はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2019年11月6日(水)更新

ピープル・アナリティクス

ピープル・アナリティクスとは、人材に関する多種多様なデータを収集、分析することで得られた情報をもとに、さまざまな組織課題を解決へと導く手法です。Googleなど一部の企業ではすでに専門部署も設立されています。当記事ではピープル・アナリティクスに対する理解を深めるために必要な情報を、意味、メリット・デメリット、実行方法、企業事例などの項目に整理して分かりやすく解説しています。

ピープル・アナリティクス に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

ピープル・アナリティクスとは?

ピープル・アナリティクス(People Analytics)とは、 人材に関する多種多様なデータ(人事データ)を収集、分析することで、社内環境の改善や生産性の向上、個人成長の促進といった、さまざまな組織課題を解決へと導く手法 です。

株式会社シンギュレイト/ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会 上席研究員の鹿内学さんによると、ピープル・アナリティクスは「人と組織の科学」であるとのこと。ピープル・アナリティクスは「技術」を駆使するだけでなく、 検証し、考察し、実践していくプロセス(=サイエンス)の観点が加味されてこそ、初めて真価を発揮するものだと語っています。

BizHintでは、この鹿内学さんが聞き手となっている「「人と組織の科学」―人事データ・ピープルアナリティクス最前線―」を連載しています。ぜひ合わせてご覧ください。

ピープル・アナリティクスで取り扱う扱うデータの種類

ピープル・アナリティクスで扱うことのできるデータの一例です。

  1. 性別や年齢といった基本的な情報
  2. 人事評価や報酬、従業員サーベイ結果といった、企業側で収集できている人事データ
  3. 会議室の利用状況やパソコンの使用記録など、業務におけるデータ
  4. 会話や位置情報、健康状態といった行動データ など

③のデータについては、ウェアラブル端末をはじめとしたセンサーが搭載された機器を携帯してもらうことで、取得可能となります。

ピープル・アナリティクスにより実現できること

ピープル・アナリティクスは、メンバーのモチベーション管理や優秀な人材の行動パターンの把握など、実現できることは多岐に渡ります。その中から一般的なものを業務内容ごとに整理して紹介します。

人材採用 ・人材要件の再定義
・入社後のパフォーマンス予測
・自社との相性をスコア化
人材配置・人事異動・人材登用 ・社内で埋もれかけている人材の発掘
・人材と環境(支店・部署・チーム・仕事内容)のマッチング
・新規事業や新プロジェクトに適した人材の選抜
人材育成 ・研修(実施タイミング・期間・内容・手法)の最適化
・ハイパフォーマーに共通する行動特性の特定
・後継者候補のリストアップ、サクセッションプランの作成
退職・休職 ・早期離職や退職、休職の要因を特定
・退職リスクや休職リスクの予測
・リテンションマネジメントへの活用

【関連】注目される人事データを、離職率の低下、面接の効率化に役立てる方法 / BizHint

ピープル・アナリティクスに注目が集まっている背景

ピープル・アナリティクスの先駆けとなったのは、社内外問わず多種多様なデータを収集し、活用しているGoogle社です。2007年に人事部の名称を「ピープルオペレーション(People Operations)」に変更したことで、「ピープルの分析=ピープル・アナリティクス」という言葉が生まれたといわれています。

そして、ピープル・アナリティクスの持つ多くの可能性を世に知らしめたのが、各種統計を駆使して経営危機に瀕していた球団をわずかな予算だけで再建させた実話から生まれた映画「マネーボール」。2011年にこの映画が放映されるとすぐに、欧米の人事関係者の間で「人事領域においても人材データをマネジメントに活用できるのではないか」と大きな話題になりました。

日々の変化が激しく、将来の予測が非常に困難なことから「VUCA時代」と呼ばれることもある現代社会。このような環境下において、常に全社員の状態を正確に把握し、次々に発生する組織課題に対して最適な施策を講じるということは決して容易なことではありません。このような状況を打破し、企業と個人の両者にとって理想的な環境を構築するための手段の一つとして、日本でもピープル・アナリティクスに注目されるようになったのです。

【参考】What is the History of People Analytics?

ピープル・アナリティクス活用のメリット・デメリット

ピープル・アナリティクスは中小企業から大企業まで、あらゆる規模の企業で活用できる柔軟性に優れた手法です。その応用範囲は非常に広く、社内に点在するさまざまな種類の組織課題に対して十分な効果を発揮することができます。

しかし、ピープル・アナリティクスにはいくつかのデメリットも存在します。メリットとデメリットの両方を正しく理解し、組織課題の解決に向けて効果的に活用しましょう。

ピープル・アナリティクスのメリット

ピープル・アナリティクスのメリットには次のようなものがあります。

意思決定の精度と速度を最大限に高められる

わずか1日で状況が180度変わることも少なくない時代において、勘や経験による意思決定の精度が著しく低下することは想像に難くありません。しかし、ピープル・アナリティクスを通じて個人的感情や価値観の多くを排除することで、公正で精度の高い意思決定が行えるようになります。

