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2018年3月8日(木)更新

ジュニアボード

ジュニアボード制度とは、若手社員や中堅社員がプロジェクトメンバーとして集まり、「疑似役員会」を結成し、経営課題の調査、検討、および提案を行う制度のことです。社員に経営感覚を養わせたり、若手社員、中堅社員の課題意識や意見を経営に反映させられる、といった効果があります。この記事では、ジュニアボード制度導入のメリットや成果を挙げるポイントなどについて解説します。

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ジュニアボード制度とは

ジュニアボード制度とは何でしょうか。概要を解説します。

言葉の意味

ジュニアボード制度とは、若手社員や中堅社員がプロジェクトメンバーとして集まり、「疑似役員会」を結成し、経営課題の調査、検討、および提案を行う制度のことです。次世代リーダー・幹部候補の育成や、若手や中堅クラスの社員の斬新な意見を経営に取り入れ、企業の活性化を図る手段として注目されています。

ジュニアボード制度の歴史

ジュニアボード制度の起源は古く、1930年代の米国で、香辛料で有名なMcCormick(マコーミック)社において始められたのが最初であると言われています。1932年にC.P.マコーミック氏が36歳という若さで社長に就任したのに伴い、社員の意見を経営に反映させるため、本来の役員会以外に、従業員が参加する疑似役員会や各種の委員会を設けました。

マコーミック社では、この経営スタイルを「複合経営制(Multiple Management)」と称し、擬似役員会をジュニアボード(Junior Board of Directors)と呼びました。

【参考】日本総研:ジュニアボード・マネジメント」による企業変革

ジュニアボード制度の目的

ジュニアボード制度の目的について解説します。

次世代リーダー・後継者育成

社員は通常、所属する部門やチームの目標達成や、目下の業務遂行といった、現場としての視点で業務を行っています。業務の中で磨かれる能力も、プレイヤーとしての目標達成や業務遂行能力であることが多いでしょう。

しかし、経営幹部に求められる能力は、これらプレイヤーに求められる能力とはまた異なるものです。社員から経営幹部を育てる場合は、課題分析や経営戦略の策定、経営手法の学習と実践、会社経営の視点から見た意思決定など、経営幹部としての経験を蓄積させ、能力を開発していく必要があります。

ジュニアボード制度では、メンバーが経営幹部としての実務を擬似的に経験することになります。従って、メンバーの経営幹部としての能力開発に寄与し、次世代リーダーや将来の経営幹部・後継者育成につながります。

【関連】BizHint HR: 次世代リーダーとは?どんな課題や育成研修があるのかご紹介
【関連】BizHint HR: 「後継者育成」とは?円滑な事業継承のための計画立案・育成プランをご紹介

若手社員・中堅社員の課題意識や意見を経営に取り入れる

企業の中には、経営層の思考や発想が硬直化し、革新的な発想が生まれにくかったり、経営層と現場の社員の間で意識や認識にズレがあるため、現場の実情にそぐわない意思決定が行われてしまうような所もあるのではないでしょうか。

ジュニアボード制度では、現場の若手・中堅社員が経営に関する提案を行います。従って、経営層が持っていない新鮮な視点や、柔軟で斬新な発想、現場の目線を経営に取り入れることができる可能性があります。

ミドルアップダウン型組織の実現

ジュニアボード制度は、ミドルアップダウン型組織実現のための経営手法としても注目されています。

ミドルアップダウン型組織とは、米国型経営手法の主流であるトップダウン型組織と、ボトムアップ型組織の両方の特徴を取り入れ、ワンマン経営化や意見の不一致といったデメリットを解消しながら、双方の良い部分を引き出すことができる組織管理法です。トップだけでもボトムだけでもなく、組織全体で事業コンセプトやアイデアを考えていくことを理想としています。

株式会社日本総合研究所の研究員・コンサルタントの手塚貞治氏や、東京大学大学院総合文化研究科の丹羽清教授らは、日本的経営の本質はミドルアップダウン型組織であるとしています。ミドルアップダウン型組織では、ミドルマネジメントがトップとボトムの意見を連結し、事業コンセプトを形成、企業の構成員を巻き込みながら実現していくスタイルとなります。そして、日本企業の組織スタイルにおいては、若手や中堅社員が企業経営に関する提案を行うジュニアボード制度が有効であると説明しています。

