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2018年11月16日(金)更新

プロジェクトアリストテレス

プロジェクトアリストテレスとは、米グーグル社が2012年に開始した労働改革プロジェクトの通称です。このプロジェクトアリストテレスの実施により、米グーグル社は成功し続けるチームを構築するために必要不可欠な5つの鍵を発見しました。ハーバード・ビジネス・レビューで紹介されて大きな話題となったプロジェクトアリストテレスの全容を分かりやすく整理し、解説致します。

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プロジェクトアリストテレスとは

プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)とは、多国籍テクノロジー企業であるGoogle Inc.(以下、グーグル社)が2012年に開始した労働生産性向上計画に与えられたコードネームであり、この計画を語る上での通称として扱われています。プロジェクトアリストテレスでは、生産性の高いチームが持つ共通点の洗い出しと成功因子の見極めを行うため、グーグル社内に数多く存在するプロジェクトチームの活動成果と所属メンバーの言動を細部に至るまで調査分析しました。

何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やして実施したプロジェクトアリストテレスですが、成功因子の特定に成功したことを受け、実行メンバーの1人として大きな関わりを持ってきたジュリア・ロゾフスキ(Julia Rozovsky)氏が、2016年1月にアメリカの経営学誌であるハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review、HBR)の誌面を通じてプロジェクトアリストテレスの全貌を明かしたことにより、多くの人の注目を集めることになりました。

【参考】What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team - The New York Times

プロジェクトアリストテレスの実行メンバー

グーグル社内の人材をあらゆる角度から調査分析するため、統計学者やエンジニア、組織心理学者、社会学者など様々な分野の専門家が、プロジェクトアリストテレスの研究チームであるGoogle People Operations(人員分析部)のチームメンバーとして召集されました。

プロジェクトアリストテレスのプロセス

グーグル社はプロジェクトアリストテレスにおいて数多くの取り組みを実施しましたが、それらは『仮説設定』、『モニタリング』、『分析と仮説検証』、『追加検証』の4つに大別することができます。

仮説設定

グーグル社のトップは長きにわたり『最高の人材を揃えることによって最高のチームを作り上げることができる』とチーム編成の重要性を信じてきましたが、それが事実であるかどうかという検証はこれまで行われてきませんでした。

この未知なる成功因子を明白なものとするため、人員分析部はモニタリングに先駆けて、成功するチームの共通点として考えられる可能性の全てをリストアップし、多くの仮説を立てていきました。

【仮説の一例】

  • チームメイトは仕事以外のプライベートでも親しい関係性を持っているのではないか
  • チームメイト同士が頻回に食事を共にしているのではないか
  • 内向的な従業員同士、外向的な従業員同士など、同じ人材特性を持つメンバーでチームを構成した方が効果的なのではないか
  • 興味の対象が似ている人物で構成されているのではないか
  • 成功するチームのチームリーダーは圧倒的なリーダーシップやカリスマ性を持っているのではないか
  • 特定の報酬によってモチベーションが高まっているのではないか
  • 共通の趣味を持っているのではないか
  • 学歴に共通点があるのではないか

モニタリング

生産性の高いチームの共通点の洗い出しを行うため、人員分析部はプロジェクトチームに所属しているグーグル社員に対して公私にわたる大規模かつ徹底的なモニタリングを実施しました。

【モニタリング内容の一例】

  • 社員一人ひとりの行動規準(生活リズムや思考パターンの法則性)
  • 会社以外の場所で構築されている人間関係
  • 仕事に無関係な話題での社員同士のコミュニケーション
  • チームメンバーが共有した時間の長さ
  • プロジェクトチーム内のジェンダーバランス(男女比率)

分析と仮説検証

人員分析部のメンバーは100以上のプロジェクトチームに対して実施したモニタリング結果を元に、チーム編成やチームワークに重点をおいた分析作業と仮説の検証を行いました。しかし、データ分析を得意とするグーグル社が召集した人員分析部の力を総動員しても、チーム編成やチームワークと労働生産性の相関性を明確にすることはできませんでした。

