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2019年4月9日(火)更新

中心化傾向

中心化傾向とは、様々な心理的要因によって中央値に集中した人事評価を行ってしまう心理的偏向のことを指す心理学用語です。人事戦略の効果を最大限に高めるために重要な人事評価情報を正しく取得することができるよう、人事評価者が中心化傾向に陥ってしまう要因や具体例、対策について解説致します。

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中心化傾向とは

中心化傾向とは、重大な評価エラーを引き起こす心理的偏向の1つであり、パフォーマンスやポテンシャル(潜在能力)の優劣に関わらず、一律的に標準値や中央値(中間値)などの普通評価を選択してしまう心理状況のことを表した心理学用語です。また、英語でCentral Tendencyと表記することから中央化傾向とも呼ばれています。

評価するべき成果を残した人物に対して過小評価を、改善点や反省点が多い人物に対して過大評価を付けてしまうことにより、評価結果を大きく歪めてしまう中心化傾向は、組織にとって大きな脅威となる危険な心理的偏向だといえるでしょう。

中心化傾向はアンケートなどの統計作業でも発生する

中心化傾向のよるトラブル発生は何も人事評価に限ったことではありません。意識調査アンケートや自己評価シート(セルフチェックシート)などを用いて組織内改善を図ろうとしても、中心化傾向に染まった組織構成員は当たり障りのない回答ばかりを並べてしまうため、統計から新たな気付きや発見を生み出すことが出来なくなります。 そのような状態に陥ることがないよう、早期発見と適切な対応によって組織内から全ての中心化傾向を排除しなければならないのです。

日本人は中心化傾向に陥りやすい

排除といっても中心化傾向に陥った人物を解雇するというわけではありません。なぜなら心理的偏向を持ってしまった人物をその都度解雇するだけでは、本質的な解決は望めないからです。

1970年代、内閣府が実施した『国民生活に関する世論調査』や日本社会学会が実施した『社会階層と社会移動全国調査』において、自分の生活水準や所属階層を『中(中の中)』と解答した割合が非常に多かったことから、一億総中流(国民総中流)という言葉が生まれました。また多くの日本人は、小さい頃から周りの人と足並みを揃える重要性を繰り返し教わることによって、強い協調性や連帯感を身に付けてきました。

長い年月をかけて染み付いた個人格差や自己主張に抵抗感を持つ国民性の自発的改善は容易ではなく、組織全体を対象とした大規模な意識改革や環境改善を実施しなければ、中心化傾向が発生しない組織を作り上げることはできません。

しかし、優れた経営者や人事担当者は全ての日本企業が無自覚のうちに抱えているこのマイナス要因をピンチではなくチャンスととらえ、ライバル会社に大きな差をつけるため最大限に活用しています。事の重大性にいち早く気付き、問題の洗い出しと適切な対策を講ずることによって中心化傾向を完全に排除した組織は、競合他社に対して持続的なアドバンテージを得ることができるでしょう。

寛大化傾向と厳格化傾向

評価が中心部分に集中してしまう中心化傾向に対し、極端に偏った評価を付けてしまう心理的偏向を極端化傾向といいます。

極端化傾向には評価対象者全員に対して甘い評価を付けてしまう寛大化傾向と、評価対象者全員に対して厳しい評価を付けてしまう厳格化傾向(酷評化傾向)がありますが、いずれの評価結果も中心化傾向と同様に感情や精神状態によって歪められて作成されたものであるため、正確な人材評価情報として活用することはできません。

【関連】寛大化傾向が人事考課や人事評価に及ぼす影響とは?要因や例をご紹介 / BizHint HR

中心化傾向が及ぼす悪影響

中心化傾向に陥った人事評価者(人事考課者、評価評定者)の評価データは組織運営に多くの損失を与えることになります。中心化傾向が組織に及ぼす悪影響を把握し、事の重大性を正しく理解しましょう。

個性やポテンシャルを活かすことができない

現場で活躍する従業員や作業員は、一人ひとり異なる性格やスキルを持っています。しかし、どれだけ魅力的な個性や高いポテンシャルを持っていても、中心化傾向に陥ってしまった評価者の作成した報告書からは、それらの情報を正しく読み取ることができないため、経営者や人事担当者に気付いてもらえないまま、現場で埋もれさせてしまうことが少なくありません。

