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組織市民行動

2020年12月4日(金)更新

組織市民行動とは、「従業員たちが報酬などの見返りを求めることなく、組織全体の効率を促進するため、自発的に他者を支援する行動」のことです。近年、成果主義やジョブ型雇用を導入する企業が増えていますが、「誰にも割り当てられていない仕事」の中には重要なものも多く、放置されると業務全体に支障が出てしまうことから、組織市民行動の重要性が見直されています。当記事では、組織市民行動に関する知識を深め、組織で活用するために必要な情報やノウハウを、組織市民行動の定義、5つの次元と具体例、社内に浸透させる方法などの項目に整理して分かりやすく解説します。

組織市民行動とは

組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior:OCB)とは、 「従業員たちが報酬などの見返りを求めることなく、組織全体の効率を促進するため、自発的に他者を支援する行動」 のことです。

役割外行動のひとつ と言われており、わかりやすい例でいくと、「病気などで休んでいる人の仕事を代わりに行う」「仕事のやりたかがわからず困っている人がいれば自発的に教えてあげる」などが該当します。些細なことですが「職場にゴミが落ちていたら拾う」といった行動も、組織市民行動に含まれます。

組織市民行動の定義

日本大学の田中堅一郎教授は、インディアナ大学のデニス・オーガン教授が著書「Organizational citizenship behavior: The good soldier syndrome.」の中で記した組織市民行動の定義を次のように翻訳しています。

従業員が行う任意の行動のうち、彼らにとって正式な職務の必要条件ではない行動で、それによって組織の効果的機能を促進する行動。(しかも)その行動は強制的に任されたものではなく、正式な給与体系によって保証されるものでもない。

【引用】組織市民行動 ―測定尺度と類似概念、関連概念、および規定要因について―

また、田中堅一郎教授は同論文の中でPodsakoff,MacKenzie,&Huiによる組織市民行動の定義についても次のように翻訳しています。

職場・組織における行動のうち、以下の条件を満たすものである。 (1)従業員が(組織市民行動を)示したことに対してはっきりと褒賞されるわけではなく、示さなかったことに対して罰せられることもないもの。 (2)従業員の職務記述書には含まれないもの。 (3)従業員が彼らの職務の一つとして行うように訓練されていないもの。

【引用】組織市民行動 ―測定尺度と類似概念、関連概念、および規定要因について―

この2つの定義から、組織市民行動は以下の5つの条件を満たす行動であることが分かります。

  1. 従業員個人の自発的な行動によるもの
  2. 行動に対する賞罰や報酬が存在しない
  3. 職務記述書には含まれていない
  4. 行動に関する訓練を受けていない
  5. その行動によって組織の効果的機能が促進する

組織市民行動の重要性

近年、導入する企業が増加している成果主義やジョブ型雇用。これらの施策は生産性の向上やパフォーマンスの最大化などを目的としていますが、社内に点在する「誰にも割り当てられていない仕事」を放置してしまったままでは十分な効果を得ることはできません。

長きに渡ってメンバーシップ型雇用が主流となっている日本では、仕事や役割が不明瞭であることが多く、従業員がお互いに助け合う文化が根付いています。しかし、成果主義やジョブ型雇用の誤った導入によって個々の従業員が範囲外の仕事に興味を示さなくなると、 誰にも割り当てられていない仕事が放置されて、仕事が回らなくなる可能性がある のです。

どれだけ細かく仕事の割り当てを行ったとしても、新たな仕事は次から次へと発生します。そして、その仕事の中には重要なものも数多く存在します。発生し続ける仕事を「その都度」、「適切な人材に」割り当てることは決して簡単なことではありません。だからこそ、「自分に割り当てられている仕事」をしっかりとこなしつつ、「誰にも割り当てられていない仕事」も率先して行う人材が組織には必要不可欠なのです。

【関連】ジョブ型雇用とは? メンバーシップ型雇用との違いやメリットを解説/BizHint
【関連】成果主義の意味とは?日本企業におけるメリット・デメリットをご紹介/BizHint

組織市民行動が業績を向上させるという研究結果も

では、組織市民行動は実際に組織にどのような影響を与えるのでしょうか?

前述の田中堅一郎教授の論文内で、組織市民行動と組織全体の業績とはかなり高い相関係数を示しており、 従業員が組織市民行動を盛んに行うほど,組織全体の様々な業績指標が高い傾向を示す ことを明らかにしています。また、組織市民行動がさまざまな形で組織に影響を与え、組織全体の業績向上に大きく寄与していることも読み取れます。

組織市民行動は、業種や企業規模を問わず、全ての企業が積極的に取り組むべき課題なのです。

【参考】日本の職場にとっての組織市民行動/独立行政法人労働政策研究・研修機構

組織市民行動の5つの次元(概念)と具体例

提唱者であるデニス・オーガン教授は、組織市民行動の概念として次の5つをあげています。

  1. 利他主義(Altruism): 自分の利益よりも他者の利益を優先
  2. 誠実性(Conscientiousness): 社会人としての一般常識を守る
  3. スポーツマンシップ(Sportsmanship): 与えられた環境を受け入れ、最善を尽くす
  4. 礼儀正しさ(Courtesy): 他者の権利を尊重する
  5. 市民の美徳(Civic virtue): 組織の一員としての自覚を持って行動する