【参考】北陸先端科学技術大学院大学21世紀COEプログラム 知識科学図書館:「ジュニアボード・マネジメントによる経営者人材の育成」

【関連】BizHint HR:ミドルマネジメントとは?意味や役割、課題や育成のポイントをご紹介

ジュニアボード制度のメリット

この項では、ジュニアボード制度のメリットについて解説します。

若手社員・中堅社員の経営への参画意識を高める

ジュニアボード制度を導入することで、若手社員や中堅社員の、経営への参画意識を高めることができます。

ジュニアボード制度で企業全体に関わる課題を取り扱うことにより、ボードメンバーとしての期間が終わった後でも、全社的な取り組みに協力的になったり、経営への参画意識が高まることが期待できます。また、企業全体における自身が担当する業務の役割や価値が理解できるようになるため、社員のモチベーション向上にもつながります。

若手社員・中堅社員の経営感覚を磨く

ジュニアボード制度では、前述の通り、メンバーが経営幹部としての実務を擬似的に体験したり、経営層と共に議論を交わす機会があります。社員の経営感覚を磨くことも期待できます。

風通しの良い組織をつくる

ジュニアボード制度は、組織における「タテ」と「ヨコ」、それぞれのコミュニケーションを改善し、風通しの良い組織をつくることに貢献します。

「タテ」とは、経営層から現場までの、役職を横断する組織構造のことです。ジュニアボード制度の進行プロセスでは、経営層とジュニアボードメンバーとの意見交換が行われます。このプロセスによって、経営層と現場社員という「タテ」のコミュニケーションが生まれることになります。

「ヨコ」とは、部署や部門を横断する組織構造のことです。ジュニアボードは自薦ないし他薦による部門横断的なボードメンバーで結成されます。通常に業務を遂行しているだけでは生まれないコミュニケーションや交流が発生します。

社内の課題を再確認する

ジュニアボード制度では、経営課題に関する原因や解決策を考えていきます。このプロセスを経て、ジュニアボードのメンバーや最終的に提案を受ける経営層は、社内の経営課題を「解決すべきもの」として再確認することとなります。経営課題を埋もれさない手段としても有効であると言えるでしょう。

大企業だけではなく中小企業でも有効

中小企業では経営者の意見が強いため、役員会はそれほど活発に行われない事が一般的です。従って、ジュニアボード制度に関しても、中小企業向きではないように思われます。しかし、ジュニアボード制度は大企業だけではなく中小企業でも有効な手法です。

一般的に中小企業では、その構造上、「後継経営者の育成」「次世代の幹部となる後継者不足」「社員の年齢構成の歪さによる若手とベテランの溝の発生」といった課題を抱えがちです。また別の課題として、中小企業では経営陣が保守的である会社が多いため、時代の流れにあわせた意思決定ができず、顧客離れや業績後退などが発生しがちでもあります。

これらの課題の対策として、ジュニアボード制度は有効です。この制度をうまく活用できれば、これまで解説してきたように、後継者育成や若手とベテラン間のコミュニケーション活性化、若手の発想を経営へ反映させられるといった、様々なメリットをもたらすことが可能であるからです。むしろ、ジュニアボード制度は中小企業向きの手法である、とも言えるかもしれません。

ジュニアボード制度の流れ

ジュニアボードを開催する上での流れや進め方について解説します。

メンバーの選出

ジュニアボードのメンバーとなる社員を選出します。募集は自薦あるいは他薦で行われます。幹部候補の育成が大きな目的とされるため、一般的には事業部長などマネジメントクラスの他薦により選出されることが多いようです。面接やレポート提出などによる選考が行われるケースもあります。人数は5~10人程度が一般的なようです。

また、ジュニアボードの期間としては半年ないし一年が一般的です。この期間内に継続して意欲的に取り組めることが、メンバー選出の条件となるでしょう。

取り組む課題の選定

ジュニアボードとして取り組む課題を選定します。課題に関しては、企業の経営戦略や方針を経営層と共に考えていくケースや、「新商品の開発」「新規事業の展開」「社風や企業構造の改革」などといった、大まかな領域の中から取り組むテーマを選び考えていくケースなどがあります。

提案の検討

ジュニアボードのメンバーにより、実態の調査、分析、議論などを経て、提案を検討していきます。月に1回程度の頻度で集まり、討議を行うケースが多いようです。

提案の実施

一般的には、初回のキックオフ会、中間での役員会答申を経て、期間の終盤に最終役員会答申が行われます。最終役員会答申において提案が行われ、役員会は提案に対し承認、非承認を決定します。

プロジェクト立ち上げ

役員会で承認された提案に対して、プロジェクトチームを立ち上げ、実際に活動を推進していきます。承認された提案に関しては、他の社員も巻き込みやすくするため、提案内容を社内にも公表すると良いでしょう。

ジュニアボード制度で成果を挙げるポイント

ジュニアボード制度で成果を挙げるポイントについて解説します。

「机上の空論」でも可能性を見出す

ジュニアボードのメンバーは基本的に経営に関して初心者です。普段から経営に携わっている役員や経営層からすると、ジュニアボード制度から生まれる提案は「机上の空論」に見えることも多いのではないでしょうか。

