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2019年4月9日(火)更新

権限委譲

「権限委譲」とは、「エンパワーメント(empowerment)」とも呼ばれ、上司の業務上の権限の一部を、部下に分け与えることをいいます。権限委譲は、適切に行うことで社員の能力開発に大きく貢献し、組織の生産性を向上することに役立ちます。そこで、権限委譲の意味や、正しく行う方法について、わかりやすく解説します。

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権限委譲の意味とは

「権限委譲」は「エンパワーメント(empowerment)」とも呼ばれ、上司の業務権限の一部を部下に分け与えて、本人の裁量で仕事をさせることをいいます。これは、社員の自律性を涵養して成長を促進させることを目的としており、ひいては組織・企業全体の生産性の向上に繋がる、大変有効なマジメント手法です。

ただし、意味を正しく理解しないまま導入してしまうと、逆にプロジェクトの進行を阻害してしまうことにもなりかねません。この方法を用いて成果を上げるためには、組織の理解とバックアップが必須だといえるでしょう。

そこで、「権限委譲」を効果的に活用するために必要な知識を、詳しく解説していきます。

権限委譲と権限移譲の違い

「権限委譲」と似たワードに、「権限移譲」があります。字面はほとんど同じように見えますが、両者では大きく意味が異なります。

「権限委譲」とは、上位の者が下位の者へ、自身の権限を譲ることをいいます。各々の役職には変更がないため、部下の仕事の最終責任は、それまで通り上司が負います。「権限移譲」とは、対等な立場の他者へ自身の権限を譲渡することであり、責任も含めてそのままスライドするという意味があります。

つまり、「権限委譲」においては、事前に決められた業務について、上司の決裁なく部下の判断で進行することに許可が与えられますが、その結果責任はすべて、部下に権限を委譲した上司が負う、ということを前提としています。権限委譲の導入にあたっては、これを理解しておくことが、非常に重要です。

権限委譲のメリット

「権限委譲」を取り入れることは、次に列挙するような、多くのメリットをもたらします。

①一段階上の仕事に取り組ませることで、社員のモチベーションが上昇し、成長する

権限委譲によって上司の権限の一部を与えられるということは、部下の現在の職階よりもワンランク上位の仕事を行うことができるということです。それは、該当社員の自尊心とモチベーションを高め、結果にコミットする意欲を喚起することでしょう。また、一段階上の仕事に取り組むことで、これまでにない困難にも立ち向かうことになります。さらにその過程において、試行錯誤しながら課題を解決していくことで、本人のポテンシャルが開発され、結果的に大きな成長を遂げることになるでしょう。

社員の現在の能力よりも少し上の仕事をさせること、そしてそれを繰り返すことで、本人のモチベーションを担保しながら、効果的に成長させることができます。

②自己裁量で仕事をさせることで、社員の目的意識と責任感が強化される

これまで上司の指示に基づいて進行していた仕事に関して、自身の裁量で進行することができるようになれば、部下の目的意識や責任感は大きく向上するでしょう。 また、失敗してしまったときの納得感も大きく、ただ反省するだけではなく、今後その失敗を防ぐためにはどのようにすべきかを自発的に検討するようにもなるでしょう。 個々の社員の当事者意識を強化することは、仕事の精度を上昇させ、ひいては企業全体の生産性を上げることに繋がります。

③現場のスピーディな意志決定により、市場競争力が増す

市場競争の激化に伴い、商品力やブランド力はもちろんのこと、スピーディで柔軟な顧客サービスが求められる時代です。そういった中、社内決裁のルートを短縮してスピード感のある商談や対応を実現することができれば、企業としてのアドバンテージをまた一つ獲得することになります。

④上司がコア業務(戦略・マネジメント)に専念できる

上司が部下に多くの仕事を任せることができれば、部下の仕事のサポートにかかる上司の工数は大幅に減少します。それによって上司がより専念すべきである企画戦略や、全体を通してのマネジメント業務に時間を充てることができるようになり、組織としての生産性が向上します。

⑤タレントマネジメントによる人材の適正配置に役立つ

近年、タレントマネジメントによる人事管理が注目されています。権限委譲はこの概念と親和性が高く、権限委譲によって開発された社員の能力・才能(タレント)をデータベースへ蓄積していくことによって、全社的な人材ポートフォリオを創り上げていくことが可能になります。権限委譲にコストをかけることが、ひいては社内リソースを最大限に有効活用することに繋がるのです 。

【関連】タレントマネジメントで社員が変わる!育つ!人材データベースによる配置最適化 / BizHint HR

権限委譲のデメリット

権限委譲の適用によって、デメリットを生んでしまうケースもあります。しかしながら、そういったケースは、権限委譲の意味を正しく理解せずに実施したことが原因である場合が多いといえるでしょう。以下に、具体例を挙げていきます。

