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2018年11月17日(土)更新

360度評価

360度評価と呼ばれる新たな多面評価方法が取り入れられるようになってきています。終身雇用や年功型賃金に代わり成果主義を取り入れる企業が増え、人事評価制度も積極的に見直されるようになりました。今回は、360度評価のメリット・デメリットと効果的な実施方法についてご紹介します。

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360度評価とは

360度評価とは、 上司や部下、同僚など立場や関係性の異なる複数の評価者が、対象者(被評価者)について、多面的に評価 する方法です。

多角的な視点での評価によって人物特性を把握し人材育成に活用するケースや、評価の公平性や客観性を確保する目的で導入されています。

360度評価の3つの特徴

360度評価の特徴として大きく3つがあります。

複数の関係者が被評価者について評価する

一般的な人事評価制度のような上司のみの評価と異なり、上司や部下、同僚など多面的な評価を受けることができます。

本人の認識と周囲の評価のギャップが明確になる

特性や行動など、自己評価による認識と他者評価のギャップが明確になることで、行動の改善や人材育成に繋げることができます。

具体的で客観的なフィードバックができる

人事評価のフィードバックをするとき、評価結果の根拠や被評価者の納得感が高まる要素として360度評価を活用することができます。

【関連】フィードバックの意味とは?実施時の注意点や最大化のポイントまで解説 / BizHint

360度評価が注目されている理由

360度評価が注目される理由とは、どのようなものなのでしょうか。

プレイングマネージャーの増加や働き方の多様化

現在企業においては、管理職の多くがプレイングマネージャーとなり、日常的に部下全員とコミュニケーションをとることが難しくなっています。また、リモートワークや時短業務など働き方が多様化することで、上司が部下との接点を多く持てなくなりつつあります。

そのような状況では、上司一人では納得性の高い評価は困難です。上司には見えない部分を補いつつ、納得性の高い人事評価を行える手法として360度評価は注目されています。

【関連】プレイングマネージャーとは?求められる役割と陥りがちなこと / BizHint

人材育成の変化

従来に比べ、企業における人員削減、組織のフラット化が進む中で、従業員を育成するために使えるリソースは限られてきています。したがって、社員は自分で自分の能力に気づき、成長していくことが求められます。このような状況下において、360度評価のような自身への気づきを促すことのできる方法は有効に活用できます。

また、上司が部下からの評価を知ることで、適切なマネジメントを行えているか見直す機会となります。こうした活用によって社員の自律性を高める手法は、昨今の人手不足を補うひとつの方法として注目されています。

【オリジナル記事】若手の当事者意識を引き出す「自律・分散型組織」を作る【ポーター賞受賞企業・ネットプロテクションズ】 / BizHint

360度評価のメリット

360度評価のメリットとしては、客観的で多面的な評価という特徴を活かすことで得られる効果が挙げられます。

被評価者について客観的に把握

一般的な人事評価では上司の視点からの評価であり、上司によっては相性などの主観が評価結果に大きく影響する場合があります。一方、360度評価は上司のほか同僚や部下なども評価するため、より客観的に被評価者について把握することができます。

また、評価結果を分析することで、人物特性を把握することができます。

人材育成やモチベーション維持の効果が期待できる

360度評価の結果をフィードバックすることで、客観的な自分の強みと弱みを知ることができます。これは強みをさらに強化し、弱みは改善していく人材育成のきっかけになります。

そして、客観性のある評価によって納得感を得ることは、その後のモチベーションの維持向上にも影響を与えます。

適切な選抜や配置など人事戦略に役立つ

360度評価を管理職の選抜や人材配置に活用することで、より適切な人事を行うことが可能です。実体に近い人物像を把握できるため、配置ミスや管理職の適性を見誤るリスクを減らすことができます。

