生徒への影響度の研究

教育現場では教師の指導力や教育力に注目し、教育困難な地区で働き始めた新米教師の中で誰が生徒の持つ学力をより多く引き出し、結果に結びつけることのできるのかという予測を行いました。

結果、教師の持つ知識や経験と生徒の成績は必ずしも比例しておらず、グリット・スコアの高い教師ほど生徒の成績を伸ばすことに成功していたことから、指導力や教育力という分野においてもグリットが関わっていることが明らかとなりました。

民間企業におけるトップセールスマンの予測

民間企業に協力を仰いで行った調査では、どのセールスマンが生き残り、トップセールスを記録することができるのかという予測を行いました。

この調査でも同様にグリット・スコアと営業成績が比例していたことから、グリットが高いほど営業力やコミュニケーション力が高いことを証明できたのです。

グリットと才能、素質との関連性

4つの現地調査の結果から、グリットが様々な能力に大きな影響を及ぼすことが分かりました。

そして同時に、グリットは意識することで誰でも高めていくことのできる後天性の性質を持つことから、才能や素質と呼ばれる先天性の要素との関連性が低いことも判明しました。

誰にでも手に入れることができ、様々な能力に多大な影響を及ぼすグリットは、可能性に満ちた素晴らしい成功因子として更なる研究を望まれているのです。

グリットの心身への影響

人生における究極の成功因子として期待が寄せられているグリットですが、研究の過程で悲観主義者よりも楽観主義者の方がグリット・スケールによる値が高いことも判明しました。

グリットが高い人物ほど幸福感が強く健康面においても良好なことから、グリットはメンタルヘルスや自己管理に対しても少なからず影響を与えているといえるでしょう。

自分の持つグリットを測る方法『グリット・スケール』

グリット・スケールは10個の質問に答えるだけで、自分の持つグリットを簡易測定できる非常に優れたツールです。 合計点を10で割って出た数値が自分の持つグリットのスコアとなり、その最高値は5となっています。

また、やり抜く力は『情熱』と『粘り強さ』という2つの要素から構成されており、奇数の問題の合計点を5で割ることで『情熱』のスコアを、偶数の問題の合計点を5で割ることで『粘り強さ』のスコアを算出できます。

平均値は母集団によっても大きく異なり、自身の持つグリットを育むという観点において重要な情報ではないため、意識し過ぎることはむしろ逆効果ともいえるでしょう。 大切なのは自分のグリット力を把握し、しっかりと育んでいくことです。

グリットを育む方法

グリット・スケールを使用することにより、自分の持つグリットを把握することができました。 このグリットを育むにはどのような点を意識すればよいのでしょうか。

マインドセット

マインドセット(mindset)とはこれまでの人生における経験や教育、その他の様々な要因によって形成された、物事に対する向き合い方や思考のことを指す言葉です。 『心のあり方』と表現されることもあり、価値観や判断基準、先入観などの形で表面化することもあります。

教育心理学者のキャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)氏は人間のマインドセットをその性質から2種類に細分化できることを発見し、フィックスド・マインドセット(fixed mindset)とグロース・マインドセット(growth mindset)と名付けました。

フィックスド・マインドセット

フィックスド・マインドセットは固定的な考え方のことであり、『固定思考』と呼ばれることもあります。 新たな挑戦を恐れ、挫折しやすく、他人の成功を脅威に感じてしまうなど典型的なマイナス思考であり、これ以上の成長は難しいと自分で決め付け、変化を嫌う傾向があります。

フィックスド・マインドセットの思考では現状維持を強く求めてしまうため、才能や能力が衰えることはあっても成長することは期待できません。

グロース・マインドセット

閉鎖的な思考回路であるフィックスド・マインドセットに対し、グロース・マインドセットはしなやかな考え方であり『成長思考』とも呼ばれます。

変化や課題を喜んで受け入れ、何かを得るための代償であれば障害や努力にも真正面から向き合い、他人の成功から1つでも多くのことを学べるように心掛ける。

「やればできる」という前向きでしなやかな思考によって自分自身の可能性は無限大に広がり、才能や能力に更なる磨きがかかっていきます。 そして、この「やればできる」という自分を信じる気持ちこそが、グリットを育むために重要な要素の1つなのです。

