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2018年11月11日(日)更新

インクルージョン

「インクルージョン」は、元々ビジネスの場所で使われていた「ダイバーシティ」という言葉に代わって使われるようになったキーワードです。ダイバーシティーは一人一人違った「多様性」 を目的としているのに対して、インクルージョンは一人一人の意見を尊重して、それらのアイデアをまとめることで、「多様性」とは違った「一体感」を作り出し、各個人のパフォーマンスを引き出すことを目的とした成長戦略です。

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インクルージョンの意味とは?

インクルージョンとは、多種多様な価値観や考え方を持つ個人ひとり一人の能力や経験、スキルを活かし、個人・組織ともに活かす新たな人材開発のことを指します。

インクルージョンが注目された背景には、日本の人口構成の変化や労働人口の減少、人材不足などが挙げられます。多種多様な人材が出入りすることで、新たな価値やイノベーションが生まれやすくなるメリットがある一方、排斥や区別による緊張や対立が起こりやすくなります。

以前は人材の多様性を重視するダイバーシティ企業が注目されていましたが、多様性を尊重しつつも企業の価値として活かすという、さらに一歩踏み込んだ人材開発であるインクルージョンが重視されるようになりました。

ダイバーシティとの違い

多種多様な人材を受け入れ、個人・組織とも価値を引き上げるためには、インクルージョンとダイバーシティ両方を推進する必要があります。

人材開発や社員教育を担う人事担当者としても両者の違いをしっかりと把握しておく必要があります。

ダイバーシティとは

ダイバーシティとは、一言で表すと“多様性”、「人々の間の違い」を指します。また、文部科学省の発表によると、「多様な人材を活かす戦略」として位置づけられています。これは国籍・年齢・性別・言葉といった異なる属性、発想、価値観を認め、変動するビジネス環境において、迅速かつ柔軟に対応し、個人・組織ともに成長を促す戦略と定義されています。

また、ダイバーシティの切り口として、外見や年齢、性別、国籍、言葉などの見える違いと、経験や文化、学齢、組織など見えない違い、さらに価値観やライフスタイル、組織観といった心理的傾向が挙げられます。一般社団法人「日本経済団体連合会」でも、ダイバーシティの促進やセミナーの開催を定期的に行い、ホームページ上で取り組み事例集、報告書、レポートを公開しています。

【出典】文部科学省 資料2 「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」報告書

ダイバーシティとの差異点

ダイバーシティとインクルージョンの差異点を考える場合、ダイバーシティは「多様性」、インクルージョンは「受容」と考えるとわかりやすくなります。

この受容とは、一人ひとりの考えや価値観を尊重し、聴き入れることを指します。さらに掘り下げると、ダイバーシティとは人々の違いや差を意識することであり、インクルージョンとは包括、一体となるという意味合いがあります。

人事担当者が実施する施策という点で考えると、ダイバーシティとはさまざまな人材を受け入れるだけの雇用環境やポストの用意、働き方改革などの環境整備が挙げられます。一方、インクルージョンとは従業員一人ひとりが自分の個性を活かした上で、積極的に組織に参加できる機会や社風の創出、マネジメント体制の構築が挙げられます。

【関連】ダイバーシティとは?意味や経営を推進するためのポイント / BizHint HR

インクルージョンに取り組んでいる分野

最初にインクルージョンが取り組まれたのは、社会・福祉という分野でした。後にビジネスシーンにおいても、ダイバーシティを発展させた新たな成長戦略として取り組まれるようになりました。

社会・福祉分野でのインクルージョン

インクルージョンとは、元々、社会的一体性という意味として使われ、障害を持つ子供たちが教育・社会に参加することを目的とした支援や取り組みを指していました。

近年では高齢者や犯罪前歴者が参加しやすい社会を生み出す「インクルージョン社会」、ITを使った誰もが参加できる社会「e-インクルージョン」などの支援や取り組みにもインクルージョンという概念が使われています。