トライ&エラーによる追加検証

そこで、人員分析部はプロジェクトチームのメンバー編成だけではなく、チーム内で扱われている不文律や暗黙の了解(ルール)といった集団規範にも着目することにしました。また同時に、集団心理学に関連する学術論文の読解など、学問的視点からのアプローチも試みました。

このような多角的アプローチと幾度ものトライ&エラーによって、人員分析部はチームの成功因子を発見することができたのです。

プロジェクトアリストテレスの研究結果から判明したこと

グーグル社と人員分析部のメンバーは、プロジェクトアリストテレスを通じて多くの研究成果を得ることができました。

チーム効果に対して影響力の低い要素

プロジェクトアリストテレスは、チームの生産性を高めるために必要な成功因子を探し出すプロジェクトですが、その過程で明らかとなったチーム効果に対して影響力の低い要素を、自社が実施したプロジェクトの調査分析結果や人事に関する企業事例記事をまとめた情報サイト『re:Work』において次のようにまとめています。

  • Colocation of teammates(sitting together in the same office)…上司や部下、同僚などの関係性の有無
  • Consensus-driven decision making…合意による意思決定
  • Extroversion of team members…チームメンバーの外向性
  • Individual performance of team members…チームメンバー一人ひとりのパフォーマンス
  • Workload size…仕事量、作業規模
  • Seniority…ベテラン社員、古参社員、年長者
  • Team size…チーム規模
  • Tenure…終身雇用、終身在職権

【参考】re:Work - Guide: Understand team effectiveness

集団的知性の重要性

グーグル社内では同時進行で複数のプロジェクトが動くことは日常茶飯事であり、1人の社員が複数のプロジェクトに参加することも珍しくありません。そんな中、大半が同じメンバーで構成されているチームAとチームBという2つのチームの活動成果から非常に興味深いデータが検出されました。

共通するメンバーの中には高いパフォーマンス力を持つ優秀な社員が数多く含まれており、個々の能力の総和に大きな違いはありませんでした。それにも関わらず、チームAとチームBの生産性には大きな差が発生したのです。

このことから、個人力の合計とチーム力(組織力)がイコールではないこと、そしてチームの生産性向上のためには、個々へのアプローチよりも集団的知性(Collective Intelligence、CI)へのアプローチの方が効果的であることが明らかになりました。

グーグル社の長年の取り組みによって、数々の『チーム効果に対して影響力の低い要素』が明らかとなりましたが、その中でも『チームメンバー一人ひとりのパフォーマンス』がチームの生産性に対して大きな影響力を持っていないという研究結果は、世界中に衝撃を与えるだけではなく、集団的知性の重要性を認識させる大きなきっかけにもなったのです。

優れた集団規範が集団的知性に与える好影響

人員分析部が成功因子を探るために読み漁った集団心理学関連の文献の中には多くの有用な情報が詰まっていました。その中でも、アメリカ屈指の名門私立研究大学であるカーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University、CMU)とノーベル賞受賞者を多数排出しているマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)、ユニオン・カレッジ(Union College)の心理学者や研究者たちで結成された研究チームの研究記録は、チームの生産性を高める成功因子の発見に大きく貢献しました。

グーグル社内で実施した大規模なグループワークを通じて、集団規範の中から成功因子の洗い出しを試みた人員分析部でしたが、その高度な情報分析力をもってしても成功チームにおける明確な規則性を見つけ出すことはできませんでした。

しかし、先述の研究記録と同様の『1つの課題で成果を出したチームは別の課題においても成果を出すことができるが、失敗するチームはどの課題を与えても失敗してしまう』という現象を確認できたことから、優れた集団規範がチームの集団的知性を大幅に高め、誤った集団規範がチームの集団的知性を低下させてしまうことを確認することができたのです。

生産性の高いチームから見つけた2つの共通点

人員分析部のメンバーは、3大学の共同研究チームが残した学術論文とプロジェクトアリストテレスの実施データを見比べることにより、生産性の高いチームの活動内容から2つの共通点を見つけ出すことができました。