①権限委譲された社員の能力が追いつかず、適切に業務を遂行できない

権限委譲された社員の能力が必要なレベルに追いついておらず、業務の進行に支障をきたしたり、適切に業務を遂行することができない、といったケースが挙げられます。上司の工数を減らして業務を効率化する目的で権限委譲を取り入れたにもかかわらず、逆に大きなロスが発生してしまい、権限委譲の有効性そのものに疑問を抱くことにもなりかねない事態です。

しかしながら、こういったケースは、権限委譲という方法や該当部下に問題があるというよりは、上司もしくは組織サイドの判断ミスが原因であると言わざるを得ません。どこからどこまでの範囲の権限を、どの部下に譲渡するかは、事前に個々の部下のデータを検討した上で、慎重に判断を下すべきです。権限委譲の成否は、このジャッジメントの正確さによって決まるといっても過言ではないでしょう。

②部下へ権限委譲によって、意思決定の基準が保身や目先の利益になるリスクがある

上司が行っていれば、企業利益のために全体的な視野をもって判断されていたであろう事項について、部下に権限を委譲することによって、意思決定における基準が部下自身の保身や目先の利益になってしまう、というリスクも挙げられます。

このようなケースについては、上司による部下の教育が必要です。なぜこのような基準で判断してはならないのか、企業活動とは何を目的としているのか、このような判断がひいては部下自身の評価を下げることになってしまうということを、部下が納得するように説明し、部下の意識改善を行いましょう。

③マネジメントに問題があり、逆に部下のモチベーションが下がってしまう可能性もある

権限委譲を効果的に用いるにあたっては、上司のマネジメントが非常に重要なポイントとなります。「マネジメントを行わないのが権限委譲」ではなく、「権限委譲はマネジメントの一つ」であると認識し、適切な方法で権限委譲を行う必要があります。上司のマネジメントに問題があることによって、部下のモチベーションが上がるどころか下がってしまったり、やる気を失ってしまう可能性も大いにあるのです。

間違った方法としては、「部下に仕事を丸投げして助言や支援を行わない」「責任を回避しようとする」「一度の失敗で部下を叱責したり権限を奪取する」「細かく指示を出したり、上司の意思に従うよう圧力をかける」といったパターンが挙げられます。

④そもそも権限委譲という方法が向かない業務もある

ただし、一度の失敗が人命にかかわるような業務については、そもそも権限委譲という方法が向かないので、適用すべきではないでしょう。また、事業戦略や人事評価といった経営の根幹に関わる業務についても、権限委譲を行うことは望ましくありません。

権限委譲を正しく行う方法とポイント

権限委譲を行うにあたって、「目的は部下の能力開発によって生産性を上げること」であるという組織内のコンセンサスが必須です。組織と上司が一体となって部下が委譲された業務を遂行できるようサポートし、部下のモチベーションを保ち続けることが、権限委譲を成功させるための重要なポイントです。

上司の工数を削減するために権限委譲を行いたいのに、これでは意味がないと思われるかも知れません。しかしながら、このイニシャルコストが後々の利益に繋がると考えて、手間を惜しまずに部下を支援しましょう。部下が自走するようになれば、生産性は飛躍的に向上し、大きなメリットを享受することができます。

環境づくり

権限委譲にあたって必要な部下のバックアップ体制について、具体的な施策を説明します。

①社員の能力を多面的に把握したうえで、少し上の仕事をさせる

まずは、社員一人ひとりの現在の能力とポテンシャルについて、正確かつ多面的に把握する必要があります。これまでのデータから社員の能力、特性を導き出し、それによって「誰に/どこからどこまでの権限を/いつから委譲するのか」を明確にします。現状の本人よりもワンランク上の業務で、なおかつハードルが高すぎない適度な難易度で、本人の適性に合った職務内容の適切な権限委譲を行うようにしましょう。

②コンプライアンス上のNG事項などは押さえておく

権限を委譲するといっても、「これだけは絶対にしてはならない」という事項については必ず業務事前に伝えておきましょう。上司が当たり前のことだと思っていても、部下本人にその認識がないまま業務を進めて、思わぬ事態が発生してしまう可能性もあります。そうなった場合、上司が責任を被らなければならないのはもちろんのこと、部下も自分の失敗に対して大きな後悔を抱くこととなり、双方ともに痛手を負ってしまいます。

そういった事態を防ぐために、当然だと思えるようなことでも、コンプライアンスなどの重要事項については、事前にきちんと確認を行いましょう。

③最終責任は上司が負うということを明言する

権限委譲を行っても、業務にあたっての最終責任は上司が取るということは、部下に明言しておきましょう。それが管理職の存在意義であり、権限委譲の前提条件です。それを部下に認識させることによって、甘えを誘発するということにはなりません。むしろ、上司の信頼に応えるべく、責任感と緊張感を持って業務にあたるような社員でなければ、重要な権限を委譲すべきではありません。