ビジネス分野でのインクルージョン

ビジネスシーンにおけるインクルージョンは、ダイバーシティによる企業内の人材多様化が引き起こす衝突や対立を避けるための施策として取り入れられました。

新たな価値観や考えを持つ人材を採用したとしても、既存の人材から新たな仲間として受け入れられることがなければ、企業の成長や価値の向上にはつながりません。組織内で起こる暗黙的な区別や排斥などを防ぐためにも、新たな人材が活躍・挑戦できる機会や教育、社風の醸成に力を入れる必要があり、既に社会・福祉分野で行われていたインクルージョンに注目が集まるようになりました。

インクルージョンが重要視される背景

ビジネスシーンにおいて、インクルージョンが重要視される要因は、人口構成・労働人口の変化と、人材の定着を促す施策の必要性が挙げられます。

人口構成や労働人口の変化

ダイバーシティ推進に伴い、インクルージョンが重要視される背景として、日本の人口構成と労働人口の変化が挙げられます。

日本社会では戦後のベビーブーマー世代が定年退職し、少子高齢化社会に突入しています。そのため、日本の人口構成の大半が65歳以上の高齢者となり、労働人口の減少が現実的なものになってきました。そのため、今まで男性主体の労働市場から、高齢者や女性を労働力として取り入れる必要性が出てきました。

そのため、年齢や性別、国籍、言葉などの多様性を認め、企業の競争力の活性化を目的としたダイバーシティが導入され、ダイバーシティにより受け入れた人材を個人・組織ともに成長させるための成長戦略としてインクルージョンが注目されるようになりました。

ダイバーシティからインクルージョンへ

多種多様な価値観を持つ人材を採用する環境の整備は行えても、実際に働きやすいかどうかは別問題です。例えば、積極的に女性管理職を登用する方針を掲げたとしても、出産や育児などで職場を離れざるを得ない状況であれば、女性社員はその会社に定着しません。これからもわかるように、ダイバーシティ推進のみを推奨するダイバーシティ企業では人材の定着が図れないことは明白です。

そのため、優秀な人材を定着しやすいような機会や社内風土の創出、新たなマネジメント体制の構築が求められるようになりました。人材開発や教育を担う人事担当者にとっても、ダイバーシティとインクルージョンへの理解を深める従業員の統合教育を取り入れる必要があります。日本政府も国の成長戦略として「一億総活躍社会の実現」を掲げており、「働き方改革実現会議」を定期的に開催することで、「ダイバーシティ&インクルージョン」の導入に取り組んでいます。

首相官邸 HP 一億層活躍社会の実現

日本においてインクルージョンが求められる理由

日本において、インクルージョンが求められる理由としては、先にご紹介した労働力の減少が挙げられます。労働賃金の底上げや労働環境の改善といった施策も行われていますが、人材流出の防止策、多種多様の人材が活躍できる環境構築という点では必ずしも良い施策とは言えません。

現在の日本社会に蔓延する男性主体の労働社会から、性別や年齢の区別をなくした誰もが働きやすい労働環境を構築する必要があります。これにより、企業に新たな価値やイノベーションが生まれやすい環境も生まれ、個人・組織ともに成長できるだけでなく、日本経済の活性化にもつながるとされています。

日本におけるインクルージョン推進の現状

日本社会においても、2000年を過ぎた頃からベビーブーマー世代の定年退職が現実のものとなり、労働力の確保として女性の雇用促進や高齢者の再雇用・雇用継続などに取り組まれるようになりました。外資系企業を中心に「ダイバーシティ&インクルージョン」を率先して採用する企業も増えつつあります。

しかし、多くの日本企業の中には「ダイバーシティ&インクルージョン」を「女性の活躍及び活用促進」と同義語として捉えている企業も少なくありません。「ダイバーシティ&インクルージョン」は男性も含めた個人の経験やスキル、価値観を尊重するものです。このような誤った認識が広がっているため、経営戦略課題として取り上げている企業は思った以上に少ないといえます。