◆均等な発言機会

1つめの共通点は『均等な発言機会(equality in distribution of conversational turn-taking)』です。

個人個人に対して予め均等に配分された持ち時間を使用して発言を行うチームや、チームリーダーがメンバー全員に対してバランス良く話題を振るチーム、対等な立場でのディスカッション型チームなど、高い生産性を誇るチームであっても発言形式には大きな違いがありました。しかし、いずれのチームにおいてもメンバー内の発言機会は均等であり、チームメイト全員がほぼ同じ割合で発言を行うことができていたのです。

生産性の高いチームが均等な発言機会を設けている一方、生産性の低いチームの多くは一部の人間が発言機会を独占し、多くの時間を費やして一方的な発言を行っていました。この対照的な結果を受け、人員分析部はチームメンバー全員が均等に発言できる環境の構築が生産性の高いチーム作りに繋がるという強い確信を持ちました。

◆社会的感受性の平均値の高さ

2つめの共通点は『社会的感受性の平均値(average social sensitivity)の高さ』です。

社会的感受性とは自分の発言が相手にどのような影響を及ぼすのかを理解し、相手の表情や言動から本当に伝えたい想いを読み取ることができる能力であり、チームが足並みを揃えて活動するために必要不可欠な要素です。

他者理解力や共感力ともいえる社会的感受性ですが、測定を行う際には写真の目の部分だけを見て相手の感情を読み取るReading the Mind in the Eyes Test(RMET)が多く用いられます。このReading the Mind in the Eyes Testのチーム内平均値が生産性の高いチーム全てで高い値を示していたことから、チーム全体の社会的感受性の高さが生産性に大きな影響を与えるという確信を持ちました。

心理的安全性がチームの生産性を高める成功因子

心理的安全性とは心理学の専門用語で、チームメイトなど周りの評価に怯えることなく自分の意見や想いを発信するために必要となる要素のことです。チーム内の心理的安全性が確保されているほどメンバー一人ひとりが肩の力を抜いた自分らしい姿でプロジェクトに向き合い、多少のリスクが存在する言動であってもチーム目標達成のためにチャレンジすることができるようになります。

プロジェクトアリストテレスの研究過程で見つかった『均等な発言機会』や『社会的感受性の平均値の高さ』がチーム内の心理的安全性を高める要素であることから、心理的安全性こそがチームの生産性を高める成功因子であると結論づけることができました。

【関連】心理的安全性とは?googleが発見したチーム生産性を高める唯一の方法/ BizHint HR

心理的安全性がチームや組織を大きく変える

昨今、ダイバーシティ(多様性)の受容やグローバル人材の育成など様々な重要戦略が話題となっていますが、それらにも心理的安全性は大きな関わりを持っています。

日本人が大切にしている思いやりや心遣いは異文化や異なる考えを持つ相手を受け入れる際に大きな力を発揮しますが、その反面、自分の感情や本音を表に出さないように押し殺してしまう傾向が強いため、組織側が意識的に発言しやすい環境の構築や雰囲気作りを進めないと、チームや組織全体の心理的安全性を確保することができないのです。

プライベートと大きく異なる仕事用の自分を演じるなど、自分自身を偽ったまま仕事をすることにより、本来持っているパフォーマンスを最大限に発揮することが難しくなってしまいます。全従業員が自分らしく過ごすことのできる環境を構築することで、チームや組織の生産性は飛躍的に向上し、より高い目標を達成することが可能となるでしょう。

まとめ

  • プロジェクトアリストテレスとは情報収集と情報分析を得意とする米Google社が約4年の歳月をかけて実施した労働生産性の向上を目指すプロジェクトである
  • 人員分析部は大規模なモニタリングを実施し、様々な仮説の検証を行った
  • チームの生産性向上には個々のパフォーマンスよりも集団的知性の方が大きな影響力を持つ
  • 心理的安全性こそがチームの生産性を高める唯一無二の成功因子であると判明した
  • 経営者や人事担当者が意識的に心理的安全性の確保に努めることで、多くの組織戦略に好影響を与えることができる

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