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2018年11月3日(土)更新

管理監督者

労働者の雇用に関するルールを定めた労働基準法には「管理監督者」という定義がありますが、近年、「管理監督者」の取り扱いを巡るトラブルが多発しています。その最大の原因は、経営者や人事担当者が「管理監督者」の取り扱いに対して正しく理解をしていないことにあります。企業には、法律の定めに則った適切な「管理監督者」の取り扱いを行うことが求められています。

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「管理監督者」とは

「管理監督者」とは、企業内で相応の地位と権限を与えられた上で業務結果の管理や業務遂行の監督を行う人のことです。「管理監督者」という言葉そのものは法律上の用語であり、労働基準法の適用に関して、一般の労働者とは異なる内容が存在します。

「管理監督者」の定義については、後に解説します。

「管理職」と「管理監督者」との違い

世の中で広く使われている言葉に「管理職」という言い方があります。企業内で、マネジメントという名の下で様々な管理業務を行う人たちのことを言い、会社によって係長職以上が「管理職」となるところもあれば、課長職以上が「管理職」となるところもあります。これら「管理職」と本テーマにある「管理監督者」とを同一の内容であると考えてしまう人が多いのですが、両者にはれっきとした違いが存在します。

「管理職」というのは、企業内で管理業務を行う人たちの総称を示す言葉であり、その定義は企業が独自に決定しています。しかし、「管理監督者」というのは法律上で特殊な適用をされる人の区分を表す言葉であり、その定義も国が共通の基準として定めています。

すなわち、「管理職」と呼ばれる人たちの中の一部が「管理監督者」に該当するという関係にあります。

労働基準法上における「管理監督者」とは

労働基準法は、労働者に対する労働条件の適用に関して企業が最低限遵守しなければならない基準を定めた法律です。その中の、労働時間や休憩、休日の適用に関しては、一般の労働者と「管理監督者」とでは異なる取り扱いがされています。

労働時間(残業手当)や休憩時間、休日について

労働基準法上では、労働時間、休憩、休日に関して、企業が次の内容を遵守することが義務付けられています。

  1. 労働時間について
    休憩時間を除いて、一日八時間、一週四十時間を超えて労働させてはならない。
    ただし、従業員代表者との間で時間外・休日労働に関する協定を締結した場合は、協定で定めた範囲内で残業をさせることができる。
    従業員に残業をさせた場合は、法律で定めた割増賃金以上の残業代を支給しなければならない。
  2. 休憩時間について
    一日の労働時間が六時間を超える場合は四十五分以上の、一日の労働時間が八時間を超える場合は六十分以上の休憩を、労働時間の途中で与えなければならない。
  3. 休日について
    一週間に一日以上、もしくは四週間に四日以上の休日を与えなければならない。
    ただし、従業員代表者との間で時間外・休日労働に関する協定を締結した場合は、協定で定めた範囲内で休日労働をさせることができる。
    従業員に休日労働をさせた場合は、法律で定めた割増賃金以上の残業代もしくは休日労働手当を支給しなければならない。

これらの規定は、「管理監督者」に対しては、一切適用されません。即ち、残業代や休日労働手当を支払わなかったとしても、休憩や休日を与えなかったとしても、そのこと自体が労働基準法違反に問われるわけではないのです。

名ばかり管理職

「管理監督者」に対して労働時間、休憩、休日に関する労働基準法上の規定が適用されないことを悪用し、法律上の「管理監督者」には該当しない従業員に対して名目上の肩書を与えることで、残業代や休日労働手当の支払いを逃れようとする企業が存在することが社会問題化しています。

このような名目上の肩書を与えられただけの従業員のことを「名ばかり管理職」と言います。これはれっきとした労働基準法違反であり、実態が判明した場合、厳しく罰せられます。

【関連】労働基準法違反とは?違反にまつわる規定や罰則の内容、事例をご紹介 / BizHint HR

「管理監督者」の定義

「管理監督者」に該当するかどうかに関しては、厚生労働省労働基準局が、次の四つの項目に関して判断基準となる考え方を示しています。即ち、四つの判断基準の全てに該当する従業員が「管理監督者」として取り扱うことのできる従業員だということになります。

