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2019年6月25日(火)更新

リンゲルマン効果

リンゲルマン効果とは、集団で作業する際に一人あたりの生産性が低下する心理現象です。「社会的手抜き」ともいわれており、従業員が多い日本企業を中心に生産性向上の阻害要因と指摘されています。今回はリンゲルマン効果の意味や具体例、原因、傍観者効果との共通点・違いから対策方法までご紹介します。

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リンゲルマン効果とは

リンゲルマン効果とは、心理学者リンゲルマンが提唱したとされる集団心理現象のひとつで、人間は集団で作業した場合、単独で作業するよりも生産性が低下するという現象です。社会的手抜き、フリーライダー(ただ乗り)ともいわれています。

年功序列の給与形態や曖昧な人事評価制度を採用する日本企業では、しばしば生産性向上を阻む要因として指摘されています。

一方で、少数精鋭の集団での活動では、必ずしもリンゲルマン効果が起きるとは限らず、責任感や緊張感が大きく関わっていると考えられます。リンゲルマン効果では、さまざまな実験を通して仮説が立証されています。

※リンゲルマン効果の提唱や普及は諸説あります。

リンゲルマン効果の具体例

リンゲルマン効果の具体例として、「綱引きの実験例」や「チアリーダーの実験例」が挙げられます。

綱引きの実験例

「綱引きの実験例」では、参加する人数が多くなればなるほど、一人あたりの力の量の半減していく結果が実証されました。

このように人間は集団で作業する場合、参加する人数が増えるほど参加者の意識に「自分一人だけが全力で頑張る必要はない」という心理効果が表れ、一人あたりの貢献度が下がることが判明したのです。

チアリーダーの実験例

研究者であるラタネとハーディが行ったチアリーダーのリンゲルマン効果実験では、「リンゲルマン効果は結果として無意識のうちに起きる現象」と結論づける実験結果が出ました。

ラタネとハーディは2人のチアリーダーに目隠しとヘッドホンをつけてもらい、お互いの状況を確認できない状況を作り、大声による音量計測を実施。その結果、ペアで大声を出したときよりも単独で大声を出したときの方が、音量が大きかったことがわかりました。

このようにリンゲルマン効果は無意識のうちに発生する心理現象であり、「組織の中の人間が意識的に手抜きをしているわけではない」ということがわかります。

プロフェッショナル集団や応援有無の実験例

一方で、リンゲルマン効果は「人間は集団になれば必ずしも生産性が低下するものではない」という実験結果も出ています。綱引きの実験やチアリーダーの実験の際、それらのプロフェッショナル集団では、リンゲルマン効果が表れず、全員が高いパフォーマンスを上げていたのです。

また、綱引きの実験ではチアリーダーを投入し、応援の有無はリンゲルマン効果にどのような影響を与えるかという実験も行われました。その結果、応援の対象が集団か、集団の中の特定の人物かによって、パフォーマンスが異なったのです。特定の人物の場合、応援された人物は高いパフォーマンスを発揮しましたが、その他の人のパフォーマンスが低下しました。しかし、集団(チーム)全員の場合は、全員が手抜きをすることなくパフォーマンスが向上したのです。

このように「リンゲルマン効果はプロ意識の高い集団や公平な評価がある集団では起きにくい」こともリンゲルマン効果の特徴です。

リンゲルマン効果が起こる原因

リンゲルマン効果が起きる主な原因には「周囲に対して自分の働き(貢献度)が隠れている状況」が挙げられます。

具体的には、組織の中で自分の働きが評価されていない(評価されにくい)ことや、昇給や昇給が一律で行われるなどが該当します。そのため、従業員が多い企業ほどリンゲルマン効果が起きやすいと考えられます。

また、「誰かがやってくれる」「どうせ努力しても報われない」といった社員の意識もリンゲルマン効果が発生する原因でもあります。

リンゲルマン効果による弊害

リンゲルマン効果は企業の経済活動に大きな弊害をもたらします。中でも「1人あたりの生産性低下」や「受け身の社員の増加」、「モチベーションの低下」が挙げられます。

一人あたりの生産性低下

リンゲルマン効果は、特定の仕事を行う際に、周囲に対して自分の働きや貢献度が隠れてしまうと一人あたりの生産性が低下する現象です。

そのため、ひとつのプロジェクトへの過剰な人員配置や重複が発生しやすい業務・役割を控え、最適な業務配分を行い、社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化しなければいけません。

【関連】生産性向上のために企業が行うべき施策《5選》と取組事例をご紹介/BizHint

受け身の社員の増加

リンゲルマン効果は、画一的な業務が多い職場や事業部で発生しやすいといえます。

個人評価が重視される企画職や営業職では定量的な評価が実施できますが、作業を細分化した画一的な業務が多い事業部やプロジェクトではフリーライダー(ただ乗り)の社員の増加につながります。

自走する組織の構築には、社員一人ひとりが自分自身の組織への役割や貢献度を理解・把握する意識改革や労働環境が欠かせません。

モチベーションの低下

自分の役割が明確化せず、貢献度や評価が徹底されない組織ではリンゲルマン効果が働きやすくなります。

年功序列による給与の一律支給、職能資格制度などの不透明な人事評価制度は「どうせ努力しても報われない」という意識を生み、熱意を持つ社員のモチベーションが低下し、個人能力を最大限に発揮できない可能が高まります。

モチベーションの低下は仕事の質・効率の低下やチャレンジ意欲の喪失、職場環境の悪化、離職率の上昇などにつながります。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介/BizHint