④随時報告を受け、求めに応じて適切な助言や支援を行う

権限を委譲するといっても、最初から部下一人で何もかもを立案して行動するのは、現実的に困難でしょう。定期的に報告を受ける時間を設定して相談に応じたり、部下から求められたら、適切なアドバイスや支援を行いましょう。

⑤結果を評価する

権限委譲した業務の完了時、まずは結果に対して肯定的な評価をすることがとても大切です。 部下にとって一段上のミッションに取り組むということは、それだけで大きなプレッシャーとなっています。初めてのことで至らない点も多いとは思いますが、それでもまずは自律的に業務を進めて完了させたことを評価することで、部下のモチベーションを維持しましょう。そのうえで厳しい指摘を含む細かいフィードバック、次回を見据えた改善点などを伝えていきましょう。

上司の自覚

権限委譲にあたっては、実は、上司の側の心構えや自律性も問われるのです。これを機に、上司のマネジメントスキルも、高度な次元で向上させることができるでしょう。

①任せたからには、気になっても細かい口出しをしない

初めてのことに取り組む部下を見ながら、危なっかしくてつい口出しをしたくなる気持ちは誰もが抱くものだと思います。 しかしながら、部下本人に仕事を任せたからには、グッと我慢して一度本人のやり方でやらせてみる、忍耐強さを持ちましょう。 もちろん適宜アドバイスやサポートも必要ですが、基本的には部下からの求めがない限り、上司の側からあれこれ世話を焼くことは控えましょう。 余り口を出し過ぎると、また注意されるのではないかと、部下が行動しづらくなってしまいます。また、自分は信頼されていないのではないか、権限委譲というのは名ばかりなのではないかと、モチベーションを下げる結果にもなってしまいます。

②一度の失敗で諦めない

権限委譲において、部下にとっては初めての取り組みで勝手がわからなかったり、過度に緊張をして、大きなミスを犯してしまう可能性も否めません。そんなとき、上司が頭ごなしに叱責したり、委譲した権限を取り上げてしまっては、部下は委縮し自信を失ってしまいます。権限委譲とは、効果が高いからこそ困難も伴う方法だということを、上司も事前に覚悟しておきましょう。一度や二度の失敗では部下の可能性は否定できません。長期的な視野に立って、少しぐらいの失敗は自分で被り部下の成長に伴走するのが仕事である、という覚悟で臨みましょう。

もちろん、なぜ失敗したのかということについての検証や、次回から同じ失敗をしないための施策の検討は、部下と一緒にきちんと行いましょう。

③自分の居場所に固執しない

部下から頼られ尊敬される上司でありたいという思いは、誰もが抱いているものです。 しかしながら、逐一上司に相談をして許可を取らないと動けない職場というのは、非効率的であるといわざるを得ません。また、何か問題があったらすぐに上司が処理をしてくれるという環境も、ある意味では、部下の成長を阻害しているともいえます。

もちろん必要な場面では、上司が決裁を行ったり問題解決にあたるというのは当然のことです。 とはいえ、それ以外の場面では、上司が介在しなくても職場が回っているという状況を良しとするということも、上司として持つべき認識であるといえます。

「権限委譲」実施の障壁とブレークスルー

以上のように、適切な方法で権限委譲をマネジメントに活用することは、大きなメリットを生むといえます。ところが、権限委譲を行うことについて、躊躇している企業が多いというのも現状です。何がボトルネックとなっているのでしょうか。

①自分でやった方が早い、リスクを取りたくない

未熟な部下をあれこれサポートしたり、ミスを被ったりするぐらいなら、上司が自分で仕事をした方が早い、と思われるのはもっともです。しかしながら、目先のスピードやリスクにとらわれていると、いつまで経っても後継が育たないともいえるでしょう。現在、少子高齢化による生産年齢人口の減少を受けて、優秀なリソースの確保は各企業にとって大きな課題となっています。

効率的に社内リソースの最大化をはかることができる方法を活用していくことは、将来的に、企業全体の生産性の向上に繋がるでしょう。

②ノウハウを知っているマネージャーがいない

権限委譲は効果が高いゆえに、適切な方法で行うには高度なマネジメントスキルが必要だといえます。しかしながら、まだ適用実績のない企業にとって、社内にノウハウがないということが導入の障壁となっているケースも多いといえます。

そのような場合には、外部の専門家に依頼して社内研修などを行うのも、一つの方法です。マネジメントに特化したコンサルタントのベストプラクティスを導入することによって、スムーズな運用を実現することができるでしょう。

まとめ

  • 権限委譲とは、上司の責任において部下に自らの裁量で仕事をさせる方法であり、適切に行うことで社員の能力を効果的に開発することができる
  • 権限委譲で部下が自走することによって、スピーディな対応力が生まれ市場競争力が上昇したり、上司がコア業務に集中できるようになり、組織全体の生産性が向上する
  • 権限委譲を成功させるためには、組織全体がその意味と目的を正しく理解し、部下の業務遂行をサポートするための十分な環境を整えることが重要である

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