興味を持つ重要性

『好きこそ物の上手なれ』ということわざもあるように、興味心はそのジャンルにおいての成長速度を大きく加速させてくれます。

ビジネスにおける成功者達は口を揃えたように「この仕事が大好きだ」と発言し、心から楽しみながら日々の業務に向き合っているのです。

  • 先輩のような心に響くセールストークをマスターしたい
  • この小さな部品が大きな機械を動かしているなんて本当に凄いと思う
  • 自分のアイディアによって大ヒット商品を生み出したい
  • 行列の出来る飲食店にはどのような共通点があるのだろう

興味があるものにこそ情熱が沸き、結果としても現れやすくなる。 それはビジネスの現場においても同様であり、業務内容に興味心を沸かせることによって仕事に対する責任感がより一層強まり、モチベーションの向上にも繋がっていくのです。

日々の努力をサボらない

一流と呼ばれる成功者達は、自らが決めた課題や目標を達成するために努力することを惜しまないという共通点を持っています。 やり抜く力とは継続力であり、継続力はある日突然身に付くものではありません。

  • 他社から発売された新商品情報のチェックを毎日欠かさない
  • 外回りの間は笑顔を決して絶やさない
  • 提出書類に不備が無いように提出前に必ず2回読み直す

スタミナを付けるように日々を積み重ねていくことで少しずつ継続力は高まっていき、同時にグリットも育っていくのです。

慢心しない

才能がある人ほど多くの課題を自力で解決できるため、努力を必要としなくなります。 そのため、やり抜く力を育てる必要性も低くなり、自力ではどうしようもない状況に陥った際に対処できず、そのまま挫折してしまうことになってしまうのです。

グリットを育てるためには慢心することなく、常に目標に向かって努力し続ける向上心を持つ必要があるのです。

目標(目的)を設定する

目標を設定するということは、その目標に向けて努力を行うきっかけとなり、その努力を継続する確かな理由となるのです。 スタミナ的な性質を持つグリットを育てるためには、数日で達成できるような短期目標ではなく、数ヶ月や数年という単位で向き合う必要のある戦略的な目標を立てた方がより効果的です。

しかし、あまりにも難易度の高すぎる目標を設定してしまうと挫折してしまう原因にもなるため、グリットを育てる初期段階においては現実的な目標を設定するよう心掛ける必要があるでしょう。

社会への貢献意識を持つ

アンジェラ氏の研究内で行われたアンケートによると、グリット・スコアの高い人ほど自分の活動や仕事に対して使命感を持ち「社会にとって有意義なことをしている」という思考を持っているようです。

それは社会に対する貢献意識が継続力やモチベーションに影響を与えていることを示しており、何も考えずに目の前の業務や作業をこなすだけの人に比べ、グリットの育成に成功しているということに他なりません。

日々の仕事が誰かの役に立っていると自覚することは、社会の一員としての自分を再認識する行為でもあり、メンタル面の成長を大きく促すきっかけとなるでしょう。

希望を持つ

障害や困難というものは世の中の様々な場所に存在し、突如襲い掛かってきます。 その障害や困難に立ち向かう力となるのがグリットなのです。

この障害を乗り越えればきっと新たなチャンスを生み出すことができる。 たとえ失敗してしまったとしても、その経験を活かして次こそ成功させることができる。

希望を持つことで諦めることなく最後までやる抜くことが可能となるのです。 このことからも希望を持つことはグリットを育てるために必要だといえるでしょう。

世界の一流企業や著名人はグリットを強く意識している

第3の成功因子として登場したグリットは、世界の一流企業や著名人からも注目を浴びており、政治やビジネスなど様々なシーンで使用されています。

FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、ビジネスにおける成功の鍵について「信念とグリットを持つこと」と語り、Googleは人材採用基準として強いグリットを持っているか否かという点を重要視しています。

また、アメリカ合衆国の元大統領であるバラク・オバマ氏はスピーチ内でグリットというフレーズを何度も使用し、ドナルド・トランプ氏も「一途にやり通せば必ず得るものがある」などグリットに通じる多くの言葉を残しているのです。

参考書籍

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

グリット研究の第一人者であるアンジェラ氏の著書を日本語訳した『やり抜く力 GRIT(グリット) 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』には、グリットに関する数多くのエッセンスが詰まっています。

日本の企業や会社がグローバル社会で生き抜いていくため、グリットという概念を理解し、積極的に取り入れていく必要があるでしょう。

まとめ

  • グリットとは全成功者の共通点であり、ビジネスシーンにおいても大きな力を発揮する
  • グリットとはやり抜く力であり、日々を積み重ねていくことで生まれる忍耐力である
  • グリットとは一貫性を持つことであり、変えない強さも変える強さもグリットである
  • グリットは特別な素質や準備を必要とせず、何歳からでも育て始めることができる

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