また、企業の主戦場が人口減少する内需から新興国を中心としたアジアやアフリカなどの外需へと移行する中で、積極的に外国人を採用する企業も増えています。しかし、先にも述べたように「ダイバーシティ&インクルージョン」を「女性の活躍及び活用促進」を捉えている日本企業は、「国籍を含めたさまざまな属性の違いを認め、個人・組織ともに成長する」という本来のインクルージョンの意味を理解していないため、海外市場でも想定していたような実績を挙げられないことが多々あります。

インクルージョンが実現した組織とは

インクルージョンを実現した組織には以下のような能力の向上がみられます。

向上する3つの力

個人の考え方や価値観を尊重し、意見を取り入れることがインクルージョンの特徴です。これにより、従業員は企業や組織から必要とされているという感覚や当事者意識を持ちやすくなり、企業への「貢献意欲」を向上することができます。

また、ダイバーシティ(多様性)を従業員同士が相互に尊重し、受け入れる姿勢は従業員同士の「良き信頼関係」の構築にも寄与します。信頼関係が高まることにより、個人・チームの生産性も向上し、優秀な人材が育ちやすい環境へとつながります。

さまざまな考えやアイディアを持つ人材が集まり、意見を尊重し、互いの価値観や知識、経験を共有することで「イノベーション」も生まれやすくなります。世界規模で認められている製品やサービスを提供する企業は、年齢や人種、性別、言葉の壁を超えた多国籍企業であることも多く、世界経済を牽引する上では欠かせない社内風土といえます。

このようにインクルージョンを浸透させることは「従業員の貢献意欲の向上」、「従業員同士の信頼関係の構築」、「イノベーションを生み出す」という点でも有効です。

「会社」という枠組みにこだわらない企業の登場

企業の成長戦略といった重要な経営課題は、経営陣や重役職に限った閉鎖的な場で行われることがほとんどです。しかし、さらに進化したインクルージョンは会社という枠組みすら取り外すことがあります。

会社の成長戦略や目標を決定する会議の場には、経営陣を含む従業員全員が参加することはもちろん、その企業の理念や方針に共感する外部の人間(ステークホルダーや顧客、取引先など)も参加して議論する企業も存在します。「会社」という枠組みではなく、コミュニティに近い感覚で組織内外の多様性を取り組むことで、企業の成長に良い影響を及ぼすと考えられています。

インクルージョンを実現するための方法

従業員の企業に対する貢献意欲の向上やイノベーションの創出などさまざまなメリットがあるインクルージョン。人事担当者としてもインクルージョンが浸透した企業を実現するには、その実現方法を把握・理解しておく必要があります。

多様性を活かせる機会の創出

インクルージョンの要は「受容」です。個人ひとり一人の価値観や意見を尊重し、聞き入れられる組織が必要とされます。個人の能力や経験、知識を活かせるような挑戦の機会やそれを受け入れる労働環境の構築が大切となり、人事としても多様な人材が活躍できるような機会の浸透やアプローチを行うべきです。

国内市場からグローバルへ移行するため、外国籍の従業員の雇用を考えている企業は、外国籍の方が受け入れられる環境の整備だけでなく、多様性を活かせる機会の創出が求められます。

流動的な行動パターンの推奨

ビジネスシーンにおいては、従来正しいと思われてた行動パターンが必ずしも正しいとは限りません。

そのため、仕事の取り組み方にも個人の能力が活かせるような働き方が求められます。多くの日本企業ではマネジメント層の考えに引っ張られ、個人の能力が最大限に引き出されない事例が多く見られます。例えば、繁忙期はプライベートを投げ打ってでも仕事を優先すべきという価値観は、職場に定時退社しづらい雰囲気を作り出し、従業員の生産性を著しく低下させます。

プライベートを充実させることで、仕事のパフォーマンスを向上させる方もいるため、プライベートを重視しない職場は、相応しい労働環境とはいえません。固定化された行動パターンではなく、個人が行かせる流動的な行動パターンを職場に導入する必要があります。

企業のビジョンや目標を共有し、対話を促す組織を目指す

さまざまな考えや意見、価値観を持った人材が集まったとしても価値や利益を創出するためには、組織のビジョンや目標を従業員に共有する必要があります。自分の働きがどのように企業へ貢献しているかを意識することで、より創造性に富んだ成果を生み出し、従業員の貢献意欲の向上にも繋がります。いかに貢献しているか、自分がどのように周囲から評価されているかを知るには周囲との対話が必要不可欠です。そのため、多様な意見や考えが行き交う対話の場が奨励される組織を目指さなければいけません。