個人的感情や価値観の多くを排除するということは、属人化を防げるということでもあります。データの分析結果と科学的根拠に基づく明確な判断基準を社内で共有することによって、知識や経験が乏しい社員でも自信を持ってスピード感のある意思決定を行えるようになります。

根本的な解決策を導き出すことができる

経営者や人事担当者の頭を悩ませる組織課題の多くは、複数の原因が複雑に絡み合って発生しています。しかし、多種多様なデータを適切に組み合わせながら多角的に分析するピープル・アナリティクスであれば、複数のデータの間に存在する因果関係を正しく捉え、根本的な解決策を導き出すことができます。

社員に対して説得力のあるエビデンスを示せる

どれだけ真因を突き止めたとしても、社員の協力なくして施策を成功させることはできません。一般的に、人の説得には「ストーリー」と「エビデンス」の2つが必要だといわれています。社内データという身近な情報を分析することで得られたエビデンスは、これから実施する施策の必要性や効果、社員に求める行動を具体的に伝える上で心強いアイテムとなるのです。

ピープル・アナリティクスのデメリット

ピープル・アナリティクスのデメリットには次のようなものがあります。

プライバシー侵害リスク

ある日突然、「今日から皆さんの細かなデータを収集させてもらいます」と言われて気分が良い人はいません。中には、「データが人事考課にも影響を与えるのでは」と疑う人もいるでしょう。

このような状態では、社員たちの正確なデータを収集することはできません。社員たちの不信感や不安感を払拭し、組織課題の解決に向けて協力してもらうためにも、収集や分析の対象となる範囲や収集したデータの取り扱いについて明確にし、同意を得た上で慎重に実施するよう心掛けましょう。

データ分析を行える人材が必要となる

データ分析を通じて社員の行動や能力、感情などを「見える化」することができるピープル・アナリティクス。しかし、それを実現させるためにはデータを分析できる人材が必要不可欠です。

収集したデータには社員たちのプライベートな情報が数多く含まれています。データ分析を得意とする人材がいない企業の場合、データアナリストを新たに組織内で育成するのか、それとも社外のデータアナリストに分析作業を依頼するのか、経営者や人事部は頭を悩ませることになるでしょう。

事業部のリーダーシップが損なわれやすい

ピープル・アナリティクスとは、さまざまな組織課題に対する最善策を科学的に導き出すためのツールです。そのため、データ分析を担当するデータアナリストが強くなればなるほど、事業部のリーダーシップが損なわれやすくなるといった側面があります。

ピープル・アナリティクスを行う上で重要なのは、事業部がリーダーシップをしっかりと発揮し、社員一人ひとりが主体性や当事者意識を持って施策や案件に取り組むことです。事業部のリーダーシップを損なわせないためにも、事業部とデータアナリストが対等な関係性を保てるようにサポートする必要があるでしょう。

ピープル・アナリティクスの活用事例4選

ハイパフォーマーに共通する行動特性の特定や退職リスクの予測など、さまざまな組織課題を解決へと導くことができるピープル・アナリティクス。

ここでは、ピープル・アナリティクスを実際に導入し、多くの成果を生み出すことに成功した事例を紹介します。

成功するチームが持つ共通因子を特定/Google

これまで「優れた上司の条件」や「偏見を排除する方法」などデータ分析によって数多くの成果をあげてきたGoogle社のピープルアナリティクスチーム。その中でも、チームの生産性向上に大きく寄与する「心理的安全性の発見」は世界中から高い評価を受けています。

Google社は再現性の高い成功因子を特定するため、「チーム」を再定義し、250項目を含む既存のリサーチデータを分析。複数の観点からチームの効果性を測定することで、「心理的安全性」、「相互信頼」、「構造と明確さ」、「仕事の意味」、「インパクト」という5つの因子がチームの効果性に大きな影響を与えることを特定しました。また、この5つの因子に着目したアンケートを実施し、メンバーの離職率やパフォーマンスなどの変数との因果関係を調べることで、「心理的安全性」が圧倒的に重要な因子であることを突き止めました。

【参考】「効果的なチームとは何か」を知る/Google re:Work - ガイド
【関連】心理的安全性とは?googleが発見したチーム生産性を高める唯一の方法/BizHint

人材育成エンジンを開発して選考工数を9割カット/株式会社セプテーニ・ホールディングス

ネットマーケティング事業やメディアコンテンツ事業を手掛ける株式会社セプテーニ・ホールディングスでは、20年以上も前から一人の社員が全社員を評価することができる独自の360度評価を運用しています。その膨大なデータをもとに「誰が、いつ、どこで活躍できるかを可視化したい」という課題の解決を目指し、約6年もの歳月をかけて人材育成エンジンを開発。人間に匹敵する精度を手に入れたAIを活用することで、異動配置の精度向上や新入社員の早期戦力化、「パフォーマンス予測スコア」による全採用活動のオンライン化など、数多くの成果を生み出すことに成功しました。

