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2018年1月21日(日)更新

心理的安全性

心理的安全性とは、自分の言動が他者に与える影響を強く意識することなく感じたままの想いを素直に伝えることのできる環境や雰囲気のことです。チーム生産性を高める唯一の方法として、米グーグル社が発表したことで大きな注目を集めることになった心理的安全性のスムーズな組織導入をサポートするため、心理的安全性不足により生まれる4つの不安や心理的安全性の確保によって得られる効果、高める際に気をつけておくべき注意点や効果的な高め方など、分かりやすくまとめて解説致します。

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心理的安全性とは

心理的安全性とは、サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)という英語を和訳したものであり、ビジネスと強い関連性を持つ心理学用語です。

心理的安全性は、他者の反応に怯えたり羞恥心を感じることなく、自然体の自分を曝け出すことのできる環境や雰囲気のことを指します。プロジェクト活動などのビジネスシーンにおいても、本来の自分とは大きく異なる仕事用の人格を演じることなく、チームに所属する全てのメンバーが普段通りのリラックスした状態で活動に参加することを可能にしてくれます。

この心理的安全性という言葉自体は以前から存在していましたが、アメリカのGoogle Inc.(以下、グーグル社)が2012年から約4年もの年月をかけて実施した大規模労働改革プロジェクト、プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)や、その他の人事関連研究の成果報告として『心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである』と発表したことにより、大きな注目を集めました。

【関連】プロジェクトアリストテレスとは?チームを成功に導く心理的安全性 / BizHint HR

日本人の国民性と心理的安全性

日本人の多くは与えられた仕事に対する強い責任感と他者を気遣う心を持っています。この誠実で思いやりのある国民性は様々な場面でプラスの効果として発揮しますが、他者評価を気にするあまり心理的安全性が高まりにくいといったマイナス面も持ち合わせています。

そのため、心理的安全性の確保は多くの日本企業にとって優先度の高い重要課題となっているのです。

googleが発見した成功するチームを作り上げる5つの鍵

【出典】re:Work - The five keys to a successful Google team

グーグル社はアメリカの大手通信社であるAP通信(Associated Press)との共同研究結果として、2015年11月に自社の情報サイト『re:Work』上でチームを成功へと導く5つの鍵を公開しました。

  1. 心理的安全性(Psychological safety)…不安や恥ずかしさを感じることなくリスクある行動を取ることができるか
  2. 信頼性(Dependability)…限りある時間を有効に使うため、互いに信頼して仕事を任せ合うことができるか
  3. 構造と明瞭さ(Structure & clarity)…チーム目標や役割分担、実行計画は明瞭であるか
  4. 仕事の意味(Meaning of work)…メンバー一人ひとりが自分に与えられた役割に対して意味を見出すことができるか
  5. 仕事のインパクト(Impact of work)…自分の仕事が組織内や社会全体に対して影響力を持っていると感じられるか

チームを成功へと導く5つの鍵の1つとして心理的安全性の名前があげられていますが、グーグル社はこの記事の中で『(成功するチームに含まれる単なる1要素ではなく)心理的安全性はその他の4つの力を支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素』であると綴っています。

戦略的に生産性の高いチームを作り上げるため、経営者や人事担当者は心理的安全性の高い環境を意識的に構築し、維持するよう心掛ける必要があるでしょう。

【参考】re:Work - The five keys to a successful Google team

心理的安全性の確保によって得られる効果

心理的安全性の確保によって得られる効果には次のようなものがあります。

【主に組織側が享受できるメリット】

  • 生産性の大幅な向上
  • ホウレンソウ(報告、連絡、相談)の徹底
  • 成功や目標達成を阻む障害の排除
  • 円滑なコミュニケーションによる作業効率の向上
  • 各メンバーの積極的な活動参加
  • 各メンバーの思考や将来ビジョンの明確化
  • 人材の持つポテンシャルの最大化
  • 学習する組織(チーム)の構築
  • イノベーションが生まれやすい環境の構築
  • 建設的な議論を行える環境の構築
  • 優秀な人材の流出や退職の抑制

【主に従業員やチームメンバーが享受できるメリット】

  • クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life、QOL)の向上
  • メンタルヘルスケアの一環としての効果
  • 最高のパフォーマンスを発揮できる職場環境の獲得
  • 長期にわたって働きたいと思える職場環境の獲得
  • 将来ビジョンを実現させるための人材育成計画を構築してもらえる

