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2018年7月17日(火)更新

科学的管理法

科学的管理法は、工場労働者の主観的な経験や技能の上に成り立っていた作業を、客観的・科学的に整理して管理するマネジメントの考え方を指します。詳細について、本記事にて解説いたします。

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科学的管理法とは

科学的管理法は、工場労働者の主観的な経験や技能の上に成り立っていた作業を、客観的・科学的に整理して管理するマネジメントの考え方です。

20世紀初めに米国のエンジニア、フレデリック・テイラーが提唱した手法で、「テイラー・システム」とも呼ばれています。 客観的・科学的に整理する、とはどういうことでしょうか?テイラーは次の4点にまとめています。

課業管理

課業とは「タスク」「ノルマ」のことです。一日の仕事量の基準を設定するにあたり、模範となる労働者ならば達成可能であると見込まれる仕事量からはじき出すのが課業管理です。

ここでポイントとなるのは、適切な仕事量を科学的な手法で算出することです。現場のカンや経営者の押し付けではなく、労働者の動きを実際に観察し、客観的に導き出すのです。

これを「作業研究」といいます。 まず一連の作業を細かく分解し、それぞれにかかる時間をストップウォッチなどで測定します。テイラーはこの過程を「時間研究」と名付けました。

そして個々の作業がどうしたら効率的になるのか、熟練工のムダなくムラない動きはどのようなものか、を観察します。これが「動作研究」です。

作業の標準化

設定した課業を達成するために、作業の条件や流れを標準化、つまりマニュアル化することです。作業研究から明らかになった熟練工の効率性の高い動きをもとに、必要な道具や一つひとつの作業にかける時間などを明確にします。

これらを明記したものを用語で「指図票」と言います。マニュアル化によって、経験の浅い工員や動きの鈍い工員も熟練工の動きに近づけることができます。

差別出来高給

課業を達成した工員と達成できなかった工員に対し、異なる賃率で報酬を支払うことです。ノルマを達成したかどうかで、成果1単位当たりの報酬が変わってくるわけです。

ノルマ達成に向けたインセンティブとなる一方、未達成の場合はペナルティが与えられます。達成に向けたハードルがあまりに高いと労働強化になり、かえって労働者の意欲を削ぎかねません。このため最初の課業管理が重要な意味を持つわけです。

職能別職長制

作業管理に最適な組織形態として、職長の権能を計画と執行に分けることです。職長が仕事の企画・立案まであらゆることに責任を負っていると、結局カン頼みの管理となり、グループごとに成果にばらつきが出てしまいます。そこで職長の権能も細分化するわけです。「ライン・スタッフ」の源流です。

科学的管理法の考案と普及

問題意識:成り行き任せの管理と組織的怠業

テイラーが科学的管理法を編み出した背景には、当時の米国では組織的怠業が横行していたことがありました。

経営者は生産現場にタッチせず、熟練労働者に管理を任せる内部請負制度で成り立っていましたが、現場では1日の生産量を目分量で決めたり、カンや経験を優先したりする成り行き経営が一般的でした。また報酬は出来高払いだったにもかかわらず、その計算に用いる賃率の基準がありませんでした。

仕事の成果が上がると経営者が賃率を一方的に引き下げたため、労働者は「仕事を効率的にするほど損になる」と考え、わざと怠けるようになります。雇用主はそんな労働態度に不信感を抱き、労使関係はぎすぎすしたものになっていました。

科学的管理法の導入

テイラーは組織的怠業の原因として、賃率の決定権を経営者側が、生産量の決定権を労働者側が握り、互いに公正性を欠いていることに注目しました。そこで賃率と生産量に客観的で公正な基準を設け、相互不信の芽を摘み取ろうと試みたのです。

東部鉄道値上げ事件を機に普及

テイラーは科学的管理法を確立しながら、コンサルタントとして企業の導入を支援しました。全米にその名が広まったきっかけは、1910年に起きた東武鉄道値上げ事件です。

アメリカ東部の鉄道会社が、従業員の賃金上昇を理由に貨物輸送運賃の値上げを図った時のことです。値上げに反対した荷主側の弁護士は、鉄道会社の非効率な経営を指摘するために科学的管理法を持ち出ました。

値上げは却下され、科学的管理法についてメディアが詳しく報じたことで知れ渡るようになり、後の経営学や経営管理論、生産管理論に大きな影響を与えることになったのです。

大量生産方式への発展

科学的管理法を実践し成功を収めたのが1903年に創業したフォードです。当時の自動車は一般市民には手の届かない高級品でしたが、フォードは科学的管理法を応用するとともに流れ作業を想到し、大量生産方式を確立しました。こうして科学的管理法はアメリカの機械産業の礎となり、現代に受け継がれていきました。

科学的管理法への批判

労働者を「機械」扱い

科学的管理法はテイラーが提唱した当時からさまざまな批判を受けました。

労働管理の精度という観点では非常に優れたものだった半面、労働者を工場の「機械」や「歯車」のように扱い、人間としての個性や心理を無視している、という点です。

労働組合などから「労働強化」と恐れられたり、心理学や社会学者から「人権侵害」と非難されたりしました。

労使や「ブルー」「ホワイト」の二極化

もともとは労使の相互不信と対立を解決すべく考案された科学的管理法でしたが、その原理の一つに職能別職長制、管理部門を現場から切り離すことを含んでいたため、かえって管理者と現場労働者の二極化を進める側面がありました。

言い換えれば頭脳労働者(ホワイトカラー)と肉体労働者(ブルーカラー)を切り分けたこととなります。

そして当時の米国社会は資本家と労働者の階級闘争が盛んになっていた時代でもあり、労働争議の激化をあおる結果となりました。

企業側の全体的な視野が欠ける

テイラーは自ら労働者、管理者、技師であり、生産現場を観察しながら科学的管理法を考案しました。しかし企業経営において管理しなければならないのは生産現場だけではなく、財務や営業など多岐に渡ります。

科学的管理法は生産計画、生産組織、生産統制といった生産管理に傾倒し、こうした全体観に欠ける面がありました。 これらの批判に対して多くの学者や研究者が補足研究を進め、生産性の向上や経営学の発展に繋がっています。

現代への示唆

科学的管理法にみられるタスク管理やマニュアル化といった原理は、現代では当たり前のように経営に取り入れられています。またテイラーの時代とは異なって生産現場は機械化が進み、知的労働が圧倒的に増えていますから、科学的管理法がそのまま当てはまる部分は少ないかもしれません。

一方で、これまでの労働時間に応じた賃金体系を見直し、成果報酬型に転換する動きが広がっています。知的労働においても、経験の長い人と浅い人では仕事の効率に差が出る面もあるでしょう。

達成すべきタスクは何なのかを明確に定める、経験者の働き方を「盗んで覚えろ」ではなく客観的に見えるようにする。こうした形でテイラーの原理を応用し、作業効率を上げることは可能です。

職場がなんとなく怠慢になっている、個人の成果にばらつきが大きい…といった場合に、科学的管理法の原理は解決策のヒントになるでしょう。

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