360度評価のデメリットと注意点

一方、360度評価のデメリットとして、適切でない実施目的や運用方法などが原因で、副作用が起こる可能性に注意が必要です。

評価を恐れて適切なマネジメントができない

上司が部下からの評価を気にして、本音や厳しい発言を控えた表面的なマネジメントに陥ってしまい、本来の機能を果たさなくなる可能性があります。これを防ぐには、360度評価の実施目的を明確にして、組織運営に支障が起きないための工夫が必要です。

人間関係の悪化や談合の恐れ

評価結果の取り扱いによっては、上司の評価を落とすためや互いの評価を良くするために社員同士の談合が起きる可能性があります。また、評価者の面が割れることで人間関係が悪化したり、それによる弊害も予想されます。これらを防ぐためには、360度評価の匿名性を高めると共に、処遇に直結させない工夫も大切です。

評価のばらつきや業務負担が増える

360度評価では、評価業務の知識や経験がない社員も評価を行うため、評価にばらつきがでる可能性があります。また、日常業務に評価業務も加わるため負担が増します。導入する場合にはこうした点に配慮した設計と運用を行うことが必要です。

360度評価を効果的に運用するポイント

360度評価の運用効果を高めるためには、いくつかのポイントがあります。ここでは特に重要な点をご紹介します。

評価結果を処遇に反映しない

360度評価の結果を処遇に反映させてしまうと、談合行為のリスクや、社員同士の過剰な気遣いで業務に支障が出る恐れがあります。そのため、特性の把握による人材育成や能力開発に活用するなど、処遇の決定要素にしないことがポイントです。

社員に説明会や研修を行い理解を得る

360度評価は評価が未経験の社員も評価者になるため、目的や評価方法、評価結果の活用方法など説明を十分に行い、評価業務に対する不安の解消と客観的な評価に近づける配慮をしておくことが大切です。

評価の匿名性を確保する

評価結果については匿名性を確保することが重要です。そのため、評価結果を取り扱う関係者は特に注意を払い、フィードバック担当者は評価者を特定されないよう伝え方に注意する必要があります。

360度評価の実施の流れ

ここでは、360度評価の実施前の準備から実施後までの流れについてご紹介します。

実施目的や被評価者、評価者を設定する

まず、実施目的を明確にしておきましょう。特に昇給査定や昇格審査に反映するかどうかは自社のニーズと合わせて考え、評価制度のデメリットにつながらないよう慎重に検討する必要があります。被評価者に対する評価者数は企業によって様々で、2、3名の場合もあれば10名近く評価者を設ける場合もあります。

評価項目や実施方法、評価結果の解析方法を設定する

評価者となる社員の負担も大きいため、評価に困らないシンプルで分かりやすいアンケート形式の評価項目にしたり、クラウド型のツールを導入するなど、評価方法を工夫すると良いでしょう。また事前に評価結果の解析方法を設定しておくと、実施後のフィードバックに向けたスムーズな準備に役立ちます。

スケジュールを決め、対象者に周知する

360度評価は関係者が多く煩雑になるため、予めスケジュールを立てて計画的に実施することが大切です。また、実施前に対象者の社員へ説明会や必要に応じて研修を行い、目的や評価方法など360度評価についてよく理解してもらうことも準備として必要となります。

評価内容のフィードバック

すべての準備が整ったら、360度評価を実施しましょう。

360度評価の肝となるフィードバックでは、強みと弱みを共に伝えます。本人が納得感を得て今後のモチベーションアップや人材育成へと繋げるための伝え方のポイントは2つです。

  1. 強みを伝えるときは、実際に評価されたその事実だけを伝える
    このとき、フィードバック担当者の主観や評価を入れて伝えてしまうと、賞賛しているつもりが本人は違う受け止め方をする場合もあるため注意が必要です。
  2. 弱みは本人の目標と紐づけてその達成に必要な改善点として伝える
    目標は具体的なので行動に移しやすく、成果として処遇に反映されるので本人の納得感も高まります。また、フィードバック担当者が目標達成を支援してくれているという信頼を感じて前向きに捉えやすくなります。