職務内容

経営者と一体的な立場において職務を遂行する従業員が「管理監督者」に該当します。一体的な立場で職務を遂行するというのは、経営の方針に基づいて、部門の方針の決定や予算の管理、部下の労働時間の管理などの業務を行うことを意味します。

経営者と一体的な立場というのがポイントであり、経営者からの指示に基づいて単に業務の一部を管理しているだけ従業員は、「管理監督者」には該当しません。

責任と権限

経営者と一体的な立場で職務を遂行することを前提に、部下の労務管理に関する責任と権限を与えられた従業員が「管理監督者」に該当します。労務管理に関する責任と権限というのは、経営の方針に基づいて、部下の採用や配置、賃金その他労働条件の決定等を行う権限が与えられており、その結果に対する責任も担っている立場であることを意味します。

採用した部下に与える業務内容を決めることができたとしても、採用や労働条件の決定権限が経営者や人事部にある場合などは、「管理監督者」には該当しません。

勤務態様

経営者と一体的な立場で職務を遂行することを前提に、勤務の在り方に関して会社から何ら拘束の受けない従業員が「管理監督者」に該当します。具体的には、就業規則で定められた始業、終業時刻に拘束されることなく出退勤の時刻を自由な裁量で決定することのできる人のことを言います。

就業規則上の所定始業時刻での出社が義務付けられている、上位者の許可を得てからでないと出退勤の時刻を決められない従業員は、「管理監督者」には該当しません。

地位にふさわしい待遇

各月の給与や賞与などの待遇に関して、一般の労働者と比較して相応に高い待遇を得ている従業員が「管理監督者」に該当します。即ち、責任のある職務を遂行し、残業代なども支払われない代わりに、最初からそれなりに高い収入を得ている人のことを言います。

世の中では、「管理職」になったことで年収が減ってしまったという話がよく聞かれます。このように、役職手当などの「管理職」になったことで得られる給与の金額が今まで残業代として得ていた金額を下回るようなケースに関しては、「管理監督者」として認められない可能性が極めて高いです。

【参考】労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために

「管理監督者」にも適用される労働基準法の規定

「管理監督者」に対して労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用除外となる解説をしてきましたが、次の二つに関しては適用除外とはなりません。

  • 深夜労働に対して割増賃金を支給すること
  • 年次有給休暇を付与すること

深夜割増賃金の支払い

「管理監督者」に該当する従業員が午後十時から翌午前五時の深夜の時間帯に労働した場合、会社は、法律で定めた割増賃金以上の深夜労働手当を支給する必要があります。「管理監督者」に対して一切労働時間の記録を行わない会社もありますが、深夜労働に対する割増賃金の支払い義務は免れないので、深夜の時間帯に及ぶ労働が生じた場合は労働時間の記録を行う必要があります。

年次有給休暇の付与

労働基準法上、雇入れ日からの継続勤務期間と週の所定労働日数に応じた日数分以上の年次有給休暇を毎年与えることが義務付けられていますが、この規定に関しても、「管理監督者」に対して一般の労働者と同様に適用する必要があります。有給休暇を行使するかどうかは本人の判断ですが、法律で定められた日数分以上の有給休暇を行使する権利を与える必要があるということです。

「管理監督者」への対応に関する注意点

「管理監督者」といえども労働者であることには変わりがないので、労働基準法を始めとした労働法の規定を遵守する必要があります。

「管理監督者」の判断基準

「管理監督者」に該当するかどうかは、雇用や勤務の実態と照らし合わせたうえで、厚生労働省労働基準局が定めた判断基準に準拠して決定する必要があります。即ち、会社が認めた「管理職者」イコール「管理監督者」ではないことに注意する必要があります。