リンゲルマン効果の対策方法

リンゲルマン効果は無意識下で起きる心理効果であり、生産性が悪い社員に直接指導する方法は効果が薄いため、組織全体を巻き込んだ対策が必要です。

リンゲルマン効果はすべての集団で発生する現象ではなく、リンゲルマン効果の特性を理解し、最適な対策方法を導入することで防ぐことができます。

ここでは、リンゲルマン効果に効果的な対策方法をご紹介します。

個人評価の可視化

曖昧な個人評価は社員に不公平感を植えつけ、業務への意欲を低下させてしまいます。そのため、個人評価や評価の判断軸には KPIを導入し、定量的な評価を中心とした個人評価の明確化が必要です。

個人評価の明確化は社員自身が自分の足りない能力を見直し、能力の向上に努めやすくなります。また、上司による定量的な個人評価は、部下の承認欲求を満たす状態(褒められる、認められる状態)にもつながり、モチベーションの向上に役立ちます。

一人ひとりの役割を明確化

リンゲルマン効果の抑制には、一人ひとりに役割を与え、業務に対する貢献度を高めることが効果的です。

画一的な業務は社員に「自分にしかできない業務ではない」、「誰がやっても同じ」という感情を植えつけます。また、複数人に同じような業務を依頼すると「誰かがやってくれるだろう」という心理が生まれ、業務上のトラブルが生まれやすくなります。そのため、業務を依頼する際は担当者一人ひとりに依頼する業務を明確にすることが大切です。

さらに「あなたにだけ依頼する」という特別感や信頼感を得られる業務依頼や役割を示すことで、社員の承認欲求を満たし、個人能力の最大化も可能となります。また、プロジェクトを少数精鋭の組織にすることで、個人の責任と成果を明確にしやすく、リンゲルマン効果に陥る可能性を最小限に抑える効果があります。

相互評価システムの導入

個人能力を最大化し、一人ひとりの生産性を向上するには相互評価システムの導入が効果的です。

リンゲルマン効果は人と人との関わりが薄い、コミュニケーション・協働の場が少ない状況で発生しやすいといえます。そのため、リンゲルマン効果を抑制するには自分をしっかりと見てくれている、応援してくれる存在が必要です。360度評価ピア・ボーナスなどの相互評価システムは熱意を持って、頑張る社員にフォーカスを当てやすく、社員同士の結束を高める効果があります。

平等な機会の創出

社員一人ひとりに平等な機会を与え、「自分が当事者である」という意識を与えることもリンゲルマン効果の抑制に効果的です。

毎回発言する人が決まっている、報告会に終始する会議体ではリンゲルマン効果が働きやすいため、「会議ではひとり1回は発言する」などのルールを構築しましょう。また、上司と部下が定期的な面談を通じて人材育成を図る 1on1ミーティングも社員一人ひとりに平等に成長できる機会として機能します。

社員が「平等に扱われている」と思える職場環境はリンゲルマン効果を抑制し、自走する組織の構築につながります。

傍観者効果との共通点・違い

リンゲルマン効果と混同されやすい心理現象に、傍観者効果という集団心理が挙げられます。

傍観者効果との共通点・違いを知ることで、リンゲルマン効果の理解を深められます。

傍観者効果とは

傍観者効果とは、自分以外の傍観者がいると率先して行動を起こさない心理効果です。この傍観者効果は「人の目を気にして行動できない」という心理であり、「自分が当事者でない」という判断できる状況に発生しやすいといえます。他人の存在が自分の行動を抑制する集団心理としても知られています。

リンゲルマン効果との共通点は、集団の中で起きやすく、自分が率先して行動しない点が挙げられます。リンゲルマン効果との違いは、リンゲルマン効果は集団の特性として利害関係を共有する集団の中で起きる心理現象なのに対し、傍観者効果はひとり一人が直接利害関係にない集団で起きる心理現象と考えられます。

傍観者効果が起きる原因

傍観者効果は「多元的無知」「責任分散」「評価懸念」の3つの要素から起きるといわれています。

「多元的無知」とは、他人の消極的な行動を通じて、緊急性がないと判断する心理を指します。「責任分散」とは、他者の同調を通じて、責任や非難を自分だけに向くことを避ける行為です。そして、「評価懸念」とは自分の行動の結果を周囲から評価されることを恐れる心理を指します。

これらの3つの要素が複合的に合わさり、傍観者効果が起きると考えられています。

傍観者効果の具体例

リンゲルマン効果の実験を行った研究者のラタネとダーリーは、1964年に起きた「キティ・ジェノヴィーズ事件」という殺人事件をきっかけに「傍観者効果」を提唱しました。

キティ・ジェノヴィーズ事件とは、被害者が深夜の自宅で暴漢に襲われている現場を多くの近辺住民が目撃していたにもかかわらず、誰も警察に通報せず助けようとしなかったという衝撃的な事件です。

傍観者効果はリンゲルマン効果と同様に、集団の中では人間は遭遇した事象を「自分にはあてはまらない」という集団心理に陥ります。悲惨な事件が起きたとしても誰も助けようとしない冷徹な集団心理が働いた、傍観者効果が顕著となった事件として知られています。

まとめ

  • リンゲルマン効果とは、特定の業務を単独で行ったときよりも集団で作業する方が一人あたりの生産性が低下する現象です。「社会的手抜き」や「フリーライダー(ただ乗り)」ともいわれ、従業員数が多い大企業に起こりやすく、働き方改革を阻害する要因とも指摘されています。
  • リンゲルマン効果の弊害としては、一人あたりの生産性を低下や受け身の社員増加が挙げられます。また、正当な評価が受けられないとモチベーションの低下にも繋がります。
  • 対策方法としては、定量的な個人評価の導入や業務を細分化した役割の明確化、相互評価システム(360度評価ピア・ボーナス)の導入、平等な機会の創出が効果的です。

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