このように、組織側が率先して心理的安全性の確保と維持を目的とした施策を実施することにより、組織やプロジェクトチームだけでなく従業員や社員、チームメンバーに対しても多くのメリットを与えることができます。

アクティブで生産性の高い組織や働きがいのある職場環境の構築を実現させるため、経営者や人事担当者は心理的安全性の重要性と扱う上での注意点、効果的な高め方について正しい知識を身に付ける必要があるでしょう。

心理的安全性がチーム生産性に与える好影響

2年に1度発表されている『Thinkers50(世界で最も影響力の高いビジネス思想家50人)』にて2011年(35位)、2013年(15位)、2015年(16位)と3期連続入賞を果たしているハーバードビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)教授は、世界の著名人たちが自身の人生経験から導き出した貴重でクオリティの高い経験則の数々を披露するスピーチフォーラム『TED』において、心理的安全性とチーム生産性の高い関連性を示す実例として、MEMORIAL(記念病院)とUNIVERSITY(大学病院)を対象に実施したある研究についてスピーチしました。

優れた学習フレーム(学習力)と実行フレーム(実行力)を持ち合わせた『チーミング』の重要性を唱えるエドモンドソン教授は、病院内のチーム力を高めるための方法を模索する中で、看護師と医師で構成された8つの調査チームによる人為的ミスが原因となる医療過誤(調剤過誤)の回数調査と、先入観を持たせないために一切の研究目的を伝えていない研究アシスタントによる調査チームの実情調査を実施しました。

研究当初、エドモンドソン教授は「良いチームほど医療過誤の回数は少ないだろう」と予測していました。しかし、調査結果の分析を進めるうちにその予想が完全な誤りであることが分かったのです。

研究アシスタントが『開かれた雰囲気』を基準として8つの医療チームを評価したところ、報告された医療過誤の回数の多さとチーム内のコミュニケーション性の高さはほぼ比例していました。医療現場では良いチームほど積極的に失敗事例の洗い出しと共有を行い、現状改善に向けて問題提起と話し合いを行っていたのです。

この研究結果から、医療分野においても心理的安全性の確保が生産性の向上に効果的であることが明らかとなりました。

【参考】Building a psychologically safe workplace: Amy Edmondson at TEDxHGSE - YouTube

心理的安全性不足が引き起こす4つの不安と行動特徴

【出典】Building a psychologically safe workplace: Amy Edmondson at TEDxHGSE - YouTube

先述したハーバードビジネススクール教授のエドモンドソン教授は、スピーチフォーラム『TED』において、心理的安全性不足が引き起こす4つの不安と行動特徴も紹介しています。

  • IGNORANT(無知だと思われる不安)
  • INCOMPETENT(無能だと思われる不安)
  • INTRUSIVE(邪魔をしていると思われる不安)
  • NEGATIVE(ネガティブだと思われる不安)

これらの不安を払拭するため、心理的安全性が確保されていない職場では多くの従業員たちが自己呈示行動(self-presentation)や自己印象操作(self-impression management)を行い、本当の自分を偽りながら働いているとエドモンドソン教授は語っています。

【参考】Building a psychologically safe workplace: Amy Edmondson at TEDxHGSE - YouTube

無知だと思われる不安

IGNORANTには『無知の』や『不明』といった意味があります。「こんな事も分からないのか」と思われないようにするため、作業内容や業務目的の説明において曖昧で不明な点があっても質問や相談をして確認することができなくなります。

無能だと思われる不安

INCOMPETENTには『無能な』や『無力』、『不適格な』といった意味があります。「こんな事すらできないのか」と思われないようにするため、ヒューマンエラーによって生まれた失敗やミスを報告せずに隠し、間違いや勘違いを認めることができなくなります。

邪魔をしていると思われる不安

INTRUSIVEには『邪魔になる』や『押し付けがましい』、『差し出がましい』といった意味があります。自分の発言によって議論が長引いたり本線から外れることで「あの人はいつも私たちの邪魔をしてくる」と思われないようにするため、自発的な発言を控え、新たなアイデアを出すことができなくなります。

ネガティブだと思われる不安

NEGATIVEには『負』や『消極的な』、『否定的な』といった意味があります。「あの人は消極的でいつも否定ばかりする」と思われないようにするため、現状改善を目指す前向きな想いから生まれた指摘内容であっても、否定的な意味合いが少しでも含まれている場合には発言することができなくなります。