一般の中小企業においては、厚生労働省労働基準局が定めた「管理監督者」の判断基準に該当する従業員というのは、部長級、工場長級であることが一般的です。

労働時間の管理

労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用除外となることより、「管理監督者」に対しては一般の労働者ほどの厳密な労働時間の管理は必要ないと言えますが、過重労働による健康障害を防止する義務は履行しなければなりません。

36協定の適用

企業は、従業員代表者との間で時間外・休日労働に関する協定、通称36協定を定めた場合は、協定で定めた範囲内で残業や休日労働をさせることができます。そうする場合、協定の中で適用となる業務の内容や従業員の人数を定める必要があるのですが、適用者の人数の中に「管理監督者」を含める必要はありません。即ち、「管理監督者」に対しては、36協定は適用されないということです。

【関連】36協定とは?時間外労働の基礎知識から記載内容、届出のポイントをご紹介 / BizHint HR

過重労働による健康障害

労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用されない「管理監督者」に対しては、一般的に長時間労働が生じやすくなります。業務や部下の管理を行わなければならないことに加えて、変れる人のいない責任のある仕事を抱えているからです。

しかし、企業が「管理監督者」の長時間労働を野放しにすることは許されません。過重労働による健康障害が生じないように注意する必要があるのです。

それに関しては、労働契約法上の安全配慮義務と労働安全衛生法上の労働者の健康の維持管理に関する義務の履行ということが当てはまります。労働契約法上の安全配慮義務の履行というのは、企業に課せられた「労働者が生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮を行う」ことを意味し、労働安全衛生法上の労働者の健康の維持管理に関する義務の履行というのは、「月の残業時間が100時間を超えた労働者に対して医師による面談指導を受けることのできる機会を与える、年一回のストレスチェックを行う」などといったことに対応することを意味します。

労働契約法上の安全配慮義務と労働安全衛生法上の労働者の健康の維持管理に関する義務に関しては、義務の履行を怠ったとしても、懲役刑や罰金刑などの法律上の罰則は科せられません。だからと言って、安心できるわけではありません。

企業が義務を怠ったことが原因で従業員に健康障害が生じた場合ことが明らかとなった場合に、民事上の賠償責任が生じるからです。加えて、行政指導の対象ともなってしまいます。

【関連】過重労働の定義とは?企業で行う対策~過重労働撲滅特別対策班や相談窓口もご紹介 / BizHint HR

雇用契約

労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用されない「管理監督者」であっても、一般の労働者と同様に、法律上で定められた労働条件を書面で通知する義務は免れません。

いわゆる雇用契約書あるいは労働条件通知書の作成に関することですが、「管理監督者」となったことで職務内容や労働条件が大幅に変更された場合は、労使トラブルを未然に防止するという意味において、雇用契約書あるいは労働条件通知書を新たに作成することが望ましいです。

【関連】「雇用契約」とは?労働契約との違い、雇用契約書の雛形や注意点も解説 / BizHint HR

労働者の代表者になれない

企業が36協定を始めとした労使協定を締結する場合や就業規則の変更を行う場合などは、従業員代表者の同意を得る、意見を聞く、といった対応が必要となります。これに関して、「管理監督者」は従業員代表者になることができません。従業員代表者の選定にあたっては、「管理監督者」を除いた従業員の中から、従業員が自主的に選ぶ必要があります。

「管理監督者」に関する判例

「管理監督者」に関しては、会社が「管理監督者」として取り扱っている人に対して、裁判所が名ばかり管理職者であると判断し、その人たちへの残業代を支給することを命じた判例がたくさんあります。

その中の一部について、内容を解説します。

マクドナルド裁判(2008年1月)

マスコミにも大きく取り上げられ、世の中に名ばかり管理職の存在が広く知れ渡るきっかけともなった裁判です。残業代が支払われない状態で、月の残業時間が100時間を超え休日出勤も多い過酷な労働を強いられていた入社二年目の店長が、会社を訴えました。

それに対して裁判所は、訴えを起こした店長は法律上の「管理監督者」には該当しないと判断し、会社側に500万円を超える残業代および休日労働手当の支払いを命じました。裁判所が「管理監督者」には該当しないと判断したのは、次のような理由からです。