また、フィードバック後も定期的な面談などフォローを行い、継続した社員の育成に繋げていくことも重要です。こうしたフォロー体制や実施時期について予め計画を立てておくと、上司など担当者が実施しやすく、フォローの仕方の改善に繋がります。

360度評価の評価項目サンプル

360度評価を効果的に実施する上で評価項目はとても大切です。項目の内容は実施目的と評価対象者に合わせて設定していく必要があります。項目の数は30項目程度とし、15分以内に回答できる内容にしておくと、評価者に負担をかけず実施できるでしょう。

評価項目は客観的な行動の有無を問うようなものを設定し、人格を評価するような項目は避けます。以下にサンプルをご紹介します。

【360度評価の評価項目サンプル】

  • 部門の強みと弱みを理解している
  • 新しいアイデアを積極的に提案している
  • 他の部門と適宜連携しながら業務を進めている
  • 必要な情報を集めた上で判断を行っている
  • 常に部門の方針を部下に共有している
  • 話しかけやすい雰囲気を作っている
  • 部下の仕事ぶりを把握し、必要なフォローを行っている
  • 会社の経営理念に沿って行動している

360度評価を活用している企業事例

日本企業においては、360度評価をはじめとした多面評価の導入率はまだ低いと言われています。しかし、実際に人材マネジメントのツールとして効果的に活用している企業も存在します。

以下に3つの活用事例をご紹介します。

マツダ株式会社

マツダ株式会社では、「コンピテンシー評価」と呼ばれる360度評価を導入しています。年に一度、事務や技術系の社員を対象として「仕事への取り組み行動」を評価するものです。仕事を進める上で大切にすべき考え方を定めた「Mazda Way」を基準とし、社員に期待される行動をコンピテンシー評価項目として設定しています。

項目ごとに被評価者を本人、上司、部下、同僚、関係先がそれぞれ評価。結果は、キャリアミーティングと呼ばれる話し合いで上司から被評価者へフィードバックされます。結果を踏まえて、今後取り組む目標や目指すべき将来像について確認し合っています。

また、人材を配置する際の参考情報としても「コンピテンシー評価」は活用されているそうです。

【参考】マツダサステナビリティレポート2016 人間尊重 従業員への取り組み

大和証券グループ

大和証券グループでは、「社員が高いステージを目指し、日頃からモチベーションを高く持って働くためには、公正で納得性の高い評価が必要だ」と考え、マネージャーを対象に多面評価を取り入れています。

マネージャーの日々の行動を、その部下や関係部署のメンバーが評価します。結果はマネージャーにフィードバックされ、現状の課題認識に活用されます。さらに、マネジメント能力の向上を目的とした研修なども同時に実施し、生産性向上につながるよう運用されています。

【参考】大和証券グループ CSR報告書2016 社員とのかかわり

ファーストリテイリンググループ

ファーストリテイリンググループでは、事業がグローバル化する中で、ビジネス環境が多様化しても能力を発揮出来る人材育成を目指しています。「グローバルワン・全員経営」を掲げ、人事制度や人材育成の仕組みを改革してきました。

その改革の一環として、個人の能力を多面的に可視化し、正当に評価することを目的とした「360度評価」が導入されています。上司、同僚、部下が対象者の能力評価を行い、その能力評価に基づき、それぞれの能力と専門性が活かせる役職や部門への異動が事業を横断して検討されます。

【参考】株式会社ファーストリテイリング CSRレポート2016

まとめ

  • 360度評価は、立場や関係性の異なる複数の評価者が評価する方法で、公正で客観的に被評価者を把握するための評価制度です。
  • 360度評価の効果的な活用ポイントは、企業の成長に欠かせない社員の人材育成や能力開発に繋げるための仕組みとして活かすことです。
  • 360度評価の運用で重要なポイントは、実施前に社員に説明会や研修の場で理解を深めてもらい、実施後は匿名性を確保したフィードバックやフォローを行うことです。

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