心理的安全性を効果的に高める方法

多くのメリットを享受することができる心理的安全性ですが、その扱い方や高め方を誤ってしまうと効果が激減したり逆効果となってしまうこともあります。心理的安全性を高めるための方法は数多く存在するため、自社の労働環境を見つめ直した上で優先度の高い施策を選択し、効果的に高めていけるように努めましょう。

4つの不安を引き起こす原因を排除する

心理的安全性不足が引き起こす『無知』、『無能』、『邪魔』、『ネガティブ』に対する不安を放置してしまうと、今以上に心理的安全性が醸成されにくい環境が構築されてしまいます。そのような状況に陥らないためにも最優先で職場内に存在している4つの不安に対する対策を図る必要があるのです。

4つの不安に対する具体的対策には以下のようなものがあります。

  • 助け合うことで道が拓かれることを正しく理解してもらう
  • 全メンバーの認識と発言力を揃え、フェアな関係を作る
  • 発言機会を均等に与え、社会的感受性を高める
  • ダイバーシティ&インクルージョンの推進

助け合うことで道が拓かれることを正しく理解してもらう

常に市場ニーズが変化し続けているビジネスシーンにおいて『分からないこと』や『できないこと』が発生することはごく当たり前のことですが、その事実を正しく教えてくれる上司や指導者はほとんどいません。しかし、分からないことを尋ね合い、できないことをサポートし合えることがチームの強さであり、本来の姿であることを正しく理解してもらうだけでメンバーの精神環境に大きな余裕が生まれます。

一見するとマイナス要素に思えるこの2つですが、『専門的な知識を深めるチャンス』や『スキルを磨いて成長するチャンス』に置き換えることで、質問や失敗報告をミスではなく成長機会に昇華することが可能となるのです。

全メンバーの認識と発言力を揃え、フェアな関係を作る

組織やチームの発展や目標達成のために行う発言は全て価値あるものであり、他のメンバーに頭ごなしに否定されるものではありません。しかし、活動内容やルールが曖昧な環境下では暗黙の了解や一部のメンバーによる独裁が発生しやすく、同調圧力によって発言内容が制限されることが少なくありません。

このような状況に陥らないようにするため、目標や方向性をしっかりと定め、不文律ではなく明文化された規則や規律を中心に扱うことも重要となります。

発言機会を均等に与え、社会的感受性を高める

カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University、CMU)とマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)、ユニオン・カレッジ(Union College)の共同研究記録やグーグル社のプロジェクトアリストテレスの研究記録によると、どのような課題に対しても十分な成果を残すことができるチームはいずれも『均等な発言機会(equality in distribution of conversational turn-taking)』と『社会的感受性の平均値(average social sensitivity)の高さ』を持ち合わせているといいます。 これを組織側が施策として意識的に取り入れると次のようになります。

  • リーダーが各メンバーに対して問い掛けを行うことで発言を引き出す
  • 発言時間を均等に分配し、他者の発言時間を気にすることなく発言できる環境を構築する
  • Reading the Mind in the Eyes Test(RMET)を実施し、メンバーの持つ社会的感受性を測定する
  • Sensitivty Training(ST)などの感受性トレーニングを実施する

【関連】プロジェクトアリストテレスとは?チームを成功に導く心理的安全性 / BizHint HR

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

ダイバーシティ(diversity)は多様性ですが、インクルージョン(inclusion)はその多様性を包み込むように受け入れることを指します。 このインクルージョンを推進することにより、国籍や性別、年齢、役職を超えたフラットな関係性を構築することが可能となり、個々の視点や価値観をベースとしたバラエティ豊かな意見やアイデアがたくさん飛び交うようになります。 他者の話にしっかりと耳を傾け、その発言の真意を読み取るため真剣に向き合うように指導することによって、業務を通じて社会的感受性トレーニングを実施することもできるでしょう。

【関連】ダイバーシティとは?意味や経営を推進するためのポイント / BizHint HR
【関連】インクルージョンの意味とは?ダイバーシティとの違いを含め解説 / BizHint HR

メンバー間の相互信頼性を高める

どれだけ優れたアイデアを持ち、相手のことを深く理解しようと努力したとしても、相手も同じように自分に対して真摯に向き合ってくれていると信じることができなければ自発的な提案を行うことは難しくなってしまいます。