  1. 店長は、アルバイト従業員の採用や育成、勤務シフトの決定、販売促進活動の企画や実施等に関する権限を有してはいるものの、それは店舗のみに関することであり、会社全体に関する権限は一切有していないので、経営者と一体的な立場で職務を遂行する状況にあるとは言えず、職務内容に関する判断基準には該当しない。
  2. 店長は店舗の営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置くという会社の方針に拘束されることで、自らがシフトマネージャーとして長時間勤務しなくてはならない状況に置かれていたため、労働時間に関する自由裁量があったとは認められず、勤務態様に関する判断基準には該当しない。
  3. 店長の賃金は、労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用されない「管理監督者」に対する待遇としては十分であるとは言い難いため、地位にふさわしい待遇に関する判断基準には該当しない。

【参考】マクドナルド店長への残業代支払いを命じた判決
【参考】日本マクドナルド事件

コンビニエンスストアSHOP99裁判(2011年5月)

入社9カ月で店長に任命された従業員が、過重労働が原因でうつ病になり、店長職から外れた後に会社を訴えました。

それに対して裁判所は、次のような理由から元店長は法律上の「管理監督者」には該当していなかったと判断し、会社側に165万円にも及ぶ残業代と慰謝料の支払いを命じました。裁判所が「管理監督者」には該当していなかったと判断したのは、次のような理由からです。

  1. 元店長には、会社の経営に関する重要事項の決定に参加する権限は一切与えられておらず、正社員の労務管理に関する権限なども有していなかったため、経営者と一体的な立場で職務を遂行する状況にあったとは言えず、職務内容に関する判断基準には該当しない。
  2. 店舗は、二十四時間営業であったにもかかわらず、正社員一名とパート・アルバイト従業員で対応する体制を取っていたため、元店長は、必然的にパート・アルバイト従業員がシフトに入れない時間帯の穴を埋めなければならなくなり、労働時間に関する自由裁量があったとは認められず、勤務態様に関する判断基準には該当しない。
  3. 元店長の賃金や賞与、退職金などが、労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用されない「管理監督者」に対する待遇としては十分であるとは言い難かったため、地位にふさわしい待遇に関する判断基準には該当しない。

【参考】コンビニエンスストアSHOP99の店長への残業代支払いを命じた判決
【参考】SHOP99名ばかり管理職事件

セントラル・パーク裁判(2007年3月)

ホテルのレストランの元料理長が、残業代が適切に支払われていなかったという理由で会社を訴えました。

それに対して裁判所は、訴えを起こした元料理長は法律上の「管理監督者」には該当していなかったと判断し、会社側に120万円近い残業代の支払いを命じました。裁判所が「管理監督者」には該当していなかったと判断したのは、次のような理由からです。

  1. 元料理長には料理人の採用や解雇に対する最終決定権がなく、昇給を決定する権限などもなかったため、 経営者と一体的な立場で職務を遂行する状況にあったとは言えず、職務内容に関する判断基準には該当しない。
  2. 元料理長は料理人の勤務シフトを作成していたが、料理人に対して毎月一定日数の休日を与えなければならなかったために自らもシフトに組み入れなければならず、労働時間に関する自由裁量があったとは認められないため、勤務態様に関する判断基準には該当しない。

【参考】岡山地裁平成19年3月27日判決
【参考】時間外手当等請求事件

まとめ

  • 「管理職」イコール「管理監督者」ではない。
  • 厚生労働省労働基準局が定める四つの定義に該当する従業員が「管理監督者」である。
  • 名ばかり管理職の横行が社会問題化しており、企業には、雇用や勤務の実態と照らし合わせたうえで「管理監督者」として取り扱うか否かを決める必要がある。
  • 「仕事がきつくなるのに収入が減るから管理職にはなりたくない」と思っている労働者も増えているため、「管理監督者」の適用の適正化を図ることは、従業員の質を高めて生産性を向上させる効果を企業に生じさせる。

<執筆者>大庭真一郎 中小企業診断士・社会保険労務士(大庭経営労務相談所)

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