利他主義(Altruism)

利他主義とは、自分の利益よりも他者の利益を優先することです。つまり、困っている人を見つけたら助けるといった自発的な行動などが該当します。

~具体的な行動例~

  • 多くの仕事を抱えている人を助ける
  • 他者の仕事上のトラブルをフォローする
  • 病気などで休んでいる人の仕事を代わりに行う
  • 自発的に新入社員を指導する
  • 周囲の人を助けられるようにいつも準備している

誠実性(Conscientiousness)

誠実性とは、社会人としての一般常識を守ることで、部署や組織へ貢献するような行動を指します。

~具体的な行動例~

  • 勤務時間をしっかりと守る
  • 過度な休憩を取らず、不必要に仕事の手を休めない
  • 誰も見ていない環境下でも、会社の規則や規定を守る
  • 正当な理由なく休まない
  • 仕事を休む際には事前に報告する

スポーツマンシップ(Sportsmanship)

スポーツマンシップとは、理想的な状況でなくとも、それに苦言を呈すのではなく、現状を受け入れ最善を尽くすといった行動です。

~具体的な行動例~

  • 些細なことに対して不平不満を言わない
  • 部署のやり方や制度が変わることに不満を持たない
  • 人のミスや過ちをしつこく責めない
  • 経営者や上司の粗探しを行わない

礼儀正しさ(Courtesy)

礼儀正しさとは、他者の正当な要求や権利を尊重したり、業務に関わる報連相をきちんと行うといった行動が含まれます。

~具体的な行動例~

  • 自分の行動が他者の仕事にどのような影響を及ぼすか考慮する
  • 他者のミスや過ちを未然に防ぐ
  • 同僚や上司に相談や確認を行ってから行動に移す
  • 職場内の人間関係が良くなるように働きかける
  • 他の人の立場が悪くならないように気を使う

市民の美徳(Civic virtue)

市民の美徳とは、組織の一員としての自覚を持って行動することや、組織のことを気にかけているといった状態を指します。

~具体的な行動例~

  • 社内報や掲示物をきちんとチェックする
  • 会社に関する任意の話し合いや集まりに参加する
  • 会社のイメージアップにつながる行事や祭典に参加する
  • ゴミ拾いや掃除を率先して行う
  • 家族や友人に対して会社の魅力を伝える

組織市民行動を社内に浸透させるためには

組織市民行動を社内に浸透させるためにはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。ここでは、組織市民行動の社内浸透に効果的な3つの取り組みを紹介します。

組織のビジョンを浸透させる

ビジョンとは、「経営陣が描く自社の未来像」であり、全従業員がともに目指すゴールです。経営者や上司がビジョンの浸透に取り組み、従業員たちがそのビジョンに納得することで、 「ビジョンを実現させるために何をするべきか」 を考え、部門やチームの業績が上がるような行動や判断を行うようになります。

自分に与えられた役割を正しく理解できた従業員たちは、個人目標の設定や自己評価も適切に行えるようになります。明確なビジョンを掲げて組織全体に浸透させることは、人事評価に対する納得性を高める上でも重要なのです。

【関連】経営ビジョンとは?経営理念との違い・導入メリット・作り方から企業事例までご紹介/BizHint

OJTの実施

OJT(On-The-Job Training)とは、職場内で行う教育訓練です。上司が部下に対して丁寧で手厚い指導を行うほど、部下は利他主義による行動を取るようになると言われています。

ここで重要なのは、 部下に「上司が仕事として割り当てられている以上の支援をしてくれている」と感じてもらうこと です。範囲外の仕事に前向きな姿勢で取り組む上司の姿を目の当たりにした部下は、同僚や後輩が困っている場面に遭遇した際に率先して手を差し伸べるようになるでしょう。

【関連】OJTとは?いまさら聞けないOJTの意味や基礎知識を徹底解説/BizHint

従業員満足度を高める

従業員が組織市民行動を行いやすい要因のひとつとして「職務満足度が高い状態である」ことが、研究で明らかになっています。つまり、 従業員の職務満足度と組織市民行動に明確な関係性がある のです。

自身の役割や職場環境、待遇に満足している従業員は、自発的に職務や周囲の人間に向き合ってくれます。そのため、イキイキと働ける環境作りや働きがいのある職場作りに取り組むことが、結果的に組織市民行動の社内浸透にも繋がるのです。

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まとめ

  • 組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior:OCB)とは、「従業員たちが報酬などの見返りを求めることなく、組織全体の効率を促進するため、自発的に他者を支援する行動」のことである
  • 組織には「自分に割り当てられている仕事」をしっかりとこなしつつ、「誰にも割り当てられていない仕事」も率先して行う人材が必要不可欠である
  • 提唱者のデニス・オーガン教授は、組織市民行動の次元として「利他主義」、「誠実性」、「スポーツマンシップ」、「礼儀正しさ」、「市民の美徳」の5つをあげている
  • 組織市民行動を社内に浸透させるためには、「ビジョンの浸透」や「OJTの実施」、「従業員満足度の向上」などの施策が効果的である

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