評価対象者の成長機会を奪ってしまう

自己評価を意識的に実施している評価対象者は、自身で行った評価と中心化傾向に陥った評価者の評価結果との差異に戸惑い、実施中のセルフマネジメントへの信頼性を失うことで目指すべき方向が分からなくなってしまいます。

また、向上心が低く最低限の努力しか行わない評価対象者は、評価において大きな改善点や問題点を指摘されなかった事に安心してしまい、現状維持で構わないという誤った判断を行います。

このように自己評価を実施している評価対象者にとっても、他者評価に依存している評価対象者にとっても、中心化傾向によって歪められた評価結果は大きな悪影響を与えることになるのです。

優秀な人材が育たない組織風土を構築してしまう

セルフマネジメントに失敗したと勘違いしてしまった従業員は、自分の部下や後輩に対する分析力や指導力にも疑いの目を向けてしまいます。また、問題点や改善点があるにもかかわらず一定の評価を得ることができた従業員は、自分に何の落ち度もないと勘違いしたまま誤った言動を繰り返し、周りの従業員の士気を落としてしまいます。

こうして構築された人材育成が育ちにくい組織風土は、既存の従業員だけではなく今後雇用する従業員に対しても悪影響を及ぼし続けることになるでしょう。

人事戦略に支障を与える

組織力や利益の最大化は、正確なデータを下に組み上げた人事戦略を継続的に実施することによって実現させることができます。しかし、中心化傾向によってフラット化してしまった評価報告書からは、従業員一人ひとりの活動内容や将来性に関する評価を読み取ることができず、人事異動や人材育成などの重要人事戦略を積極的に実施することが困難となります。

経営者や人事担当者に誤った認識を与えて判断を鈍らせてしまう中央化傾向は、組織運営に致命的ダメージを与えかけない危険因子であるため、少しでも早く取り除かなければならないのです

人材評価制度の存在意義を失わせる

評価対象者の中には『可もなく不可もなく』といった評価が妥当な者も存在します。ですが、評価対象者全員の質が均一で、報告するべき特記事項が全くないということはほとんどありえません。 表面上は差がないように思える二名でも、持ち合わせている性格や思考、資格やスキルなどを分析することによって成長期待度や作業適性に大きな違いが生まれます。そのような評価対象者たちの僅かな違いや特性を見極めて上層部へ報告する重要な役割を担っているのが評価者なのです。

しかし、不安や恐れから中心化傾向に陥ってしまった評価者は評価対象者間に優劣を付けることを避け、当たり障りのない情報だけを評価記録としてまとめるようになってしまいます。中心化傾向によって人材評価制度を無力化された組織は、個人の持つ価値やリスクを正確に把握できないまま人材活用していくことを余儀なくされるでしょう。

中心化傾向に陥らせる心理的要因と対策例

中心化傾向は些細なきっかけで誰でも陥る可能性がある非常に厄介な心理的偏向です。

組織内人材を最大限に活用できる強い組織を作り上げるためにも、経営幹部や人事部の人間は評価者を中心化傾向に陥らせてしまう心理的要因や、組織環境と対策方法について正しい知識を身に付けておく必要があるでしょう。

評価に差を付けることへの抵抗

【口癖や思考】

  • 被評価者の顔色を伺ってしまう
  • 低評価を付けることでモチベーションを下げたくない
  • 高評価を付けることで調子に乗られると困る

【考えられる原因】

  • 評価者や指導者としての自覚が足りない
  • 部下への信頼不足
  • 評価者として不適切な人材の選択

【対策方法】

  • 評価結果を前向きに受け取れる職場作り
  • 一次評価の重要性を現場従業員にも周知させる
  • 上司と部下がコミュニケーションを取りやすい環境作り
  • マイナス評価も成長に必要な要素であることを正しく理解してもらう
  • 風通しの良い組織風土の構築

普通という項目の適用範囲が広い

【口癖や思考】

  • これくらいの成果であれば少し頑張るだけで誰でも出すことができるから評価としては普通だろう
  • 悪い部分(良い部分)が全くないわけではないから極端な評価は避けておこう

【考えられる原因】

  • 努力や怠慢が評価されにくい組織風土
  • 評価スケールに対する理解不足
  • 飛び抜けた能力を持っていなければ普通以外の評価を付けてはいけないという固定概念
  • 評価者自身が過去に中心化傾向による偏向評価を受けていた

