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2018年7月1日(日)更新

降格人事

どのような降格であっても、不当な理由による降格人事は違法となります。最悪の場合、訴訟問題にも発展しかねません。人事権の行使に関わる経営者や人事の担当者は、降格人事に関して理解を深めておく必要があるでしょう。

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降格人事とは

「降格人事」は人事権行使の一種で、組織において従業員を従来の地位や役職より下位に配置することです。

人事異動としての降格には「職位」を低下させる降格、「職能資格」を低下させる降格、そして「職務等級」を下げるものがあります。そのため、降格させるときはどの降格に該当するのかを事案ごとに判断することが重要です。

「職位」を低下させる降格

地位や役職などの「職位」を低下させる降格は、たとえば部長から課長に降格した場合などが該当します。職位を下げる降格の場合は「昇進」の反対措置で、人事権を行使する人事側の裁量が幅広いという特徴があります。つまり、労働契約法に抵触しない限り、人事権の範囲内であれば降格を実施することは可能なのです。しかし、労働契約が職位を限定している場合は、その職位を下回る降格はできない ので注意しましょう。

「職能資格」を低下させる降格

「職能資格」とは職務遂行能力により従業員を序列化し、職能給として給与に反映する上で基礎となる格付けのことです。

序列化された「職能資格」が上昇することを「昇給」といい、低下させることを「降格」といいます。昇給の反対措置である降格の場合は、職位を下げる降格に比べて人事側の裁量が狭いといわれています。なぜ裁量が狭いかというと、職能資格を引き下げることによって多くの場合、「基本給の減額を伴う」労働契約上の変更が必要になるからです。そのため、職能資格を低下させる降格を適性に実施するためには、前提として労働契約上の根拠が必要となり、降格者の同意や就業規則上の根拠なども必要になります。

この場合、仮に就業規則上の根拠があったとしても降格に値する理由や業務上の必要性があるのか、人事権の濫用ではないかなどの点は法的に問題となりやすいので慎重に進めてください。

「職務等級」を低下させる降格

「職務等級」は職務記述書によって仕事を明確化した上で、職務ごとの難易度や裁量の幅、責任の重さなどの職務レベルを総合的に評価(職務評価)することで決定されます。この職務等級に応じて給与を決めるのが職務等級制度と呼ばれる給与制度です。

職務等級制度では、低査定による降格(降級)が認められることもありますが、前提として労働契約の内容にその旨を定めておく必要があります。

人事権の裁量

人事権は労働契約において「使用者の権利」とされており、降格を含めた人事権の行使は労働契約法に抵触しない限り、違法とはみなされません。人事権の範囲内で降格させるということは経営上の裁量判断となり、その裁量は降格を実施するかどうかの判断と、降格の程度を判断するという側面を持ち合わせています。

「人事降格」と「懲戒処分による降格」の違い

降格には懲戒処分に基づいて降格されるケースもありますが、これは前述した人事権の行使による降格とは異なります。懲戒処分の場合、労働契約法の規制により減給や降格などの罰を科せられることになるので、人事権が及ぶ範囲ではありません。

降格人事のメリット・デメリット

最悪の場合、訴訟問題に発展する恐れがある降格人事。それにもかかわらず、企業はなぜ降格人事を実行するのでしょうか?降格人事のメリット・デメリットとしては、以下のような点を挙げることができます。

降格人事のメリットとは

・職位や職能資格と成果のギャップが是正され、適切な処遇が実現可能となる

・人事考課の公平性や従業員の納得性が向上する

・従業員の意識改革や職責への自覚の育成につながる

・従業員個々の目標達成を確実にする

・職場に適度な緊張感を維持できる

・組織の効率化、あるいは効率の追求が可能となる

・人件費の管理が徹底できる

・従業員が自身のキャリアを考える企業風土を作ることができる

降格人事のデメリットとは

・降格者のモチベーションが低下する

・降格者のモチベーション低下が同僚や部下など周囲の従業員に悪影響を与える

・降格後の配置が困難なこともある

・評価を一定に保つ信頼性の確保が困難である

・降格者と上司の関係が悪化することもある

・降格を避けるために評価が歪む可能性がある

・失敗を恐れて、従業員がチャレンジしなくなる

・降格人事に対し、パワーハラスメントとして訴えられる可能性がある

・訴訟問題になれば、降格者と企業の双方に不利益となる

降格人事を行う際に気を付けるべきこと

違法性の見極め

権利を行使して降格人事を実施する際、最も気を付けるべき点は「違法性の見極め」です。

訴訟になれば、降格人事が労働契約法で定める「権利濫用」にあたるか否か、裁量権の範囲を逸脱していないかどうかが法的に問われます。また、人事権の行使が社会通念上、妥当かどうかも重要です。権利の濫用が認められれば、その降格人事は違法とみなされ、無効となることもあるので注意しましょう。

具体的には、降格理由をはじめ降格の目的が適正か合理的か、降格の理由に適した職位ないし職務への降格であるかが重要です。さらに、降格者の受ける不利益が妥当か否かなどを注意深く検討する必要があります。

降格と賃金減額は別の問題として扱う

降格と賃金減額の違法性に関する判断には2つのアプローチがあります。1つは両者を別々に検討するアプローチ、もう1つは両者を一体として検討するアプローチです。

降格と賃金減額を区別する場合、両者は別の問題とみなされるため、たとえ降格が有効であっても賃金減額については有効ではないというケースもあります。このように両者を区別して検討するアプローチでは、賃金減額が考慮されずに判断されるため、人事権行使の範囲として認められる傾向にあります。

一方で、賃金減額は企業側の一方的な判断とみなされる場合もあるので、人事権の範囲として認められていません。降格と一体化させて実施するのは困難なため、両者を別々の問題として扱う方がよいでしょう。もし、賃金減額を実施する場合は、新たな労働契約の締結や就業規則の変更などが必要です。

職能資格制度・職務等級制度と賃金減額について

人事権で職位や職務の引き下げは可能ですが、それに伴い職能資格を引き下げることはできません。なぜなら、職能資格制度は職能給を定める制度であり、職能資格が引き下げられると自動的に賃金減額につながるからです。しかし、役職等の手当は職能資格とは関係がないので、降格によって役職を失えば役職等の手当も自動的になくなります。

また、職務等級制度を導入している場合、職位や職務により賃金が変わるため、降格が有効なら賃金減額も有効となります。しかし、降格による賃金減額は就業規則に明記されている場合にのみ可能となるので注意しましょう。

【関連】職能資格制度とは?メリット・デメリット、事例をご紹介 / BizHint HR
【関連】職務等級制度とは?メリット・デメリット、事例をご紹介 / BizHint HR

まとめ

近年、降格をめぐる訴訟は少なくありません。中には降格者がパワーハラスメントとして降格の無効を訴えたり、精神障害の発症を理由に労災を請求したり、降格に関する問題は増加傾向にあるとともに複雑化しています。降格後の問題を防止するためにも、法律に則った降格人事とすることが重要です。

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