各メンバーが持てる全ての力をチーム目標達成に向けた取り組みへと注ぎ込み、協力体制の下に一丸となって活動するためにも、良質な信頼関係の構築に向けたサポートをチームマネジメントに組み込む必要があるでしょう。

アイスブレイクを活用する

緊張感は張り詰めた空気を通じて伝染し、全メンバーの言動を抑制してしまいます。このような状況を抜け出すため、場を和ませることを目的として実施する様々な手法をアイスブレイクといいます。

心理的安全性を高めるために有効なアイスブレイクには以下のようなものがあります。

  • 上司やプロジェクトリーダーなど、上位にあたる人物から自己紹介を行う
  • 趣味や特技、個人的目標などプライベートな部分を含んだ自己紹介を行う
  • 今回のプロジェクトを通じてどのような成長を目指しているかオープンに語り合う
  • 互いの名前を楽しく覚えることができる積木式自己紹介を実施する

全メンバーが自発的に会話へ参加し、自然な笑い声で溢れかえる明るい雰囲気を作り上げることによって、チーム内の心理的安全性を大幅に高めることができるでしょう。

【関連】アイスブレイクの意味や目的とは?会議や研修、採用面接で使える手法をご紹介 / BizHint HR

チームマネージャーがメンバーのサポート役に徹する

心理的安全性を効果的に高めるためには各メンバーが自発的かつ積極的に活躍できる環境を構築することが大切です。世界最高レベルの従業員満足度を誇るグーグル社は、社内で働く1万人以上の従業員を対象に実施した人事評価プログラム『Project Oxygen』の調査結果の中でチームの生産性を高めることができる『最高の上司の条件』として次の8つをあげています。

  1. (部下やチームメンバーにとって)良いコーチである
  2. マイクロマネジメントを行わず、チームに権限を与えてくれる
  3. チームメンバーの成功やプライベートの充実、健康に関心を示してくれる
  4. 生産的で結果指向である
  5. 良い聞き手であり、情報共有を円滑にする良いコミュニケーターである
  6. (部下やチームメンバーの)キャリア開発を支援してくれる
  7. チームを導くための明確なビジョンや戦略を持っている
  8. チームをサポートするために必要な専門的技術やスキルを持っている

このことから従業員満足度を高め、各メンバーのパフォーマンスを最大限に発揮するためには『リーダーシップ』だけではなく『サポートシップ』などの支援的能力も必要であることが分かります。

チームマネージャーに対してサポートに重点を置いたチームビルディングを実施することで、チーム内の自発的活動性と心理的安全性は高まっていくでしょう。

【関連】従業員満足度とは?上げる方法と、向上事例・施策をご紹介 / BizHint HR
【関連】チームビルディングの意味・目的とは?ゲームなどの手法もご紹介 / BizHint HR

風通しの良い組織を構築する

日本企業の多くは管理力や統率力の高いピラミッド型の組織形態を取っていますが、このピラミッド型組織には下位層(ボトム)から上位層(トップ)に向けて本音でコメントを行いにくいという欠点があります。

このように普段から意見や提案を行いにくい環境に置かれた労働者たちはチーム活動においても互いの立場や年齢を意識してしまう傾向にあるため、役職や雇用形態に関係なく全ての労働者が対等な立場でコミュニケーションを図ることができる風通しの良い組織を構築する必要があります。

ピラミッド型組織からフラット型組織への転換は簡単に行うことはできませんが、コミュニケーション面における組織内フラット化を進めるだけでも組織力や心理的安全性の向上を図ることができるでしょう。

ポジティブ表現やポジティブ思考を活用する

テクニカルな部分ではポジティブ表現やポジティブ思考(プラス思考)の活用という方法もあります。

【部下、メンバー側視点】

  • 「質問ばかりしていたら無知だと思われるかもしれない」→「積極的に学ぼうとする姿勢を評価してもらおう」
  • 「ミスを報告することで無能だと思われるかもしれない」→「今回の失敗を次に活かすためのアドバイスをもらいたい」
  • 「自分の発言は会議の邪魔になるかもしれない」→「自分の価値観や視点をチーム目標の達成に活かしたい」
  • 「否定的な意見によってネガティブな人間だと思われるかもしれない」→「自分の発言が現状打破や改善のきっかけになれば」