【参考】ピープルアナリティクスが人事を変える/HITO REPORT vol.3

部下の適正人数を特定/EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社

「5~6人程度」や「10人程度」など、肌感覚で語られることが多いスパン・オブ・コントロール。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社は、「上司が部下と一対一のコミュニケーションを取っている時間」を計測、分析することで、自社における適正な部下の人数が6人であることを特定しました。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社が生み出したこの分析方法はあらゆる組織で応用することができます。「部下の人数」と「上司が部下と一対一のコミュニケーションを取っている時間」。この2つのデータを照らし合わせ、コミュニケーションの量が減少し始める部下の人数を特定することで、その組織における適切なスパン・オブ・コントロールの幅を導き出すことができるのです。

【関連】「働く中でのプライバシーとは?」今、経営に求められる人事データの扱い方【鹿内学さん×EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング吉田尚秀さん】/BizHint
【関連】スパン・オブ・コントロールとは?人事制度の中で考える管理限界/BizHint

“売れる”営業マンの行動を指標化して、営業業務における効率化を実現

ある企業では、 営業電話の回数や移動時間といった営業マンの行動を計測。それらのデータにより、見込み客のアタックリストを作成する際、相手方の誰にアポイントを取るべきか、どのくらいの頻度でアプローチするべきかなど、“売れる”営業マンの行動の指標化に成功しました。

これにより、営業業務の効率化を実現しています。

【関連】人事データ・ピープルアナリティクスが今、熱い理由【鹿内学さん 株式会社シンギュレイト/ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会 上席研究員】/BizHint

ピープル・アナリティクスの実行方法

ピープル・アナリティクスによる効果を正しく得るためには、7つのステップを一つずつ丁寧に行う必要があります。

1.課題(実施目的)を明確にする

ピープル・アナリティクスにおける最初のステップは、課題の明確化です。社員データの分析は課題解決に向けたヒントを得るための手段であって目的ではありません。

目的意識がないまま開始されたピープル・アナリティクスの多くは、闇雲に社員たちのデータを収集するだけの取り組みになってしまいます。会社や個人が抱える課題を真剣に考えるところから、ピープル・アナリティクスは始まっているのです。

2.仮説を構築する

課題を明確にしたら、次は仮説の構築を行います。組織内に蓄積された社員に関する全てのデータを分析していては、時間がいくらあっても足りません。次々に発生する課題を解決へとスピーディーに導くためにも、課題に対する仮説を立てて、収集するデータの絞り込みを行いましょう。

3.指標を設定する

このステップでは、前のステップで立てた仮説を検証するため、指標の設定を行います。前述した通り、組織課題の多くは複数の原因が複雑に絡み合って発生しています。そのため、単一のデータをそのまま指標にするのではなく、複数のデータを組み合わせることで得られる情報を指標として設定することがとても重要になります。

4.データを集める

多くのデータは人事データベースから拾い集めることができます。しかし、中には社内メールの閲覧や各種センサーを用いた行動データの収集など、対象者の全面的な協力がなければ得ることができないデータも存在します。

ピープル・アナリティクスの成否は、このデータ収集にかかっているといっても過言ではありません。組織課題の根本的解決に向けて正確なデータが得られるように、現在抱えている課題や構築した仮説、社員側視点でのメリットなど、データの収集や分析の必要性について納得してもらえるまで丁寧に説明を行いましょう。

5.データを分析し、仮説を検証する

必要十分なデータが揃ったら、適切な分析手法を用いてデータ分析を行い、仮説を検証します。この際、仮説が正しければ次のステップに進み、間違っていればデータ分析の結果を踏まえた上で再び仮説構築からやり直します。

6.改善施策の立案と準備を行う

データ間の因果関係や課題の真因が明らかになったら、課題解決に向けた施策の立案を行います。そして、社員に対する想いや今後のビジョンなどをストーリーにして、科学的かつ客観的なエビデンスとともに社員全員に向けて発信します。

具体的な取り組みや分析結果をオープンにすることは、社員たちとの信頼関係を構築する上でも重要なことです。「課題に対して真剣に向き合い、必要最小限のデータだけを収集、分析して適切な改善施策を打ち立ててくれる」という印象を与えることで、次回以降は更にポジティブな姿勢で協力してもらえるようになります。

7. 改善施策を実施し、効果を測定する

施策実施後は必ず効果の測定を行い、予測していた効果との差異について評価します。予測していたよりも効果が少ないということは、社員たちに施策が受け入れられていないか原因が他にもまだ存在しているということです。必要に応じて仮説の再構築やデータの再分析、施策の見直し、社員への再説明を行い、課題の根本的解決を目指しましょう。

まとめ

  • ピープル・アナリティクスとは、人材に関する多種多様なデータを収集、分析することで得られた情報をもとに、さまざまな組織課題を解決へと導く手法です。
  • ピープル・アナリティクスは勘や経験をベースとした意思決定に比べて納得感を得られやすく、速度や精度を最大限にまで高めることができます。
  • ピープル・アナリティクスは、変化の激しい時代の中で次々に発生する組織課題に対して最適な施策を講じる手段として注目されています。
  • 日本国内でもすでに多くの企業がピープル・アナリティクスを導入し、成果をあげています。

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計190,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

ピープル・アナリティクスの関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次