【対策方法】

  • 僅かな変化にも敏感に反応できる組織風土の構築
  • 誰もが同じ判定を行える評価判定基準を設ける
  • 評価スケールの扱い方を正しく身に付けてもらう
  • 先入観や固定概念を評価に持ち込ませない

正しい評価を行う自信がない

【口癖や思考】

  • 評価スキルに自信が無いから無難に普通を選択しておこう
  • 高評価や低評価の理由を説明する自信がない
  • 過小評価が原因で優秀な人材を潰してしまうのが怖い
  • 過大評価が原因で扱いきれない大型プロジェクトを任せられると困る

【考えられる原因】

  • 評価対象者が担当している業務に対する興味や理解が浅い
  • 曖昧で分かりにくい評価項目(評価要素)や評価基準
  • 現場の活動内容に評価スケールが適していない
  • 担当する評価対象者が多すぎる

【対策方法】

  • 評価項目ごとに明確な達成基準を設ける
  • 4段階評価や6段階評価など中央値を排除した評価スケールを用いた評価者トレーニング(評価者訓練、評価者研修)を実施し、意識的にスコアリングを行う感覚を身に付けさせる
  • 評価対象者が少ない場合であれば、正規分布や相対評価など感覚的な評価スケールの導入を検討してみる

人事評価の重要性や実施目的への理解不足

【口癖や思考】

  • 個人のマイナスはチーム全体でフォローすれば問題ない
  • わざわざ個人の優劣を決める必要性は無い
  • 組織が求めている人物像が分からないから評価できない
  • 自分に評価者という役割が与えられているのは管理職の負担を減らすためだ

【考えられる原因】

  • 個人評価を行う理由や重要性を理解していない
  • 組織運営方針や企業理念が浸透していない
  • 現場の人間が評価を行うことの重要性を理解していない

【対策方法】

  • 評価者意識を高めるためのトレーニングや研修を実施する
  • 実施目的や一次評価の重要性に対する理解を深める
  • 企業や上層部と評価者のエンゲージメントを十分に高める

その他の心理的偏向による評価エラー

人事評価の結果が中心部分に集中する中心化傾向や上位評価に偏る寛大化傾向、下位評価に偏る厳格化傾向の他にも、多くの心理的偏向による評価エラー(評価誤差)が存在します。

人事評価者の評価結果をフル活用することができるよう、発生しやすい評価エラーなど早期発見に必要となる知識を身に付けておきましょう。

逆算化傾向
「この人物にはこのような評価が相応しい」と先に総合的評価を完成させた上で個別評価を当てはめていく

ハロー効果(後光効果)
有名大学出身や過去の実績など、その人を印象付ける出来事が脳裏に強く焼きついてしまい評価にも影響を及ぼす

期末効果(期末誤差、近隣誤差、近接誤差)
評価直前に発生した成果や言動によって生まれた感情やイメージが評価全体に影響を与えてしまう

対比効果(対比誤差)
評価対象者を一個人として評価することができず、自分自身や別の評価対象者を基準にして比較評価してしまう

論理誤差(論理的誤差、ステレオタイプ)
「Aという特性を持つ人物は大抵Bという特性も持ち合わせている」などの固定概念から、Aの事実確認しかせずにBの評価まで行ってしまう

現場を透明化させる人事評価制度の重要性

人材評価制度は人材育成と人材活用の要であり、全ての組織戦略に繋がる重要な要素です。そして、現場の情報が正しく吸い上げられる組織は臨機応変に柔軟な戦略を組み上げることが可能となります。しかし、まだ多くの経営者や人事担当者は現場管理者や一次評価者の実施する評価結果の重要性を正しく理解していません。

心理的偏向対策を行った組織の人事評価制度は精度を高め、自分自身が実際に見ているかのような透明性を持つようになります。上層部と現場を一体化させる人事評価制度の構築によって、組織内の人材は何倍も強い輝きを放つようになるでしょう。

まとめ

  • 中心化傾向とは心理的偏向の1つであり、評価結果が中央値に集中してしまう状況を指す
  • 中心化傾向は人事戦略や組織運営に多くの悪影響を与える危険因子である
  • 中心化傾向に陥る心理的要因と対策を正しく理解することによって組織内発生を予防できる
  • 人材評価制度は人材育成と人材活用の要であり、意識的に改善を図ることで強い組織を構築することができる

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