従業員が当事者意識を持って、取り組む

組織は人で構成されているため、組織を変えるには従業員の意識を変える必要があります。日本企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」を取り組むにあたって、障害となりやすいのが、暗黙的・無意識的に潜んでいる新しい人材や事象に対する区別や排斥です。

自分の価値観や考え方に基づいた先入観や決め付けは、個人の成長を阻害し、組織としての成長も止める要因にもなります。そのため、従業員一人ひとりが排他的な考えや行動になっていないかを内省し、実践する当事者意識を持つ必要があります。

インクルージョンへの取り組み事例

日本社会においてもインクルージョンを積極的に取り組んでいる日本企業があります。それぞれ最新かつ独特の取り組みを実践し、成果を出している事例をご紹介いたします。

ANAホールディングス株式会社(ANA HOLDINGS INC.)の事例

日本を代表する航空会社であるANAホールディングス株式会社(ANA HOLDINGS INC.)では、「ANAグループ ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を行い、女性活躍推進、多様な働き方、障がい者雇用の促進を積極的に取り組んでいます。

社員の大半が女性社員であることもあり、女性のさまざまな感性や視点を取り入れた価値観を基に推進を行っている点が特徴的です。2020年までに女性役員2名以上の雇用(2015年4月に4名登用)、女性管理職比率15%の達成(2016年4月時点で12.2%達成)、総合職事務・客室乗務職掌の女性管理職比率30%(2016年4月時点で23%達成)を掲げ、日々、インクルージョンに取り組んでいます。

また、障がい者雇用においてもグループ会社全体で取り組んでおり、2015年4月時点で対象のグループ会社全てが法定雇用率2.0%を達成しています。

【出典】ANAホールディングス株式会社 HP 「ANAグループが目指すもの」

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の事例

世界60カ国に250以上のグループ企業を有する世界最大級のヘルスケアカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソン。その日本法人であるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社は「ダイバーシティとインクルージョンの推進」を基にした制度や運動を展開しています。

中でも特徴的な制度が、結婚や妊娠、出産などの人生の一大イベントから、仕事と育児・親の介護との両立を促す制度です。出産や育児休業においては、法定で定められている給付金や休業期間よりも好条件で提供しています

※産前・産後休暇は標準報酬月額85%(一般は3分の2)と一時金10万円の支給 ※育児休業は最長で約2年間を実施(法令では1年6ヶ月)

また、ダイバーシティとインクルージョンの推進活動の一環として、女性のリーダーシップ開発を目的としたWomen’s Leadership Initiativeなどの組織勉強会の開催や、Open&Out というLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の理解啓発運動にも取り組んでいます。

【出典】ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 HP ダイバーシティとインクルージョンの推進

第一生命保険株式会社の事例

国内大手生命保険会社である第一生命保険株式会社では、グループビジョンである「いちばん、人を考える会社になる。」を基のダイバーシティ&インクルージョンを実施しています。「ワーク・ライフ・バランスの推進」、「女性の活躍推進」、「障がい者の活躍推進」、「グローバル・ダイバーシティの巣新」の4つを中心に経営陣を含む全社員が意識・風土改革に取り組んでいます。

社長を委員長としたES・ダイバーシティ&インクルージョン推進専門委員会を設置し、その成果を全社員が閲覧できる社内イントラネットで公開しています。

【出典】第一生命保険株式会社 HP ダイバーシティ&インクルージョンより

まとめ

  • 変動する世界情勢や世界経済において、ダイバーシティ(多様性)を認め、それを受け入れるインクルージョンは日々重要性を増しています。
  • インクルージョンには欠かせない多様性を持つ人材が活躍できる機会や社風を創出するには人事部の協力が必要不可欠です。
  • 人事担当者として、サポートできる点を提案・模索し続けることが大切となります。

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