【上司、リーダー側視点】

  • 「なんでそんなことも分からないんだ」→「正しい知識を身につけようとする姿勢はとても大切だ」
  • 「お前は何をやっても失敗する」→「この会社にはまだまだ多くの素晴らしい技術やスキルがあるから頑張って会得してもらいたい」
  • 「その情報は今必要としていない」→「チームが多角的視点を持つための貴重な意見として受け入れる」
  • 「いつも否定的な意見ばかり発言する」→「問題解決に向けたクリティカルシンキングとして歓迎する」

発言を行う側、発言を受ける側の両方が前向きな姿勢で活動に取り組むことにより、チーム内の心理的安全性は急速的に高まっていくことでしょう。

チーム編成の見直しを行う

様々な施策を実施したにも関わらず、心理的安全性の確保を行えなかった場合にはチーム編成の見直しを検討してみましょう。

グーグル社の実施したプロジェクトアリストテレスにおいて、メンバー個々のパフォーマンスや保有スキルに着目したチーム編成とチームの生産性には大きな相関性がないことが明らかとなっていますが、多くのメンバーが重複しているにも関わらず一部のメンバーが異なるだけでチーム成果に大きな差が生まれたという同研究の結果から、コミュニケーションの円滑性に大きな影響を与えるチーム編成も心理的安全性の向上に重要な要素であるということがいえます。

心理的安全性を高める際の注意点

心理的安全性は組織やチームの生産性を大幅に向上させる優れた要素ですが、取り扱い方を誤ってしまうと思わぬ損失を被ることがあります。

馴れ合うだけの関係は生産性を大幅に低下させる

チーム内の心理的安全性が高まることでメンバーはリラックスした状態でコミュニケーションを図ることができるようになります。

しかし、従業員やメンバーの中には勤労意欲やエンゲージメントが低く、目標を達成するという強い意志や責任感が不足していることから快適な職場環境を『自身の能力を最大限に活かせる場所』ではなく『ぬるま湯』として受け取り、他の従業員やメンバーを巻き込んで馴れ合いの関係を築こうとする者もいます。

これでは生産性が大幅に低下してしまい逆効果となるため、心理的安全性を確保するための施策を実施する際には、意識改革や現場管理の徹底も同時進行で行わなければなりません。各メンバーに対して一定の責任や個人目標を与え、上司やリーダーの視点から適切な管理を行うことにより、リラックス状態を維持しながらも公私混同することなく目標に向けて突き進むことのできるチームを構築することができるでしょう。

心理的安全性の確保と役割放棄は全くの別物である

プレッシャー(圧力)を排除することによって活動の自由度を高めようと、部下やチームメンバーに対して一切の注意や指導、指示を行わないという施策を取る上司やプロジェクトリーダーの姿を見かけることがありますが、これは大きな間違いです。

2011年からグーグル社でピープルディベロップメント(People Development=人材開発)やラーニング・ストラテジー(Learning Strategies=学習戦略)に携わり、現在モティファイ株式会社の取締役を務めているピョートル・フェリークス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)氏は、求人情報・転職サイトのDODA(デューダ)が実施したインタビューにおいて「ある実験で、上司から何も指示を与えられないチームと、すべて指示通りに動くチームとでは、前者のほうが圧倒的にパフォーマンスが低いという結果もあるんですよ。」と語っています。

このことから、生産性の向上という目標に対して注意や指導を行わないという対応は完全な逆効果であり、単なる役割放棄にしかなっていないことが分かります。各メンバーの持つ能力を最大限に引き出せるように最適なサポートを実施し、同時に職場内における言動の自由度を高めることによって初めて、生産性を向上させるための心理的安全性の確保が行えたといえるでしょう。

【参考】Googleの「最高の上司」がチームの生産性を高めるためにしていること / 未来を変えるプロジェクト by DODA

まとめ

  • 心理的安全性とは労働者一人ひとりが本来の自分の姿で働くために欠かすことのできない重要な要素である
  • 心理的安全性という言葉は前から存在していたが、米グーグル社がプロジェクトアリストテレスの研究結果内で『チームの成功に最も重要な要素』として扱ったことにより大きな話題となった
  • 心理的安全性が不足した状態が続くと『無知』、『無能』、『邪魔』、『ネガティブ』の4つの不安が大きくなっていく
  • 心理的安全性はチームの生産性をはじめ、多くの要素に好影響を与える
  • 心理的安全性を高める際には馴れ合いチームや役割放棄とならないように注意しなくてはいけない
  • 自社に必要な施策を見極め、優先順位をつけて実施することによって心理的安全性を効果的に高めることができる

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