しかし、役員に提案を聞き、実現させようとする姿勢が無ければ、ジュニアボードのメンバーも提案へのモチベーションが上がりません。結果として、制度の形骸化につながります。

たとえ提案自体が現実の経営とかけはなれたものであっても、全部ではなく一部だけでも何かしら活かせる部分がないか、学べる部分はないかと、可能性を考えてみて下さい。可能性を見出そうとする経営層の前向きかつ真摯な姿勢が、ジュニアボード制度で成果を挙げる上では重要であると言えます。

有益な意見が出ないときは

若手の意見を取り入れようとジュニアボード制度を運用しても、提案されたアイデアは既に検討済のものであったり、提案に大きな穴があったりなど、思うように有益な意見が出ないことも考えられます。

しかし、例え有益な意見が出ない場合であっても、「経営層の仕事を経験する」という経験を経て、若手や中堅社員が飛躍的に成長することも考えられます。「提案内容自体には期待しすぎず、長期的な人材育成と捉えて取り組む」くらいのスタンスの方が良いかもしれません。

「継続させる」経営者の明確な姿勢

ジュニアボード制度はこれまで解説してきたように、次世代リーダーや後継者・幹部育成に有用な手段です。しかし、一般的には一期あたりの参加人数は少なく、提案の質次第では実際の活動が生まれないこともあるため、企業全体に影響や効果を与えるようになるには時間がかかる手法であるとも言えます。

経営層や運営事務局には、長期的な人材育成の取り組みとして継続させる意志や姿勢が求められます。

ジュニアボード制度の事例

ここからは、具体的なジュニアボード制度の導入事例について紹介します。

株式会社パソナグループ

人材派遣業大手の株式会社パソナグループでは、幹部候補生の育成制度として、ジュニアボード制度を導入しています。毎年1年を任期とし、代表をはじめとした経営層と、パソナグループの戦略や方針などを、月に1回以上会議で議論しています。また、ジュニアボードのメンバーはグループ各社から選抜され、組織のリーダーとして仲間を巻き込み、経営層と社員を繋ぐ役割を担っていきます。

【参考】パソナグループ:先輩に聞く

ユニ・チャーム株式会社

衛生用品メーカー大手のユニ・チャーム株式会社でも、将来の幹部社員育成を目的とし、1989年からジュニアボード制度を導入しています。1年間の期間で課題を検討し、ジュニアボードで検討された案を会社の施策に反映しています。

また、ジュニアボード制度のメンバーを対象として、「戦略担当秘書」という名目で、2ヶ月間に渡り「経営者のカバン持ち」を担当するプログラムもあります。経済団体の会合や、他の経営者との話し合いの場にも同席することになります。経営者としての立ち居振る舞いや、意思決定・経営判断を行う際のあり方を肌感覚で感じさせることを目的としています。

【参考】手塚 貞治『ジュニアボード・マネジメント 中堅社員の経営感覚を磨き、組織を活性化させる新経営手法』(PHP研究所、2004年) p34,35
【参考】『日本の人事部』:「共振の経営」を実現する「共振人材」はいかに生まれるのか 社員の自律的行動を促す“ユニ・チャーム流”人材育成術(後編)

三重県庁

地方公共団体でもジュニアボード制度を導入している所があります。三重県庁では、2013年度から主査級昇格者を対象とする「ジュニアボード制度」を導入しています。

一般的に三重県庁職員は30代後半から40歳前後で「主査」に昇格します。しかし、職員の年齢構成が高くなり、主査級職員が大局的に物事を考えたり、業務を担当したりすることが少なくなってきていました。そこで、この主査級職員の政策形成能力の向上のため、ジュニアボード制度を導入しました。

ジュニアボードでは、部局長が選定した課題の解決に取り組みます。1つのジュニアボードのメンバー数は5、6人で、複数のジュニアボードが設立される方式となっています。初年度の2013年度は,26のジュニアボードに148人が参加しています。

このジュニアボードによる提案の結果、庁舎における来庁者満足度の向上や、新県立博物館来館者のリピート率向上など、様々な成果が生まれています。

【参考】創意社:新・改善改革探訪記 幸福実感日本一をめざす改善改革活動

まとめ

  • ジュニアボード制度とは、若手社員や中堅社員が「疑似役員会」を結成し、経営課題の調査、検討、および提案を行う制度のこと。
  • 経営幹部・後継者育成、社員の意見を経営に取り入れる手段、日本的経営の本質であるミドルアップダウン型組織実現のための経営手法として注目されている
  • 若手の意見を経営に取り入れようとしたり、長期的な人材育成として継続させようとする経営層の姿勢や熱意が重要

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