連載:第4回 テレワークイベントレポート 2020
従業員の姿が見えないテレワーク。企業が従業員の不調のサインに気づくには?
テレワークでは、対面でのコミュニケーションが減り、従業員の身体・メンタルの不調といった変化が見えづらくなります。企業として従業員の健康管理へ投資し、生産性を向上するためには、どう取り組めばいいのでしょうか。そのポイントと具体策について、医師・産業医で、一般社団法人健康経営推進産業医会 代表理事を務める鈴⽊健太さんに聞きました。聞き手を務めるのは、株式会社電算 データマネジメントサービス本部 営業部 営業開発グループGM・西田慶さんです。
コミュニケーションを絶やさず、従業員の健康課題を見える化する
西田慶さん(以下、電算西田) : 産業医は、労働安全のプロフェッショナルとも言えますよね。具体的に、企業とどう関わっているのでしょうか。
鈴⽊健太さん(以下、産業医会鈴木): 産業医の知名度は上がってきたものの、一体どんなサービスや価値を提供する存在なのか、伝わりづらいですよね。一般的に、オフィス(事業場)において従業員の健康管理等を行う医師のことを、産業医と呼びます。
主な仕事としては、従業員の健康を維持し、病気にならないために予防する活動があります。たとえば、企業が従業員の不調にいち早く気づけるように、組織ルールや体制をつくるアドバイスを行います。もちろん不調を訴える従業員に対しては、個別に対応をしています。
法律で産業医の選任が義務づけられるのは、労働者が常時50人以上いる事業場。産業医会・鈴木さんによると「最近は『従業員は50人未満だけど、在宅勤務中の従業員をフォローしたい』と顧問産業医を求める企業も増えています」(画像:株式会社電算提供)
電算西田: 今は新型コロナウイルスの影響で、テレワークが急速に普及し、従業員がオフィス以外の場所で働くケースが増えています。「従業員の健康を維持するために、どう取り組めばいいのか分からない」と戸惑う企業もあると思います。
産業医会鈴木 : テレワーク導入が進み、企業が従業員の健康管理に取り組む意識が高まっていると感じています。それにつれて、 従業員の健康課題に対して効果がある施策を継続的に実践・改善する「健康経営」 の考え方も知られるようになってきています。
肝心なのは、企業としてどのような具体的な対応をするかです。例をあげると、オフィスに出勤する場合は、顔を合わせて「なあなあ」や「あうんの呼吸」で仕事を進められます。けれども、テレワークだと、企業というコミュニティやその人間関係、相手の様子が見えづらいですよね。
このような場合、コミュニケーションで「見える化」していくことが大切です。 企業の取り組みでは、テレワークで見えなくなった部分は、意識的に言葉にして伝え合ったり、みんなで集まる場をつくったりなどの工夫が必要 になります。
写真左:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センター長を経て、「Goodモチベーションアンケート」の責任者を務める西田慶さん(株式会社電算 データマネジメントサービス本部 営業部 営業開発グループGM)。右:医師・産業医の専門性を活かし、企業の健康経営をサポートする鈴⽊健太さん(一般社団法人健康経営推進産業医会 代表理事)
従業員に情報提供し、自分に合った健康管理の方法を見つけられるようサポート
電算西田 : 私自身テレワーク勤務をしていて、当初は不安がありましたが、慣れてくると生産性はオフィスで働く時と大して変わらないと実感しています。一方で、自分のペースで仕事を進められるので、長時間労働になりやすいデメリットも。気づかないうちに無理をして、体調を崩す場合もあるのではないかと思います。
産業医会鈴木 : 長時間労働といえば、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、働き方改革関連法の時間外労働の上限規制が導入されました。それによると、36協定の特別条項の有無を問わず、残業時間の複数月平均を「80時間以内」にしなければならないとされています。
こう定められた背景のひとつは、1日あたりの睡眠時間を最低6〜7時間は確保するためです。以下の図の「残業時間がない場合」を基本の働き方とすると、残業が1日4時間増えれば、1か月で80時間にまで膨らみます。
残業時間が増加すると、食事や風呂などリラックスのための時間が丸ごとなくなりますよね。このように、 睡眠と仕事の行き来をするばかりの状態に陥ったら「アラート」が出ていると考えるべき です。
「健康を維持するための指標として、従業員も企業も、残業時間を確認すること。過重労働は、メンタル不調や過労死のリスクに繋がると意識しましょう」と産業医会・鈴木さん(画像:セミナーの講演内容をもとに、BizHint編集部が作成)
電算西田: テレワークをしていると、こまめに休憩を取ったり運動をしたりといった、体調の自己管理がすごく大事だと感じます。従業員の自己管理について、企業としてはどうアプローチすればいいでしょうか。
産業医会鈴木: 極論を言えば、自己管理は個人でするものですが、企業がフォローに入る施策も必要です。
まずは 自己管理に役立つ情報、食事や睡眠の取り方、リフレッシュの仕方などを、従業員にしっかり伝えて いきましょう。例をあげると、パソコンで1時間作業を続けた時は、5分〜10分はパソコンから離れてリフレッシュするだけで、生産性が上がるとか。
また、情報共有するだけでは、自己管理ができない人もいますので、定期的に運動する場を設けるのはどうでしょうか。たとえば、福利厚生の一環で、外部講師を招いたヨガ教室などのオンラインイベントを開き、従業員に告知・参加してもらうとか。
企業は、こうした 健康を意識するきっかけを与えて、従業員が自分に合った管理方法を見つけられるように手助けする といいでしょう。それに定期的に集まる場があれば、月に1〜2回は従業員同士のコミュニケーションが生まれますしね。
メンタル不調のサインを見逃さず、ツールを積極的に活用してケアする
電算西田 : テレワークでは、生活と仕事の場が一緒になります。育児・介護での悩みや今後のキャリアへの不安などを、ひとりで抱えてしまうと、こころの病気につながるリスクも生じます。しかし、メールや音声通話、テレビ電話が中心だと、従業員の変化を把握しにくい。従業員のメンタル面について、企業はどのようにサポートしていけばいいですか。
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